疑問の種類について

Last-modified: 2013-06-11 (火) 15:03:58

疑問の分類

EBMでは、疑問を2つにわけています。
バックグラウンドクエスチョン
フォアグラウンドクエスチョン
の2つです。
ランダム化比較試験!とかシステマティックレビュー!ばかりが主役のようになってますが・・
実際は、疑問をどう解決するのか?がもっと上位にくる知識であり、EBMの根幹です。
経験のある臨床家は、まずバックグラウンドクエスチョンBackground Questions と フォアグラウンドクエスチョンForeground Questions に疑問を分類しています。
程度の差や、意識的・無意識的なのかは各自様々ですが。
ちなみに私は、かなり意識的にしっかり分けて考えます。


バックグラウンドクエスチョンは、すぐに調べて(教科書、ネット、先輩に聞くなど)知識を得ると解決することが多いでしょう。
フォアグラウンドクエスチョンを解決するには、PECOをたててEBMのStep2の検索に進んでいく必要があります。
これが、EBMのStep3に繋がる疑問です。

バックグラウンドクエスチョンとは何か?

『Evidence Based Medicine』から引用しますと、

・病態や、物品に関する一般的知識を問う疑問 
Ask for general knowledge about a condition or thing
・2つの大事なコンポーネントから出来ている
1)5W1H (Who, What, Where, When, How, Why) と動詞verbで表せる
2)異常、検査、治療、その他のケアについての、ある側面に関して問う疑問である
例)心不全がどういう機序で(How?Why?)腹水の原因となるのだろう?等々

身近なことで言うと、
・美味しいケーキ屋ってどこにあったっけ?
・今が旬の芸能人ってだれかな?
・京都動物園はどこにあったっけ?
などなど、What?Where?で表される疑問が代表です。
知識と知恵でいうと、知識にあたるでしょう。

英語でいう5W1Hの疑問の大部分はバックグラウンドクエスチョンですね。
すごく大事です。
しかし、もう一歩踏み込んだ疑問が湧いてきませんか?
・あのケーキ屋と、そのケーキ屋はどちらが美味しいのかな?
・あの芸能人に代わって出てきた芸能人って、どっちが人気あるのかな?
・京都動物園と、京都水族館と、うちの子はどっちが好きかな?
Which?How?は時にもう少し深い疑問を提示します。
「いくつかの知識を前提に、それらを比較したり、それらの使い方を考える」
という感じかな。
これが、フォアグラウンドクエスチョンです。
バックグラウンドをもとに、フォアグラウンドを考えるのがこれ。

フォアグラウンドクエスチョンとは何か?

この言葉は、なじみがないですよね。
バックグラウンドクエスチョンは聞いたことあるけど。
先ほどのEBMのバイブルから引用をしますと、

・臨床上の決断や、行動をおこすために必要な専門知識を問う疑問
Ask for specific knowledge to inform clinical decisions or actions
・4つの大事なコンポーネントからなる
1) 患者 Patient and/or Problem
2) 介入群 Intervention or exposure
3) 比較群 Comparison
4) アウトカム Clinical outcomes, including time

ここでPICO、もしくはPECOが登場します。
疑問の定式化=PICOではないんですね。
疑問の定式化は、バックグラウンドとフォアグラウンドのクエスチョンの分類と、フォアグラウンドクエスチョンをPICOにわけることをさすんですね。


例)
・心拍数が洞調律の心不全の大人に対する治療に、ワーファリンを追加した場合、3-5年の観察期間では血栓症の罹患率や死亡率を下げることが出来るのだろうか?それはワーファリンの有害事象による影響を考慮に入れても重要な効果だろうか?
・クラビットの分1処方は、分3処方と比べてどれぐらいの治療効果があるのだろうか?
身近な例) 
・近所にはおいしいラーメン屋が多いけど、どこが一番かな?
・知識と知恵でいうと、知恵


疑問を考えるときに、PICOを立てることが出来たら、フォアグラウンドクエスチョンになります。
よく見ていただくとわかりますが、PICOには、2つの比較対象が要素として入っています。
比較するような疑問、はフォアグラウンドクエスチョンなのです。
臨床現場では、これが常に問われているのです。

5W1Hはバックグラウンドクエスチョン、PECOはフォアグラウンドクエスチョン

バックグラウンドクエスチョンと、フォアグラウンドクエスチョンの比率

この両者は、どちらが優れているというものではありません。
両方とも「よく作られた臨床上の疑問」なのです。


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 ------------→ 仕事の経験量
 新人    中堅    ベテラン
[star] はフォアグラウンドクエスチョン
[hatena] はバックグラウンドクエスチョン
です。

↑の図は、新人は主にバックグラウンドクエスチョンを、ベテランはフォアグラウンドクエスチョンを必要とするものだという意味です。
だって、物品がどこにおいてるのか?というバックグラウンドクエスチョンから新人は憶えなきゃいけません。
ベテランには、薬の内容について高度なことを尋ねたりするべきですし。
みんな、守備範囲が違います。
ただし、ベテランがフォアグラウンドクエスチョンをよく扱うものだから、つい「優秀=フォアグラウンドクエスチョン」と思いがちですが、そうではないんです。たんなる経験と役割分担の違いですね。
この図には、いろいろと異論がありますが、まあまずは本に書かれている通り紹介しておきましょう。

疑問の解決方法を間違わないで!

新人時代は、仕事で悩みました。
よくクエスチョンの種類をごっちゃにして困っているものです。
バックグラウンドクエスチョンが足りないのが自分の問題なのに、知らないことを考え込んで長時間使ったり、判断が鈍ったりするものです。
だって、注射器とか、採血針の置き場所をしらないのに、いくら考えてもわからないでしょう?
バックグラウンドクエスチョンは、調べないとわかりません。「新人は判らないことはすぐに聞け!」と言われますね?
「ばかの考え、休むに似たり」といいますが(ごめん)、知らないことはすぐに調べて知識を得たら、終わりです。
ベテランの優秀な人は、この切り替えが早いですね。知らないことがあったら、すぐにいろんな人に聞いたり、本を調べる人が多い。


その上で、フォアグラウンドクエスチョンについては、じっくり考えるのが大事なんです。
そして、人に相談もして、自分が考えつかなかった角度からの切り口を教わるのです。



バックグラウンドクエスチョンがあったら、すぐに検索して(ネット、本、人に尋ねる)知識をゲットする!
フォアグラウンドクエスチョンがあったら、PECOをたててポイントを絞り込んで理解する。
そして、熟考と検索を繰り返して、重厚な知恵をたくわえる。


疑問を分類するだけでも、我々の行動様式は変わってきます。