【赤蛇】サマエル【1】
「あの翼なきものたちが、一体何だというのか」 神が泥より創り出した人間。そんなものに楽園と愛を与える神の心を、サマエルは理解できなかった。自分ははるか昔から神に仕え、人間とは比べものにならない能力も持っている。それなのに、人間たちが自分より寵愛を受けている事実は耐えがたいものだった。 |
【赤蛇】サマエル【2】
「この果実を食べるがいい。そうすれば神のように賢くなれる」 我慢の限界が訪れたサマエルは、蛇に姿を変え、人間をそそのかし禁断の果実を食べさせた。人間たちは知恵を手に入れたが、その罪により楽園から追放された。サマエルの策は功を奏したかにみえた。 |
【赤蛇】サマエル【3】
「なぜ私がこのような目に!」 やがてサマエルも人間を誘惑した罪を問われ、天使の座を追われた。禁断の実を食べたのは人間なのに、自分まで追われるということに、サマエルは納得がいかなかった。地上に落とされたサマエルの怒りは、雷を呼び、天を焦がした。 |
【赤蛇】サマエル【4】
「お前たちに知恵を授けたのは誰だと思っている! なぜ私を敬わないのだ!」 時がたち、人間たちは追放された先である地上に、知恵の都を築いていた。その繁栄を見るたびにサマエルは嫉妬する。嵐を呼び、大地を揺るがす。地上にもたらされる災害は、神の御許から追われしものの怒りなのだ。 |