膝乗りハルヒ (43-803)

Last-modified: 2007-03-22 (木) 00:38:05

概要

作品名作者発表日保管日
膝乗りハルヒ43-803氏07/03/2207/03/22

作品

この前の一件から味をしめたのかハルヒはたびたび俺の膝の上に乗るようになった。
俺を団長席に座らせてその上に座るハルヒ。どうしたいんだよ。
「別に。あんたはあたしの言うこと聞いてればいいの」
とは言うが朝比奈さんは顔赤くしながらちらちらこっち見るし、長門が時々冷たい目で凝視してくる。
古泉がゲームの相手がいなくなって暇そうなのは別にいい。
ただその3人の視線に慣れてきている自分が怖い。

 

最近は市内探索でもハルヒとのペア、もしくはプラス1が多い。
俺に「涼宮ハルヒ専用」という札が貼られるのもそう遠くないかもしれない。
「ああ、それは面白いですね」
「うるせえ、他人事だと思いやがって」
「いや、うらやましいですよ」
そりゃお前はな。こんなことであの厄介な巨人が出なくなるなら万々歳だろうさ。
「一人の男性としてもうらやましいですよ」
「男だからまずいだろ。傍目から見たときのヤバさは自覚してる。あの谷口の目なんて…」
「…教室でも同じなんですか?」
あいつが時と場所をわきまえると思っているのだろうか。だったら俺はこんなに苦労しない。
「それはそれは、まあ大丈夫でしょう。『またやってるよ』とでも思われているだけでしょうから」
「それがいやなんだ。俺とハルヒはなんでもない」
「涼宮さんも報われませんね。こんなにしてるのに」
そんなんじゃない。単に面白がってるだけだ。新しいおもちゃを手に入れた子どもみたいなもんだ。
「まあそれもあるでしょう。でも独占欲もあると思いますよ」
「独占欲?」
「しっかり抑えておけば盗られる心配はないでしょう?」
「俺は備品か」
「涼宮さんになくてはならない備品ですよ」
「言ってろ」

 

ハルヒの家庭教師中。
「あー疲れた。よいしょっと」
慣れた動作で俺に座るハルヒ。
「…なあハルヒ。いい加減乗るのやめとけよ。身の危険とか感じないのか?」
「なんで?」
「俺だって男だ。2人きりでこんなに密着してたら何がどうなったってしょうがないぞ」
「あんたにそんな度胸ないでしょ」
舐められてるのか、誘われているのか、信頼されているのか。
「嫌なら嫌って言いなさいよ」
そりゃあ嫌さ。重いし、邪魔だし、いろいろと他人の目もヤバイ。何より俺がヤバイ。
「別にいい…俺が嫌だって言ったってお前はやめやしないんだろうしな」
「ふん、あったり前でしょ。あんたはあたしの言うこと聞いてればいいの」
少し前に聞いた気がする台詞。
なんとなく、そう何も意識せずに勝手に手が動いた。
気付くと俺はハルヒの腹に手を回し抱きしめるみたいになっていた。
「ちょ、な、ば、バカキョン!こら、離せバカ!」
言葉のわりには弱い力。それとも俺の力が強いのか。
「なんでもねえよ」
「な、なんでもないって、あんたねえ!」
「なんでもないから、そのままでいろ、いや、いてくれ」
「…」
ハルヒは言葉を発しない。今の角度ではハルヒの顔は見えない。
何で俺はこんなことをしたのだろう。
『独占欲』『なくてはならない』
余計な言葉が頭に浮かぶ。
長い。少なくとも俺にとって長い時間のあと、ハルヒは俺に体重を預けた。
「なんでもないのよね?」
「ああ、なんでもない」
女の子、それもとびっきりの美少女が膝に乗ってるなんてそうそうあるはずもない。
でもそんなあるはずもないことがなんでもないことになるなんて、世の中わからないもんだ。
でも言っておくがな、超能力者の解説も、未来人の通達も、宇宙人の予言もいらないぞ。
理由なんて教えられた日には俺もハルヒもどうにかなっちまうだろうからな。

 

関連作品