織田家
織田家では、斎藤道三の死によって
後ろ盾を失った信長に対し
弟、信勝の一派が謀反を起こした
反乱を鎮めた信長は家中をまとめるため
あえて信勝を許した
だが、信勝のわだかまりは消えなかった
ある日、信勝は謀反の際に右腕として
働いた柴田勝家を屋敷に招いた
信勝は勝家を見据える
織田信勝
勝家よ
おぬしは兄上のことをどう思う
柴田勝家
先の戦いでの信長様の采配は
鬼神のごとく
まことに恐ろしき方かと
織田信勝
わしも兄上が恐ろしい
兄上は常人が思いもよらぬことを
なさるお人……
織田信勝
このまま兄上に織田家を任せては
わし自身の命も危うい
信勝は目を伏せた
勝家が言葉を発そうとしたそのとき
信勝は手元の脇差を抜いた
織田信勝
わしは先手を打って兄上を……
柴田勝家
ま、まさか信長様を
討つおつもりですか!
おやめくだされ
織田信勝
もはや覚悟はできておる
柴田勝家
……
それから数日後、信勝は信長が
病に伏せていると聞き
信長の屋敷を訪れた
織田信勝
兄上、ご気分はいかがですか?
織田信長
ああ、あまり優れぬ……
信勝よ、もっと近う寄れ……
織田信勝
ははっ
信勝は懐に手を伸ばしながら
信長の枕元ににじり寄った
白刃がひらめき
信勝が崩れ落ちる
織田信勝
……うっ
や、やはり兄上にはかないませぬな
織田信長
当たり前だ
うぬとは器の大きさが違うわ
織田信勝
わしは昔から兄上をねたみ恐れておりました
ゆえにわしは……
織田信長
もうよい……
それ以上何も申すな
信長が襖を開けて外に出ると
廊下に母親の土田御前の姿があった
土田御前
今の音は何じゃ
信勝はいかがした!
織田信長
……ただ今、手討ちにいたし申した
土田御前
なっ……
弟を謀り、自らの手にかけるとは!
お前は人ではない、鬼じゃ!
織田信長
二度も背いた者が許されるほど
この世は甘くありませぬ
たとえそれが親兄弟であれ同じにございます
土田御前
!
信長の口調は穏やかであったが
眼光は母の知るうつけのものではなく
全てを貫く力を宿していた
母を背に信長が廊下を歩いていると
ひとりの小姓が駆け寄り
ひざまずいた
小姓
勝家様が参っております
いかがなさいますか
織田信長
気遣いはいらぬ
屋敷に戻り、休めと伝えよ
小姓
ははっ
信長はそれだけ言い残すと
寝所へと戻っていった
信長は弟を討ち果たすという形で
家中をまとめ上げたのであった
その他の大名家
織田信長は弟の信勝を討ちました
この一件により織田家は
信長のもとに収束されたようです