障害馬とは
概要
障害試験をパスし、障害レースに出走する競走馬を「障害馬」という。長距離を走るためステイヤー血統の馬が多いが、中にはスプリント路線で活躍した父の仔がよく走るケースもある。障害の飛越センスが大事な条件であるので、バネがあり身体の柔軟な個体が活躍しやすい。
なお、海外の障害馬の多くは去勢されているが、これは気性を抑えて扱いやすくするためと、事故を防止するためという2つの理由がある。人間で言えば、パンツを穿かない裸のまま、高さのある植え込みを飛び越えるようなものであるから、後者の理由に対しても納得が行くのではないだろうか。
入障する
主に平地から障害へ転向することを「入障する」という。
所定の障害試験をクリアし、初めて障害レースに出ることについて、こう言われることもある。
障害馬の特徴
障害レースは総じて長距離であり、道中に設置された様々な障害を越えながら走るため、スタミナ豊富な馬が多い。コースが小回りなので、コーナリングの巧みさも重視される。更に、なくてはならないのが馬体の柔軟性と飛越センスで、これに乏しい馬は出走しても勝つことが困難になり、飛越ミスによる事故の危険性も高くなる。
障害馬は筋肉の付き方にも特徴があり、特にお尻はプリッと丸みを帯びることが多い。平地馬で言えば、キレ味のある追込馬のようなスマートな見た目。ダート馬のようにムキムキすぎると、筋肉が重くなりすぎて、却って障害はこなしにくくなると言われている。
距離適性
障害レースの距離は、2,800m台~4,250mと幅広い。当然、障害馬にも距離適性というものが出て来る。
平地レースを主体で見る人には、どれも「長距離」に思える条件ばかりだが、3,300mの重賞で強い馬もいれば、JGIやその前哨戦クラスの長距離条件で力を発揮する馬もいる。
ただし、距離が合っているだけではまだ足りない部分が多い。それが、次項にある「コース適性」である。
コース適性
障害コースは、襷コースの有無や周回方向の左右、起伏の激しさなど、競馬場によってタイプが様々に存在する。平地にも色々なコース適性があるが、障害レースはそれ以上にコース適性がハッキリと出てくる。コースに対する「慣れ」も平地同様にあるため、中山のJGIを目指すような有力な馬は、条件の頃から中山の開催を使われたりする。
飛越障害やバンケットのみならず、ゴールまでに越えるべき障害の個数も大きく影響する。さらに襷コースでの周回の切り替えや、芝コースとダートコースの切れ目の対応など、障害馬に要求されるセンスは実に多彩である。
もともとのセンスもさることながら、この部分は競走馬の経験によるところも大きい。障害のクリアには技術が必要であるから、障害馬として完成された馬体と豊富な経験を持つ高齢の馬が活躍する。日本では概ね5~8歳と比較的若い馬が主役だが、海外の障害レースは2桁馬齢の馬の戦場でもある。
血統
障害馬の血統を見ると、その多くがステイヤー血統である。長距離を走りきる豊富なスタミナや、長時間折り合える気性の良さが、そのまま反映されているものと思われる。
ところが、「この条件はこの血統」と言い切ることはできないのが競馬の面白いところ。中には「ジャンプの父」として有名なスプリンター、サクラバクシンオーのような例もあるし、母系統に入って能力を伝えた、モガミという父もいる。
いずれにせよ平地とはまた違った、障害界独特の血統勢力図があって興味深い。
