第一回 Student CASP in KOBE
案内はこちら H22年12月5日 Student CASP in KOBE
http://www.jichi.ac.jp/usr/tiik/meeting_detail.html?dt=101205casp.txt
第1回 Student CASP 終了
去る12月5日は第1回Student CASP workshop。
約40名が参加し、6グループに分かれてのスモールグループワークを行いました。
チューターは14名。
学生チューターのデビューも兼ねましたし、勉強会を率いてきた者としては感無量でした。
教えた学生たちが、チューターミーティングで福岡敏雄先生の話に聞きいる。。
「よかった!ここまでは連れてこれた!
」
嬉しかったなぁ。。。
そんなに福岡先生に依存してはいけないのですが、やっぱり実力が違います。
CASP Japan 代表ですし、これから教育もしていくなら面識がないとね。
刺激も全然違うし。
しかし、よく考えたら学生の皆さんは凄いです。
どこの誰かわからない「普通の内科医(ワタクシです)が教えている、EBMの勉強会」にみんな来てくれて
「ワークショップを開こう」といわれて、日曜日をつぶして参加する
ひでぇ内容だったり、お金請求されたりするかもしれないのにネ。
みんなが盲目的に信用してくれたおかげで、大きな学びの輪が一日だけ神戸薬科大学に浮かんだのですね。
シナリオ
薬剤師シナリオ
あなたは、ある病院の薬剤師である。
ある日同僚が難しい顔をしているのを見て、声をかけた。
「いや、Aさんの内服なんだけどね。・・・」
Aさんは、75歳男性である。1年前高血圧を放置していたことから急性心不全に陥り救急搬送されて入院となり、退院後は循環器科の外来に通院している。笑顔の良い、話好きのおじいちゃん、という感じの患者である。
「スピロノラクトンについて先生から問い合わせがあって、よくわからないんだよ。」
内服は、スピロノラクトンが1錠(50mg)他にACE阻害剤、βブロッカー、ニトロの張り薬、胃薬、バイアスピリンであった。
問い合わせをした医師は研修医で、よく薬局にも顔を出す気さくな医師である。
「採血で前までカリウムが4台前半だったのが4.9mEq/Lと高値で、最近徐々に上昇している。スピロノラクトンの副作用は高カリウム血症なのだが、関係ないという話を聞いて、内服を処方し続けても良いのかどうかよくわからない。」という相談であった。
「あ。それって、勉強会で聞いたことがある・・・」
思い出したあなたは、以前の勉強会資料を読み直すことにした。
~医師シナリオ
あなたは、ある病院の研修医である。
ある日、急性心不全で担当したことがあるAさんのデータを見て、気になった。
「カリウムが4.9mEq/Lか・・・」
以前は4.0であったのが、約1年で上昇傾向であった。内服を見直すと、スピロノラクトン(50mg)、ACE阻害剤、βブロッカー、ニトロの張り薬、胃薬、バイアスピリンが処方されていた。
Aさんは高血圧性の急性心不全で、緊急入院の後は内服の調整で退院できた人である。心臓の冠動脈や弁には大きな問題がなく、外来もかかさず来て「大丈夫ですよ!」と笑顔で帰っていく。スピロノラクトンの副作用について担当医に質問をしたが「関係ないっていう報告もあるし、まだ様子を見たらいいよ。」という返事であった。アルダクトンは必要なのか、それともカリウムが高いのだから減量か中止が良いのかあなたには解らず、気になった。
知り合いの薬剤師に声をかけてみたところ、後から院内勉強会の資料を大量に持ってきてくれた。やむを得ず、あなたは論文を読むことにした。
というものでした。
患者さんがNYHA IかIIだろうという指摘がありました。
内科の外来に即して作ってたので、そりゃそうなんです。
NYHAⅣで入院して、治癒したからIIぐらい。
良くある話です。
(一応、患者さんはよく立ち止まって休んでいる というストーリーを入れてもらいましたけど)
「スピロノラクトンを減らした方がよいのかどうか?」
ということが、テーマになってるわけですね。
「じゃ、論文のテーマとちがうじゃん!」
となるのですが・・・・そういう話が出るのを期待して作っていた。。。
のですがすっかりそういう意図を忘れていて。。。あわてました。
論文
RALESを使いました。
The Effect of Spironolactone on Morbidity and Mortality in Patients with Severe Heart Failure
N Engl J Med 1999; 341:709-717September 2, 1999
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJM199909023411001
心不全に対するスピロノラクトンの効果をみたRCTです。
まずこれを読んでもらいます。
この論文は古いのですが、追跡研究が面白いのです。
Rates of hyperkalemia after publication of the Randomized Aldactone Evaluation Study.
N Engl J Med. 2004 Aug 5;351(6):543-51.
PMID: 15295047
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa040135
Spironolactone use and renal toxicity: population based longitudinal analysis.
BMJ. 2010 May 18;340:c1768. doi: 10.1136/bmj.c1768.
PMID: 20483947
http://www.bmj.com/content/340/bmj.c1768.full
この2本は、反対の結果になっています。
高カリウムが増えたとするカナダの論文と、そんなことはなかったという最近のイギリスの論文です。
RCTの出版後、医療が変わったという実例であり、RALESはいい論文なので取り組みとしては良いと思いました。
反省点
長すぎましたね 
みんなごめんなさい
疲れたでしょ 
なんか準備してると、3本読むのがしんどいというのがわからなくなってきて。。。
RALESでもみんな疲れていたので、残り2本は資料を作り込んで簡単に読めるようなスタイルにして渡すべきでした。
もっとディスカッションや、グループワークにすると。
頭も疲れてくるので、体を使って何かワークを入れるべきでした。
基本的に、RCTを一本読むのが非常に良い感じで収まるんです。
が、後から物足りない感じがすごくある。。
物足りないのはいいんだよ、ってよく教えて頂くのですが、、、物足りなすぎるような気がしてしまうんですよ、僕。これは、悪い癖なんですね~。
10年前のワークショップでも、システマティックレビューとRCTを2本読みさせて「疲れました」というコメントを大量に頂いていたのが、資料を漁っていたら出てきました。。。 ![[heart]](https://cdn.wikiwiki.jp/to/w/common/image/face/heart.png?v=4)
すでに勉強会に参加している人は、論文読めますからね。
RCTを一本だったら、いつもの勉強会と同じかそれより少ないぐらいです。
ついつい、サービス精神は旺盛になってしまいます。
今後もRCT+αの精神は不滅です!
(懲りてない
)
疲れたけど、面白かった、勉強になった・・というのを目指したいのです!
参加者内訳
学生さんが30人ぐらいですね。
あとは、大学院の学生=先生方が5~6人。
医師1名、薬剤師数名。でした。
僕もワークショップいろいろしてきましたけど、、、やっぱり学生を交えるのが一番良いです。
プロばっかりだと、緊張が強いんですよね。
学生がいると、そんなこと言ってられない。
めっちゃ純粋に、論文に向き合うのに感動させられます。
これからも定期的にやるのです。やるのです。。。
みなさん、今後ともよろしく~。