神風翠 過去編

Last-modified: 2011-10-20 (木) 16:48:10

街にはサイレンが鳴り響く。
辺りに転がる大人達。
全壊した建造物群。
まるで戦争の跡地かのような光景。
その中に、たくさんの大人達に銃を向けられる、十歳にもみたない小さな少年。
ズタボロの、小さな少年・・・。

【過去編】

サイレンが鳴り響く。
煩いなと思いつつも、薄れかかった意識をたもち、立ち尽くす。
周りを見ると、なんかもうぐちゃぐちゃだ。

自分がやったんだって事、分かってる。
だけど仕方なかったんだ。間違っただけで。
攻撃してくる大人達をどうにかしたかっただけで。
間違いなんだよ。望んでいなかったんだ。

それでも皆は分かってくれない。

皆僕が嫌いなんだ。

ごめんなさい。こんな風に生まれてしまって。
ごめんなさい。こんな力を持ってしまって。
僕はもう何もしないから。せめて殺してください。
僕は怖がりだから、自分を殺せないんです。
だからもう僕を許して・・・。

なんだか眠くなってきた。
おかしな匂いがする。

良かった。僕を許してくれたんだ。
このまま、僕は眠るように死んで。
それで、皆幸せに・・・・・・・・。

僕は施設に入れられました。
結局許してくれなかったようです。
施設には他にもたくさん子供がいます。
皆、悪い事をしたのかな。

僕はちょっとした有名人です。
色んな人が僕を訪ねて来ます。
色んな人が僕の噂をします。
色んな人が僕を見ます。

全然嬉しくありません。

施設が突然崩れました。
皆悲鳴を上げます。
仲良くしてくれた日向君が瓦礫の下敷きになっています。
施設の人が僕たちを誘導して逃がそうとしましたが、入って来た人達に頭を斬られました。
僕は日向君を助けようと思い、瓦礫を能力でどかしました。
日向君はまだ生きていましたが、大人達が僕を見つけ、捉えようとしてくるせいで助けられません。

大人達が僕に攻撃します。
とっても痛いです。お腹から血が出ました。
僕に攻撃した人は、他の人にやり過ぎだと怒られていました。

全部僕のせい。
この人達がここに来てしまったのも、あの人が怒られるのも、日向君を助けられないのも・・・。

意識が薄れる中でそう思った時、僕は消滅を望みました。

みんな、消えました。
大人達も、施設も、日向君も。
僕だけが残りました。

また、僕は間違えてしまった。
消滅するのは僕のはずだったのに。

やっぱり僕は駄目な子です。