第一部.定理33のおまけその2

Last-modified: 2007-07-15 (日) 18:07:39

第一部.定理33のおまけその2

これまで説明したことから歴然とわかる通り、によって生み出されたものは(この世でもっとも完全なの本性から必然的に生まれてしまったんだから)どれもこれも最高に完全なものになるんだ。だから、のどこを探しても不完全さなんかかけらもない。まさに、が完全だというその事実のせいで、ぼくたちはが完全であるということを言わないわけにはいかなくなってしまうんだ。

それでも君たちが「この世は何もかも不完全だ」(=自分にとって都合のいい世の中じゃない)と主張したいんだったら、君たちが怖れ大事にしているだって不完全だってことになってしまうんだよ。だって、もしこの世のあらゆるものごとが、今の完璧な姿以外の形で生まれていた(=不完全な姿で生まれた)んだったら、せっかくぼくたちがとほうもなく完全な存在について一生懸命考え抜いた末に、完全な本性がにセットされている(性質になっている)っていう結論を出したのに、それと違う不完全な本性がにセットされていることになるんじゃない?

ここまで話せば、もうこの人たちも「世の中は何もかも不完全だ」みたいな考え方が矛盾していることに気付いてくれるはずだし、こんなことを日がな一日考え続けるような不毛なこともしなくなるはずだとぼくは信じて疑わない。どうしてこの人たちが「世の中は何もかも不完全だ」と思ってしまったかというと、結局ぼくが第一部.決めごと7で仮定した自由とはぜんぜん違う意味の自由を、この人たちはついついに期待してしまうからなんだ。

この人たちは、性急にも「には絶対的に自由な意志がある」というふうに考えてしまったんだ。でも、この人たちが今の考えをよーく見直して、ぼくが長々と証明してきた定理をしっかり受け止めてくれれば、こんな「自由意志」なんてものを性質に数えあげるようなことは恥ずかしくってできなくなるだろう。まったく、こういう考え方をされちゃうと、単に下らないだけじゃなくて、知識を正しく構築するのに邪魔になるんだよね、誰とは言わないけど。

第一部.定理17でこのことはもう話したから、これ以上は繰り返さないけど。まあでもぼくに敵対するこの人たちにもうひとつダメ押しをしておこう。仮に百歩ゆずって、(の本質)に意志というものがあることを認めてやったとしても、やっぱりものごとというのはの完全さからは今ここにあるようにしか生まれてこないし(もちろん無数に生まれるんだけど)、それ以外のどんな違う形ででも生まれてきたりはしないんだ。これは簡単に証明できるから今やってみよう。

もしこの人たちの言う通りに「に意志がある」んなら、ものごとがどのようにあるかということはすべての命令と意志ただそれだけで決まるってことになるよね。これが違うというんなら、はすべてのものごとの原因になることはできなくなってしまう(だからこの人たちも反論はしないと思う)。そして、このの命令は、自身によって永遠に許可され、実行され続けることになる。もし自分で自分に出した許可と違うことをやったり、何もしなかったりしたら、は契約不履行罪(笑)か不完全罪(笑)で自身に有罪を宣告するしかなくなってしまう(爆)。でも、この宇宙を過去から未来にわたって永遠に眺めてみたとしても、が契約違反をした形跡はどこにもありはしない。だいたい、契約違反をする(=自身を不完全にする)必要なんかぜんぜんないんだし。だから、は自分が完全であるからこそ、自身と二重契約をすることはできないし、自身と結んだ契約以外のことは何一つできないってことになるわけだ。そもそも、契約成立前にが存在しないんだし、契約もしないで存在したがるようなじゃないって(笑)。

でもこの人たちの反論はまだまだ続く。こんな反論をする人もいた。「はこの宇宙とは別にもう一つ違う宇宙をおつくりになることだってできるのだ。そっちの宇宙では、永遠の本性も違うし秩序も違うはずだから、この宇宙とは違う命令を発するだろう。だからこの宇宙でどうしても見かけてしまう不完全さも、あっちの宇宙では完全かもしれないんだから、「この世が不完全だ」ということと「が完全である」ということは両方とも成立するのだ」。一種のパラレルワールド的な思想だけど、うーんよくこんなことを思いついたもんだ(笑)。

でも、これが本当だとしたら、このパラレルワールド在住の女様(笑)は自分の発した命令を思いつきで曲げてしまえるってことになるんだけど、どうだろう?だって、このよくわかんない女様が自分の本性と秩序に忠実にしたがって、こっちのと違う命令をあっちの宇宙で出しているとしたら、言い換えれば、こっちのと違う本性にしたがって意志を持ったり考えたりするようなことがあったら、当然、こっちのの意志や知性とは違う意志や知性をあっちの女様が備えていないとおかしいよね。でも、こっちのとまったくおなじ本質や完全さを備えていて(でないとじゃなくなってしまう)、知性と意志だけが違う女様というのがいていいんだったら、こっちのがものごとをこしらえる時に発した命令と違う命令をこの女様がぬけぬけと発して、しかもの完全さを損なわないでいられるかな?無理でしょ。だいたい、こっちのとあっちの女様が、まったく本質と完全さを備えているんだとしたら、どちらもまったく同じ知性、ものをこしらえようとする意志、秩序を備えていると考えるしかないんだから。この人たちがどう思おうと、結局「区別できない」問題に帰ってくるだけなんだ。

もひとつ付け加えれば、この人たちも(ってぼくの同業者たちなんだけどね)古今東西ぼくが読んだ範囲では、に知性があるとすれば「実用的な知性」(actual intellect)であって、「未来を予言する知性」(potential intellect)なんかじゃないってことにはみんな賛成してくれている。「実用的な知性」ってのは、があらゆるものごと・現象を起こすのに使われる知性って意味だ。「未来を予言する知性」は説明の必要はないよね。この人たちもさすがに、が備えている「知性と意志と本質」は実はおんなじだってことは認めている。だったら、もしこっちのと違う知性と意志を備えた女様がいたら、本質だって必ず違っているはずだと考えるしかないでしょ。だから、最初にぼくが言った通り、が今あるのとは違う形でものごとを生み出すようなことがあったら、の知性と意志、つまり(この人たちもこれは認めているんだから)の本質もぜんぜん違ってしまうことになる。これはあきらかに矛盾している。

繰り返すと、ものごとは、今ここにこうしてあるようにしかありえないし、それ以外のどんな形でもが作り出してしまったりはしない。そしてこの結論は、がこれ以上ないぐらいに完全であるという事実から考えれば、どうやっても避けられない。だから今後は、「はものごとを創造するときに、きっとわざと不完全につくったに違いない。はあらゆるものごとをカンペキに理解しているのに、いざ天地を創造する時には手を抜いて(笑)、理解したと同じカンペキさで知性をフルに発揮しなかったに違いない」なんて、苦しくもいじましい理由をあげて自分を無理矢理納得させる必要はまったくなくなる。

あと、こんな反論もある。「ものごとには完全も不完全もないのだ。ものごとの中に潜んでいる本質が、それが完全と呼ばれるか不完全と呼ばれるか、「善」と呼ばれるか「悪」と呼ばれるかは、すべての意志ひとつで決まるのだ。は完全なものごとを不完全にすることだってできるし、不完全なものを完全にしてしまうこともできるのだ。」って具合に。でもこれじゃ、が何かを生み出そうとするときにいやでも認識してしまうこと(いくらでも、酔っ払いの仕事みたいに、それが何なのかを認識しないでものごとを生み出したりしないでしょう)を、が自分の意志で、今認識しているのと違うように認識してしまうってことを言ったも同然じゃないの?これはさっきと同じように、やっぱり矛盾しているよ。

じゃあここはひとつ、この人たちに今の反論をそっくりそのまま投げ返しちゃおう。こんな風に:「あらゆるものはのパワーがあってこそ成り立つ。それは確かだ。で、がものごとを、今あるのと違うように変えてしまうには、が二枚舌を使って、自分の最初の意志をくつがえしてしまう必要がある。でもはこれ以上ないくらい完全なんだから、さっき説明した通り、自分の意志を撤回するようなことができるはずがない。だから、ものごとが今あるのと違うようにそこにあることはできやしない。」ってね。

正直言って、この手の反論、つまり、あらゆるものごとは(前に話した)「徹底的に薄情な」にいいようにされているとか、あらゆるものごとはの命令ひとつでどうにでもなってしまうとか、これはこれで困ったものだけど、それでも「は善意だけに基づいてすべてのものごとを支配する」って本気で信じる人よりは、はるかにマシだと思う。だって、こんなふうにが善意で動いてると考えられる人って、まるでが自分よりも一段高いところにある、とは違う「何か」に従って動いていて、逆らうことは許されないって考えているとしか思えないんだけど。そうするとはその「何か」が満足するような模範演技をしているってこと?はその「何か」と比べたらできの悪い不完全な奴で、だから完全になろうとして何か目標目指して努力しているの?少年ジャンプあたりに出てくる中堅悪役じゃあるまいし、これじゃはただの「運命に支配されっぱなしの奴隷」に成り下がってしまう。「ひー、お許しを」なんてね(笑)。こんな情けないは、ぼく(と優れた同業者たち)が説明した、つまりあらゆるものとそいつらが存在する第一の原因でしかも自由な原因であると比べれば、もうあきらかに矛盾しているもんね。

こんなお粗末な反論にはこれ以上かかわずらっていられないから、先に進むよ。あと少しだ、がんばろう。