Courage トライアルの吟味をした論文があった

Last-modified: 2009-01-01 (木) 12:32:38

COURAGE TRIAL の吟味をした論文

The Truth and Consequences of the COURAGE Trial
Dean J. Kereiakes et al
http://www.journals.elsevierhealth.com/periodicals/jac/article/PIIS0735109707026629/abstract
という論文が、ネットで入手できます。
Courage トライアルを批判した論文で、非常に面白い内容です。
ただ、ボロッかすに書きすぎかなと思うのと、英語がわかりにくいのですが・・

吟味の要点

・Courageトライアルは、安定狭心症に対するPCIの効果を見ているが、このテー
マは昔からすでに研究があり、何も新しいことは示されていない

・安定狭心症の胸痛を和らげるアウトカムを見た臨床研究の中で、Courageトラ
イアルだけがPCIの優位性を証明できていない

・サンプルサイズの計算で、内服治療のみの群は死亡率かMIが21%おきるという
過程で計算されていたが、実際は12%しかおきなかった。
このことから、サンプルサイズが不足している可能性がある。
(実際に、差がない論文でしたから本当に足りていないのかもしれません)

・予想よりも少ないアウトカムだった理由は、inclusion criteria の問題かも
しれない。冠動脈の造影をしてから、このトライアルに参加することになるの
で、重症例が含まれていない可能性がある。
軽症の冠動脈狭窄ばかりを対象にしたために、死亡者やMIを起こす人が少ない可
能性がある。

・またinclusionには、CK-MBの上昇を伴う胸痛という、漠然としたものを使って
いる。このことで、PCIが必要ではない症例も含まれてしまうと、PCIの効果がさ
らに出にくくなる。

・アウトカムが適切ではない。総死亡率を使っているが、すでに安定狭心症につ
いてはPCIをしても死亡率が下がらないことは先行研究の結果わかっているの
で、何もわからない可能性が高いはずだ。

・PCIのレベルが低いのではないか?93%しか成功していないじゃないか!

冠動脈造影をした症例の評価者が研究にはいなくて、現場の医師の診断で行われ
ている。したがって、正確な冠動脈狭窄の評価が全体で出来ていないので、狭窄
が硬くてガイドワイヤーが通らず、PCIが出来なかったような症例も評価できず
数にいれられてPCIのデータを悪化させている可能性がある。

・薬剤流出ステント(DES)の使用率が2.7%しかない。DESは、再狭窄を予防する
ことが示されており、DESを使用したらPCIの効果が示せたかもしれない。
(DESは評価が分かれていて、筆者はDESの肯定派のようですね)

・PCIを施行された21.1%の患者が、10ヶ月平均で追加治療をうけている。そこで
のステントの使用法(ベアメタルなのか、薬剤流出ステントなのか)が不明

・死亡とMIのアウトカムが、国によって違う。アメリカ21~22% vs カナダ14%。

・内服治療群でPCIをうけた「クロスオーバー」が32%であったが、これは予想よ
りも多い数であった。平均が10回/week、中央値が3回/weekの胸痛がある患者を
対象に行われているが、この奇妙な分布からは大きく2つのグループがあること
が予想される(すごく胸痛の多い人と、ぜんぜんない人に分かれているというこ
とか?)。
これによってクロスオーバーの数や、PCIの優位性が示せないことは一部説明が
つくのではないか?
(胸痛が多い→PCIを受けることになる ぜんぜん胸痛のない人がいる→PCIをして
も、何もアウトカムが出ない)

・コンプライアンスがよすぎて、日常臨床とかけ離れている
CRUSADEという研究で、
http://jama.ama-assn.org/cgi/reprint/292/17/2096.pdf
 βブロッカーのみ処方されている患者→46%
 βブロッカーとアスピリン→36%
 βブロッカーとアスピリンと高脂血症薬→21%
しかコンプライアンスがないことが示されている。
つまり、COURAGEトライアルの内服群のデータは現実の臨床とかけ離れた治療内
容によって達成されており、参考にはならないのではないか。


などというものです。
いろいろ学ぶことがありますし、深い吟味のポイントが見えてきます。