わたくし、色々と残念な子こと源みなもと 風香ふうかは今、一大決心を迫られています!
選べるのはどちらか片方……どちらかを取ってしまえば必ずもう片方をないがしろにしてしまう……そんなの、絶対にあり得ない!
けれどどちらかを選ぶことは不可能。
ああっこれが運命なのだろうか!
―ぴろろろろーん―
「あれ?風香、だっけ?どうしたの?コンビニで合うなんて珍しいね~!」
「あ、翠君。あのね、やきとりかにくまん、どっちにしようかな~って。たまにはコンビニで手軽に済ませたい日だってあるし」
エコーのかかったような音と共に入ってきた、同じ学園島の中まである神風 翠に声をかけられ風香は濃芝居をやめ、にこやかに翠の言葉に答えた。
チートと呼ばれる風香も一応は学生。特待生とは言え結構生活費のやりくりに頭を悩ませていたりもするのだ。そして足りない頭で考えた結果、どちらを買うかを選ばないと晩御飯とか今月の生活費とか色々苦しかったりするのだ。
「あははっ平和そうでなにより~」
そんな些細なことで真剣に悩む風香をほほえましく思ってか、どこか影を感じさせる笑みで翠は答えた。表情は優しいし、交友的ではあるものの風香に助け船を出すつもりはなさそうだ。
「よし決めた!最近寒いからここは肉まんを――――」
「えっと、肉まん1つ下さい……」
「と、思ったけど最後の1つを取られたから大人しくやきとりにしておこう。」
「君、ミツネちゃんだっけ?奇遇だね~こんなところで合うなんて!」
「あれ?風香さんに……翠さん?えっと……お久しぶりです。と、それはいいとして……どうしたんですか?風香さん?」
「ううん。なんでもないよ?ただちょっと肉まんたべたかったなー……と。」
「なら半分こしませんか?風香さんの買ったやきとりと私の肉まんを半分こです」
「それだとミツネちゃんの方が多くお金払うから、私は二本買ってそのうち一本をミツネちゃんに渡すよ!」
「なら決まりです」
おいてかれちゃったなあ~、と会議をしている2人を見て思う。
こういう平和な光景は、ボクには似合わないや。
心の中でそう呟き、翠はそっとその場を離れる。
いつかボクも……あんな風に誰かと笑えたらいいな……
叶うことは無いと諦めている、小さな願望を思い浮かべながら。