フルフル【1】
「ウオオオォォォンン!!!」 どこからともなく、獣が呻くような声が聞こえる。月夜に照らされた切り立った崖の上に、その声の主の姿はあった。大きな翼を供えた牡鹿……伝説の悪魔の姿だ。 |
フルフル【2】
「フオオオォォォンン!!!」 崖の上に立った牡鹿が再び大きな呻き声を上げると、周囲の空気がひんやりと冷たくなる。牡鹿の尾にまといし炎は不気味に蒼白く変化し、なお一層燃え上がる。 |
フルフル【3】
「グオオオォォォンン!!!」 その声に共鳴するかのように、空に浮かび上がったか細い月が紅く染まっていく。同時に、崖の上に立った牡鹿の身体を取り囲む炎も色を替え、激しく燃えさかる。 |
フルフル【4】
「はあぁぁ……。この時を…我は……待っていたのだ……」 やがて牡鹿は二足歩行の魔物へと姿を変え、そう呟いた……。地上の誰か、愚かな人間が……彼の力を嘱望したのであろう。 |