最後の奉公

Last-modified: 2024-07-14 (日) 12:43:28

最上家 最上家

最上義守は、長男の義光に
家督を譲るかどうかためらっていた
 
義光は、確かに武勇には秀でていたが
その粗暴とも言える性格のために
義守に疎まれるようになった
 
やがて義守は
次男の義時を寵愛するようになり
ついに義時に家督を譲ることに決めた
 
最上義守
義光を幽閉せよ!
義光が逆らえば廃嫡の上、追放じゃ!
 
小姓
ははっ
 
こうして、後難を恐れた義守の手により
義光は幽閉の身となったのであった
 
義光は身に覚えも無く幽閉され
大いに怒りを覚えていた
 
最上義光
父上はなぜこのようなことを……
 
最上義光
かくなる上は父上と義時を討ち
力ずくで家督を奪い取るまで!
 
ついに義光は
祈願を奉納し、挙兵を決意したのであった
 
家臣の氏家定直は義光の反乱を知り
病床の身ながらも、自家の危機を救うため
義光のもとへ急いだ
 
氏家定直
義光様
義守様を討つというのは
まことにございまするか?
 
義光は定直の剣幕に驚いたが
それよりも、重い病の定直が
やってきたことが信じられなかった
 
最上義光
定直よ、体の方はよいのか?
 
氏家定直
義光様と義守様が争いになられては
お家が滅ぶのは必至
私の体などいかほどのものでしょう
 
最上義光
……
 
氏家定直
拙者が義守様を説き伏せて参りますゆえ
いましばらくお待ち願えませぬか?
 
最上義光
……わかった
おぬしに任せよう
 
定直は義光の許しを得ると
すぐさま義守の屋敷を訪ねた
 
最上義守
定直よ
血相を変えていかがした?
 
氏家定直
恐れながら
義光様に家督をお譲りいただくよう
お願いに参りました
 
最上義守
あやつは昔から気性が激しく
周りをむやみに恐れさせてきた
 
最上義守
あやつが家を継げば
周辺の大名が黙っておるまい
 
氏家定直
確かに義光様は気性の激しい方ですが
それ以上に家臣らを従える知恵も
お持ちになっておられます
 
最上義守
じゃが……
 
氏家定直
ここで殿が義光様と争えば家中は乱れ
それこそ他家の思う壺
 
氏家定直
拙者の最後の願いにございます
どうか義光様に家督をお譲りください
 
最上義守
今まで最上家に尽くしてきた
おぬしがそこまで言うのなら……
義光に家督を譲らぬわけにはいかぬ
 
氏家定直
ははっ!
これで拙者も身を引けまする
数々のご無礼の儀、平にお許しくださいませ
 
さすがの義守も
身命を賭して忠節を尽くす定直の諫めを
むやみには拒めなかった
 
定直は見事、義守を説き伏せ
義光の屋敷へ首尾を報告した
 
氏家定直
それでは、殿
拙者はこれにて失礼つかまつります
 
最上義光
……定直よ、大儀であった
 
義光は定直を見送ったのち
風に揺れる梢(こずえ)をひとり眺めていた
 
最上義光
定直は、ああ申していたが
あの父上がおとなしく聞き入れるとは思えぬ
 
最上義光
だが定直よ、安心いたせ
わしはいかに犠牲を払おうとも
この家を守り抜いてみせる
 
義光は、定直の固い忠義心に触れ
最上家を守らんと誓ったのであった
 
こうして定直は
義光を最上家当主に就かせると
間もなくこの世を去った
 
最上家は、この老臣の最後の奉公により
家中分裂の危機から救われたのである

その他の大名家

最上家では氏家定直の諫言により
長子の義光が家督を相続しました
その後間もなく、定直は病死しました

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