【復活祭】ガブリエル【1】
「王よ、まずは長いお役目を果たされたことに感謝いたします」 夜中、目を覚ました王の前にはまばゆいばかりの光が輝いていた。目もくらむような光の中にあったのは、三対六枚の翼を持つ優美な天使の姿だった。 |
【復活祭】ガブリエル【2】
「あなたは、この国を守るという役目を立派に遂げました。今、その重荷から解放される時が来たのです」 この天使がガブリエルだということを、王は知っていた。自分が即位する時にも、ガブリエルは同じように現れたのだ。その時と全く同じ優美な姿に王は見とれたが、すぐに言葉の内容に気付き、焦りを感じた。 |
【復活祭】ガブリエル【3】
「それはさぞや心配でしょう、しかし神はもたらされたのです、若い芽が地上に顔を出すその時を」 ガブリエルは王に退位を迫る。確かに王子はいるが、まだ若く未熟だ。今しばらく、自分が国を治めたほうが良いのではないか? 戸惑う王にガブリエルは答えた。 |
【復活祭】ガブリエル【4】
「案ずることはありません、神のみこころのままに」 言葉に従い、王は玉座を退いた。未熟で青臭く見えた王子だったが、王の座についてより数日もすると見違えるような責任感を発揮し、王にふさわしい顔を見せはじめた。やはりガブリエルの言葉は神の代弁であり、絶対的に正しいものなのだ。 |