情報を組み合わせて学ぶ・・

Last-modified: 2009-07-12 (日) 12:09:45

論文を二本読ませるなら?

勉強会で、論文を一本読み込む練習は大事です。
論文がさらりと読めるようになると(2~3本で十分だと思います)、次はどういうメニューが良いか?
ということになります。


じゃ何を?読ませたら良いのか?
そういうことを考えてみたいと思います。勉強会のメニュー!ですね。
いままで知らなかったのですが、これと同じような技術が読書術にもあるようです。

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「多読術」

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「本を読む本」
などに、本を組み合わせて知識の軸とする方法が詳しく紹介されています。
特に「本を読む本」には「シントピカル読書」っていう手法が紹介されています。
同じテーマの本を二冊以上読んでいくという技術なのですが・・・
これってそのまま今回の内容になりますね。。もうすでに先人が、同じ事を書いて残しておられます・・
「多読術」を参考に書きますと、まずキーブックとなる本が決まって、それを中心に同じジャンルの本の位置づけが決まっていく、というものです。本の知識、から知識体系に至る道ですね。
「本」を「論文」に置き換えると、勉強会の方針が見えてきませんか?
一本をぱらぱら読んでいただけじゃ、不十分に感じたことの1つを解消するのです。
そりゃ大変な道のりなのですが、それを補助する役目が教科書であり、二次文献としてのUp to dateやDynamedです。
これらも使いながら、頭の中に知識体系を創りあげる・・
のが僕にとっての目標です。書いてて、おまえ何様やねんという気になってきました。。
実力に伴わず、風呂敷が広がりすぎてますね。
でも、大事なことだと思います。

基本はこれ!RCTじっくり一本読み!

これです!これが大事!
ランダム化比較試験は、異なる治療や診断を比較検討するための技術です。
比較対照する、というのが本当に大事。
こんな単純に思えることが、非常に深いことを思い知らされるのです。
「この薬と、この薬、どっちがいいのかな?」
そんな簡単なことなのに!


だって血圧のRCTを読むと、だいたい5年ぐらい追跡すると3割から4割は別の内服薬を処方されていることが多いんですよ?
もともとの研究の薬では、血圧が下がらなかったり副作用が出たりして違う薬が足されたり変わったりする。
最近はいろんな工夫でそういうことも随分減らされていますが・・・
シンプルに「この薬の効果は~だ!」とはいかないのです。
そういうことを、深く読むと知ることが出来ます。
考える人間に、なる一歩を踏み出すんだと思うのです。


まず一本をしっかり。
そしてその一本が信用できる味方かどうかを、深く知るのです。
その知識の上に、患者さんの人生を賭けるんですから・・


ただ読むのではなくて、やはりシナリオからスタートするべきでしょう。
Step1 疑問の定式化も大切ですし、論文を読んで、シナリオの患者さんに適用するときが勉強になります。
さらに適用を考えるときは、患者さんだけへの適用では不十分。。
あなたの病院で、その治療をするにあたって、説得するべき人は誰か?
をしっかり考えるべきです。
上司にあらかじめ話しておくべきかもしれません。
仲間にも根回し必要でしょう。薬なら薬剤師さん。
看護師さん、理学療法士さん達にも前もってお話がいるのかもしれません。
適用をいろんな角度から考えることは、Step4の本来の姿です。

フォアグラウンドかバックグラウンドか?

ここからは二本読みの話です。もちろん三本でも良いんだけど。
フォアグラウンドの情報は、すでにバックグラウンドの知識があって、その比較検討を行うことになります。
フォアグラウンドの情報だけで勉強するのもよし、バックグラウンドも良しです。
論文をたくさん読む勉強会というのは、あちこちにあるようです。
海外の先生に聞くと、1回で8本読むよ、とか・・・
さすがに英語が母国語でも8本はつらいらしい・・。
じゃなにがつらいでしょうのか?
読む量が多い、というのも一つですが、それは実はたいした問題じゃないと思います。
一本読めたら、あとは同じなので。
そもそも英語が母国語なんだから、大丈夫ですよね。でも、アメリカ人が8本の抄読会はツライらしい。


問題は、本数が増えてストーリーが作れなくなるということだと思います。
臨床は、きちんと道筋がある情報が求められます。
論文の読みだってそうです。
8本となると、8本全部を束ねるストーリーはふつう無理ですからね。


教科書の読みにくさ、というのもここだと思います。
教科書はたくさん、宝石のような知識が書いてある。
しかし、それは教科書的な形では印象が薄く、頭に入らない・・
いかに、それをまとめて頭にたたき込むか。
そしてアウトプットのときに、美しいストーリーに沿ってだせるか。


医療従事者も、情報の得方についてはネットの影響でいろいろ考えてきました。
これはどの職種でもそうだと思います。
次は、得た情報のまとめ方、使い方をしっかり考える時期だと思います。

RCT二本読み

これはフォアグラウンドの情報×2です。
同じようなテーマのものを二本読みます。
RCTはたくさん読むうちに、いろんなRCTがあることが理解できます。
そして、しっかりしたものと、ショーもないRCTが区別できるようになります。
RCTの構造を理解する、という意味で、二本読むことは大切です。
さらに、内容としても、対象者のセッティングが少し違うことで結果が変わることを実感できます。
たとえば、糖尿病患者さんの血糖コントロールを厳密にすることを検討した論文が何本かあります。
ある論文では、死亡率があがり打ち切りに、そして別の論文では合併症の頻度が低くなる・・
なぜ?
そこには「病的肥満かどうか」という分岐点がありました。
そういう「気づき」が二本読みにはあります。


その他にも、境界型糖尿病(古いですが)の人はどれぐらい糖尿病になるか?
というテーマで中国とスウェーデンの論文をみたときは、あきらかに中国人の方が糖尿病に進行する例が多かったです。
中国ということで、クオリティーが低いのか?それともアジア人は糖尿病に弱いのか??
おもしろいテーマを、残してくれたのです。
RCTの二本読み・・おもしろいのです。

RCTとシステマティックレビュー

これもフォアグラウンドの情報×2。
レビューはおもしろくないなぁ~・・と実感してしまうコンビ。
でも、RCTの位置づけがよく分かっておもしろい。
そのテーマのRCTの流れや、答えの変遷が一目でわかるものです。


手元にあるRCTがどれぐらいの規模で、どれぐらい全体にインパクトを残しているかよく分かります。
先日、ICUでの血糖コントロールをどうするか?というNICE-SUGAR研究って名前のRCTがありました。
これをのせたメタアナリシスが直後にだされましたが、もうNICE-SUGAR研究が大きすぎて、他の研究がかすんでいるのが明かでしたね。
だって、全体のNの約半数がNICE-SUGAR研究の人数でしめられていたのです。
あきらかにメタアナリシスよりも、NICE-SUGAR研究が勝っている立ち会いでした。
まあ、こんなことはいっぱいあります。
メタアナリシスもあまり古いのを入れたらあかんような気がしますし。。

RCTと教科書

最近やってます。
これはフォアグラウンドの情報とバックグラウンドの情報の組み合わせです。
教科書をマインドマップ化してからRCTを読むと、これまた非常によい影響があるようです。
全体の知識を平面化してみると、いかにRCTが小さいポイントを絞り込んで検討しているかがわかります。
いくつかやりましたが・・
@Afの治療と、最新のNEJの論文を読んだ
プラビックス、バイアスピリンのRCTを読んで、ハリソンのページをしっかりマインドマップにしました。
Afの治療って、かなりややこしくないですか?
ワーファリン、プラビックス、バイアスピリン、アブレーション、手術、内服・・
まとまって覚えているのが大変ですね。
@脂質代謝異常症
思っているよりも、薬が多いんですよ。。教科書で背景をおさえて、スタチンのRCTを読むってのが良かったです。


教科書はなかなか読むのが大変ですが、マインドマップを使って視覚的にまとめるように工夫しています。

RCTとエディトリアル

これも、フォアグラウンドの情報とバックグラウンドの情報の組み合わせです。
当たり前だと思いつつ、なかなかエディトリアル読んでないもんですよ。
RCTとは読み方が違うので、大変なんですよね。
RCTの読み方は、チェックシートを使うことが多いのですが、キーワードを押さえて読む「キーワード読み」をしています。
ランダム、とかブラインド、とかですね。
しかし、エディトリアルはキーワード読みは難しいのです。
センテンス読み、とか段落読みとか、ポイントを押さえて読む違う方式で切り崩す必要があります。
まあ、それだけをクリアしたら、テーマに関する歴史や最近の話題まで網羅してくれているので、バックグラウンドの知識を得やすいです。

RCTと質的研究

これは、時々出来るテーマがあります。
高血圧治療と、内服治療をしている人を対象にした質的研究とか。
若い人には、すごく良い勉強になるような気がします。
若い人、ってのはバカにしているのではなくて、患者さんの語りがデータと一緒にさらさらとお茶漬けみたいに吸収できそうな気がするのです。

マインドマップ いいですよ

これらの情報をまとめあげないといけません。
いろいろやりましたが、マインドマップがお勧め。
紙に情報が一目で分かるようになります。
診断の神様といわれる、ティアニー先生って人は、鳥の名前を見ただけで3000種類ぐらい言えるらしいのです。
マニアックやね~。。で終わっちゃいけません。
どうやって、その3000種類の写真を見たのでしょうか?実物でも?
すごいページ数をめくる時間は、どこから出たのでしょう?
どうやって覚えたのでしょうか?好きだから簡単?
いやいや。なにかテクニックがあるはずです。
そこに、診断の細かいことまで覚えていられる技術が隠れているんじゃないかなと思うんです。
写真、というイメージを3000種類認識できるというのも、ポイントでしょうね。
論文だって、何か画像的な情報に切り替えたり出来たら、ずいぶん読みやすいはずです。
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『ペンとノートで発想を広げる“お絵描き”ノート術 マインドマップ(R)が本当に使いこなせる本』

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『 ザ・マインドマップ 』
トニー・ブザン (著), 神田 昌典 (翻訳), バリー・ブザン (著)

論文、論文のテーマなどをまとめるにはもってこいの技術です。
いままで、教科書的な記載の順番に頭で整理していましたが、それよりも格段に良い感じがします。
バックグラウンド、フォアグラウンドともにまとめられそうです。