神々の誕生 創世0年~
~ 剣と魔法の創世神話 ~
先ずは、何も存在していなかった。
0 すべての始まりとンヴァー・ヨー、そして美しき青の誕生
何も存在していない状態が続いていた。
億の時の一万倍をもってしてもその一時にも満たない程に果てしなく長い期間(時ではない。
時すらまだ存在する以前の話である)その状態が続いていた。
だが、何も変化していなかったのではなかった。
虚存在とでも言うべき者(物)が膨張し、ついには途切れた。
その途切れがンヴァー・ヨーと呼ばれ、時空という物の中に初めて姿を表した者である。
時空の途切れから時空は爆発的に広がり、ンヴァー・ヨーは存在が押しやられ、
終いには長大な紐状にまで押し潰された。
その後も紐(ンヴァー・ヨー)の内側で存在は絶えず変化を続け、無数の爆発と煌めきが起きた。
そして再び長い期間が経過し、ある一つのとてつもない力を持った煌めきの内側から青が溢れ、
紐の内側を満たした。
ンヴァー・ヨーは溢れそうになる青を「制限」したので、それはきゅうきゅうと縮こまり、
一つの球となった。
その時に幾つかの小さな煌めきが引き寄せられ、その内の一つから龍が生まれた。
その煌めきを月と呼び、そのうちの一つの、龍を産んだ月の事を銀月と呼び、
龍の名を銀月のアルジェルムと云った。
彼は後に偉大なる生き物とされる龍の多くを産んだ。
銀月はその中でも鏡(きょう)のような表面を持った球体で、
青から遠く離れた所で一層輝きを放つ煌めき、太陽と呼ばれるそれと番いとなり
昼は力強く夜は穏やかに、その表面を照らした。
青は銀月の放つ魔力により様々な変化をし、大地と海が生まれた。
アルジェルムがそれを祝福し啼くと、その鳴き声から一匹の白い巨獣が生まれた。
それが、三番目に生まれた神、大海のワルアラである。
ワルアラは喜び勇み青に飛び込むと、海の底まで沈み、ぶくぶくと泡を吐いた。
泡からは数多の魚や海獣が生まれ、海の方々へと散り、息吹で海水を満たした。
その時地上は邪が満たし、海はワルアラの生み出した聖が満たしていた。
まずは両者の争いが起こった。
ある時、地上に昇った聖と邪の交わった者が口を開き、吐息を発した。
(聖と邪が互いを分かり合おうとしたのだと云われている。)
それこそが一番最初の言葉であると言われ、その者は神言のラゼオンと呼ばれた。
ラゼオンは両の手にそれぞれ口を持ち、右手で話した言葉を真実に、
左手で語った言葉を虚実へと変える力を持っていた。
彼は後に人々に言葉という呪(まじない)を与えた強き神の一人である。
聖と邪は互いに、ラゼオンに、その力を我々の勝利のために行使するようにと言った。
彼は頷き、右の手では聖の勝利を、左の手では邪の敗北を語った。
聖の勝利は真となり、邪の敗北は虚実となった。
(つまり、どちらも勝利せず、どちらも敗北しなかった。彼は倫理を司る善き神でもあり、
二分される相いれぬ物の内、片方のみを悪しと定め、破滅させる横暴さを持たなかったからであると云われている。)
それらはそのようになろうとせしあい、ひしめき、矛盾は世界を混沌(カオス)にした。
ワルアラはその様を憂い、海面を叩いた。
海水は地上も海底も全てを押し流して平らになり、全てを海水が満たした。
1 天地の再創造と雷神グラバリジェの誕生
ワルアラがその時ながした一粒の涙から一人の女神が生まれ、海面から姿を表した。
彼女は海底から土を掘り起こして大きな大陸を作り、大斧で叩き割った。
大陸はひび割れて、海を方々に漂い大地や島々となった。
ある時、大陸のヒビの隙間から水が吹き出し、女神が生まれた。
水の女神 ウォルパルサである。
ワルアラは彼女を祝福し、ガラスの水差しを与え、大地を水で満たす事を望んだ。
ウォルパルサは頷くと、ワルアラにヒゲの一本をせがみ、彼は言われるがままに彼女に与えた。
彼女はワルアラの柔らかなヒゲで己の鼻をくすぐり、大きなくしゃみをした。
くしゃみは雲を形成し、大陸の乾いた所にまでも届き、雨を振らせ地表を湿らせた。
しかし、ワルアラのヒゲが大きすぎた為にウォルパルサは鼻血を出した。
ウォルパルサの鼻血は雲に混じり、鼻水と交じり合って轟きを放ち、
そこから雷鳴のグラバリジェが生まれた。
グラバリジェは轟き、方々で落雷を落として岩を砕き山や谷を形成した後、積乱雲の城を築いて
そこに鎮座し、世界の成り行きに目を配った。
グラバリジェの神鳴りによって、いっそう深い穴が空いた場所があった。
冥府である。
そこは海底より遥か深い、地の裏を突き抜けても尚深い場所に位置する死者の世界であった。
その頃、地表や海には死んだ者の魂が死霊となり跋扈して全ての生者に害をなしていた。
生と死は地表では交じり合う事がなかった為である。
ある時、死霊の1人が冥府へと迷い込み、安住を得た。
彼こそこの地で一番最初に死んだ者であり、一番最初に生まれた人と云われ、
その名を導きのランタイトと言った。
彼は地表の死者達を冥府へと送り込む事を思い付き、初めての死神となった。
2 時が刻まれ始めた事と、死者の国が造られた事と世界の最果てでの戦い
それでも尚、時は流れていなかった為、生き物たちは(老いては)死なず、物が腐る事はなかったが、
力に満ちたそれらは増え続け、地上はだんだんと歩く事も叶わぬ程に生物と物で溢れかえった。
美しかった青は汚くなり始め、それを見ていたンヴァー・ヨーは己の切れ端を太陽から銀月を貫き、
青に突き刺した。
らせん状の階段にも見えるそれの先端には歯車があり、らせん階段をまずはゆっくり、ぐるぐると
回り始めた。
この歯車(車輪)こそが時を刻むギアルであり、この瞬間にようやく時が存在し、流れ始めた。
物は腐り、果て、生き物は老いを知り、在る物と虚き物の調和が保たれるようになった。
ある時、朽ちた木にグラバリジェの落雷が触れ、燃え上がった。
これが原初の炎であり、炎と熔解のイグニシアの産まれた瞬間である。
イグニシアは木々を焼き、森を焼き、山を焼いて岩を焼きつくした。
次第に大地が炎に耐え切れなくなり、イグニシアは沈み、火山の種となった。
人々が炎を手に入れたのはこの頃からであると云われている。
またある時、導きのランタイトが死者の腹から産まれた幼子を見つけた。
その幼子は死者でありながらも、力強い生気を放っていた。
だが強い死者の生気は地表に住む者たちにとっては強烈な瘴気であり、肉体も魂も大地も蝕んでいた。
ランタイトは幼子を冥府へ導くと、驚いたことに邪な死者たちや汚れた冥界の獣達は頭を垂れ、
彼女にひれ伏した。
ランタイトはその幼子が冥府の王であると知ると、己も頭を垂れ、地獄の釜で骸の甲冑と鎌を
造らせ、玉座へと鎮座させた。
その幼子こそが、神淵のハーヴェストと呼ばれる神である。
ハーヴェストは、冥府を死者の国として明確にし、地表の方々で生者と大地を穢していた
多くの死者の首を星の数ほど刎ねた。その鎌は瞬く間にいびつに曲がってしまった。
それまでは死者たちは行く場所がなく、地表にいる事が当然のことであった。
なので、今まではランタイトら死神が1人づつ死者を導いていたが、多くの死者は
住まう地を冥府と認識するようになり、地表が生者の世界、冥府が死者の世界との区切りが出来た。
未だに地表に残留する死者もいたが、多くは冥府へとその足を導かれるようになった。
だが、死者が最も活きる夜は銀月が昇り、その聖なる光で邪を祓っており、彼らが冥府への長い道のりを
歩むには不便であった。特に銀月が完全に満ちた夜は、彼らの目は盲く、何も見えなかった。
そこでランタイトは二番目に大きい白い月に死者の道を阻む事の無いよう、
銀月に頼んではくれまいかと頼んだ。
(彼も死者であるため、銀月を直視する事ができなかったのである)
その時産まれたのが白月のアキシャルファルと呼ばれる神であった。
アキシャルファルはランタイトの願いを聞くと、アルジェルムの元へ行きその通りに乞うたが、
正しきアルジェルムは首を縦にふる事はなかった。
もう一度乞うたが、やはりアルジェルムは首を縦に振ることは無かった。
アキシャルファルはランタイトにそのように伝えたが、ランタイトは黄金の畑から取られた金の種(稲)を
彼女に献上し、どうかもう一度、頼んでもらえないかとすがった。
アキシャルファルは頷き、金の種を突いて餅をこしらえ、銀月の龍に捧げた。
銀月の龍は餅を喉に詰まらせないよう、慎重に食べたのでその間だけ、銀月の月光の力は弱まり、
白月の光が死者を見守った。
転じて、旅人は旅のお守りとして保存食に干餅を持つようになった。
ある時グラバリジェが空を見つめていると、世界の果ての空に扉が現れるのが見えた。
不審に思ったグラバリジェはアンダリアと交わって巨神を作り、そこを見張らせた。
その巨神が、眠らずのエヴァードーンである。
エヴァードーンは夜明けを告げる銅鑼を鳴らす為の大槌をその手に持ち、4つの光る目のうち2つを常に
開け、眠ることがなかったと云う。
エヴァードーンが見張りを初めて幾年もたったある日、その扉が開き、一人の少女と共に誰も見たことの
ない異形が溢れだした。
エヴァードーンはグラバリジェに危機を知らせたが、グラバリジェはそれを既に忘れて居眠りをしていた。
グラバリジェの眠りを覚ますため、エヴァードーンが空を思い切り叩くと、グラバリジェは驚いて
目覚めたが、その勢いで扉から異形が溢れ出し、彼を殺した。
グラバリジェは怒り、神々や戦士たちを世界の果てに集結させ、異形たちと戦った。
数多くの勇敢な戦士たちは異形の者たちによって殺されたが、足元に流れてきたエヴァードーンの血を
飲み、とてつもない力を目覚めさせ、倍の敵を打ち砕いた。
エヴァードーンの黒茶けた血には生物の内に秘める力を開放する効果があった。
しかし、幾らでも扉からは異形が溢れでたので、グラバリジェは雷槍を扉の中にありったけ撃ち込み、
扉を閉めて雷の鎖で扉を閉じたので、異形たちは出てこなくなった。
だが、今でも時折その隙間から異界の物がこぼれ落ちる事があるという。
その扉には鍵穴があり、そこを閉じれば良いとグラバリジェは考え、他の神々や人々に鍵を探させたが、
ついぞは見つからなかった。
3 平穏の乱階、暗き者の誕生
グラバリジェが神々とサイコロ遊びをしていた時、卓からこぼれ落ちたその一つから女神が産まれた。
幸運と不幸を司るロードメイであり、その背には幸と不幸を量る天秤を背負っていた。
彼女はまだ幼く、天秤の幸と不幸の調和を気分次第で動かした。
地表では浮浪者が王になり、金持ちが銭の全てを失った。
運とはそんなもの、とたかをくくっていたグラバリジェであったが、躓いた拍子に不幸が続いて
天宮(グラバリジェの住まう積乱雲の城)から転げ落ちて地表に落ちた。
その勢いで大地は大きくひび割れ、大地の裂け目と呼ばれる深い谷が出来た。
グラバリジェはこれ以上の事態の悪化を危惧し、彼女を囲う様に箱庭を築いた。
そこに何処からか出現した神性が産まれた。これが神を産むアーヤマルヒーナである。
神の力を内包したそれは箱庭の中で様々な神を生み出し、彼女の気を紛らわせ、
幸と不幸の調和が保たれるようになった。
ある時、広大なるアンダリアが悍ましい者たちが大波のように大地を埋め尽くそうとしている事に
気がついた。
彼らは世界の見えぬ場所、歪より産まれた暗き者の一柱であり、名を多く小さく蠢くカーサログと云う。
カーサログの体はとてつもなく長く、幾つもの節に分かれており、節のそれぞれに6つの手を持っていた。
彼が走った後には砂煙が立ち込め、木々はなぎ倒され街は藻屑となり、山は平野となり、多くの生き物が死んだ。
今までは月からアルジェルムが、天からグラバリジェが、大地はアンダリアが、水源はウォルパルサが、
海をワルアラが、死者の国をランタイトが邪悪な者の存在を見張っていたが、ロードメイの乱した調和が
世界均衡を崩し、神にも見えぬ場所を創りだした。それがカーサログを始めとする邪悪を生み出した歪である。
まずはラゼオンが行き、「カーサログは産まれた場所へと戻り、二度と現れる事の無いように」としたが
彼らはまだ産まれたばかりの暗き者達であったが故に、言葉や自我を持たず、真言がカーサログを縛ることは無かった。
だが、その身体の一部から切り離された蠢く者は、言葉を持ち、善き者となって森に蠢く善き者達の国を築いた。
彼らは昆虫人と呼ばれ、ラゼオンを崇めた。
次にグラバリジェが行き、その雷でカーサログを撃つと、その身体の大半は粉微塵となったが、その粉塵は
目に見えぬほど小さな蠢く者となり、人々の体内に入り苦しめるようになった。
次に広大なるアンダリアが行き、カーサログをその胸に抱きしめると(アンダリアは彼らを大地の一部とし、
愛を注ぐべき者でもあると考えた)、その体の一部は浄化され、大地に根付く蠢くものとなり、
木々や草花と交わり世界中に繁栄した。
次に大海のワルアラが行き、カーサログを口に含んだ。口の中に入った多くは小さき善き蠢く者となり、
魚たちの養分となった。
だが、その口から零れた物は様々な海の蠢く邪悪な者となった。
次に水の女神ウォルパルサが行き、カーサログを水没させると、その多くは息絶えたが、
その一分は水に住まう蠢く者となった。
次に炎と熔解のイグニシアが行き、カーサログを焼いた。
カーサログの体の一部は焼け落ちたが、残った一部は蠢く者となって火を身にまとい、炎の国へ逃げていった。
逃げた蠢く者達は炎の国で増え、食物を食い散らす飛び交い蠢く霧となり、害を成すようになった。
それらは後に蝗と呼ばれた。
だが、炎の国逃れた蠢く者の一部はイグニシアの力を得て黄金をその身に纏う聖なる甲虫となった。
彼らは後にスカラベと呼ばれた。
次に神淵のハーヴェストが行き鎌でカーサログを刈ったが、寸断された身体は蠢く者となり、
死の国(冥府)へと逃げていった。
逃げた蠢く者達は死者の国で死者の魂と同化し、邪悪な怪物となった。
次に白月のアキシャルファルが行き、餅を捧げた。
カーサログは餅に食らいついたが、幾らでも伸びてその身に絡まり、ついぞは身動きが取れなくなった。
最後に眠らずのエヴァードーンが行き、じっくりと三日三晩カーサログを睨めつけた末に、心臓を打ち砕いた。
(エヴァードーンは既に死んだともされ、この章に登場しない場合がある。その場合は、アルジェルムが
止めを挿したとされる。死んだのはエヴァードーンのうちの一人であったとも、双子であったとも、瀕死の重症を
受けただけで死んではいなかったとも云われる。)
心臓を打ち砕かれたカーサログは動きを止め、死に絶えたが、その遺骸からも多くの蠢く物が生まれ、
世界中に散った。
余りにも多くの蠢くものが地表を這いまわったので、グラバリジェはそれらを天から啄む者を必要と考えた。
グラバリジェは雷雲を紡ぎ、空を覆う巨大な鳥(鷹)を生み出した。
この者こそが、空を統べるヴェルディアラである。
彼はその名の通り空を統べる者として龍すら容易く喰らう程であった。
グラバリジェはヴェルディアラに、空から地上を見張り、蠢く者を食らうよう命じた。
彼は多くの蠢く者を喰らい、そして風の精(ハーピー)たちと交わり数多くの鳥を産ませると、
彼らにも蠢く者を食らわせ、地上を見張らせた。
ラゼオンも地上に蠢く者や、暗き者を見張る者が必要と考え、アンダリアと交わり、白き者を産ませた。
その内の一人が、美しい半人半獣の馬(ケンタウロス)、白美の駿足・フィディウスである。
彼女は優れた目を持ち、風を操り地上で一番早く駆ける事ができた。
その目で蠢く者や暗き者をみつけると風とともに現れて戦った。
ランタイトは冥府に入り込もうとする蠢くものたちの数があまりにも多かった為に、困り果てていた。
蠢く者たちが纏う汚れた気配は死者の魂と似ていたので、すべてを選り分ける事が難しかったのである。
それを聞いたハーヴェストはグラバリジェの元へ遣いを送り、光の目を持ち、闇を見通せる者がいないかと尋ねた。
グラバリジェは天宮の庭に生えていた生命の樹の根を一本引き抜くと、ルアフを吹き込んだ。
すると木の根は蛇となり、その蛇は知恵と、死者と蠢く者を選り分ける目を備えていた。
グラバリジェは蛇に死者の門の守護を命じた。
ある日、蠢く者に導かれた死者たちが、死神の目を掻い潜り、冥府から抜けだした。
蠢く者は邪な知恵で彼らの目を欺き、地上世界に再び死者を氾濫させる事を企てていた。
だが、蛇は彼らが地表へと向かったのを見ていたので、後を追い、死者の国へと戻す手立てを思案していた。
彼はその時はまだ大きな力を持たず、死者たちを止める事ができなかったからである。
蛇は死者達の先回りをして一本の杖のようにその身を固めて彼らを待った。
杖の姿のまま巧みに死者たちに話しかけ、その身を取らせると、冥府の方へと彼らを誘導したので、
死神たちがその姿を見つける事が出来たのである。
無事に死者たちは冥府に戻り、捕まえた蠢く者を、死神たちはこの世から葬り去った。
グラバリジェはそれを聞いて蛇を褒め、空に浮かぶ蛇の星の力を彼に与えたので、
蛇は星仙と呼ばれる神の一人になった。
その蛇の名を、紡輪と言った。
神々はこのように様々な手を打って数多くの蠢く者達を打ち殺したが、それでも彼らが世界から消える事はなかった。
4 大暗黒神代を招いた悪神と戦う鳴神グラバリジェ、世界が二度目の滅びを迎えた事と、三度目の世界の創造
神々が蠢く者達と戦っていた頃、ニ番目の暗き者が産まれた。
それは四枚の翼を持つ黒き神で、その名をゲチャグラッドと云った。
ゲチャグラッドが善きものに触れると、全てそれは邪に染まった。
その様をみてラゼオンは「これぞ悪しき者である」と呼んだので、初めての悪神が産まれた。
ゲチャグラッドは全ての者を悪しき者に変え、人々の心に悪を植えつけたので、恨み、妬み、殺し、
犯し、盗む者が現れた。
ラゼオンは彼らを裁くために「罪」を創り、彼らを罰したがその口を以ってしても、全ての罪を裁ききれなかった。
それ程までに人々は悪心に魅入られていた。
そして瞬く間に青が黒く染まった。
悪が膨れ上がり、ついには天宮(グラバリジェの城)にまで到達した。
グラバリジェはついぞ怒り狂い、ゲチャグラッドに向かって神鳴って降臨(お)りた。
その力は絶大で、地表の山は割れ、岩や海までもが消し飛ぶ程の物であったが、それでも悪は尚も増え続けた。
グラバリジェは雷槍を以ってゲチャグラッドに躍りかかり、串刺しにした。
ゲチャグラッドは翼の一つを失ったが、尚も悪を撒き散らし、グラバリジェすらも悪に染めんと纏わり付き、苦しめた。
大地からは白美の駿馬フィディウスが悪を埋め尽くす白き者達を率いて参上し、空からは暗雲を切り裂きヴェルディアラが現れ、
それぞれゲチャグラッドに襲いかかった。
ゲチャグラッドは足を失い、さらに翼をもう一枚失ったが、傷口から血を噴出させ、彼らに向かって悪をまき散らし、
彼らを苦しめた。
そこへ世界の最果てからようやく駆けつけた、眠らずのエヴァードーンが大槌でゲチャグラッドを叩いた。
多くの悪達は目覚め善き事を思い出して戦列に加わり、ゲチャグラッドと戦った。
そしてランタイトに導かれ、地表に溢れた罪を狩るためにハーヴェストは鎌を古い、罪を刈り取った。
これで悪の多くが死に絶え、ゲチャグラッドは頭を失ったが、勢い良く吹き出した血からさらなる悪が生まれ、
天井をも覆い尽くし黒い雨を辺りに振らせた。
そこへ現れたイグニシアはゲチャグラッドの傷口を焼き、それ以上血が吹き出さぬように溶かして塞いでしまった。
次に水の女神ウォルパルサがグラバリジェに口付けをして大雨を振らせ、大地の悪の多くを地上から洗い流した。
地表の悪が洗い流された事で姿をみせたアンダリアが、ゲチャグラッドのもう一つの足を引きちぎった。
それでも尚ゲチャグラッドは悪を産み続けた。
その時、雲の隙間から聖なる銀の月光が降り注ぎ、ゲチャグラッドを焼いた。
彼らが見上げると、銀月のアルジェルムと、その背に乗った白月のアキシャルファルが現れた。
その身を虹色に輝かせたアルジェルムが翼でゲチャグラッドを八つ裂きにし、
アキシャルファルがゲチャグラッドの身体を拾い集めて杵で付いて粉々にしてしまった。
それでも尚、ゲチャグラッドは滅びる事はなく、悪を放ち続けた。
悪は滅び得ぬ事を悟ったワルアラは、海から飛び出すと大地を背中で叩いた。
地表はぐるりとひっくり返り、ゲチャグラッドは深い地の底へと閉じ込められた。
ゲチャグラッドとの戦いは人の生では何世代にも渡る程長く続いたので、地上からは多くの生き物たちが死に、
消え去っていた。
再び地上を栄えさせる為に広大なるアンダリアが一人の女神を産んだ。
その女神は豊穣の女神シナルナと呼ばれ、彼女はまずは神々と交わって子を成した後、
生き残った生き物たちの多くと交わり、子を成して産み、増やした。
アンダリアがシナルナを産んだ時、彼女はまだゲチャグラッドの悪にまだ小指が犯されていたので、
シナルナは悪をその身に継いでいた。
それ故に、彼女が産んだ全ての子も、悪をその身に宿していた。
それに気付いたグラバリジェは、再び最悪が起きる事の無い様、彼女が産んだ全ての子を雷で
焼き殺そうとしたが、シナルナは拒絶したので、犯して子を孕ませた。
その時産まれたのが鶏で、鶏は聖の時(朝)を呼ぶ力を持った。
それまでは光の時と闇の時は無秩序に訪れていたが、鶏が初めて朝と夜を別けた。
(シナルナと一番最初に交わったのがグラバリジェだったとも云われ、二人が交わった次の日の朝を、創世の朝とも呼ぶ。
最後に交わった神がグラバリジェであるとする事もある)
シナルナの産んだ子らが地上の多くを占めた為、彼女は最も多き者達の母とも呼ばれるようになった。
だが、その中から多くの悪しき者も産まれた為に、最も穢れた母とも呼ばれた。
5 世界で繁栄する子ら、黒の神々が生まれたこと、悪魔が生まれたこと…燃え尽つきた優しき神の事
シナルナの胎から多くの子が生まれ、地表を満たしていた頃、 一見は悪の脅威が消え去ったかのように
見えた地表であったが、ゲチャグラッドの死に際に放った悪意はあちこちに染み付き、そして着実に増殖していた。
その中でも一際大きな悪意があった。
それはやがて形を造り、神となった。
彼は滅ぼす者と呼ばれ、全ての善きものに混沌を与える黒の神々の長であった。
この邪悪の化身は、いつか迎える暗黒の時代の為に、光の差し込まない最も暗い場所でその力を密かに蓄えながら
邪な策略を企てていた。これが後に最悪の災いを地表に齎すこととなるのであった。
一方、水の女神ウォルパルサは北方の地で眠りについていた。
悪神との戦いにより一度黒く満たされた水は彼女の心も一度犯していたので、心を病んでいた為である。
ウォルパルサは眠りながら消えていった美しき水辺の者達を悼み涙を流すと、
水は次第に流れることを忘れ次第に動くことをやめ、全てが凍てついた。
その時こぼれ落ちた涙の一つから、女神が産まれた。
女神は冷氷のフェルクリスと呼ばれた。
フェルクリスはウォルパルサの病んだ心から産まれたので、その体は非常に冷たく、近づく者は全てが
凍てついた。なので彼女には誰も近寄る事が出来ず、彼女も誰かに近寄る事はなかった。
ある時、グラバリジェ(天帝や神様と表記される場合がある)が地表の様子を天宮から覗いていると、
小さな鼠が神殿に捧げられた供え物を盗み食いしている鼠を見つけた。
グラバリジェは罰を与えるために人の姿をとって地表に降り立ち鼠を脅しつけた。
すると鼠は、あなたの為に何でも盗んで見せます、と言って許しを請うた。
グラバリジェは鼠に炎と熔解のイグニシア(女神とされる場合があり、炎魔の女王と呼ばれる事がある)から
岩漿石を盗み出すことが出来たなら許そう、と言った。
鼠は命がいくつあっても足りませんが、命は惜しいのでそうさせて頂きます、といって頷いた。
イグニシアが住む火山はこの世界でも最も熱いとも云われ、生き物が容易く近づくことの出来る場所ではなかった。
しかし鼠は約束し、出発してからいつまでたってもイグニシアのいる火山へ向かおうとはせず、
あちこちの国へ行き大きな宝石を集めていた。
グラバリジェは再び鼠のもとに現れ、そんな物で誤魔化そうとしても無駄だ、と脅すと、鼠は首を横に振って弁明した。
これは決してその様な物ではなく、火山へ向かう前の準備でございます、そしてよろしければ北の凍てついた土地まで
私を送って下さい、と言ったので、グラバリジェはそのようにしてやった。
鼠は北の凍てつく地へゆくとフェルクリスの元を訪れて宝石を氷のように固めてしまった。
グラバリジェがそれをどうするのか、と尋ねると、鼠はようやくイグニシアの元へ連れて行くようにと言った。
鼠は火山にたどり着くと、その噴火口に近づき、大きな宝石を取り出して並べ、その中に見を紛らわせた。
やがてイグニシアは姿を表わすと、その大きな宝石に興味を持ち、拾い集めだした。
フェルクリスの力で氷結していた宝石のお陰で鼠は焼け死ぬ事なくいたが、それもすぐに溶け始めた。
そこで鼠はとび出すと、イグニシアの懐にあった岩漿石を盗み、逃げ出した。
鼠は身体が小さかったので、イグニシアはすぐに気が付かなかったので難を逃れていたが、
その身に宿す炎は鼠をしっかりと焼いていた。
鼠は死にものぐるいで火山から駆け去り、天に向かって岩漿石を差し出した。
グラバリジェは鼠を許し、空に浮かぶ鼠の星を彼に降ろしたので、彼は星仙と呼ばれる神の一人となった。
その鼠の名を、勢炎と言った。
ある時、龍が生まれた。
だがその龍は余りにも巨大であった為、空を飛ぶことができなかった。
空から落ちてきた龍をアンダリアが両手を広げて受け止めたので、大地の一部が砕け散って大穴があいた。
(後に龍とアンダリアがこの穴で交わり、ここで土龍達を産んだ。それ故にこの場所は龍鼓動と呼ばれる)
アンダリアはこの龍をわが子の様に乳房で育て、更に大きく育っていったが、気性が荒く、よく暴れたので
困り果てていた。
その巨体故に龍が暴れると生き物たちは逃げ惑い、地形が変動してしまうからであった。
アンダリアは最も知恵のある者の一人である神言のラゼオンに助言を求めた。
彼は言った。
龍に名を与えればそれはそのようになるであろう。
賢き名を与えれば賢き龍に。
鈍な名を与えれば愚かな龍に。
悪しき名を与えれば邪の龍に。
アンダリアは、ラゼオンに賢き名を付け、父となるように、と願っった。
ラゼオンは善し、と言うと龍に名を付けた。
ラゼオンは龍皇イン・ジャェアと龍に名づけ、アンダリアの母なる優しさと、ラゼオンの父なる厳格さ、
そして賢き知恵を持つ偉大な龍となった。
彼は人々を助け、悪しき者達を祓い、知恵を貸してやったので、多くの人々から慕われるように鳴った。
(そして後に大陸にまでなったのである)
ゲチャグラッドと神々との戦いの後、冥府にも多くゲチャグラッドの血が流れ込んでいたので、
それらは死者達と一つになって様々な怪物を生み出していた。
産まれた中でも一際、力を持った怪物が産まれた。
悪魔と呼ばれる者達だった。
悪神の邪な力とと人の隠す貪欲さを持った彼らは冥府のあちこちで増え、死者の国を脅かすだけでなく
地表に現れて人間達を貶め、悪を蔓延らせていた。
その中でも強い力を持ったのが邪神ソイクレプスであった。
彼は多くの人を誘惑し、堕落させた。
悪神との戦いの疲れから、多くの神は身体を休めていが、彼ら悪魔や悪神の遺物があっという間に
世界を満たして腐敗臭を放ち始めた。
ただ一人、アンダリアはそれらを受け入れ続けていたが、ついには尻の穴から「 」を排出した。
それはとても「 」だった。
排出された「 」から汚物の神ヌゥバが産まれ、アンダリアの代わりに汚物を受け入れ、
世界を浄化した。
しかしその全てを受け入れたヌゥバ自身がひどい悪臭を放ち、近づくものは蝕まれる程だったので
どうするべきか、と神々の中で話し合われた。
焼き付くべきかという意見が多く出たが、アンダリアはヌゥバを庇った。
だがヌゥバは世界の為にその身を焼きつくされる事を望み、アンダリアの愛に深く涙した。
そしてヌゥバは望んだ通りイグニシアの炎に包まれ、塵のひとつぶも残すこと無くこの世から消え去った。
彼の死んだ場所でアンダリアが泣いたので、涙で土が湿り、様々な生物が集まって大きく盛り上がった。
そこはヌゥバの墓とされ、それを後世の人々は古糞(こふん)と呼んだ。
6 記す者の誕生と世界の浄化
これまでの出来事は全て口伝であり、誰も記すという行為手段を持たなかった。
神の御代を人々に語り継ぐために、神話を記す者が必要であると神々は考えた。
ラゼオンは蛸が複数の足で餌を貪る様を見て、海にあった蛸の一匹に体を与え、記す者とした。
蛸は記し続けるゲフォーと呼ばれた。
ゲフォーは神からも人からも草や獣達からも聞いて、見て回り、全てをその手帳に記した。
汚染された地表はヌゥバにより浄化されたが、空には腐臭が残り、空をとぶ者達の身体を蝕んでいた。
ヴェルディアラは汚れた空に翼を黒く染められ飛ぶことも能わない鳥たちを見て哀れんだ。
彼は空をとぶ蠢く者達をみつけると、ついばんで吐き出した。
ヴェルディアラの胃で清められた空飛ぶ蠢く者達は空飛ぶ昆虫となり、汚物を食らって空を浄化した。
その中でも大きく、空飛ぶ昆虫達の王の名を風のファルテシモと呼んだ。
ファルテシモは空飛ぶ昆虫たちを増やし、鳥たちの倍の数を空に繁栄させ、空気を浄化したので、
空は元の青さを取り戻した。
人は地に満ちていたが、彼らは安住の場所を得ていなかった。
多くの者が放浪し、土地に定住している者達も家を建て、村を築く事しか出来なかったので
魔物や悪魔に抗えない者達が大半であった。
神々は、彼らを安住させ、守護する者が必要だと考えた。
そこでアンダリアは都市を司るイェルエルクを産んだ。
イェルエルクは城壁と城を築く術を人々に与え、魔物たちからその身を守る事を教えた。
神々は人々が神に頼らず生きることが出来るようにと考えた。
そこでラゼオンは発明神ラクタガを産み、知識と知恵を詰め込んだ。
ラクタガは様々な物を創り出し、その知恵を惜しみなく人々に与えた。
だがラゼオンはラクタガに心を入れ忘れていたので、彼には善き知識と知恵の区別がつかなかった。
その発明品は人々が生きるための道具や薬ともなったが、彼ら自身を傷つける武器をも生み出した。
こうして様々な知恵と発明を人々に与えた後、ラクタガは遂に己を解体し始め、粉々に自壊していった。
聖なる夜明けを呼ぶ鳥としてグラバリジェが産み(産ませた)聖なる声を与えた鶏のうち、
特に高い声で泣き、美しい井出達の1羽がいた。
その鶏は他の鶏たちの十倍(百年)生き、その間一日も休むこと無く神をたたえて啼き、
聖なる夜明けを呼び続けて死んだので、グラバリジェはこの1羽を祝福して鶏の星を降ろし、
星仙と呼ばれる神の一人とした。
この鶏の名を、呼金と言った。
7 銀河樹とそれを守護するもの、全てを断ち切る者、勇気の剣と海の悪神のこと
アンダリアが植えた木の中で、最も大きな木があった。
これが銀河樹と呼ばれる巨大樹で、その太さは山がひとつ二つは軽く入るほどであった。
銀河樹は地表外…雲より遥か高くにある星の宇宙に満ちる力(ダアク・マタと呼ばれる)を
吸収し取り込み、地表を霊の力で満たしていた。
この樹の周囲は力に満ちていた事から魔物が集まり、人間同士の間にも争いが続いたので、
守護する者が必要だと神々は考えた。
それには、利己の感情に流される事のない、高潔な魂の持ち主でなければならなかった。
そして産まれたのが銀の弓・エルファ=アリアで、聖なる月の光で鍛えられた弓を携えていた。
彼女は不浄なる銀砂を練って造られ、邪な気持ちを持たなかった。
エルファ=アリアは己の髪と血からエルファ族を生み出し、銀河樹を守護させたので、人や魔物は
そこに近づくことができなくなった。
神々は邪悪な者達が力をつけている事を感じていた。
いつかは神々の最終戦争が始まるであろう事を確信していたので、力あるものが必要であると考えた。
そこで炎と熔解のイグニシアに“断ち切るものと覆うもの”を創るよう頼んだ。
イグニシアは言われたように触れるだけで全てを切り裂く鋭い刃を持った刀と、それを覆う鞘を鍛え上げた。
そして最後に、ラゼオンがそれを「全てを断ち切る者、そしてそれを覆う者」と祝福したので、
それは真になり、神となった。
“断ち切るものと覆うもの”の刃も、その豪勢な鞘も美しかった。
その身を滅ぼすと知っても手を伸ばす者がいた程である。
“断ち切るものと覆うもの”は己の姿を知らずにいたがある夜、水面に映る己の姿を見て恋に落ちてしまった。
そして身を乗り出し、水鏡に口付けしたので、もう一人、瓜二つの神が産まれた。
断ち切るものは刀の神・カナタとなり覆うものは鞘の神カルハとなった。
(彼女らは二人の世界を望み、大陸を切り裂いて大きな島を創った。その島の名を那義島と呼んだ)
神々は、例え邪悪が世界を包んだとしても、揺らぐことのない、力より大きな物を生み出さなければならない、と考えた。
そこで、ラゼオンは『希望』という言葉を発した。
それは例え全てが闇に染まろうと、光が再び差し込み世界を照らす事を信じて疑わない、力を越えた
偉大な存在であった。
希望という言葉からは明日へのブレイブレードが産まれ、絶望を打ち砕く勇気の剣となった。
先の悪神との戦いが起きた時、ワルアラから剥がれた皮膚に、悪神の産みに流した血が混じり、
神が産まれた。
名を渦巻くグランアビスと言い、非常に気性が荒かった。
ワルアラから産まれたために海を守護したが、あまりに過剰であり、船を海底に沈め、陸地を生き物たちと
共に波で喰らい、海を広げていった。
8 海が頒たれた事と、黄金の大隊が造られた事
グランアビスが波で大地を飲み込み、地表を覆い多くの街や森も海に沈んだ。
広大なるアンダリアは嘆き、大海のワルアラに、海が大地を犯さぬように見はる者はいないかと言った。
ワルアラは頭を垂れ謝罪すると背を海原に打ち付けて深く沈んだ。
するとそこから泡が溢れ、ソルティエスが産まれた。
ソルティエスは海と陸地の領域を定め、グランアビスの飲んだ陸地を元に戻した。
だが、グランアビスは更に陸地を広げようとしたので、ソルティエスは銛を持って戦った。
なので、彼は猟師の神、そして船乗りたちの守護者として船乗りたちに崇められた。
その他に、彼は世界中の海を別けたので、海を生んだ海神ともされるようになった。
世界中に散った悪神の邪悪の中でも小さな者達が、人々の身体に入り込み、苦しめていた。
それを伏丙(ふくへい)と言った。(病の事)
伏丙は酷い時には街全体にはびこり、多くの人や動物を殺した。
死者がどっと増えて冥府に溢れかえったので、導きのランタイトは、白月のアキシャルファルに
なにか良い手立てはないかと相談した。
(死者の彼にとって、一番会い易かったのが優しき月光を持つアキシャルファルであった)
アキシャルファルは霊樹の粒を集めると、杵で突いて餅を作った。
臼からそれを取り出すと、それは人の型を取って、女神となった。
女神は名を安寧のロキソと言い、伏丙を喰らう者となった。
それ故に彼女は薬の神として崇められ、その肌に触れると百と二十の年を生きると云われ、
健康と長寿の象徴とされた。
ロキソが世界を歩きまわり伏丙を食らったので、多くの人が健康に生きることが出来るようになった。
だが、ロキソは湿地帯や熱帯を嫌ったので、それらの地域では病は度々繁栄する事がままあったという。
黒の神々の放つ邪悪な気配は更に膨らみ、それは世界の果てで見張っていたエヴァードーンの目にも
しっかりと見える程に色濃く姿を表してきていた。
空は赤黒く染まり、血が流れたように見えるほどだった。
神々は、黒の神々が攻めてきた時に、いち早く世界中に知らしめる者を必要だと考えた。
グラバリジェは多くの鳥や龍に雷の声と力を与え、警鐘のギルランディーナを生み出した。
天空の守護者として邪悪を空から見張った。
ある日、グラバリジェが天宮から旅人をを眺めていた。
その旅人は導き手の羊と共に旅をしていたが、荒野の只中にあって空腹と寒さで倒れた。
羊は己の羊毛を剥いで旅人に与え、火をおこしてその身を焼いた。
その旅人は羊の気持ちを察し、その肉を食べて衛気を養い、無事に旅路を終えることが出来た。
グラバリジェはその一部始終を見ていたので、羊を善き者として羊の星を降ろし、星仙という神の一人にした。
この羊の名を献活(シェンフォ)と言った。
9 音が奏でられた事、人が魔法を身につけた事、悪戯の神が生まれたこと
ある時、神々が宴を開いていた時、グラバリジェが、なにか物足りないと言い出した。
興を盛り上げる技を持つ者はいないだろうか、と言った。
ヴェルディアラは鳥たちの中で一番のさえずりを持つ鳴き鳥を呼び、ウォルパルサは流れるせせらぎの音を
流し、ソルティエスは岸辺の漣を、エヴァードーンは太鼓を叩き、アキシャルファルは童謡を歌い、
釣られてラゼオンが歌い始めた所でグラバリジェは止めた。
ラゼオンの歌声はまるで呪文の様で、心地が良くなかったからである。
しかし、そのラゼオンの放った呪はそこで神々が流した様々な音を含んで一人の女神となった。
女神の名を音界のファラソシと言い、音を司った。
彼女は世界中に音を振りまき、楽器を人々に造らせ、それを演奏し、音楽を広めた。
ラゼオンはある時、人々に、魔物からその身を守る力を与えなければならないと考えた。
彼は賢い梟を連れてくると、己の知りうる魔法の全てを教えた。
ラゼオンの言葉を受けた梟は知恵を司る神となり、英知のジーニアスと呼ばれた。
英知のジーニアスは賢き人々に魔法を教え、彼らにその身を守る術とさせた。
なので、魔法使い達から信仰を受ける魔法の神となった。
かつてロードメイが均衡を崩した時、グラバリジェが地表に落ちて開けた大穴に、ゲチャグラッドの
血が流れ込み、一人の神が産まれた。
名は無く(後にハイヨレナイコサンと呼ばれる)、神の眷属ではあるが、邪な性質を持っていた。
あちこちで悪戯を働き、人のみならず神にも悪さを働いたので、その度に仕置きを受けたが、
懲りずに何度も悪さをしたのでいつも一人ぼっちであった。
※注意事項
幾つかの設定は全体の物語・設定同士の関係の調和や、産まれた順番の都合上設定を無視・意図的曲解による
改変をした部分があります。
それと、他の設定に対し、強い影響力を持つ設定文の内容等も意図的に除外したり、
強引な解釈で取り入れさせて頂きました。ご了承下さい。