シナリオ集

Last-modified: 2013-08-08 (木) 15:13:40

H25年8月13日THPEBN WS シナリオ

あなたは蘭田舞寿クリニックに勤務する入局6年目の薬剤師です。

夏休みでハワイに移住した伯父のところに遊びに行ってきました。
そこで、叔母から相談されたことがあり、どうしたらよいかと悩んでいます。

相談の内容は・・・

伯父はとても朗らかな性格なのですがハワイに移住して食事が美味しいらしく、かなり
体重が増え、最近はハワイ在住の日系の人を集めて「100kgクラブ」を設立。
「100kgクラブ」とは大きな身体で楽しく美味しく過ごす仲間達の集まりだそうです。
ところが、メディカルチェックで糖尿病が見つかったとのこと。
叔母は徹底的な食事制限と運動でダイエットするよう進めますが、伯父は食事制限のストレスが身体に悪いと言って、叔母の忠告などクソ食らえとばかり毎日「100kgクラブ」の仲間達と楽しく、美味しくアメリカンサイズの食事を食べ歩きの毎日でどうしたらよいかと。

叔母は、薬剤師のあなたから言われれば、きっとダイエットしてくれると言いますが、
明るく朗らかで大好きな伯父がストレスでしょんぼりする姿を想像すると、あまり強くは言えず、でも長生きはして欲しいし・・・

とりあえず日本に帰ったら勤務先の先生に聞いて、よい方法を連絡すると言い残して帰国しました。

休暇明けで出勤したあなたは、診療を終わった江尾傳守先生をつかまえて、相談しました。

薬剤師 「先生、実は私の伯父がハワイに住んでいて、最近糖尿病と診断されたんです。
私は糖尿病には運動と食事制限が第一だと今まで勉強してきましたが、なにより
食べることが好きな伯父で、食事制限はストレスだといって耳を貸しません。
何か良い方法はないでしょうか?」
江尾先生「確かに運動と食事制限は糖尿病治療の基本だよね。だけど、伯父さん本人がそのことを理解しないと治療は難しいと思うよ。まずはメディカルチェックをした病院にカウンセリングで通ってみたらどうかな。」
薬剤師 「伯父の検査値をコピーしてきたのですが、食事制限はどうしたらよいですか」
江尾先生「まあ、最近ちょっとおもしろい文献を見つけたから読んでみてよ。伯父さんと同じような体型の人の研究でね、参考になるかどうかはわからないけど。英文献だけど、いい機会だからチャレンジしてみたら!」

江尾先生は早速に医局の山積みの資料の中から文献を見つけて持ってきました。

薬剤師 「この前、講習会に行ったこと江尾先生にバレてる(汗)。読み方は聞いてきたけど・・・ホントに読めるかな」 

伯父さんのデータ
年齢:62歳 身長:175cm 体重:110kg(BMI:35.9)
血圧:130/80 腹囲:120cm
血液検査:
HbA1c  7.8
HDL  45
LDL  128
中性脂肪  162
AST   26
ALT   23
クレチニン  0.78 
家族歴:父 91歳 健在  母 87歳 健在(IGT)

H24年6月10日 第4回Student CASP

ある日の夕ご飯の時、あなたのお母さんが健康診断で、採血結果の異常を指摘されたと話しかけてきた。

お母さん:この前の健康診断で「悪玉コレステロールが高い」って、言われたんよ。
あなた:あかんやんが!おかん、だいたい食べ過ぎやねん。
お母さん:あんた何いうてんの。誰が残したご飯を食べてきたと思ってんの!そんなことよりも、あんたちょっとこれ見てよ。

お母さんは健診の結果をあなたに見せた。
項目は少なく、身長と体重、GOT、GPTなどの肝機能と、LDLコレステロールぐらいしか測定されていなかった。その中で、LDLコレステロールは150mg/dlと正常よりも高いが、他の数値は問題が無いようである。
お母さんは、53歳で身長158cm、体重55kg。昔から体型はかわらず、ついぞ病気をしたことがない。パートで働き、友人と旅行によく行く元気なおばちゃんである。

あなた:悪玉コレステロールが高いんやから、コレステロール下げる薬もらったらええがな。
お母さん:あんた、簡単に言うけどな。病院にいって病気でも見つかったらどうすんの!
だいたい、医者通いにどれだけかかるか分かってんの!?薬もタダと違うんやで!そもそも私は薬を飲まんかて、元気なんや!

あなたは(なんで怒られなあかんねん)(じゃあいったい何の相談がしたいんや!?)(薬飲まんと駄目に決まってるやろ!)などと、すごく思った。しかし、ここでEBMの基本を思い出した。
「・・・わかった、ちょっと調べてみるわ。」
あなたはPICOを立てて論文検索を行い、一本の文献を探り当てた。

後日・・・
あなたは卒業後し、とある病院に就職した。
ある日女性の患者さんと話していたら、
「私いつもコレステロールが高いって言われるんですけど、大丈夫でしょうか?」
と質問された。その患者さんは、50歳ぐらいでどこか母親に似ている。外来には糖尿病と高血圧の内服治療で数年来通院している方であった。
あなたは慎重に言葉を選びながら説明を始めた。あの日の母親からの相談を、なぜか想い出していた。

問題)
どういう説明をしますか?

H24年4月22日 第1回摂南大学薬学部CASP シナリオ

貴方は病院剤師です。
82歳の女性Aさんが腰椎圧迫骨折で入院してきました。
入院当初からAさんの血圧は収縮期血圧160代 拡張期血圧90代と高値だったので主治医は高血圧治療薬を処方しました。
しかしある日、病棟ナースから「Aさんの床頭台の引き出しから、飲んでるはずの血圧の薬がでてきたのよ。先生、ちゃんと服薬指導してくれないかなぁ」と言われました。
確かに処方時に血圧の薬だと説明に行ったのに、なんで飲んでないんだろう?と不思議に思ってAさんの病室を訪ねました。
私 「Aさん、痛みはどうですか?」
Aさん「ありがとう。痛みはだいぶましです」
私 「ところで、お薬飲めてないって聞いたんだけど」
Aさん「血圧の薬でしょ?今までも血圧が高いから飲んだ方がいいって言われてたんだけど、一度飲み始めるずーっと飲まないといけなくなるって聞いたことあるし、別に症状もないから。。。」
私 「でも血圧は下げておいた方がいいよ」
Aさん「薬剤師の先生には悪いけど、私、薬嫌いだし。薬は出来るだけ飲まない方がいいんじゃないの?それに、私も年だし、先短いんだよ」と苦笑いをされました。
Aさんの気持ちを尊重して主治医に薬の処方を止めてもらうべきか、あるいはAさんを説得して薬を飲んでもらうべきか私は判断に困りました。
そこで高齢者に対する高血圧治療について検索をしたところそれらしい論文が見つかり読んでみることにしました。


論文 HYVET study

H24年3月25日 第一回同志社女子大学 Student CASP

あなたは、とある病院の医師 or 薬剤師である。
病院の玄関で、顔なじみの糖尿病の患者のAさんから声をかけられた。
「あ、先生!ご無沙汰しています!」
よく立ち話につきあう患者さんなので、話が弾んだ。

Aさんは、70歳で身長150cmぐらいの小柄なおばあちゃんである。スリムな体型で、糖尿病はHbA1c 7.5%前後ぐらいで推移している。
入院歴はないが、夫も糖尿病でよく入院しており、いつも付添をしているAさんとは病棟でよく会った。

立ち話の種も尽きたころ、ふと尋ねられた。
「先生、そういえば血圧が心配なんですよ。」
「あれ?Aさんって・・血圧は高かったっけ?」
「いや~、いつも140/80 mmHgぐらいです。でも、この前に夫の血圧が上がったんですよ。心配になっちゃって。」
「ふーむ・・・」
あなたは、140/80であれば一応問題は無いこと、でも糖尿病では血圧はなるべく下げたほうが良い事を説明して、その日はAさんと別れて帰宅した。

後日、Aさんはふらつきのために救急外来を受診していた。Aさんは小脳梗塞と診断されて入院となった。

あなたはAさんに説明したことが正しかったのか、心配になった。
以前にワークショップで習ったことを思い出して論文を検索し、一本の論文をみつけ読んでみることにした。

Effects of Intensive Blood-Pressure Control in Type 2 Diabetes Mellitus
The ACCORD Study Group
N Engl J Med 2010;362:1575-85.

H24年3月17日 京都府立医大図書館 CASP WS

あなたは医学図書館の図書館司書Xである。
 ある日、臨床医Aさんが図書館にやってきた。Aさんは、患者さんを毎日診察する中で、毎日疑問が生じている。しかし情報を検索したり吟味したりする時間はなく、疑問の大部分は解決されないままであると訴えた。どちらの治療法がより効果的かという治療上の疑問や、なぜこの薬はこんなによく効いたのか、などの薬に関する疑問、
また、それらが複雑にからみあったものなどもあるとのことだった。
 あなたは図書館員がAさんのサポートをできるのではと考えた。しかし、本当に図書館員は臨床医の疑問を解決できるのだろうか。


A randomized effectiveness trial of a clinical informatics consult service:
impact on evidence-based decision-making and knowledge implementation.

Mulvaney SA, Bickman L, Giuse NB, Lambert EW, Sathe NA, Jerome RN.

Journal of the American Medical Informatics Association : JAMIA.
2008 Mar-Apr;15(2):203-11.

H23年11月13日 第3回神戸薬科大学 Student CASP WS

あなたは、とある病院の研修医or若手薬剤師である。
日頃から、糖尿病管理に興味をもっており、時々外来ものぞかせてもらっている。

ある日の外来に、3年前から通院しているAさんがやってきた。
Aさんは70歳の男性で身長155cm、体重70kg。他の疾患は無い。体重はこの1年で約7kg増加して、毎度の外来で主治医に怒られては 「いやはや、気を付けます。」 と苦笑いしている。しかし、一向に体重が減る気配はない。近頃になり、階段を登ると何秒か胸が痛むことがある、と時々訴えるようになった。負荷心電図や冠動脈CTも施行されたが、問題はなかった。
HbA1cは、3年前は6.5前後ぐらいで、内服治療だけであった。しかし、体重が増えだしてから血糖コントロールが悪くインスリンを導入、徐々に増量され、現在はインスリン中間型を14単位、速効型を16単位使用してHbA1c は7.5前後である。血糖値は130~180mg/dlぐらいのことが多かった。

さてその日、AさんのHbA1cは8.0で、いつもよりさらに高値であった。血糖値は160mg/dl。
担当医はいろいろ問診したが、特に原因がない。主治医は、速効型と中間型両方のインスリン量をふやして帰宅させた。
あなたは、主治医に尋ねた。
「先生、インスリンが随分多いように思うのですけど・・・大丈夫なんですか?」
「え?大丈夫って、なにが?Aさんは血糖値が高いんだし、必要なことでしょ?低血糖なら起こさないと思うよ。」
「はあ・・そうですか。」

その日の夜、Aさんは胸痛のために救急搬送されてきた。急性心筋梗塞を発症しており、循環器科で緊急カテーテル治療が行われ、一命をとりとめた。

帰宅後インターネットで糖尿病の強化療法について調べると、血管イベントの抑制が話題であることがわかってきた。あなたは学生の時に習った論文の検索と吟味方法を思いだし、Pubmed検索を行い、一番新しいシステマティックレビューを手に入れて読み始めた。
Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death, and microvascular events in type 2 diabetes: meta-analysis of randomised controlled trials
Rémy Boussageon et al
BMJ 2011;343:d4169 doi: 10.1136/bmj.d4169

H23年6月26日 第2回 神戸薬科大学 Student CASP WS

薬学生シナリオ
あなたはP保険薬局の薬剤師です。
いつも薬局に来られているBさんが、85才の奥様Aさんの処方箋を持ってこられました。
処方内容は
フレカイニド50mg 2錠 朝夕食後
アムロジピン2.5mg 1錠 朝食後
ダビガトラン75mg 4Cap 朝夕食後14日
お薬手帳には、前回処方としてワーファリン1mg 3.5錠を服用の記載がありました。どうやら今回ワーファリンがダビガトランに変更になったようです。

ところが普段から頑固なBさんはあまり奥様のことを話したがりません。
「他に飲んでいる薬はないよ。検査とかは女房の事やし、わしはわからんよ。」

あなたは、ワーファリンという薬からダビガトランに変更になったこと、その保管方法、一般的な副作用、あざができたり、黒い便がでたら連絡ください、と言うしかありませんでした。

その7日後。Aさんご自身から薬局へ電話がありました。

「電話で申し訳有りません。相談させてください。新しいお薬に変わってから、とても胃が重く感じるんです。食べ物もあまり頂きたくなくて・・・。それと軽い下痢にもなっているのですが、薬は続けていて問題ないのでしょうか?」

あなたは、胃の感じが軽微なら服用を続けるように、そして次回、医師に必ずその事を伝えるように言いました。

電話をきってから、あなたはAさんをすぐに受診させなくてよかったのだろうか、と不安に思いました。
そういえばダビガトランの勉強会で資料と論文ををもらったな・・と思い出し、論文を読んでみることにしました。


医学生シナリオ
あなたはP保険病院の研修医です。
いつも病院に来られているBさんに病院で出会って、話しかけられました。
Bさんと話しているうちに、85才の奥様Aさんの処方の話になり、
「あんた、女房の薬さ、ちょっと見てくれよ。」
と、Bさんがお薬手帳を開いて見せてきたので、あなたも示された部分をみました。

処方内容は
フレカイニド50mg 2錠 朝夕食後
アムロジピン2.5mg 1錠 朝食後
ダビガトラン75mg 4Cap 朝夕食後14日

お薬手帳には、前回処方としてワーファリン1mg 3.5錠を服用の記載がありました。どうやら今回ワーファリンがダビガトランに変更になったようです。

あなたは、お薬が変わったことについてBさんに少し質問をしてみました。
ところが普段から頑固なBさんは、それ以上奥様のことを話したがりません。
「他に飲んでいる薬はないよ。検査とか、女房の事やし、わしはわからんよ。」

あなたは、ワーファリンという薬からダビガトランに変更になったこと、その保管方法、一般的な副作用、あざができたり黒い便がでたら連絡ください、と言うしかありませんでした。

その7日後。あなたの当直中にAさんご自身から病院へ電話がありました。
「電話で申し訳有りません。相談させてください。新しいお薬に変わってから、とても胃が重く感じるんです。食べ物があまりいただきたくなくて・・・。それと軽い下痢にもなっているのですが、薬は続けていて問題ないのでしょうか?」
あなたは、胃の感じが軽微なら服用を続けるように、そして次回、主治医に必ずその事を伝えるように言いました。

電話をきってから、あなたはAさんをすぐに受診させなくてよかったのだろうか、と不安に思いました。そういえばダビガトランの勉強会で資料と論文ををもらったな・・と思い出し、論文を読んでみることにしました。



Dabigatran versus Warfarin in Patients with Atrial Fibrillation 
Stuart J. Connolly, et al. N Engl J Med. september 17, 2009 vol. 361 no. 12

H23年4月24日 第2回OHPワークショップ シナリオ

あなたは薬剤師Pです。
Aさんは62歳男性で、10年ほど前から糖尿病で、ブホルミン塩酸塩による治療が開始されました。
前回来院時は、「ピタバスタチンカルシウム1mg 1T 夕食後、ブホルミン塩酸塩3T 毎食後、ナテグリニド毎食直前(90mg 90mg 30mg)」、が処方されていました。
その日に受けた検査では、ECG で盆状ST低下、頸動脈エコーにてIMT肥厚があり、これらの精査目的で、病院でCTを受けた所、虚血性心疾患と診断され、PCIを受ける予定になっていました。
ある日、webで「オメプラゾンとクロピドグレルの相互作用」に関する記事に目が止まり、
「そういえば、添付文書も併用注意だし、ちょうど・・・次回AさんがPCIを受けるとおっしゃっていた・・・」と思い出し、記事の引用にあったCOGENT 試験を読んでみることにしました。
それから、しばらくして、Aさんが診療所に来られました。
今回からクロピドグレル75mg1Tとアスピリン100mg 1T オメプラゾール10mg1T 、ジルチアゼム塩酸塩徐放カプセル100mg1T、バルサルタン80mg1T が朝食後に追加になっています。
Aさんによると、病院の主治医から、「冠動脈にステントを2本いれた」、と説明を受けています。
私は、先日調べた「オメプラゾンとクロピドグレルの相互作用」が気になり、カルテを見にいくと、
「LAD #6-7に少量のプラークと石灰化を伴う高度の狭窄あり」、となっています。
そこで、念のためにCOGENT試験を処方医に伝え、指示を再確認してから、調剤することにしました。

H23年5/7 第1回のぶのぶEBM シナリオ

あなたの患者に、BMI 35の病的肥満の人がいる。
年齢は67歳の女性で、昔から肥満であるが、抗うつ薬を使用してからさらに肥満の傾向がみられる。
しかし、最近になって原因不明の腹膜炎や、嘔吐を繰り返すようになっており、現在消化管の精査が始まったところである。
さて、その患者さんにダイエットについて質問をされた。
「食事は減らしているつもりなんですが、痩せないんです。
先生、どうやったら痩せるのでしょうか?」
たしかに、痩せ方の勉強をしたことはない。
あなたは、論文を検索し、まず一本のRCTを手に入れた。

H22年12月5日 第1回 神戸薬科大学 Studnet CASP WS

~薬剤師シナリオ
あなたは、ある病院の薬剤師である。
ある日同僚が難しい顔をしているのを見て、声をかけた。
「いや、Aさんの内服なんだけどね。・・・」
Aさんは、75歳男性である。1年前高血圧を放置していたことから急性心不全に陥り救急搬送されて入院となり、退院後は循環器科の外来に通院している。笑顔の良い、話好きのおじいちゃん、という感じの患者である。
「スピロノラクトンについて先生から問い合わせがあって、よくわからないんだよ。」
内服は、スピロノラクトンが1錠(50mg)他にACE阻害剤、βブロッカー、ニトロの張り薬、胃薬、バイアスピリンであった。
問い合わせをした医師は研修医で、よく薬局にも顔を出す気さくな医師である。
「採血で前までカリウムが4台前半だったのが4.9mEq/Lと高値で、最近徐々に上昇している。スピロノラクトンの副作用は高カリウム血症なのだが、関係ないという話を聞いて、内服を処方し続けても良いのかどうかよくわからない。」という相談であった。
「あ。それって、勉強会で聞いたことがある・・・」
思い出したあなたは、以前の勉強会資料を読み直すことにした。


~医師シナリオ
あなたは、ある病院の研修医である。
ある日、急性心不全で担当したことがあるAさんのデータを見て、気になった。
「カリウムが4.9mEq/Lか・・・」
以前は4.0であったのが、約1年で上昇傾向であった。内服を見直すと、スピロノラクトン(50mg)、ACE阻害剤、βブロッカー、ニトロの張り薬、胃薬、バイアスピリンが処方されていた。
Aさんは高血圧性の急性心不全で、緊急入院の後は内服の調整で退院できた人である。心臓の冠動脈や弁には大きな問題がなく、外来もかかさず来て「大丈夫ですよ!」と笑顔で帰っていく。スピロノラクトンの副作用について担当医に質問をしたが「関係ないっていう報告もあるし、まだ様子を見たらいいよ。」という返事であった。アルダクトンは必要なのか、それともカリウムが高いのだから減量か中止が良いのかあなたには解らず、気になった。
知り合いの薬剤師に声をかけてみたところ、後から院内勉強会の資料を大量に持ってきてくれた。やむを得ず、あなたは論文を読むことにした。


THE EFFECT OF SPIRONOLACTONE ON MORBIDITY AND MORTALITY IN PATIENTS WITH SEVERE HEART FAILURE 
BERTRAM PITT et al. N Engl J Med.VOLUME 341 SEPTEMBER2,1999 NUMBER 10


Rates of Hyperkalemia after Publication of the Randomized Aldactone Evaluation Study
David N. Juurlink et al. N Engl J Med 2004;351:543-51.


Spironolactone use and renal toxicity: population based longitudinal analysis
Li Wei et al. BMJ 2010;340:c1768

H22年9月25日 第6回のぶのぶEBM シナリオ 

あなたはとある病院の研修医である。肺炎で入院した患者さん(70歳女性)が、血圧が低いという報告をうけて主治医とベッドサイドにかけつけた。
患者は日頃は元気であるが、以前から蛋白尿を指摘されており、eGFRは30台だといわれ、ACE阻害剤を内服していた。それ以外は健康上問題なく、元気にすごしておられた。
昨夜の当直帯に、数日続く39.0℃台の発熱を主訴に、救急外来を受診。胸部CTにて右下肺炎・無気肺を指摘され、入院となっている。血液培養を2セット、痰培養を提出して、あなたと指導医は市中肺炎と考えて抗生剤を決定し投与を開始し、経過を見ていた。


その患者さんが現在、熱は34.5℃、血圧は74/40、脈拍は130/minである。
「先生!なんだかすごく寒いんです!」とブルブル震え、呂律が回っていないので、聞き取りにくい。
「ちょっと!はっきり喋らないと、わからないでしょ!!」
あなたは患者さんに厳しく指示した。昨日は元気だったのに、やれやれである。夜に来たから眠いのだろう。。
日頃から頼りないと馬鹿にしている指導医が、あなたに質問してきた。
「ねぇねぇ。採血とかガスはとるの?それと血圧はどうしよう?昇圧薬入れる?」
そんなこと俺に聞くのかよ・・と思いつつ、
「あ?そうですね・・・検査はして、薬は使ったらいいんじゃないすか?」
「なんで検査して薬は使うの?それに、どの検査してどの薬使うの?」
「え?はあ・・いや・・わかんないっす。」
あなたは指導医の低能さにイライラした。先に教えろよ!なんで俺に聞くんだ!
その後も指導医には適当に答えて、廊下を歩いていると仲の良い薬剤師がきた。
「なあ~(上記参)~っていうかんじの患者さんだと、昇圧薬使うよな?」
薬剤師は、うーん・・と考えた。
「昇圧薬も大事だけど、結局は疾患によって予後が違うと思うんだよね。イノバンとノルエピネフリンをどっちにするかは、こないだ学会で討論してたなぁ・・・結局どうだったっけ??文献探してみるわ。」
あとで、あなたの机にNEJMの論文が置かれていた。


1)研修医クンのいいところは何でしょうか?もっと良くなるための改善点は?

2)この患者さんの肺炎の状態は、どう評価しますか? 

3)昇圧薬、どうしましょうか?→今日の論文を読みましょう

OHP 0926CASP

あなたは、病院勤務の薬剤師Pです。


65歳男性Aさんは、以前から排尿障害があり泌尿器科を受診中です。
2年ほど、『タムスロシン 0.2mg 1錠 朝食後』を服用中です。
ある時、来局時に、『デュタステリド 0.5mg 1錠 朝食後』が追加されていました。
そこで、Aさんに夜間頻尿など、排尿障害が悪化されたのだと思い、確認してみました。


P :「いつものお薬では、効果が足りなかったですか?」
Aさん :「う~ん、歳かな。最近、寝てから起きるまでの間に3回もトイレに行くんだよ。
しかも、前より、おトイレいった後に残尿感が強くなったんだよ。
1回行ったら30分後には行きたくなるし、全然勢いがなくてねえ。
前より調子悪いと話したら、先生がお薬を足してくれたんだ。」
P :「あー、なるほどね。それって何か切ないんですってね。毎回ですか?」
Aさん :「んー、少なくとも2回に1回はそうなるね。勢いが弱いのは、本当・・・切ないんだよ。」
P :「おトイレを我慢するのは辛いですか?」
Aさん :「トイレのことを考えるとね・・・外出時は辛いよ。
仕方なく先生に相談して、もう一度、前立腺の検査を受けたら、少し悪くなっていてね・・・
でも、手術も怖いし・・・。
しかも、人間ドックでまたPSAが少し高いって言われてねぇ。
ここ2年、変わらず6ng/mlくらいを推移しているんだけど、下がらないんだよ。
前に、前立腺癌の検査もして、異常なしといわれたけど、うちは癌家系やから、毎回心配でね・・・。
そういえば、今回追加された薬は、PSA も下がるって先生も話されていたけど、
本当に下がるんかなぁ。」
P :「そうですか・・・。今回増えている薬は、前立腺肥大を小さくするし、PSAを半分に下げるんです。
でも、次回 PSAが4ng/ml 以下になっても、お薬のせいだから、倍に換算してくださいね。」


あなたは、お薬の説明書にEDが出る可能性を記載した箇所を、そっと説明してお薬と一緒に渡しました。
改めてカルテを確認すると、排尿障害の症状の悪化と、前立腺容積が40ccになっているために、『デュタステリド 0.5mg 1錠 朝食後』と記載されていました。
あなたは、上記のように答えましたが、PSAが高めで癌を心配されているAさんに、デュタステリドを出すことは問題ないのだろうか?と疑問に思いました。
そんな時、ちょうどデュタステリドの前立腺癌への予防効果を調べた論文があることを思い出し、
読むことにしました。

超音波エコー検査での前立腺容量40cc≒40グラム。
PSA値6ng/mL
%free-PSA= 24
IPSS 15
QOL 中等度
PSA-density=PSA値6ng/mL÷前立腺容量40cc=0.15ng/mL/cm3

H22/08/28 神戸薬科大学 勉強会1回目

Continuation of Low-Dose Aspirin Therapy in Peptic Ulcer Bleeding
Ann Intern Med. 2010;152:1-9.

導入のシナリオ~

あなたは新人薬剤師である。
病院に出血性胃潰瘍による吐血患者Aさんが搬送され、消化器内科医が緊急内視鏡を行った。濃厚赤血球4単位を輸血して血圧を安定させて緊急内視鏡を行い、止血は無事に成功。現在はAさんは病棟のハイケアユニットに収容され、容態は安定している。
あなたは病棟で、患者さんの持参薬確認を頼まれた。内服は、
・低用量アスピリン
・徐放性ニトロ製剤
・βブロッカー
・ARB
が同じ病院の循環器内科から処方されていた。


カルテをみるとAさんは2年前に急性心筋梗塞で搬送されステント留置術を行っており、心機能も決して良くなく、生活は不自由ないが慢性心不全であった。
「ステントはもう安定しているけど、内服は絶対に必要な人だからね。いつから内服再開したらいいのかな。点滴も多いからなぁ。」
あなたが問い合わせた電話に循環器の主治医はつぶやいた。
あなたは持参薬の内服は今後どうするか、消化器科の主治医に尋ねた、
「ん?ああ、内服ね。。出血性胃潰瘍やから、しばらく絶食や。薬も止めといてくれ。(持参薬に目をやる)・・・そうかぁ、アスピリン飲んでたやな。ステント入れてるからそらそやわな。まあアスピリンはもう止めやで。よろしく。」
と言い残し、主治医は去ってしまった。
翌日、服薬指導のために、Aさんの病室を訪問した。
「もう大丈夫です。ほんとに一時はどうなることかと思いましたよ。
・・・・それはそうと、内服はいつから再開なんでしょうか?私は心臓も悪いので、内服は早く再開したいんです。ステントも入れてますし、アスピリンも飲まないとね。内服再開はいつからですか?」
アスピリンでよるNsaids潰瘍については知っていたが、出血性胃潰瘍で吐血の後に低用量アスピリンをどうしたらよいのか、あなたは知らなかった。
以前勉強会で習ったようにPECOをたてて、検索を行ったところ一本のRCTにたどり着いたので、吟味することとした。

1)「あなた」のいいところは何ですか?

2)「あなた」は、どうしたらもっと良くなりますか?

適用のシナリオ~

あなたは、教わった論文の吟味方法を思い出してRCTを読み終えた。
そして・・・・
1)手に入れたRCTを読んで、Aさんに低用量アスピリンを「飲ませなくてはならない」と思った。
そこで、消化器科の主治医のところに相談に行った。
「消化器の先生!私は、このRCTを吟味してみたのですが、Aさんにはアスピリンを飲ませないといけないと思うのです!アスピリンを再開して下さい!」
主治医はじろりとあなたをにらみ、
「・・・そんなことは主治医が考えることやろ!なんや論文なんか振り回して!飲ませなあかん薬は、俺が処方するからその通りにしてたらいいんや!」
と、ぷりぷり怒って去って行った。

2)手に入れたRCTを読んで、Aさんに低用量アスピリンを「飲ませてはいけない」と思った。
そこで、循環器科の主治医が病棟に来た時に、話しかけてみた。
「循環器の先生!私はこのRCTを吟味してみたのですが、Aさんにはアスピリンを飲ませてはいけないと思うんです。今後Aさんのアスピリン内服をやめてもらえませんか?」
循環器科医師は、
「ええっ!?アスピリンを飲まないと、Aさんに何が起きるかわかってるのかい?ホントにもう・・・」
先生はそれ以上、何も言ってくれなかった。


1)「あなた」のいいところは何ですか?


2)「あなた」は、どうしたらもっと良くなりますか?


のぶのぶEBM 3回目

あなたは、医師である。
患者さんの話をよく聞いて、それに応じた対処をしてくれると、評価が高い。
独居の82歳女性が、1人であなたの外来に通院している。


ある日、質問された。
「先生。高血圧の薬ですけどな。やっぱり一生内服しないと、あきませんか?
私も家が少し遠いし、最近歩きにくいんでねぇ。。
薬なくてもいいんだったら、もう病院に来るのもどうしようかと思って。
待ち時間も長いし。」

「ごめんね。ほんとに。いつも待たせてるもんね。」
と、あなたはとりあえず、今回は薬を処方した。
しかし、本当に薬を処方することがこの人に良いことなのかどうか、知りたくなった。

超高齢者に対する降圧治療について、検索をしたところ、比較的新しい論文のRCTが
話題になっていたことを知り、読んでみることにした。

みなさんの立てたPECO、

P 82歳女性
E ARB
C 内服しない
O 死亡率 ADL

P 82歳女性 高血圧だが、あまり血圧は高くない
というバリエーションも出ましたね。

また、
E 1年間薬を飲まない
C 1年間薬を飲む
というバリエーションもありました。個性的です!良い感じ。

ここから、
E 1年間薬を飲んでみようと説明する
C 1年間薬を服用せずに様子をみようと説明する
O コンプライアンス
というパターンも考えられました。

T 10年 5年 1年
ぐらいでしたね。

のぶのぶEBM 4回目 降圧薬

あなたは、とある病院で働く内科医である。
循環器もローテーションでまわり、派手なカテーテル治療や救急にも馴染んで
蘇生に関しては、そこそこ自信を持っている。
しかし外来を担当するようになって、研修医時代と聞かれることが違うのに
戸惑っている。
最近は、高血圧の治療効果についてたずねられることが多い。


なんとか勉強しようと、昔習ったEBMの手法を用いて検索したが、情報が
多すぎてどうしようもなかった。


先輩に相談したところ、
「じゃあ、信頼がおけて、まとめてある情報が欲しいんだよね?」
と、一本の論文を手渡された。
「うーん、、まあ、これだけじゃ駄目なんだけど、まず読んでみなよ」
と謎の言葉を残し、先輩は夜の街に消えていった。
あなたは、とりあえずその論文を読んでみることにした。

のぶのぶEBM 5回目 胃潰瘍とバイアスピリン

あなたは、研修医である。
救急外来に、自分の診ていた患者さんが吐血で運ばれてきた。

内視鏡で、原因は胃潰瘍出血と判明した。
所見をみた内視鏡医は、
「Nsaids潰瘍だろうなぁ。。。あ、ほら。アスピリン(100mg)飲んでるじゃない。
胃薬出してないからなぁ。やれやれ。」

しかしあなたの指導医は、
「脳梗塞の後で、仕方ないんですよ。
胃粘膜保護薬もちゃんと出してたんですけどね。
アスピリンぐらいですから、大丈夫と思ったんですけど。」
と、言う。

その後、指導医と内視鏡医師は、アスピリンを続けるかどうかで意見が食い違った。
指導医は、血管保護のためにも出来たら続けた方が良いと言い、
内視鏡医は、胃潰瘍だからアスピリンは使えないと言い切るのであった。

あなたは、アスピリンと胃潰瘍について調べたところ、RCTが見つかったので読
むことにした。
また、血管病変についてもシステマティックレビューを見つけて、これも読むこ
ととした。

CASP和歌山 2010年2月

私は某病院の研修医。

2月20日現在、ERをローテーションしている。
ERに見学に来ていた医学生A、Bと、インフルエンザ疑いの患者の診察をする事になった。
私、医学生A,Bは共に秋頃インフルエンザのワクチン接種を受けている。
私はいつも通り、サージカルマスク、手袋をつけて診察をしたが、診察を
終えた後に学生から質問を受けた。
学生A「新型インフルエンザが流行り始めたころ、WHOはサージカルマスク
でいいとしていましたが、CDCはN95マスクを推奨していましたよね。
先生の施設ではどうしてN95マスクをつけないのですか?」
学生B「そ、そうなの???僕、先月妻が妊娠したんでインフルエンザにかか
りたくないです。診察する時はN95マスクを準備してもらえませんか?」
そういえば先日、ER研修をしていた同僚の研修医がインフルエンザ陽性とな
っていたのを思い出した。
私はとりあえずN95マスクを学生に渡しその日の診察を終えたが、今後自分
が診察をする際に今まで通りサージカルマスクでいいのか不安になり調べてみる事にした。

yosenabe in Osaka 2008

私は某メーカーの産業医。
役員のA 氏(60 歳、男性)が特定健診結果の相談のために来院された。
保健指導報告書には、「腹囲:93cm、収縮期血圧:140mmHg、拡張期血圧:
91mmHg 、喫煙歴:あり」の健診結果から、メタボリックシンドロームと診断されて
おり、『積極的支援が必要』とある。
A 氏は、「血圧が高くてお腹がでているから食事と運動を見直して痩せるように
指導されたんですけど、接待も仕事ですから難しいんですよ。それと禁煙の指導も
受けたんです。娘や家内にも『夏には孫が産まれるから、禁煙してぇ~』とせがまれ
ているんです。」とのこと。
私はA 氏に妊婦への受動喫煙のリスクを説明し、ニコチン置換療法を薦めた。
するとA 氏曰く、「自分で決めたら薬なしでいつでもやめられるんですよ!
でも何年かすると吸ってしまうんです。」とのこと。
私はメールニュースに、「肺年齢の告知は禁煙を決心させ、維持させられるかもしれない」
という内容の論文があったことを思い出した。
とりあえず、ニコチン置換療法を開始することにしたが、加えて前回の人間ドックの
呼吸機能検査結果を『肺年齢』としてA 氏に伝えたら、再喫煙を防げるか・・・
論文を読んで、今後の治療方針を決めることにした。

課題:
あなたも相談を受けたになって検討を開始してください。
検討した道すじを記入してみてください。

シナリオの患者さんから、PECO を作りましょう。
PECOとは、疑問を定式化したものです。
どんな患者に(P; Patient)、どんな治療をすると(E; Exposure)、何と比べて(C; Comparison)、
どうなるか(O; Outcome)をまとめたものです。

P:どんな患者に

E:どんな治療するのは

C:何と比べて

O:どうなるか

丹下さんのミニ EBM WS 2009年

あなたは、循環器内科専門の診療所に勤務する薬剤師です。
65 歳のA さん(男性)は、以前に発作性心房細動を起こしたことがあり、その他にも高血圧
のために通院中です。メトプロロール 20 mg 、アムロジピン2.5 mg、カンデサルタン4 mg、
アスピリン 100 ㎎ が処方されています。日頃は不整脈もなく、数年来かわりありませんでした。
ある日A さんから「 最近頻繁にドキドキした感じがある 」と訴えがあり、主治医がホルター
心電図と心エコーを実施しました。
ホルター心電図の結果、A さんは発作性心房細動を1日に数回起こしていることが判りました。
このため、主治医はアスピリンをワーファリンに変更しようとしました。
しかし、A さんのお兄さんは人工弁置換術を受けており、ワーファリンを内服していたのですが、
後に消化管出血を起こして、出血性ショックになり救急搬送されたことがあったのです。
A さんは、主治医にワーファリン内服はどうしても嫌だと断りました。
しかし、主治医はA さんにワーファリンが必要であることを説明し、ワーファリンを処方しました。
後日、あなたと話している時に「 A さんはワーファリンに抵抗があるから、服薬指導でちゃんと理解してもらいたいんだ 」とあなたに依頼してきました。
あなたは服薬指導の前に、発作性心房細動によるワーファリンや抗血小板薬の脳梗塞予防効果について文献を調べました。
さらに、ワーファリンの代替療法の効果を調べた ACTIVE 試験も取り寄せて読んでみることにしました。

シナリオの「あなた」になったつもりで少し考えてみてください。

( 質問 1 )シナリオの患者さんから、PECO を作りましょう。
PECOとは、疑問を定式化したものです。
どんな患者に(P; Patient)、どんな治療をすると(E; Exposure)、何と比べて(C; Comparison)、
どうなるか(O; Outcome)をまとめたものです。

P:どんな患者に

E:どんな治療するのは

C:何と比べて

O:どうなるか

( 質問 2 )もし、あなたが依頼された薬剤師なら、A さんへどのような指導をするでしょうか?

岡山 CASP 2008年

あなたは周産期センターの研修医である。
本日、産科の開業医からの紹介で妊婦が紹介されてきた。
妊婦は38 歳、身長160cm、体重60kg、現在28 周期位と見られる。
患者は妊娠を確認していたが、検診はせずにいた。
最近、頭が痛くなったりしたため、産科の開業医に受診した。その開業医で検査をしたところ
血糖値高値が見つかり妊娠糖尿病の疑いとして紹介されたようだった。
血圧は170/110 mmHg、受診時の空腹時血糖は250 mg/dL、タンパク尿(±)むくみ(軽度)
と診断された。妊娠中毒症も考えられる
本人より「産みたい」と希望があるが、血糖コントロールのためのインスリン療法については、
あまり気が進まない様子であった。
あなたは、上級医が血糖コントロールの重要性について患者に説明する姿を見ながら、果たして
どれだけの意義があるのだろうか気になり始めた。上級医にきくと、「エビデンスはあるんだよ」
と返事が返ってきたが、具体的な話はなかった。インスリン療法による合併症などを考えると、
胎児にとって必ずしも良いことばかりではないのではないかという気がしていた。
あなたは、妊娠糖尿病患者への治療の有効性について教科書などで調べてみたところ、すでに
いくつかの研究でその効果が示されているようだった。
その中で、最も重要で妥当性も高いと思われた研究の論文をダウンロードして内容をチェック
することにした。

課題1:
あなたも相談を受けた薬剤師になって、PECOを立てて疑問を定式化してみましょう。

PECOとは、疑問を定式化したものです。
どんな患者に(P; Patient)、どんな治療をすると(E; Exposure)、何と比べて(C; Comparison)、
どうなるか(O; Outcome)をまとめたものです。

P:どんな患者に

E:どんな治療するのは

C:何と比べて

O:どうなるか

課題2:
あなたは、この課題に対してどのような対応を勧めるか、まとめてみましょう。

岡山 CASP 2009

あなたの親戚の「おじいさん」から電話がありました。
「血圧が高こうなっとるんじゃけど、薬を飲まんといけんのかのぉ?」とのことでした。
話を聞いてみると、先週の日曜日に行われたスポーツ大会で、血圧を測ったところ、血圧が
高いと指摘され、病院を受診するように勧められたとのことでした。
そして、受診して測ったら175/95 らしい。病院では、「4 週間ほど塩分を控えたりして
様子をみて、それでも血圧が高ければ、薬を飲んでみましょう」と医師から言われたそうです。
同時に行った、血液検査や心電図、胸部レントゲン写真などでは、大きな異常がないと
説明されたようです。
その人の年齢が87 歳、今まで大きな病気はしたことがなく、病院や検診にもほとんど行った
ことがありません。どちらかというと病院嫌いですがちゃんと自分のことは自分でできていますし、
自己管理もちゃんとできそうです。たばこは25 年位前に止めてから一本も吸っていないそうです。
以前あった時、本人は「元気に100 歳まで生きることを目標にしている」と話していました。
そんな「おじいさん」が少し不安げに「ほんまに飲まんといけんのかのぉ・・・」と電話で聞いて
きました。
あなたは、もう87 歳まで元気に過ごしてきているのだから、今から薬を飲まなくても・・・と
いう気もします。しかし、ちゃんと確認してから説明しようと思って「まあとりあえず、食事に
気をつけて少し様子を見ましょう。私も調べてみます」といって電話を切った。
その後でいろいろと調べたところ、最近高齢者を対象とした文献があった。
読んでみることで詳しい説明ができるのではないかと思い、入手して読んでみることにした。

課題1:
あなたも相談を受けた立場になって、PECOを立てて疑問を定式化してみましょう。
PECOとは、疑問を定式化したものです。
どんな患者に(P; Patient)、どんな治療をすると(E; Exposure)、何と比べて(C; Comparison)、
どうなるか(O; Outcome)をまとめたものです。

P:どんな患者に

E:どんな治療するのは

C:何と比べて

O:どうなるか

課題2:あなたは、この課題に対してどのような対応を勧めるか、まとめてみましょう。

シナリオ その1 ( 京都 CASP 2009 )

あなたは循環器内科の研修医です。
ある日、あなたと指導医に消化器内科から相談がありました。
「64歳の太郎さんですが、半年ほど前に脇腹が痛くて放置していたそうですが、先日腹部エコ
ーをすると胆石がみつかったんです。採血上は今のところ問題ないので胆石症の手術は急ぐ必要
はないようです。ただ、糖尿病と高血圧の内服治療中です。それに身長は160cm で、体重が
80kg の肥満患者なんです。糖尿病と高血圧は内服薬でコントロール良好です。坂道では息切
れするそうです。痛みは胆石かもしれないんですが、まず心臓の評価をお願いします。」
指導医とあなたで心電図と心エコーをしてみると、過去の心筋梗塞を示唆する所見を認めました。
冠動脈CTでは#3および#12の75%狭窄がありました。現在、狭心症状はありません。診
察後、上級医があなたに言いました。
「この人の75%狭窄はこのまま経過観察でいいんだろうか。積極的に治療した方がいいんだろ
うか?現在症状はないし、半年前の痛みは、胆石の痛みだったかもしれない。もちろん、心臓の
痛みだったかもしれないけどね。太郎さんと話をしたら、PCIを受けるかどうかは、僕達の判
断に任せるって言ってるんだよ。PCIをした方がいいのだろうか?」
あなたは、以前NEJに載っていた論文を思い出した。指導医の質問に答えられそうな論文なの
で読んでみることにした。

シナリオの「あなた」になったつもりで少し考えてみてください。

質問1)シナリオの患者さんから、PECOを作りましょう。

PECOとは、疑問を定式化したものです。どんな患者に(P; Patient)、どんな治療をすると
(E; Exposure)、何と比べて(C; Comparison)、どうなるか(O; Outcome)をまとめたものです。

P:どんな患者に

E:どんな治療するのは

C:何と比べて

O:どうなるか

質問2)もし、これが胆嚢摘出術前に心機能評価を依頼された場合なら、あなたの判断は変わる
でしょうか?

シナリオその2 (京都 CASP 2009)

※これは適用のシナリオです

あなたは、院外薬局で働く薬剤師である。
ある日、患者さんから、
「ときどき胸痛があるんやけど、ちょっとまったら治まるやわ。薬飲んでるだけで大丈夫なんか
ねぇ?たまに飲まんかったりも、するんやけどな・・入院してカテーテルとか、せんでもええん
かいな?胸痛いときは病院にはおらんし、外来に来たら待ってるうちに医者に相談するの忘れて
もうてね。どうなんやろうね?」
と、相談とも雑談ともいい難い話をされた。いつもなら「先生に相談せなあかんよ」で済ませて
いるところだ。
しかし、先日ワークショップでPCIに関する勉強をしたところだったので、返答するのに少し
考えた。
「エビデンス」と「職場での実践」を考えてみましょう。

質問1)患者さんの知りたいことを、PECOにしてみましょう

PECOとは、疑問を定式化したものです。
どんな患者に(P; Patient)、どんな治療をすると(E; Exposure)、何と比べて(C; Comparison)、どうなるか(O; Outcome)をまとめたものです。

P:どんな患者に

E:どんな治療するのは

C:何と比べて

O:どうなるか

質問2)どういうことは言うべきではない(禁忌)でしょうか?

質問3)あなたなら、どう話をしますか?

岡山 CASP 2010年

あなたは研修医2 年生である。
救急当番の日に、42 歳男性が救急搬送されてきた。
主訴は突然発症した右側腹部痛であった。
本人の話によると、今日の昼ぐらいまでは普通に仕事をしていたが、夕方帰宅してから
突然の右側腹部痛が出現した。痛みは10 分くらいで一旦良くなったが、その後も右背
部に違和感が残り、15 分後くらいからまた同様の痛みが出現し、動けないため救急車を呼んだ。
救急隊到着時にはやや痛みが改善したようで、何とか歩行が可能であったとのことであった。
来院時 意識清明 血圧150/88 脈拍90/分、身体所見上、腹部は平坦・軟であった。尿検査をしたところ、肉眼的血尿を認め、試験紙検査でタンパク尿(+), 尿糖(-), 潜血(3+), pH 4.5 白血球(+)であった。
話を聞いたところ、5 年前に右尿管結石で体外衝撃波砕石術の既往があった。
腹部エコー検査で、右腎盂の軽度拡張を認めたが、腎盂尿管移行部には明らかな結石像を認めなかった。胆嚢は軽度拡張していたが胆石は認めず、胆嚢圧迫をしても頭痛の誘発はなかった。
あなたは右尿管結石を強く疑い、乳酸加リンゲル液で末梢ルートを確保し、ブスコパン(20mg)1Aを点滴した。
腹部XPしたところ、右尿管膀胱移行部に相当するところに直径1cm弱の結石と思われる陰影を確認した。様子を見るが疼痛治まらず、ボルタレン坐薬50mg1個を頓用した。
30 分後に確認したところ腹痛は軽快していたので、坐薬を3個処方し、翌日泌尿器科外来を受診するようにした。
翌日の症例カンファレンスで、自然排石の促進のための飲水の意義や普通尿路結石促進剤として処方されるウロカルンの意義について話題になった。
その時に指導医から「今は、カルシウムチャンネルブロッカーやアルファブロッカーなどが排石促進薬として検討されていて、これから処方が一般的になるかもしれない」という話があった。
それに関連して、論文を紹介された。あなたは、すでに複数のランダム化比較試験があり
そのシステマティックレビューとしてまとめられていることに驚いた。
とりあえず、この論文を読み内容をチェックすることにした。

課題1:
あなたも相談を受けた立場になって、PECOを立てて疑問を定式化してみましょう。
PECOとは、疑問を定式化したものです。
どんな患者に(P; Patient)、どんな治療をすると(E; Exposure)、何と比べて(C; Comparison)、どうなるか(O; Outcome)をまとめたものです。

P:どんな患者に
E:どんな治療するのは
C:何と比べて
O:どうなるか

課題2:あなたは、この課題に対してどのような対応を勧めるか、まとめてみましょう。

広島 CASP 2006

あなたは調剤薬局の薬剤師である。

Aさんは49歳男性、身長 172 cm、体重 86 kgの肥満体型患者さんだ。
前回来局時からアカルボース錠150 mg / 日が開始になっている。
Aさんは最初、職場の健康診断で尿糖陽性と言われ、心配になって近くの病院で検査(OGTT)してみたところ、糖尿病の診断基準は満たさないが境界域であったという。

そこで、食事・運動療法が開始されたが、普段は運動する時間も無いので、3ヶ月経っても目立った効果が見られなかった(食後2時間血糖が178 mg/dl で空腹時は116 mg/dl )。

Aさんは、糖尿病の合併症が元で父親を亡くしているので、糖尿病になるのが怖い。さりとてこれ以上食事・運動療法を厳しくするのも無理だ。それで主治医に薬物療法の開始を頼んでみて上記処方となったのである。

しかし飲み始めたところ腹部膨満感や下痢が現れ、飲み方も食事の前なんてつい忘れがちである。
飲み始めたものの続けていくべきか、Aさんは悩み始めた。
それで今日、Aさんは処方箋を持って来局した際、あなたに相談をした。

「糖尿病になりたくないので早めに薬をもらって飲み始めたわけなんですが、副作用なのか最近
おなかの調子が悪いんです。食事の前に飲むのも慣れなくて難しいし・・・それでもやっぱり
続けた方がいいですかねぇ?どう思います?」

あなたは以前メーカーが宣伝の時に持ってきた文献があるのを思い出した。Aさんは少し待ってくれるというので、文献を読んで良いアドバイスができればと思った。

シナリオの「あなた」になったつもりで少し考えてみてください。

 Aさんの症状は?
 Aさんは、何を知りたいと思い質問をしてきたのか?
 Aさんが心配していることは何なのか?

PECOとは、疑問を定式化したものです。
どんな患者に(P; Patient)、どんな治療をすると(E; Exposure)、何と比べて(C; Comparison)、どうなるか(O; Outcome)をまとめたものです。

P:どんな患者に
E:どんな治療するのは
C:何と比べて
O:どうなるか