織田家
秀吉は前代未聞の大出世を果たしたが
代々織田家に仕えてきた重臣たちの
反発は予想以上に激しかった
そこで秀吉は
織田家中で知将として名高い
村井貞勝に相談をもちかけた
木下秀吉
武運に恵まれ、ここまで出世できたものの
家中にはわしを妬む者も多い
何か良い知恵はござらぬか?
村井貞勝
丹羽殿と柴田殿から一字ずつ頂いては
いかがですか?
木下秀吉
ほう
村井貞勝
丹羽殿と柴田殿は織田家の重鎮
おふたりの名を頂くことで彼らを敬い
ひいては譜代の臣への敬意を示すのです
木下秀吉
おお、それは良い考えじゃ
こうして秀吉は両者から一字ずつ取り
羽柴秀吉と名乗ることにした
秀吉が軽い足取りで屋敷に戻ると
妻のおねが出迎えた
木下秀吉
おねよ、わしは姓を改めようと思う
おね
木下の姓を変えられるのですか?
おねは秀吉の言葉に眉をひそめる
しかし、それを見た秀吉は口もとに
笑みを浮かべて言葉を続けた
木下秀吉
そうじゃ
わしは丹羽殿と柴田殿から一字ずつ
頂いて羽柴と名乗ることにした
おね
……羽柴、秀吉様
良い名でございますね
木下秀吉
しかし、わしはまだまだ出世するぞ
やがては織田家中随一の将になって
みぜるわ
おね
初めてお会いした頃、あなたは殿の草履を
温めておりましたのに……
まるで夢を見ているようにございます
木下秀吉
わしがお前に嘘を申したことがあったか?
おね
ふふ、期待しておりますわ
羽柴と姓を改めた秀吉は心機一転
さらなる立身出世を志すのであった
その他の大名家
織田家家臣、木下秀吉は
出世を機に羽柴と改姓しました