――ある日突然、ボクに目もくれていなかったような少女がボクと契を交わすと言ってきた。ようやくボクの願いが叶ったかとも思えたけど、そうじゃなかった。
少女はボクの願いを打ち破るようなことを条件に、契を交わすと言ってきたんだ。
……まさか、とは思っていたけれど、本当にこんなことをするとは。
ボクでさえ、想像がついていなかった。
――躊躇いを、飲み干して、
キミが望むモノは何?
「――本当に、いいんだね?」
「構わない。あの子達の所に戻れるなら、構わない」
――残念だ。
「……おめでとう、キミの願いは成就した。さあ、新しい力を使ってみるといいよ」
だからボクは、皮肉な叶え方をしてやった。
キミがそんなことを願うからだ。『戻れる』なら、構わないのだろう?
喜ぶキミの姿が、もう少しすれば絶望するキミの姿になると思うと、とても愉快だ。
上げてから落とす。それがボクだよ、×××。
――ねえ、×××。
今の悲しみは、君の悲しみは、どれくらいなんだい?
*
……あの日に、
――交わした約束、忘れないよ。
ようやく決断をして、目の前の嫌味ったらしい白いキザな野郎に話しかけてやった、それも条件付きで。
――そう。
『もう一度、魔法少女に、なる』ってね。
――けれど、こんなにも皮肉な叶えかたをする必要はなかったんじゃないの?
魔法少女になれたのはいい。新しい力を手に入れたのもいい。
けれど、『戻れた』としても、同じ悲しみを繰り返すだけじゃない。
――わたしはこんな結末、望んでなかった。
仲間が居て、でも次第に失われていく。
その仲間達を全員助けろって言うのなら、やってやる。
――希望の魔法少女。
それは紛れもない、わたしにつけられた名だ。
――守宮やもり――
守宮やもりは、希望の魔法少女でしょ?
わたしがこんなことで落ち込んでちゃいけない。
さあ、アイツへの復讐をしてやろうじゃないか。
アイツの所には決して戻らずに、自力でハッピーエンドを掴むっていう復讐をね。
ハッピーエンドを掴めたなら、戻る必要なんてない。
――魔法少女の一世一代の物語、紡ごうか。
仲間を救うために、何度でも、繰り返してあげる。