ゼルエル【1】
「む、また転属願いは聞き入れてもらえなかったのか」 天界の守備隊長ゼルエルは、渡された辞令を見て失望の表情を浮かべた。天界の門を守るこの役目は確かに要職である。だが好戦的なゼルエルの気性にはあっていなかった。 |
ゼルエル【2】
「こうなれば、敵が攻めてきてくれることに期待するしかないな」 守備隊長がいうべき冗談ではないが、冗談ですらないことを部下たちは知っている。ゼルエル隊長は本気でそう思っているのだ。敵の大軍と戦いたくて仕方がないのだ。 |
ゼルエル【3】
「言っておくが、私は戦争そのものが好きなのではないぞ。早い平和の訪れを願うから前線に出たいのだ」 ゼルエルの理屈はこうだ。先んじて自分が打って出ることで、悪魔たちを早期に打ちのめす。早急に戦いは終わり、平和が訪れる。それに何の問題があるのだと。 |
ゼルエル【4】
「私がつぶやいていることは、それとなく上に伝えておけよ、早く転属願いを受理してもらわねばならん」 部下たちは言葉通り上に報告している。だからこそ転属願いが受理されないのだ。前線に出したら、むやみに突進して戦線を拡大させるに決まっている。彼女には当面、守備隊長を続けてもらうしかなかった。 |