創造主【1】
「はじめよう」 どこから現れたのか、空に漆黒の羽毛が無数に舞う。ひらひらと舞っていた羽毛は、突如意思を持ったかのように一点へ集まり巨大な球体を作り出す。次の瞬間、球体と化していた羽毛が弾け飛び、神々しい光が辺りを照らし出す。やがて光は収束し人の形を成し、現れたのは創造主と従者と思われる女神だった。 |
創造主【2】
「アンドレーエ。わかっているね?」 アンドレーエと呼ばれた女神は静かに祈りを捧げる。創造主が右手を天へと掲げると、頭上に小さな魔方陣が現れる。創造主は迷うことなく魔方陣に右手を入れ、引いた手には漆黒の球体を掴んでいた。漆黒の球体の周りには黒とも紫と言えぬ禍々しい靄が漂っていた。 |
創造主【3】
「やはり、この世界は限界のようだね」 創造主は漆黒の球体を口元まで近づけると、何かを語りかけた後、そっと口付けを行う。漆黒の球体を漂う靄は消え、球体自体も漆黒から灰へ、灰から白へと、その色を変化させた。やがて世界に静寂が広がる。それは最初から音という概念がなかったかのように何も聞こえなくなる。 |
創造主【4】
「この世界は、もう一度、生まれ変わる必要があるな」 創造主は手にした球体を両手で包み込むように抱く。抱かれていた球体は砕け、光の粒となり跡形もなく消滅する。球体の消滅と同時に大地や植物、生きとし生けるものすべてを溶かすように光の粒が生まれ消し去っていく。幻想世界の崩壊がはじまったのだった。 |