第2回 Student CASP ワークショップ

Last-modified: 2011-07-05 (火) 11:50:10

第2回 Student CASP ワークショップ

6月26日はStudent CASPワークショップでした。
総勢75人!
期せずして、今まで経験した中でも5本の指に入る大きなEBMワークショップになってしまいました。
良かったことは・・


@薬学生、医学生の方が多く参加してくれた
未来を感じる一日でした。
EBMは、特に学習の初期に大きな変化を学習者にもたらします。
知識量が増えることも大事なのですが、考え方が変わるからです。
そういう意味でも、学生さんが参加されて、できたら継続的に勉強会にも来て頂く・・
そうすれば、きっと卒業までにEBMの基礎と、EBM教育の経験を得ることが出来ます。
僕が、学生の時にうけたかった教育だな、とよく思うんですよ。
みなさん全員が、面白いとは思ってないかもしれませんが、何人かは必ず育ってくれます。
素晴らしい!


@薬剤師さん、医師の皆様のチューターも沢山集まってくれた
本当に有難かった。。
グループとしては、結構難しいチームなのです。
教員の先生方がおられて、学生が多数いて、初心者もベテランもいるなかでのスモールグループです。
今回はチューターが2~3名いる状況でやりましたが、非常にスムーズでした。
集まってくれたチューターは、以前から取り組んでいるベテランもいました。
でも、この数年で一気に成長された大阪の薬剤師の皆さんが一番強力なサポートでした。
大阪の貴重な財産ですね!大阪遺産だ!


@神戸薬科大学の講師の皆様も、多数ご参加いただいた
強力にサポートをしていただいて、すごく助かったし勉強になりました。
当初、EBMについては経験がないようなお話を聞いていましたが、まあそんなわけはありません。
基礎であれ、臨床であれ、経験をおもちで、かつ教育をしてきたプロの存在感をしみじみ感じました。
治験の御経験がある先生もおられて、もっとお話をみんなにしてほしかった・・と後悔しているぐらいです。
僕たちの薬剤師さんたちの仲間と何かで繋がってくれたら嬉しいですね。


@大学事務のご協力があり、受付や物品、弁当について全面的に仕切ってくれた
いつも裏方まで自分たちでやってきました。
それはそれで勉強なんですが、この規模になるとかなり厳しい状況です。
お金も扱いますし、実はすごく神経を使う点です。
プロにおねがいできて、集中してワークショップに取り組むことができました。

プログラム

2011 年 6 月 26 日(日)
午前の部 TTD:Tutor Training Day
09:30~ 受付
10:00~10:10 Tutor の基本技術について /高垣 伸匡
10:15~10:55  脳卒中治療のエビデンス→急きょEBMの基礎を双方向的なレクチャーでやってもらいました/
流石です! by 南郷 栄秀
11:00~11:40 RE-LY 試験のシナリオmaking を みんなで体験しよう /丹下 悦子
この出し物は、良かった!
これからも繰り返しやりたいネタです。


午後の部 論文の批判的吟味
12:30 ~ 受付
13:00~13:20  ウェルカムセッション
13:20~15:00 SGL(1)
15:00~15:45  Feedback(1)
15:45~17:00 SGL(2)
17:00~ Feedback(2)とまとめ
17:45~ 閉会のあいさつ
18:00  閉会 
スタッフミーティング・片づけ・懇親会会場へ移動
19:00 ~     懇親会 ( 自由参加 )
居酒屋「えこひいき」
二回目ですが、いいお店ですね。学生さんが元気!

シナリオ

あなたはP保険薬局の薬剤師です。
いつも薬局に来られているBさんが、85才の奥様Aさんの処方箋を持ってこられました。
処方内容は
フレカイニド50mg 2錠 朝夕食後
アムロジピン2.5mg 1錠 朝食後
ダビガトラン75mg 4Cap 朝夕食後14日
お薬手帳には、前回処方としてワーファリン1mg 3.5錠を服用の記載がありました。どうやら今回ワーファリンがダビガトランに変更になったようです。


ところが普段から頑固なBさんはあまり奥様のことを話したがりません。
「他に飲んでいる薬はないよ。検査とかは女房の事やし、わしはわからんよ。」


あなたは、ワーファリンという薬からダビガトランに変更になったこと、その保管方法、一般的な副作用、あざができたり、黒い便がでたら連絡ください、と言うしかありませんでした。
その7日後。Aさんご自身から薬局へ電話がありました。
「電話で申し訳有りません。相談させてください。新しいお薬に変わってから、とても胃が重く感じるんです。食べ物もあまり頂きたくなくて・・・。それと軽い下痢にもなっているのですが、薬は続けていて問題ないのでしょうか?」
あなたは、胃の感じが軽微なら服用を続けるように、そして次回、医師に必ずその事を伝えるように言いました。
電話をきってから、あなたはAさんをすぐに受診させなくてよかったのだろうか、と不安に思いました。
そういえばダビガトランの勉強会で資料と論文ををもらったな・・と思い出し、論文を読んでみることにしました。

あなたはP保険病院の研修医です。
いつも病院に来られているBさんに病院で出会って、話しかけられました。
Bさんと話しているうちに、85才の奥様Aさんの処方の話になり、
「あんた、女房の薬さ、ちょっと見てくれよ。」
と、Bさんがお薬手帳を開いて見せてきたので、あなたも示された部分をみました。


処方内容は
フレカイニド50mg 2錠 朝夕食後
アムロジピン2.5mg 1錠 朝食後
ダビガトラン75mg 4Cap 朝夕食後14日
お薬手帳には、前回処方としてワーファリン1mg 3.5錠を服用の記載がありました。どうやら今回ワーファリンがダビガトランに変更になったようです。


あなたは、お薬が変わったことについてBさんに少し質問をしてみました。
ところが普段から頑固なBさんは、それ以上奥様のことを話したがりません。
「他に飲んでいる薬はないよ。検査とか、女房の事やし、わしはわからんよ。」


あなたは、ワーファリンという薬からダビガトランに変更になったこと、その保管方法、一般的な副作用、あざができたり黒い便がでたら連絡ください、と言うしかありませんでした。


その7日後。あなたの当直中にAさんご自身から病院へ電話がありました。
「電話で申し訳有りません。相談させてください。新しいお薬に変わってから、とても胃が重く感じるんです。食べ物があまりいただきたくなくて・・・。それと軽い下痢にもなっているのですが、薬は続けていて問題ないのでしょうか?」
あなたは、胃の感じが軽微なら服用を続けるように、そして次回、主治医に必ずその事を伝えるように言いました。


電話をきってから、あなたはAさんをすぐに受診させなくてよかったのだろうか、と不安に思いました。そういえばダビガトランの勉強会で資料と論文ををもらったな・・と思い出し、論文を読んでみることにしました。

こちらは、幻のシナリオ案
あなたは、診療所に勤務する薬剤師Pです。
Aさんはある大企業の部長で働き盛りの63歳の男性で、5年前から心房細動と高血圧で受診中です。
ここ数年、左室肥大傾向で肺動脈弁閉鎖不全(+)、左房径49.8mmで血栓(-)、心拍数80-110、BNP150-210pg/ml、BP130/80-85mmHg、動悸は時々あるものの自覚症状はありません。
お薬も、「朝食後にメチルジゴキシン錠0.1mgとアスピリン錠100mgとレバミピド錠100mgとアムロジピン錠2.5mg、朝夕食後にベラパミル錠各40mg」をずっと継続しています。
長年、担当医DがAさんにワルファリンカリウム(WF)の服用の必要性を説いた結果、やっと昨年夏に、WF 2mg夕食後で開始になりました。あなたもAさんにWFの効果と一般的な注意を説明し、検査の指示(2week後にPT-INR検査)が出ていることも確認しました。
翌月にAさんが来診された時、処方がアスピリン錠100mgに戻っていて、あなたは心配になりました。
そこで、「WFからアスピリンに再度変更ですか」とあなたがAさんに問いかけた所、「納豆も食べられなし・・・元の薬に戻ることになったんです」と言葉を濁しています。あなたはAさんにWFの服用目的や継続時の注意点をD医師から説明を受けていることを確認したかったのですが、あまり語ってくれません。
Aさんが帰られた後、あなたは心配になって担当医Dの元に確認に行きました。
P:「AさんのWFは中止なんですね。薬局で中止の理由は納豆を食べられない・・・と話されていました。」
D:「わしの所では納豆のことなんて何も話してなかったで。違うんや。WF飲むのが嫌やなんや。だから納豆を理由にしたん違うか。検査も来たくないらしいし、本人の希望があったから元に戻したんや。」


これ以後、あなたはAさんのことが気になりつつ、毎月、アスピリン錠を調剤しています。
しばらくして、ダビガトラン錠というお薬の登場で心房細動の抗血栓療法に変化がありそうだという講演会を聴きました。あなたは「ダビガトラン錠が本当にWFの代替品になるなら、Aさんももう一度挑戦して飲んでみようと思ってくれないかなぁ。」とふと思い、RE-LY試験を読んでみることにしました。


病態
○ 性別 : 男
○ 年齢 : 65
○ 併発疾患 : 高血圧
○ 家族歴:特になし
○ 酒 : 焼酎1日3杯
○ 煙草 :1日10~20本
○ 身長 : 174cm
○ 体重 :70kg
○ AFに関する主訴 :動悸による不快感
○ 心機能 :LVDd 43mm、 LVDs 23.5mm 、 LVEF 77% 、FS 45.4%、LAD 49.8mm
       

論文

Dabigatran versus Warfarin in Patients with Atrial Fibrillation
NEJM september 17, 2009 vol. 361 no. 12
ダビガトランの効果をみた非劣性試験です。
やはり、非劣性、というのは大きな壁になってきました。
やればやるほどわからないのですが、確かに意義があるスタイルですね。

吟味の結果については、またアップしていきます。

お疲れ様!

とにかく、お疲れ様でした。
次は年内に、また神戸で開こうと担当の水野教授と話しながら帰路につきました。
京都薬科大学、摂南大学のスタッフの皆様もご参加いただいたので、次は一緒に開催できたら素晴らしいですね。