シャダイ【1】
「月の光よ、魂たちの道しるべとなれ」 冥界を逃げ出し、さまよっていた男の魂は、ある時、不思議な場所に出た。暗い森の中にあって一筋の月光が漏れる場所だ。冥界から脱出できたのだと気づき、男の魂はわき立った。 |
シャダイ【2】
「我が姿は、生あるものには不可視なり」 森の中に漏れる月光の下には、多くの魂が集っていた。ここは現世と冥界の境があいまいになっている場所のようだ。彼らの見つめる月光の中に、美しい女神の姿があった。 |
シャダイ【3】
「魂たちよ、ふさわしき場所にゆくがよい」 女神のあまりの神々しさに、男の魂は地上によみがえることを期待した。その女神は、あらゆる願いをかなえ、死者にさえ生命を与えてくれる至上の存在であるかのように見えたのである。 |
シャダイ【4】
「汝の新しき器、それが生まれる時を待つのだ」 男の魂はいつの間にか冥界へ戻っていた。あの女神は、悪意とは無縁の存在に感じられた。ならば、彼女はそれぞれの魂にふさわしい場所へと導いてくれただけなのだろう。男の魂はさまようことをやめた。彼女の言葉を信じ、いつの日か生まれ変われることを夢見て。 |