――私に表情を教えてほしい。
そう目の前の女は言いやがった。こいつに表情を教えるのに二ヶ月もかかってしまったが、ある意味有意義に使えたと思う。
ポーカーフェイスと呼ばれていたこの電波女に俺はすっかり懐かれてしまっているけど、それも悪くはない。
――電波で、だけど(俺個人の目線だけど)美人で、守ってやりたくなる、そんな奴。
「……祗、どうかした?」
こういう会話では表情一つ変えずに、小首を傾げながら聞いてくる。その言葉に、苦笑いしながら俺は言う。
「なんでもねーよ。お前と居れることが幸せだなって考えてただけだ」
あながち、嘘じゃあない。こいつと居る間はずっとトラブルに巻き込まれたけど、それでも無駄な時間じゃなかった。知り合いだって増えたし、なによりこいつが成長していく様を見れた。
――出会ってまもなかった頃は、何も知らなくて、周りから避けられて不登校になっていたこいつが、まともに学校に通えて、友達もたくさん居るようになった。
それは紛れもない事実だ。その事実は俺にとって凄く嬉しいこと。
娘を持つ父親の気持ちがよくわかるような気がしたことも何度かあった。こういうのも大切な経験なんだと思う。
そんなことを考えながら、俺は眠りについた。
*
――早朝、この時間、キングサイズのダブルベッドで、起きる。……寝起きのキックで。そして二人とも起き上がれば、手をつなぐ。
まるでそれは彼氏彼女の関係みたいだ。……もう、なっているのかもしれないけれど。
「……祗、こっち向け」
寝起きでまだ頭がボーっとしている時に、ふいに口元に妙な感触がした。……ああ、間違いない、これは――。
「祗、おはよう」
そう言って、少し悪戯っぽく口元を笑ませている目の前の電波ちゃんの常にオープンしている額を小突く。
目覚めのキスといえど、いきなりこれはびっくりする。おかげで目が覚めた。……いいこと、なんだろうけど。
fin?
――――
おわれ。
なんかかきたくなったからかいてみた。
ヴィーナスとジーザス、O-s'宇宙人をなんとなくイメージ。