神農大帝【1】
「悟りとはなにか、それは平常心の向こうにあるものだろう」 山奥の宮殿に、古き神が一人で暮らしていた。古き神は、世をとうに捨てていた。今の興味は、自分の中にある知の探究のみだ。 |
神農大帝【2】
「では平常心を得るために修行をすればよいのか」 古き神は、最初はそう考えた。だが、そんな修行をすること自体がすでに平常心からはかけ離れている事に気付く。この答えは間違っていたようだ。間違っていることに気が付くと、古き神はなぜかうれしそうに笑った。 |
神農大帝【3】
「平常心を得なければ悟りは得られない、だが平常心を目指すことは真の平常心から外れることだ」 うむむ、と古き神はうなり、それからうなり続けた。難問にぶつかることが古き神にとって、今の生きがいだった。 |
神農大帝【4】
「道とは知る事に属さない、つまり調べても考えても無駄ということだ」 そう理解した古き神だが、まだ考えることをやめなかった。考えなければ答えは得られないし、考えても得られない。そういった課題を何億、何兆と抱えて生きる。それこそが古き神の楽しみであり、幸せなのだ。 |