雨がしとしとと降っている。

Last-modified: 2006-04-04 (火) 20:00:29

このページは編集前です (^^)

 

20件単位でまとめてあります。
雨がしとしとと降っている。
雨がしとしとと降っている。2
雨がしとしとと降っている。3 [tip] いまココです

 


 

ID:DEpyTO9+0

雨がしとしとと降っている。前を歩く女が、財布を落とした。
「そこの方、落とし物ですよ」と僕は語りかける。美しい淑女だった。
彼女はひと通りお礼の言葉を述べると、「こんにちは、良い天気ですね」と改めて挨拶をしてきた。
雨が降っていたが、淑女の言葉に違和感を抱くことはない。
夢という物は、概してそういうものだろう。
その時、扉をノックする音が聞こえた。とんとん、とんとん、と。

ふと目を覚ますと、まず僕は舌打ちをした。夢を中途半端なところで中断するのは嫌いだった。
誰だ、僕の夢を邪魔したのは。扉をノックする音はやまない。
むっくと起き上がり、ぼさぼさの髪を押さえながら玄関に向かった。
来客を迎えるために扉を開いた、その瞬間だった。
何かが空から落ちてきた。
……いや、違う。空じゃないし、落ちてきたわけでもない。突然のことに、そう見えただけだ。
脳天に鋭い痛みが走る。鈍器で頭頂部を殴られたのだ。
頭を抱え込む暇もなく、何者かの手で目を塞がれた。
親指と中指で、こめかみの両方から掴まれている。脳がつぶれるような痛みが僕を責める。
何者かはゆっくりと僕を押して、部屋に侵入した。わけも分からず、僕はただ呻いていた。
男が、ぬちゃ、という気持ちの悪い音をたて、口を開けたのが分かった。
不気味な威圧感に僕は押しつぶされそうになっていた。
「殺してやろうか?」そのようなことを宣言されるかと思った。当然だろう。
こんな異常な状況では、死を悟っても無理はない。
だが、男の主張は意外なものだった。

「おまえにひとつ、良いことを教えてやる」と、くぐもった声で男は喋った。
「覚えているか……。俺はな、おまえが酷評した作家志望の男だ……。ネットだからってな、好き勝手に批評してもいいと思っていたんだろう……。そんなのは妄想に過ぎない……。身元なんて簡単にばれることを肝に銘じることだな……」
それだけいうと、男は黒いコートを翻して、すばやく家から出ていった。
その顔を確認することは、まず、できなかった。

 

ID:lXsmAInY0

雨がしとしとと降っている。

木の葉を伝って落ちるしずくを窓から見ながら、一人のエルフの
少女がため息をついた。

「なんで・・・なんであんな事いってしまったんだろう・・・。」

ちょっとした強がりだったのかもしれない。
自分を大事にしてくれる人への甘えだったのかもしれない。

定命の者を愛してしまった、自分が憎かった。彼が年老い死んで
しまうのを見るのが怖い、そんな思いだったのかもしれない。

雨がしとしとと降っている。

木の葉を伝って落ちるしずくを目で追って、一人のエルフの少女
が目を見張った。

フードつきの緑の外套に小さな花束を持って、その人はそこに
立っていた。

愛嬌のあるヒゲ面をほころばせて、窓を見上げていた。

雨がしとしとと降っている。暖かで柔らかな雨が。

 

ID:zCU9u5wY0

雨がしとしとと降っている。
白っぽく見える無数の筋は教室の窓を優しく叩き、地面を濡らす。
冷たい窓に息を吹きかけるとほのかに白くなり、自然に私の指はわけの分からない図形を描いた。
今の季節には似合わない冷気が一枚のガラスから私の指へ伝わってくる。
この冷たさも、この静けさも、この雨も、全てが私を落ち込ませるんだ。

「おい、まだ残ってたのか」
この教室で毎日聞いていた声が静かに言う。
運動靴の底のゴムが床と擦れ合うきゅ、きゅという音が短く教室内に響き、やがて私の後ろで止まる。
「明日の卒業が寂しくなった?」
まるで楽しい悪戯をした時のような口調で、声の持ち主は言う。
私は何と言っていいのか分からず黙っている。

雨脚が強くなった。さっきよりも窓を叩く音が大きくなっている。
私はガラスに息を吹きかけ、多少熱を取り戻した指で文字を書く。

『先生』
先生は私の背後から長い手を伸ばし、返事を書いた。
『どうした』
白く曇った円の中に、私と先生の字が並ぶ。
その瞬間、ずっと心に思っていた感情が膨らむ。

「先生とのお別れが一番悲しいんだよ」

一気に言い切ってしまうと同時に、顔が火照り熱を持ち始めるのを感じた。

 

ID:skxWTe4T0

雨がしとしとと降っている。
何かが空から落ちてきた。
ふと目を覚ますと
目の前が真っ白になった。
彼女は自分の目を疑った。
顔に精子がかかっている。
あたりを見回すとゆっくり動く一つの影があった。
絶対にアイツだ。
「そこの方、落とし物ですよ」
なんてお洒落に話しかけようとしたが
口からこぼれた言葉は
「殺してやろうか?」
であった。
その時、扉をノックする音が聞こえた。
私は返事をする。

どうやらイタズラだ。
洗面所で顔を洗いながら
いっそこのまま顔を水につっこんで
死んでしまおうと思った。
10分前には殺人を考えた私が。