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Last-modified: 2008-03-18 (火) 22:49:29

79 名前: 出張、仮面の騎士! [sage] 投稿日: 2008/03/08(土) 19:51:40 ID:HuD/SKmd
 ―紋章町某所、打ち捨てられた廃工場―

レイドリック「……前回は変なドーナツ男のせいで酷い目にあったな……」
ブラムセル 「うむ。やはり我々は紋章町からは出ない方が無難なようだ」
ゲブ    「ぐふふふぅ……だが、復帰早々いい獲物にありつけたわぁ」

 薄暗い裸電球の明りの下、汚らわしいにやにや笑いを浮かべる三人の前にあるのは、
 スチールデスクの上に山と積まれた大量の下着類。

レイドリック「……顔を埋めてもいいか?」
ブラムセル 「やめろ! ちゃんとジャンケンで順番を決めてからだ!」
ゲブ    「ぐふふふぅ……例の兄弟の家がたまたま手薄だったおかげで、これだけの大戦果……」
レイドリック「テロ集団ベルクローゼン紋章町支部、始まって以来の快挙だなこれは!」
ブラムセル 「さて、では早速目録を作成……む?」
ゲブ     「ぐふぅ……どうしたぁ?」
ブラムセル 「いや……妙だな、このブラジャー……何か、妙に厚みが」
仮面の騎士 「そこまでだ」
レイドリック「!? な、何者だ!?」
ブラムセル 「一体どこに……!」
ゲブ     「あ、あそこだぁ、キャットウォークの上ぇ……!」
仮面の騎士 「……住人の留守中、家屋内に侵入し、金品そっちのけで下着類を根こそぎ盗み出す……
        人それを、『変態』という」
レイドリック「な、何奴だ! 名を、名を名乗れぃ!」
仮面の騎士 「貴様らに名乗る名はない!」
ブラムセル 「げ、迎撃だ、迎撃しろ!」
ロプト狂信者「イーッ!」

 キャットウォークから飛び降りた仮面の騎士は、いつも以上の勢いで飛び回り、
 飛び交う魔法、矢、銃弾をことごとく避けながら、鬼神の如き戦いを繰り広げる。

レイドリック「な、なんだ、この気迫……!」
ゲブ    「ぐふぅ……! く、クトゥーゾフ、援護だ、フェンリルで援護しろぉ!」
クトゥーゾフ「ううむ……そうしたいところは山々なのじゃが、ワシのフェンリルの魔導書が見当たらんのだ……」
ブラムセル 「ええい、またかこのボケジジィが!」

 そんなことをやっている内に、他のロプト狂信者を全て打ち倒した仮面の騎士が、いつもの変態三人組に肉薄する。

仮面の騎士 「 成 敗 ! ! 」
レイドリック「ぎゃっ!」
ブラムセル 「ぐほっ」
ゲブ    「ウボァー!」
レイドリック「お、おのれぇ、またしても我らの邪魔を……! 覚えておけーっ!」
ゲブ    「テロ集団ベルクローゼンを敵に回したこと、後悔させてやるぞぉ!」
ブラムセル 「撤退、撤退だ!」
ロプト狂信者「イーッ!」
クトゥーゾフ「ああ、あった、フェンリルが見つかったぞ!」
三人    「遅ぇよボケジジイ!」

 各々好き勝手に喚き散らしながら、テロ集団ベルクローゼンはあたふたと逃げていく。

仮面の騎士 「フッ……相変わらず引き際だけは見事なものだ……さて、後はこの忌まわしき物品を回収……ん?」

 仮面の下で、彼女は訝しげに目を細める。今、視界の隅を何かが横切ったような?

仮面の騎士 「……気のせいか。今はともかく、早くこれを回収して撤収しなければ……」
80 名前: 出張、仮面の騎士! [sage] 投稿日: 2008/03/08(土) 19:52:43 ID:HuD/SKmd
 ―数十分後、兄弟家―

ツァイス 「……では、帰ってきてみたら、干してあった下着が全てなくなっていたと……」
エリンシア「ええ……お庭にテロ集団ベルクローゼンの紋章を描いたカードが残っていて……」
ミレディ 「犯人はよほど焦っていたのでしょうね。男物まで全て持ち去っています」
ゲイル  「この家の住人に見つかったらミンチよりひどいことになるのは目に見えているからな……無理もない」
ゼフィール「……」
リーフ  (……ねえ、なんでこんなチンケな事件にゼフィール署長さんが直々に出張ってきてるの?)
マルス  (テロ集団ベルクローゼンには、何度も何度も脱獄を許してるみたいだからねえ。ようやく本腰入れる気になったんでしょ)
エフラム 「それよりエイリークを知らないか? さっきから姿を見かけないんだが……」
ツァイス 「……分かりました。それでは、この情報を元に捜査を……」
仮面の騎士「その必要はない」
ゲイル  「誰だ!?」
ミレディ 「あそこよゲイル、家の屋根の上……!」
ゼフィール「……! 貴様は……!」
仮面の騎士「……奥方、盗まれた物品は全て回収した。安心されよ」

 屋根の上からボストンバッグを投げて寄越す仮面の騎士。

エリンシア「ありがとうございます……でも、わたしは奥方では(ry」
エフラム 「……まさか、貴様が学園の外に現れるとはな……!」
リーフ  (うわ、なんかエフラム兄さんから凄まじい怒りのオーラが放たれてるよ!?)
マルス  (仮面の騎士はエイリーク姉さんと熱愛疑惑があったからねえ……まあデマだったけど)
仮面の騎士「……紋章町の一住人として、悪行を見過ごすわけにはいかなかった。それだけの話だ」
ゲイル  「奴を捕えろ! あれも紋章町不審人物リストに名を連ねている人間の一人だぞ!」
ツァイス 「了解! 囲め、竜騎士隊!」
仮面の騎士「用は済んだ。これにて失礼」
リーフ  「き、消えた……!?」
ゼフィール「……リターンリングか……」
エイリーク「ただいま戻りました……? 何の騒ぎですか?」
エフラム 「おおエイリーク、無事だったのか。いや、実はな……」
ゼフィール「……事件は解決したようだ。署に戻るぞ」
ゲイル  「ハッ。総員撤収せよ!」

81 名前: 出張、仮面の騎士! [sage] 投稿日: 2008/03/08(土) 19:53:21 ID:HuD/SKmd
 一糸乱れぬ行動で、ベルン署署員たちが撤収する。

アイク  「……仮面の騎士、か。この鮮やかな手並み……一度手合わせ願いたいものだな」
リーフ  (うわぁ、ベルン署だけじゃなくてアイク兄さんの興味まで引いちゃったみたいだよ、仮面の騎士さん)
マルス  (あれだけ派手に行動すればねえ……っていうか、今回僕ら完全に解説役だねえ……)

エイリーク(……ふう。なんとかなりましたか……わたしの秘密……
       『実はパッド入りの下着をつけてなんとかAカップ』という事実、絶対に外に漏らすわけにはいきませんからね……!)
エリンシア「何にしても事件が無事解決してよかったわ」
ユンヌ  「……ッ! 待って、このバッグ、中から下着が一枚消えてるわ!」
エイリーク「え!? ど、どなたのですか!? まさかわたしのパッド」
ユンヌ  「クッ……! ぬかった! きっと今頃は……!」

 ―同時刻、ベグニオン財閥ビル―

フォルカ 「……戻ったぞ」
サナキ  「おお、戻ったか! で、約束のものは……!」
フォルカ 「……これだ」

 パサッ、と執務机に放り出される一品。サナキが歓声を上げる。

サナキ  「うひょー、これがアイクの履いておる下着か……! しかもビキニパンツ! レア物じゃな!
       シグルーン、早速私の宝物庫に収納せよ!」
シグルーン「分かりました、サナキさま」
フォルカ 「……ではな」
タニス  「……仕事を選ばない男ですね……」
シグルーン「報酬次第で何でもやってのける、という噂は本当のようですね」
サナキ  「ふふふ……アイクの下着をゲット!
       何故こんなことをするのかはよく分からんが、これで恋敵どもよりも一歩リードじゃな!」
タニス  (……大方、ララベルユンヌ辺りにそういうことを吹き込まれたのだろうな……
      まあサナキ様が男の下着でハァハァするような変態になったわけではないのだから、よしとするか)
シグルーン(騙されてはしゃいでいる無邪気なサナキさまハァハァ)