Step2 第三回
前(Step2 第二回)の続きです。
あなたがSmothersさんの検査を出した結果が帰ってきました。
HbA1c 8.9%
蛋白尿(+)
総コレステロール 6.48mmol/L →250mg/dl
LDL 3.4mmol/L
HDL 0.9mmol/L
TG 3.9mmol/L
あなたの疑問は、
・蛋白尿があって、高血圧で高脂血症の糖尿病患者とそういうリスクのない糖尿病患者のリスクを比較したエビデンスはどれなのか?
・このような患者において、タイトな血糖値・血圧・コレステロールと蛋白尿のコントロールは死亡率や疾患の発生率を低下させるのだろうか?
Step2A
ステップ2Aは、「どこを探すかを決める」ことです。
「このシナリオの疑問は、内科的な問題なので、最良で最速のEvidence Based Information Sourceを検索することになります。それはプリントとelectoronic form ですよ。」とのこと。
現在の日本の状況ではUp to dateなどの二次文献を検索することになりますよ、ということでしょう。
本では、OVIDを使うシーンが多いような気がします。
OVIDなんて、使えるところ、日本じゃほとんどないですからね。。
How to deal with the evidence that finds you
という項目があります。なんじゃこら?
「あなたを見つけたエビデンスをどう扱うか?」・・「を」ってどうなの?
どうやら・・
患者さんが持ってきた情報に、どうコメントをするのか、どう考えるか?
ということのようです。
本では、患者さんがあるネットのページ(National Diabetes Education Programのページ)から情報をもってきたという想定で書かれています。
「最新かつ最も正しい情報ではないだろうが、信頼に足るページだと見て取ってあなたはほっとする 」という下りがあります。
さらに、医師はこのページのリンクから、心臓疾患のrisk calculator を2つ知って、Mrs Smothers さんの心臓血管リスクを計算しています。
これは、フラミンガムスタディの研究結果と、イギリスの研究UKPDSによるものです。
http://www.nhlbi.nih.gov/about/framingham/riskwom.pdf
http://www.dtu.ox.ac.uk/index.php →これはソフトなので、ダウンロードして使います
「糖尿病のMrs Smothers さんに対して、糖尿病の有名な研究であるUKPDSのデータを使った計算ソフトはちょうど当てはまる(Step3批判的吟味をしたわけです)」と考えて、医師はソフトをダウンロードして、Smothersのデータを入力し、心血管疾患のリスクを計算します。もちろん、フラミンガムスタディからのリスク計算ソフトもダウンロードして使ってみます。
そこから、
UKPDS→今後10年で冠動脈疾患を起こす確率=27.3%
フラミンガム→今後10年間の慢性心疾患の確率=32%以上
という結果が得られます。
日本だと
http://www.m-junkanki.com/kennsinn/kennsinn_ND80_CV.html
などの計算サイトがあります。これが使えるかどうか、元の文献や計算式などの吟味をしないといけませんね。
・・・でも、これって検索か?って思いませんか。
ついつい、日本人は検索というと検索だけ考えますけど、EBMの元本はもっともっとフレキシブルな書き方なんですね。逆に読んでも検索について分かりにくい感じがします。
検索の具体的なことは、むしろ日本語のEBM本を読んだほうが身につきやすいでしょう
Where to find the vest evidence
「Mrs Smothers は同年代の女性よりも高いCHDのリスクを持つことがわかりました。これで私たちはもう十分に治療を行うエビデンスを得たように思えるのですが、Smothersさんは私たちの治療が彼女の助けになるかどうかの情報を求めるのです。」
ここ!ここが大事ですよ!
ここで、医療提供者と患者さんが感じる問題やポイントが微妙に違うことが書き出されているんです。
ほんとに微妙な違いなのです。
@担当医がSmothersさんのCHDリスクが高い、ということを知って治療しようと思う
@Smothersさんが、治療が助けになるかどうか知りたいと思う
なんだか、おんなじようなことだと思いませんか
この違いを感じられるようになるのは、EBMの学習ではPECOを沢山立てることにつきます。
PECOをシナリオから沢山書いて、お互いに教えてもらうのです!
そのことで、患者さんの感じる問題点も徐々に感じられるようになると思うのです。
さて、本文は続きます。
「4Sアプローチに従って、Ovidを検索します。そしてClinical Evidence, a system にたどり着くことになります。(Step2 How to find current best evidence その1 と 4S論文とは何だろう? を参考にして下さい)」
日本ではOvidはなかなか使うチャンスが無いですね。きっとすっごい便利なのでしょう。
「与えられた疑問に対する、ベストの情報源ではないかもしれないけれども、Ovidにアクセス出来るならそれは適切なスタートだし、あなたはベストの情報源が何かも知らないだろう」
とかかれています。
いい情報源を使うと、検索についていろいろ考えあぐねることもないぜ、っていうことですね。
この辺りのくだりは、
「Step2検索」の中に、さらにstepが3つある、ということが面白いポイントです。
検索が、「疑問の定式化」や「情報の吟味」になることもありますからね。
最近Up to dateを使っている人が増えています。
この人たちの中では、こういう現象が起きています。検索=吟味という流れ。
気をつけないと、吟味する力がつかないですからね。
若手には、情報の吟味のやり方も、しっかり教えなくてはいけません。
いつの時代も、便利になるとひとつ能力が消えます から。。
情報源の妥当性だとか、Up to dateがホントに正しいのかという疑問も感じずに、仕事で使っている。
もちろん、それで良いのです。。良いのですケドネ。。
次回からはStep2B以下を読んでいきます。