【大女王】モリアン【1】
「あのお方は、いつも戦場ばかり見ていらっしゃるの」 モリアンは切なげに夜空を見上げた。意中の人は自分に振り向いてはくれない。自身の美しさには多少自信があるが、それだけではだめなのだ。 |
【大女王】モリアン【2】
「戦場からお戻りになった時に、安らげる場所を作りましょう」 愛しい人が疲れた体を休めるための家を用意しよう、とモリアンは考えた。モリアンには財も権力もある。愛する男にふさわしい場所を用意するため、豪邸から小さな一軒家まで、さまざまな家を探した。 |
【大女王】モリアン【3】
「違う……。私があの方に与えたい安らぎは、もっと……」 さまざまな家を見て回ったが、どの家も、彼女の求める理想の家とは異なるものだった。一体何が違うのか、なかなか答えが出ないまま、モリアンは考え続ける。気の遠くなるような時間の後、ついにモリアンは答えを見いだした。 |
【大女王】モリアン【4】
「私自身のぬくもりで、包んでさしあげます」 誰かが用意したものではなく、自らの温もりで男に安らぎを与えるべきなのだとモリアンは気づいた。自慢の美しい羽根を集めて作る愛の巣を、彼は気に入ってくれるだろうか。妖艶な女は己の身を削りながら、いつか来る、彼を迎える日へと思いを募らせる。 |