ろーや

Last-modified: 2010-12-07 (火) 16:32:48

「お前はこれから実験体ナンバー77657だ」

どこか、まっしろなおおきなたてものにつくと、白い服の人にそうつげられた

なんばーがおおすぎておぼえられないし、そもそも自分はなんばー77なんとかっていう名前じゃない

どうしてなんだろう

不思議に思って、思い出す

皆自分のことを「化け物」とか、「やくびょうがみ」とか、「しにがみ」とか色々な名前でよんでいた

それとおなじようなものなのだろう

そうおもってがんばって覚えてみることにした

覚えたらきっと、誰のことをさしているのかがわかるとおもうから

「分かったか?ナンバー77657」

白い服の人が、おそらくは風香であろうことを言う

「はい、わかりました!」

風香は小さなころからようちえんのセンセイに『大きな声でげんきよくあいさつしなさい』と言うことを教えられてきたので、それをじっこうした

もっとも、それはただ他の同じ年代のこどもたちから離れた所できいていたにすぎない

そこで、ふとあしたからのようちえんはどうするのかな

そう思いながらむごんでついてこいと言わんばかりにすすむ白い服の人に後ろへ着いて行く

教えらた事をしっかり守っていれば、悪いことをせずに、わがままを言わずにいいこでいたら、きっとパパとママがむかえにきてくれる

だからそれまで、いいこにしてよう

幼く、何も知らない風香はそう心に誓う

たとえそれが『嘘』だと分かっていても、その『嘘』が『本当』になる可能性を信じようとしていた

やがて連れてこられたのは、コンクリートでできたちいさなへや

といれは個室であるし、べっどもしっそながらにあった。

ただその窓はくりぬいたように穴が開いており、そこに鉄格子があった。

また、唯一壁でない部分も鉄格子があり、そこにちいさな扉らしきものが鍵付きであった

どうわなどでよんだ、『ろーや』のようだった

「お前にはこれをつけて貰うぞ」

そう言われると変なデザインの手枷と足枷をつけられる

あるていどまでなら手足は動かせるが、それいじょうはむりなタイプだった

ちいさな女の子にとっては、それはけっこうな重さだった

はずしてほしいなーけどむりだろうなー

あたまのなかでそう考えていると、白服がろーやの扉をひらいた

なかにはいれということのようだったので、指示されなくても中に入る

中に入ると、すぐさま扉がしめられ、かぎがかけられた

なんとなくやっぱり。そう思うと近くにあったベッドの上に座る

どうわでは、わるい魔王につれさられたおひめさまがろーやにとじこめられて、おうじさまにたすけられてた

じゃあわたしもおうじさまにたすけてもらえるのかな

おうじさまはだれかな

パパとママかな

幼く、無知で無垢な少女はベッドの上であしをぶらぶらさせながら、ゆめのようなことをかんがえる

ありえない、ただの空想のようなこと

けれどしょうじょにはこの空想と……両親とかわした嘘の約束だけが唯一のひかりだった

そう

この時にはまだ、『光』は確かに存在したんだ――