基礎編/TDCの解説

Last-modified: 2009-02-07 (土) 10:31:38

TDCの下段計器群(RANGE,AOB,SPEED等)の解説

TDCの下の段の計器は色々な設定値が絡み合っており、よくわからない方が多いと思います。
そこで、TDCの下の段の計器はいったいなんなのか、各設定値がどんな意味を持つのかについて解説します。
結論からいいますと「移動する目標の到達地点を予測して、魚雷の航走角度(GYROANGLE)を決定する装置」です。
ここではこの動作を基本からしっかり理解することを目的とします。
動作が理解できれば、様々な戦況において色々な活用ができるでしょう。

基本1: 目標の方角(BEARING)とGYROANGLE

まずGYROANGLEの決定する基本要素は目標の方角(BEARING)です。
静止目標(速度0)に対しては、基本的には単純にBEARING = GYROANGLEとなります。
では、検証してみましょう。まずはTDCのManual InputをONにして手動入力にします。
次にSPEEDを0にセットして、BEARINGをいじり、GYROANGLEがどう変化するかを見てください。(RANGEとANGLE OF BOW(AOB)は放っておいて構いません)

tdc01.jpg

BEARINGが±15°ぐらいの範囲では、BEARING = GYROANGLEとなっているはずです。
ですが、BEARINGが40°以上になると、GYROANGLEが少しずれているのに気づきましたか?
(GYROANGLEメーターの見方が判らない場合は、潜望鏡モードにすればGYROANGLEが数値で出ています)
「あれ?話が違うじゃん」と思ったかもしれません。
ここで実際の魚雷の動きを考えてください。魚雷は発射直後は艦首方向にまっすぐ射出され、その後、セットしたGYLOANGLEに向けて曲がっていきます。
もし、BEARINGが60°でGYLOANGLEも60°だとこの曲がるまでにかかる距離分だけ、目標に対して平行にずれてしまうことになります。
そこで、TDCはこの曲がるまでにかかる空走距離を補正して、GYROANGLEを決めているわけです。
目標が艦首方向に近い場合はこの補正はほぼ0ですが、急角度になってくると目に見える形で出てきます。

ここまで来て勘の良い方なら気づいたかもしれませんが例え角度が急でも、目標がものすごく遠ければこの補正はほとんどなくなるはずです。
早速試してみましょう。RANGEを一番遠い10kmにしてみてください。今度は急角度でもBEARINGとGYROANGLEの差がほとんどないはずです。

以上のように、まず、GYROANGLEはBEARINGを基本に決定されます。
ところでBEARING(目標の方角)とは当然、潜望鏡(UZO)で目標を見れば判ります。
従ってTDCのManual InputをOFFにすると、潜望鏡(UZO)の方角がそのままBEARINGに反映される訳です。

基本2: ANGLE OF BOWとBEARINGの関係

次にいよいよ、移動目標… といきたいところですが、その前にBEARINGとANGLE OF BOW(AOB)の関係について説明しておきましょう。
AOBはBEARINGと連動しており、BEARINGが変わると、AOBの値もつられて変わります。
つまり機械的ではあるがBEARINGによってAOBは自動的に補正される訳です。
確認してみましょう。以下のようなシーンを考えます。自艦と前方で直角に交わるように目標が右舷から直進しています。

tdc02.jpg

このシーンで、目標が右45°方向に見えたならばAOBは左舷45°となります。
TDCのManual InputをONにして手動入力にして、BEARINGを右45°、AOBを左舷45°にセットします。(順番はBEARINGを先にセットしましょう)

tdc03.jpg

セットしたらBEARINGを動かして0°(艦首正面)にしてみましょう。AOBが連動して動き、左舷90°になったはずです。
目標が正面にきた時、目標は横腹をこちらに向けている訳です。(先のシーンからみれば当然ですね)
このようにAOBはBEARINGに連動して変化するようになっています。

しかし、BEARINGをぐるぐる回してみてAOBの変化を見てみれば判りますが、この連動はあくまで機械的なものです。
目標も自艦も転舵しなければ、BEARINGとAOBの関係はこれで正しいですが、どちらかが転舵した場合には変わってしまいます。

実践1: SPEEDとRANGE

今度こそ移動目標です。といっても基本編を理解していれば想像がつくと思いますがGYROANGLEの基本はあくまでBEARINGです。
移動目標に対して、そこからどの位GYROANGLEに補正をかけるか、ということになるわけです。
では例をみてみましょう。
手動入力でBEARINGを0°,RANGEを1km,AOBを左舷90°,SPEEDを0に設定してみてください。
静止目標が1km先に横腹を向けているのですから、当然GYROANGLEは0°になっているはずです。
では、ここからSPEEDを5knotにしてみましょう。GYROANGLEが左にずれるはずです。目標が速度5knotで左に移動しているのですからTDCはこれを補正した訳です。
SPEEDを15knotにすれば当然ですが、さらに左にずれるはずです。

tdc04.jpg

ではSPEEDを15knotにしたまま、RANGEを4kmにしてみましょう。GYROANGLEはほとんど変わらないはずです。
距離が遠くなっただけ魚雷到達に時間がかかり、相手の移動距離も増えますが、遠くなっただけ自艦から見た目標の移動角度も小さくなり、相殺されてしまいます。
これは下のように三角形を書いてみれば判ります。要は相似の三角形なんですから、角度(GYROANGLE)は変わらないはずです。

tdc05.jpg

でも、実際にはGYLOANGLEは少しだけ変わりましたね。これは基本1で書いた射出直後から曲がるまでの空走距離に対する補正が入っているせいです。

実践2: 移動目標のAOB

移動目標のAOBについても確認します。先と同じくまずはBEARING 0°,RANGE 1km, AOB 左舷90°, SPEED 15kontとします。
ここでAOBを180°へと動かしてみましょう。GYROANGLEは段々と小さくなり最後には0°となるはずです。
これは自艦正面で真横に移動していた目標を、自艦からまっすぐ遠ざかっていくように変更したからです。
まっすぐ遠ざかっている目標に対してGYROANGLEに補正が入らないのは自明ですね。

応用1: TDCを使わず自分で先読みして攻撃

以上のTDCの働きが理解できれば、あとは自由に応用ができると思いますが、まずは単純な完全手動攻撃を例にとってみましょう。
これはGYROANGLEを0°にして、艦自体を操舵して方向を変え、自分ででタイミングを測ってTDCには頼らずに攻撃する方法です。
まず、GYROANGLEを0°にします。手動入力でBEARINGを0°,SPEEDを0knotにすればGYROANGLEは0°になります。

SPEEDを0にしてしまえば(しかもBEARING 0°なら)AOBやRANGEは関係ないのは今までで理解しているかと思います。
あとは、自艦を操舵して目標が前方を直交する位置につけ、タイミングをみて発射するだけです。

例えば速度5knotの目標に直交するように待ち伏せ、30knotの魚雷を発射する場合、左舷(か右舷)の、正面まで10°の方角に目標が来たら撃てばいいことになります。
目標の方角は潜望鏡で確認しましょう。Manual InputをONにしたままにすれば潜望鏡の方角はBEARINGに反映されません。(手動設定した0°のまま)

応用2: 事前入力による攻撃

実際に接敵する場合には、通常の場合、コンタクト情報から予想して先回りして目標を補足、目標の正確な航路と速度を割り出したならさらに先行して攻撃位置で待機、といった手順になるかと思います。
そこで目標を捕捉し、航路と速度が割り出せたならば、TDCに先に入力してしまうことができます。
攻撃地点では、大抵、目標に直交するように待機すると思いますのでBEARINGが0°、AOBが(左舷か右舷)90°ということになります。
そこで、Manual InputをONにして、BEARINGを0°、AOBを90°に設定します。SPEEDには割り出した速度をそのまま入れればOKですね。
RANGEについては、目標が正面に来たときにどの位の距離につけるつもりかを考えて入力しておきます。普通は700m~1500mぐらいの間でしょうか。
ここで、潜望鏡の方角を0°にします。CTRLを押しながらカーソルキーを押せば微調整ができますので0°に合わせたら、TDCのManual InputをOFFにしてください。
これで、潜望鏡の方角(BEARING)とAOBが連動するようになります。潜望鏡を回して現在目標がいる方角(多分ほぼ90°か270°)に向けてください。
TDCを見るとBEARINGが潜望鏡に合わせて90°に変わっており、AOBも連動してほぼ0°となり、目標は自艦にほぼまっすぐ近づいていることになります。(正しいですね)
目標が接近してきたら、最適距離につけるために恐らく前進、後退して微調整する必要がでてくるでしょう。
また、直交するように待機していたはずなのに完全に直交していない場合もあると思います。この場合、直交するように転舵するか、一旦Manual InputをONにしてAOBの方を修正して調整する必要があります。
(AOBを修正する場合は、修正が終わったら忘れずにManual InputをOFFにしましょう。またManual InputをONにしたまま潜望鏡を回さないように。BEARING/AOBとの整合が取れなくなります。)
調整が済んだら、目標が正面近くにくるまで待機して、正面近くに来たら発射管を開け潜望鏡で目標をロック、ロックしたら即魚雷発射です。
Notepadに数値を入力したり、NotepadをチェックしてTDCにデータを送る必要はありません。(Manual InputがOFFの時は何もしなくても潜望鏡に合わせてBEARINGが動き、BEARINGに連動してAOBも正しい値にセットされます)
最後になりましたが、雷速、信管、深度なども目標艦に合わせて事前にセットしておいてください。

応用3: コンボイの複数艦への同時攻撃

コンボイの全ての船は相手に気づかれて警戒されていない限り、通常は同じ速度、同じ向きで航行しています。
ということはいちいちSPEEDを入力し直す必要はありませんし、向きが同じということはManual InputをOFFにして潜望鏡を向ければ(BEARINGを変えれば)、AOBも自動補正されます。
距離(RANGE)は今まで解説してきた通り、正面付近で狙う限りはGYROANGLEには大きく影響しません。
ということはいちいち計算をやり直さなくても一度に複数の目標に同時に魚雷を発射する事ができます。

一旦SPEEDとAOBをセットして、魚雷の雷速、信管、深度を別々の目標に合わせてセット。
後はManual InputをOFFにして潜望鏡で目標を捉えたら魚雷発射、即座に潜望鏡を回して次の目標に魚雷発射、と流れるように魚雷を発射します。
タイミングを測ってこれを素早く行えれば、コンボイ中の複数の目標にほぼ同時に魚雷を命中させることができます。味方艦の爆発を見て回避行動に入る暇も与えません。

補足: RANGEは魚雷の航走距離に影響しないの?

今までの説明を見ると判るとおり、RANGEはずいぶんいい加減でよいようですが、RANGEによって、魚雷の航走距離や信管の起爆タイミングが影響を受けたりしないのでしょうか?
そこで、GYROANGLE 0°(真正面)の3km先の静止目標に対し、RANGEを最小の300mと最大の10kmにして魚雷を撃ってみました。
結果、どちらもきちんと命中しました。よってTDCのRANGEはGYROANGLEの補正に使うだけで、他には全く影響しないようです。