香音天【1】
「……あそこに見える城は幻か。それとも……」 砂漠の中に浮かび上がる蜃気楼の城。香音天は、その蜃気楼の中に城を構え、迷い込んできた旅人を気まぐれにもてなすという。 |
香音天【2】
「ようこそ妾の城へ。まずはその臭い着物を洗いなされ」 肉を口にせず、香りを食べて生きる香音天は鼻がきく。時には千里離れた場所にある桃の香りさえ嗅ぎつけてしまう。 |
香音天【3】
「不埒な真似をするならば、その舌を抜いて鳥に食わせるぞえ」 言い方は軽いが、香音天の言葉には真実が籠もっている。旅人は恐れおののき、腰の剣をそっと差し出した。 |
香音天【4】
「くくく、龍を見るのは初めてかえ?」 香音天が呪を唱えると、空に巨大な龍が現れる。それは幻か、それとも真実か。試そうとした者は、これまでひとりもいない。 |