今川家など
今川義元は 子の氏真や家臣たちと 一緒に食事を取っていた 突然、義元は箸を置くと はらはらと涙を流し、つぶやいた 今川義元 今川家も わしの代で終わりか…… 今川氏真 なぜそのような不吉なことを おっしゃるのです、父上 今川義元 氏真 そなた飯に汁をかけて食べるとき 汁を二度かけおったな 今川義元 それは一度かけた汁では 足りなかったからであろう 今川氏真 さ、左様でございます 今川義元 毎日食べている飯の分量さえわからぬ者に 内にある人の心に気を配り 見分けることができると思うか? 今川氏真 そ、それは…… 今川義元 人の心に気を配れぬ者が 家臣をまとめられるはずもなし 今川義元 戦とて同じこと 相手の心を読めぬ者が 勝利することなどあり得ぬ 今川義元 だから、わしが死んだら この家は滅びると言ったのだ 今川氏真 返す言葉もございません 氏真はそれ以降 身を引き締めて 事に当たるようになったという