魚雷発射諸元の考察(机上論

Last-modified: 2009-05-21 (木) 01:43:54
 

魚雷発射に際し、様々な諸元を解析する必要があります。
解析結果の誤差が大きいと命中しないのは当たり前です。
では、どの諸元がどのくらい命中率に影響するか考察してみました。

 

設定状況

 

自艦停止状態で、目標針路に垂直に1kmの位置にいます。目標は9ktsで直進中です。
TDC入力値は、雷速30kts・BEARING,AOB,的速は0です。
つまり、魚雷は自艦0時の方向にまっすぐ30ktsで航走します。
この状況で目標に当てるには、左舷17°に目標が来たら発射すると命中します。

 
  • 魚雷のIP(インパクトポイント)到達時間

    1km/(30kts*1.852)/3600sec=64.8sec (1.852はktsをkm/hに変換する際の係数)

  • 目標のIP到達時間

    1km*tan17°/(9kts*1.852)/3600sec=66.0sec

    1.2secの誤差がありますが、方位が整数では17°が一番近いので、これを基準に計算しました。

    (9ktsで1.2secだと、5m程度の誤差)

     

距離の誤差

 

目標までの距離が本来1kmのところ、3kmと誤って解析し、2kmの誤差で発射した場合

 
  • 目標のIP到達時間

    3km*tan17°/(9kts*1.852)/3600sec=198.0976sec

  • 魚雷のIP到達時間

    3km*(30kts*1.852)/3600sec=194.3844sec

  • 誤差

    9kts*1.852/(両者の誤差3.713185sec/3600sec)=17.2m

     
    2kmも距離を誤りましたが、17m程度しか誤差がでません。
     

方位の誤差

 

目標の方位が本来17°で発射するところ、19°と2°の誤差で発射した場合

 
  • 目標のIP到達時間

    1km*tan19°/(9kts*1.852)/3600sec=74.36881sec

  • 誤差

    9kts*1.852/3600sec*(両者の誤差9.573999sec)=44.3m

     
    2°の発射タイミングのずれですが、44mもの誤差が出てしまいます。
     

速度の誤差

 

目標の速度が9ktsのところ、7ktsと誤って解析し、2ktsの誤差で発射した場合

 
  • 目標のIP到達時間

    1km*tan17°/(7kts*1.852)*3600sec=84.89899sec

  • 誤差

    9kts*1.852/3600sec*(両者の誤差20.10417sec)=72.4m

     
    たった2ktsの解析誤差ですが、72mもの誤差が出てしまいます。
     

AOBの誤差

 

AOB90°のところ、80°と誤って解析し、発射した場合

 
  • 魚雷のIP到達時間

    (1km+(sin10°*(1km*tan17°)/cos10°))*tan17°/(30kts*1.852)/3600sec=68.28781sec

  • 目標のIP到達時間
  • 誤差

    (9kts*1.852)/(両者の誤差1.236609sec/3600sec)=6m

     
    この位置からAOBの解析を誤っても、10°でしたら、誤差は僅かに6mです。
     

まとめ

 

距離・AOBの解析に誤差があっても、命中率への影響は僅かです。
方位の誤差の影響は大きめですが、潜望鏡やhydrophoneなどを使えば、目標の方位の誤差は比較的抑えられると思います。
重要なのは、目標の速度です。
2ktsの解析誤差が、IPでは72mもの誤差になり、命中率に大きく影響します。
魚雷発射前は、繰り返し速度の解析を行うなど、目標の速度解析誤差を抑えることが重要です。
逆に、速度解析結果に自信がない場合は、salvoモードで発射することも選択肢のひとつです。
(例えば、射角4°のsalvo2発発射は、距離1kmで、散布幅約70mとなります。)

 

今回は、距離1km・的速9ktsでの魚雷0時方向直射での考察結果です。
別の発射方法や状況(的速など)では、また違った結果になるかも知れませんが、基本的には同傾向になると思われます。