論文はセットで読む

Last-modified: 2010-12-08 (水) 11:35:03

論文はセットで読む

誰も言わないことですが・・・
論文はセットで読みます。通常は、ですが。
つい、RCTの吟味、レビューの吟味・・・
など、吟味方法をピンポイントで考えてしまいがちです。
しかし、そのテーマによって、読むということをよく考える必要があります。


松岡正剛さんの本なんかを読んでいると。。
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大量に本を読んでおられて、かつそれらを頭の中で関係を構築しているんですよね。
テーマによって、「あの本」には「こう」、「この本」には「ああ」と書いてある・・と頭に入っている。
一冊の話と、大きいテーマの話が自由自在に入れ替わってお話が進みます。
ああ、読書も創造的なことなんだ・・・と思うわけです。


読論文もそうです。
一本と、テーマの話がしっかり分けられることが、僕たちには求められています。
「こんな一本がありました」
では、まだまだ。。。
「こんな一本がありました。面白い点はカクカクシカジカ。
このテーマでは、他にも~~という論文もあって、全体には・・・・です。」
と持っていけないと、認めてももらえません。


論文を見つけたら、まず吟味する。
そして、フォルダをつくってそこにいれる。
フォルダ名がその論文のテーマ。です。
論文を読むときは、
・Paper oriented
・theme oriented
の二つの方向性を、自分の中に持っておく必要があります。

10年かかって、フォルダの中が充実することがあります!



Cardiopulmonary resuscitation by chest compression alone or with mouth-to-mouth ventilation.
Hallstrom A, Cobb L, Johnson E, Copass M.
N Engl J Med. 2000 May 25;342(21):1546-53.


10年程前に、EBMを学びだしたころ。
ACLSも盛んで、ACLSを吟味してみよう!という会を開きました。
そこで使ったRCTがこれ。
非常に学ぶことの多い論文でした。
お金が無くなって、途中で打ち切りになったり、バイスタンダーが心停止だと思った患者の4割が心停止ではなくて脱落になったり。。
もちろん、他の参考論文もたくさんフォルダに入れてました。



面白いのは、こんなのもあります。
Manual chest compression vs use of an automated chest compression device during resuscitation following out-of-hospital cardiac arrest: a randomized trial.

Hallstrom A, Rea TD, Sayre MR, Christenson J, Anton AR, Mosesso VN Jr, Van Ottingham L, Olsufka M, Pennington S, White LJ, Yahn S, Husar J, Morris MF, Cobb LA.

JAMA. 2006 Jun 14;295(22):2620-8.
機械の心臓マッサージと、人間の心臓マッサージを比べた論文。
昔にも同じテーマがありましたけどね。



たくさん蘇生の論文は出ますが、いわゆるランドマーク論文とでも言うような、この分野の中心となるものがなかったのです。
10年ほど、ちらちら新しい論文はみながらも、↑このRCTをよく使っていました。
ほんっとによく使ったんですよね。。
きりはりジャーナルクラブにしたり、東京のワークショップで滑ったり。。



そしたら、今年になってRCTがNEJMにいきなり二本。

CPR with Chest Compression Alone or with Rescue Breathing
July 29, 2010Rea T.D., Fahrenbruch C., Culley L., et al.
N Engl J Med 2010; 363:423 - 433.



Compression-Only CPR or Standard CPR in Out-of-Hospital Cardiac Arrest
July 29, 2010Svensson L., Bohm K., Castrèn M., et al.
N Engl J Med 2010; 363:434 - 442.


どんと出ました。
今年はICLSのガイドラインも変わりましたが、次回のガイドライン改定に大きく影響するのでしょうか・・


さらに、LANCETにレビューも出ました。

Chest-compression-only versus standard cardiopulmonary resuscitation: a meta-analysis.
Lancet. 2010 Nov 6;376(9752):1552-7. Epub 2010 Oct 14.
あらら。やっぱりそうなのね、という結果でした。


もっともっとこのテーマについては論文が出ていて、とても全部は読めません。
松岡正剛さんのように、全部読んでいる・・・とはいかず。
僕たちは、読むのが仕事では決してないので、そりゃそうなのです。
愛用のDynamedでテーマについてさらりと見て、全体を俯瞰するのが精いっぱいです。


まあ話を戻して。。
フォルダでテーマを作っておくのは、論文の本棚です。
大量に論文はたまっていくので、どんなフォルダをどう構築するのか・・
が実は、情報に長けた先生方みんなの悩み (OO; なのです。


僕としては、テーマの中に、システマティックレビューとRCTを織り交ぜてフォルダに入れておくことがおすすめです。
レビューはカタログのように使います。
そのテーマで、どんなpaperがあるか?をいつでも見れるようにです。探すのも結構大変なので。
この点は、二次文献のDynamedも強い味方。
そして、自分の頭を研ぐには、RCTやその他の、患者さんについて調べたデータが重要になります。
ああ眠い。。