三成と吉継の友情

Last-modified: 2024-07-18 (木) 22:29:58

全大名家

ある日、羽柴秀吉は家臣たちの労を
ねぎらうべく主だった者を集め、茶会を
催した
 
各々が茶を楽しんでいるとき
秀吉は一同に話しかけた
 
羽柴秀吉 □羽柴家
一同、今日は日頃から励んでおる
おぬしらのためにこのような場を設けた
 
羽柴秀吉 □羽柴家
しかし、今だ世は定まっておらぬ
民の不安は大きく、当家の安泰も成らず
安穏としてはおれぬ
 
羽柴秀吉 □羽柴家
まだまだなさねばならぬことは山とある
この程度で満足できるわけがない
 
羽柴秀吉 □羽柴家
各々方、民のため、わしに力を
貸してほしい
 
そう言って秀吉は自ら点てた茶を隣の者
へ渡し、飲み回しをうながした
 
一同、渡ってくる茶を飲み、秀吉への
忠誠、意気込みを語り、次々と茶を回して
いった
 
吉継に茶が回ってきた
 
大谷吉継 □羽柴家
殿、このような体のわしを使っていただける
だけでも幸せなことでございます
 
大谷吉継 □羽柴家
力の続く限り、殿の御為に尽くす所存に
ございます
 
吉継は勢いよく茶を飲んだ
 
内なる想いを口にした吉継は落ち着き、
周りを見ると一同が呆気にとられた表情を
していた
 
大谷吉継 □羽柴家
(あっ! しまった!)
 
吉継が病に冒されていた
ことは周知であった
 
顔はただれ、布で覆わねばならないほどで
あった
 
吉継は飲む振りをして次に回すつもりで
あったが順番が回ってくると熱くなって
しまい口を付けてしまったのだ
 
大谷吉継 □羽柴家
(どうしたものか……)
 
吉継は茶を回せずにいた
 
石田三成 □羽柴家
吉継殿、喉が渇いてしようがない
早う茶を回してくれぬか
 
三成は隣に座ると吉継の持っていた
茶を奪い、飲み干してしまった
 
吉継は余りのことに固まっていた
 
石田三成 □羽柴家
さすが殿の点てられた茶でござる
なんと旨いことか!
 
一同が驚愕の表情を見せる中
秀吉ひとり、笑みを浮かべていた
 
羽柴秀吉 □羽柴家
そうかそうか、さすが三成
茶の良し悪しが分かるか
もう一つ点ててやろう
 
秀吉は新たに茶を点てると
三成に渡した
 
こうして茶会は無事終わった
 
屋敷の自室に戻った吉継は
溢れる想いを抑えきれず涙した
 
大谷吉継 □羽柴家
(三成殿……
 今日受けた恩は終生忘れぬ!)
 
大谷吉継
(いかようなことが起ころうとも
 おぬしのためにこの命くれてやろう)
 
以降、吉継は三成との友情を
固く誓ったのであった

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