研究主任: ルイ・ガゼン
実験期間: CE 4958/8/19 - ?
内容: ワープホールの理論的な解明
報告書1
著者: ルイ・ガゼン
日時: 4958/8/19
概要
今日からこの研究を始める、ルイ・ガゼンだ。 コードネームはTP-01。 TPというのは、TelePortの略だ。 つまり、テレポートの研究である。 なぜ急に本部はそんな夢のようなことを言い出したのかというと、宇宙船で探索をしている途中、妙な物を見つけたらしい。 4958年8月16日、宇宙船の一つの座標が急に変わったというのだ。 その宇宙船と通信しても何の問題もなく、違和感も全くないらしい。 最初はモニターのバグかと思われたが、その後その宇宙船はモニターに表示された通りの方向から戻ってきた。 本部はこの事実を受け、それを「天然のワープホール」として扱うようにした。 そして私は研究主任に任命されたわけだ。 しかし、どうにも意欲が湧かない。 というのも...私はこの手の実験にいい思い出がないからだ。 まあ、大発見であることは間違いないだろうし、これを実用化できれば、私の名も歴史に刻まれるのだろうが。
実験1-1
方法
ワープホールへ無人宇宙船を1機送り込む。
結果
特定の地点でその宇宙船の信号が途絶え、その約20億km離れた地点で同じ宇宙船の信号が確認された。
当然の結果だ。 まあ、この実験はワープホールの位置を特定するためのものだったので、当然の結果じゃなきゃ困るのだが。 ワープホールが移動なんてしていたら研究ができないだろう。
実験1-2
方法
ワープホールへ有人宇宙船を1機送り込む。
結果
特定の地点でその宇宙船の信号が途絶え、その約20億km離れた同じ地点で同じ宇宙船の信号が確認された。 帰還した宇宙船に乗っていた人も意識を保っていた。
報告の通りだ。 しかし、乗っていた人には何も違和感がないというのが不思議なところだ。 某アニメのように、ワープしている間は周りの色が変わったり光ったりとかそういったこともないらしい。 移動する時のほんの少しの変化も無く、ただ座標が変わっているだけだという。
実験1-3
方法
ワープホールの出口へ有人宇宙船を1機送り込む。
結果
出口とされる地点でその宇宙船の信号が途絶え、その約20億km離れた入口とされる地点で同じ宇宙船の信号が確認された。 帰還した宇宙船に乗っていた人も意識を保っていた。
このワープホールは可逆性を持っているようだ。 実用化の可能性が湧いてくる。 私も少し興味を持ってきた。
実験1-4
方法
ワープホールへ空間水平器を搭載した有人宇宙船を1機送り込む。
結果
入口でその宇宙船の信号が途絶え、出口で同じ宇宙船の信号が確認された。 帰還した宇宙船に乗っていた人も意識を保っていた。 入口に近づくほど、空間水平器には大きな傾きが記録され、その傾きが無限大になった瞬間に出口に出た。 出口に出た後は大した変化はない。
予想通りだ。このワープホールは単純な空間の歪みによるものだろう。 より高次元空間上で繋がっているのかもしれない。 しかし、この歪みをどうやって再現するかが問題だ。
結論
「ワープホールは、空間の歪みによるものだった」 ざっくりとしているが、まあこんなものでいいだろう。 明日は空間水平器の設計図を探そうと思う。 それを見れば、空間の歪みを検出する技術がわかる。 そして、読むことができれば書くこともできるように、こちら側で空間を歪めることも可能だろう。 とりあえず空間を歪めることでワープホールを作ることが可能であることが分かっただけでもよかった。 まああまり研究の予定は立てていないが、なんとかなるだろう。これまでもそうだった。 今日は脳が活性化して眠れなさそうだ。
報告書2
著者: ルイ・ガゼン
日時: 4958/8/21
空間水平器の設計図のアクセス権限を得たので、構造について徹夜で調べた。 それによると、内部の特殊なジャイロセンサーが特定の方向に傾くまでのわずかな時間を便りに傾きを予測していた。 重力子はより高次元にも低次元にも自由に行き来が可能な閉じている粒子なので(細かいことはここでは避けるが)、 歪んだ平面(2次元空間)である地球で気圧や水圧の強さが場所によって違うように、 その重力の強さでより高次元から見た空間の歪みを検知するらしい。(オルト・アトロスフォニモ博士より) ということは、逆に重力を質量の操作以外の方法で操れば空間の歪みを作ることができるのではないか?
仮説2-1
重力を質量の操作以外の方法で操れば空間の歪みを作ることができる。
根拠
重力の強さで空間の歪みがわかる。
この仮説の根拠ははっきり言って無いに等しい。 だってテレポートしろって言われたってどっから手をつければいいのかわかんない。
徹夜したので今日は休みます
報告書3
著者: ルイ・ガゼン
日時: 4958/8/26
前の報告書はよく通ったな。 まず、前に書くのを忘れていたことだ。 ワープホールは時空がどのような歪みかたをして出来ているものなのか。 これについて文章で示すことは難しいが、一応仮説の説明をしておく。 一旦この3次元空間を2次元空間で表すと、 平面に穴が開いていて、もう一つの穴と3次元空間上でパイプのように繋がっている、というイメージだ。 それを3次元空間に置き換えている。 つまり、二つ空間に穴を開け、その穴を4次元空間上で繋げればワープホールをつくれるにちがいない。 穴と言っても、落とし穴のようなものではなく、黒い玉のようなものだが。 しかし、この仮説が正しいとすれば、地球上にワープホールを作ることは不可能となる。 なぜなら、地球は常に自転と公転を繰り返しているからだ。 もしワープホールの位置を変えることができないのであれば、事故で地球の一部がワープしてしまう恐れもある。 しかし、これを解決する方法を一つ思いついた。
仮説3-1
ワープホールは破壊できる。
根拠
作ることができれば、壊すこともできる。 実際、時空の歪みを直すことは、時空を歪めること自体と操作に関しては大差ないだろう。
これができれば、ワープホールの移動はできなくとも、ワープホールを出現させる装置の移動は可能であろう。 ただ、それでも地球上にワープホールを置くことは危険だ。 使用範囲は宇宙空間か、公自転速度がゼロに近い天体の付近に限られるだろう。