あかちな

Last-modified: 2025-03-10 (月) 00:54:21

あかり「みんなのハートにどっきゅ~ん! 初めまして! 赤座あかりだぴょ~ん!」

ちなつ(っ……!?)

シーン

あかり「あ……赤座、あかりです……1年間、宜しくお願いします……」ストッ

ちなつ(な……な……)

ちなつ(何あの子ー!?)ガーン

お姉ちゃんのような女性に憧れて,茶道部があると知って入った七森中学校。
この中学校に入れば,きっとお姉ちゃんのようになるヒントが見つかるはず。

そう思った矢先の、最初の自己紹介の時だった。
私の隣に座ったその子は、一瞬にして空気を凍りつかせた。

しかもその子が名乗ったのは、お姉ちゃんがよく話している「素敵なお友達」と同じ苗字だった。

ちなつ(と、いう事は……この子が、お姉ちゃんが憧れている人が溺愛している妹……)

ちなつ(いやいやいや。流石にそれはないわよね。きっとたまたま苗字が同じなだけよ)

──
───
────

ちなつ「……って感じだったかなぁ」

あかり「第一印象最悪!? うぅっ……あの時は色々あったんだよぉ……」

ちなつ「聞いたよー。まったく、京子先輩が変な事言うから」

あかり「う、ううん! あかりが勘違いしただけだから。京子ちゃんは悪くないよぉ」ニコッ

ちなつ「いい子すぎて後光が!?」

そう,あかりちゃんはこういう子。例え99%相手が悪くても,1%でも自分が悪いと思ったら、「自分が悪い」と思う子なのだ。

ちなつ「はぁ……あかりちゃん、もっと自分を大切にした方がいいよ?」

あかり「? どういう事?」

ちなつ「極端な話、周りで起こる悲しい事を、全部自分が悪いんだって思っちゃいそうだもん。あかりちゃんが悪いんじゃない事だって、沢山あるんじゃないの?」

あかり「あはは。流石に全部がそうとは思ってないよ? でもね、一人でも悲しいとか、辛いとか、苦しいとか。そういう気持ちの人がいたら、出来るだけ味方になってあげたいな、って」

ちなつ「……疲れない?」

あかり「疲れる時もあるよ。でも、その人が『ありがとう』って言ってくれた時は、とっても嬉しい気持ちになれるんだよぉ」ニコニコ

ちなつ「私の悩みも、何も言わずに聞いてくれたもんね」

あかり「ちなつちゃんは、あかりの大事なお友達だもん。お友達が悩んでたら力になるのは、当たり前の事だよぉ」

ちなつ「……」

あかり「それにね」

ちなつ「?」

あかり「ちなつちゃん、いつもあかりに相談してくれるでしょ? それがちょっぴり自慢なんだぁ♪」

ちなつ「……もう、あかりちゃんったら変なの」クス

あかり「ところで、ちなつちゃん……?」

ちなつ「なぁに?」

あかり「こ、この手は……ナンデショウカ……」

ちなつ「ん? いつもあかりちゃんにはいーっぱい悩みを聞いてもらってるから、そのお礼。気持ちいいでしょ?」ゴンッ ゴンッ

あかり「え、あ……ぐぁっ……! うん、き、キモチ……イイデス……ッ」

ちなつ「でしょー? お姉ちゃんにもいつも褒められるんだよ? 『ちなつの肩叩きは、まるでスチールボールみたいね』って!」

あかり「ひっ、ひぃぃぃ……っ! あっ……待ってちなつちゃん……タイm」ガクッ

──
───
────

あかり「はっ!?」

ちなつ「あ、あかりちゃん起きた? もぉ~、マッサージ終わって声かけても起きないんだもん。心配しちゃったじゃない」

あかり「え、ぁ、ご、ゴメンネ……」

あかり(あ、あかり、気を失ってたーー!?)ブルブル

ちなつ「ねぇ、あかりちゃん」

あかり「なっ! なぁに……?(い、嫌な予感がするよぉ……)」

ちなつ「私のお姉ちゃんがね、あかりちゃんのお姉さんのマッサージを凄く気持ちいいんだよって、とっても褒めてたの」

あかり「へ、へぇー……?」

ちなつ「たまに、あかりちゃんにもしてあげてるって聞いたの」

あかり「そ、そうだねぇ、たまーにしてくれるよ。あかり、凝ってる所なんてないんだけど……」

ちなつ「意識しないだけで、実際は凝ってるってよくあるみたいだよ。それでね、そのマッサージを、私も習得したいの!」

あかり「……?」

ちなつ「お姉さんにして貰ったマッサージを思い出して、私に実演して、教えて欲しいの!」

あかり「え、え~と……でもお姉ちゃん、いつも夜9時になってからしてくれるから、いつもウトウトしちゃって、あんまり覚えてなくて……」

ちなつ「じゃ、じゃあじゃあ、覚えてるところだけでもいいから! 結衣先輩のために、もっともっと上手くなりたいの!」シンケン

あかり「ちなつちゃん……(やっぱりちなつちゃん、友達想いだなぁ……)」

あかり「わかったよぉ。思い出しながら、やってみるね!」

ちなつ「やった! あかりちゃん、ありがとぉ~!」ギュッ

あかり「え、わわっ///」

ちなつ「んじゃ早速始めよっか。うつ伏せでいいのかな?」

あかり「あ、うん。楽にしてていいよぉ」

ちなつ「は~い♪」

ちなつ(赤座家秘伝のマッサージを習得して、結衣先輩の高評価をモノにするのよ!チーナ!)

あかり「じゃあ、はじめるねっ」

ちなつ「うん!」

あかり「えっと、最初は確か……こんな感じ……」グッ

ちなつ「……あ、凄い,気持ちいい……」

あかり「ほ、ほんと? 嬉しいな、えへへ///」

ちなつ(あかりちゃんの手、こうして触れられてみると、やっぱり小さくて可愛いなぁ・・・)ウトウト

あかり「えっと、それで次はこの辺、だったかな……」フニ

ちなつ「ひゃぁぁっ!?」

あかり「だ、大丈夫!? ごめんね、痛かった!?」アワワ

ちなつ「あ、だ、大丈夫! ちょっとびっくりしただけだから! 私の事は気にしないで続けて!(い、今のはまさか……)」

あかり「そ、そう? じゃあ続けるね……よっと」フニ

ちなつ「っっ……!!///」

あかり「確か、この辺を、こう……」フニフニ

ちなつ「ぅあっ……!///」

あかり「そんで、この辺から、こう……」スリリッ

ちなつ「んっ……ぁ……!///(あっ……あかねさん、これは……)」

あかり「次は、えっと……こうだったかな……」サワッ

ちなつ「ひゃんっ///」ビクン

あかり「あ、思い出した。そんで最後にこうやってから……」ピトッ

ちなつ「ふあぁっ!?///」

あかり「こう、だよねっ」ギュッ

ちなつ「んくっ……///(あ、あかねさーーん!?///)」

あかり「はい、おしまいだよぉ。ど、どうだったかな……?」

ちなつ「う、うん。凄く、気持よかった! うん!」

あかり「ほんと? よかったぁ」ニコニコ

ちなつ「あかりちゃんのお姉さんが、あかりちゃんの事が大好きなのが、すっごく伝わってくるマッサージだったよ……」

あかり「そ、そうなんだぁ。えへへ。あかりもお姉ちゃん大好きだから、嬉しいよぉ」パァァ

ちなつ「……あ。もうこんな時間! ごめんねあかりちゃん、もう帰らなきゃ」

あかり「ほんとだ、もうこんなに時間が経ってたんだねぇ。気付かなかったよぉ」

ちなつ「それじゃあかりちゃん、今日は色々と教えてくれてありがとう! また、学校でね!」フリフリ

あかり「うん、またねー!」フリフリ

ちなつ「あのマッサージは……あかねさんは、間違いなく……」

???『……気付いてしまったのね……?』

ちなつ「あっ……! あかっ……! ひっ……!」

あかり「ちなつちゃーん!」タッタッタ

ちなつ「! あかりちゃん!」

???『……あらあら』フッ…

あかり「よかったぁ、忘れ物してたよ? はい」

ちなつ「あ、ほんとだ。全然気付かなかった。ありがとね」

あかり「ううん、まだ近くに居てよかったよぉ。気をつけて帰ってね! ばいばーい!」フリフリ

ちなつ「うん! ありがとう、またね!」フリフリ

タタタ…

ちなつ「助かった……間一髪ってとこね……」

???『うふふ……吉川さん、だったわね』

ちなつ「っ!?」ビクーン

???『くれぐれも、内密にね……? うふふふふ……』スーッ

ちなつ「はっ……!? あ、あれ!? 居ない……!?」キョロキョロ

ちなつ「……と、とにかく帰らなきゃ!!」


──
───

ちなつ「ただいまー!」

ともこ「あら、おかえりちなつ。楽しかったみたいね」

ちなつ「うん! あれ、お客様?」

あかね「こんばんは」スッ

ちなつ「ヒッッ!!!」チーン

ともこ「ちなつ!? どうしたの!? ……気を失ってるわ……」

あかね「あらあら……どうしたのかしら……ね?」ニッコリ

気が付くと、ちなつは自室のベッドの上だった。
部屋の掛け時計は、10時前。

ちなつ「……げっ、やば、完全に遅刻! あぁんもう、なんで誰も起こしてくれないのよ~!」

急いで飛び起きたが、窓の外が真っ暗だ。

ちなつ「……夜? あれ? 私なんで寝てなんか……」

ゆっくりと活動を始めた頭から、記憶を呼び起こしてみる。

ちなつ「確か、あかりちゃんにマッサージ教えて貰って……帰りに……帰りに?」

ちなつ「……あれ、それから……?」

そこだけぽっかりと空いたように、記憶が、ない。

テレビを付けてみる。

ちょうどニュースの時間だったらしい。

どうやら今は、赤座家から帰ってきた日の夜10時前だという事が分かった。

ちなつ「あ~っ! 見たかったドラマ終わってる……」ガックリ

ちなつ「それにしても、なんで寝てなんかいたんだろう……」

ちなつ「そうだ、お姉ちゃんに聞けば分かるかな?」

ちなつは姉のともこを探し、家の中を歩きまわる。

台所、和室、姉の部屋。しかしどこを探しても見当たらない。

ちなつ「おっかしいなぁ……靴はあるのに」

ちなつ「お姉ちゃ~ん! お姉ちゃんってば~!」

ちなつ「もう……お姉ちゃんったらどうしたのかしら、こんな時に……」

ちなつ「……変な汗かいて気持ち悪いし、とりあえずお風呂にでも入ろうっと」

チャポン..

ちなつ「ふぅ……」

ちなつ「あかりちゃんのマッサージ、あれはどう考えてもおかしい」

ちなつ「だって、腰とか肩とかじゃなくて」

ちなつ「脇腹かと思ったら指が胸に触ってたりとか」

ちなつ「お尻を触る手が妙にねちっこかったりとか」

ちなつ「内股なんて、ギ、ギリギリのところまで……」

ちなつ「しかもあの力加減。ほぐすっていうよりは撫で回してる感じだった」

ちなつ「……ま、まぁ確かにちょっと気持ちよかった……けど……///」

ちなつ「……っそ、そんな事より、間違いないわ。あかねさんは、あかりちゃんを……ひっっ!?」バシャッ

ふと、浴室の外からこちらを見る視線を感じた。

そちらに目を向け、じっと耳をすませる。

こちらの方が明るく、湯気が部屋に充満している事もあり、視界が悪い。

ちなつ「だ……誰か、いるの……?」

しかし窓の外からは、時折吹く風と、

それに凪がれて擦れ合う木の葉の音しか聞こえなかった。

ちなつ「……」

恐る恐る立ち上がり、出来るだけ顔を出さないよう、窓の隙間から外を見る。

暗闇に注がれる風呂場からの光の先には、家の裏庭の草むらがぼんやり見えるが、

明暗の差からか、そこしか視認出来ない。

ちなつ「ダメだ、よく見えない……」

ちなつ「とにかく、ここにいちゃダメだわ。早く出なきゃ!」

手早く身体をバスタオルで拭きながら、周囲に耳をすます。

と、いうよりは、恐怖心で上手く声が出せないため、

自然とそうなってしまっている。

ちなつ「うぅ……覗き魔とかだったらどうしよう……今、私以外誰も居ないのに……」

ちなつ「そうだ、もうお姉ちゃん帰ってきてるかも!」

そう思って再び家の中を探すも、姉の姿はどこにも見当たらない。

ちなつ「ぐすっ……お姉ちゃぁん……私怖いのダメなのにぃ……」

ちなつ「ッッ!!?」

どこからか、声が聞こえたような気がした。

ちなつ「ひゃぅっ……!」

ちなつ「どうしよう、どうしよう……怖いよ、助けて、誰かぁ……」

その時、ちなつは信じられない光景を目にした。

窓でもない。

壁でもない。

空気に、ヒビが入った。

耳を塞ぎたくなるような音を立て、それは段々と広がろうとしている。

ちなつ「嫌っ……何よこれ、何よぉぉ……」

ちなつ「もう……嫌ぁぁ……ぁぁぁ……」

何が起きているのか分からず、

どうすればいいのかも分からず、

部屋の角に身を固め、縮こまるしか出来ない。

ギシッ……!

メキメキッ……!

ちなつ「助け……誰か……ぁぁ……」

次の瞬間、ちなつの視界は激しい閃光に包まれた。

???『はい赤座です』

あかり「もしもし、お姉ちゃん? あかりだよぉ」

あかね『あら,あかり。どうしたの?』

あかり「部活で少し遅くなるから、お電話したの」

あかね『そう,分かったわ。晩御飯は食べるんでしょ?』

あかり「うん。ご飯って聞いた途端にお腹すいてきちゃったぁ」

あかね『ふふ,じゃあ美味しいご飯,たくさん作らなきゃね。何か食べたいメニューはある?』

あかり「あっ、今日はお姉ちゃんが作る日だもんねぇ。うーんそうだなぁ……あっ! 久し振りに、お姉ちゃんのハンバーグが食べたいなぁ」

あかね『ふふ、あかりはほんとにハンバーグが好きね。じゃあ、材料買いにいかなきゃ』

あかり「えへへ。お姉ちゃんのハンバーグ大好きっ。それじゃあ、また帰る前にお電話するよぉ」

あかね『気を付けて帰って来るのよ』

あかり「うん、それじゃね、お姉ちゃん」プツッ

あかり(まずは、一つずつ……可能性を潰していかないと)

あかり「……」ピンポーン

???『……はい』

あかり「こんにちは、私、赤座あかりといいます。ちなつちゃんのクラスメイトで……」

ともこ『赤座……! あかねちゃんの、妹さん?』

あかり「お姉ちゃんを、ご存知なんですか?」

ともこ『ええ。インターホン越しもなんだし、中でお話しましょう』

あかり(この人が、ちなつちゃんのお姉さん……優しそうで、可愛い人だなぁ……)

ともこさんは、慣れた手つきで湯呑みを温めたり、お茶菓子を準備し始めました。

あかり(そういえばちなつちゃんは、茶道部だったお姉ちゃんみたいになりたくて、今のごらく部の部室に来たんだっけ……)

ともこ「はい、あかりちゃん。どうぞ」

あかり「ありがとうございます。ふわぁぁぁ……! 美味しい~!」キラキラ

ともこ「うふふ。ありがとう~♪ それにしてもあかりちゃん、本当にお姉さんそっくりね」

あかり「えへへ……よく言われます」

ともこ「特に笑顔がそっくり♪ あかりちゃんは、お団子が2つなのね」

あかり「はい、お姉ちゃんみたいにお団子にしたいって言って、作り方を教えて貰ったんです」

ともこ「そうなのね~。あ、お茶菓子も遠慮なく食べてね」

あかり「あ……えへへ……見てたの、バレちゃった……///」

ともこ「うふふ。いいのよ、遠慮しないでね」

あかり「……それで、ちなつちゃんの事、なんですが……」

ともこ「っ……」

あかり「今日、学校に来てなくて。電話も、メールも返ってこないので、皆心配していて……」

ともこ「……やっぱり、そうなのね……」

あかり「えっ……?」

ともこ「昨日、うちに帰ってきた後、何故か気絶しちゃってね。あかねちゃんと2人で部屋に寝かせたんだけど、その後から……居なくなっちゃったの……」

あかり「お姉ちゃんと……?」

ともこ「ええ、昨日は2人で、少し遅くまで勉強会をしていたの」

あかり「そう、だったんですか……」

ともこ「最初は、日直か何かで早く家を出たのかなって思ってたんだけど……」

あかり「……」

ともこ「カバンも置きっぱなしだし、靴もあるし……どうしましょうっ……悪い人に拐われてたり……」ブルブル

あかり「……ともこさん」フワ..

ともこ「っ……あかり……ちゃん……?」

ともこ(あ……あかねちゃんと同じ匂い……)

あかり「ちなつちゃんなら、きっと何とかして連絡してくると思います」

あかり「だから……ちなつちゃんを信じて、待ちませんか……?」

ともこ「……あかりちゃん……あかねちゃんとそっくり……♪」ギュ

あかり「そう……ですか……?」

ともこ「ええ……私が落ち込んだり、悲しい顔をしてる時」

ともこ「さっきのあかりちゃんみたいに、『大丈夫よ』って、励ましてくれるの」

あかり「あ、あかりは、そんな大した事は……」

ともこ「うふふ。謙遜する所も、あかねちゃんそっくりね♪」

あかり「あ……あぅ……と、ともこさんも、ちなつちゃんが目標にしたくなるの、分かるなぁって、思いました」
ともこ「ちなつが……?」

あかり「ちなつちゃん、お姉ちゃんみたいになりたくて、茶道部を志望したんだよって、言ってたんです」

ともこ「まぁ……そうだったの……」

あかり「髪がふわふわな所も、笑顔が可愛い所も、乙女な所も。あかりも、こんなお姉さんが居たらきっと憧れちゃいます」

ともこ「ふふ、ありがとう。でも、あかねちゃんも、とっても素敵なお姉さんだと思うわよ?」

ともこ「いつもニコニコしてて、優しくて。あかねちゃんがいると、周りまでふわっと明るくなるの」

あかり「……」クスッ

ともこ「? どうしたの? あかりちゃん」

あかり「ともこさん、お姉ちゃんの事が大好きなんですねっ」ニコニコ

ともこ「なっ///」ボンッ

ともこ(まだ1時間もお話していないのに、それを見破っちゃうなんて……)

ともこ(こ、この洞察力もあかねちゃんそっくりだとしたら……)

ともこ(私の気持ちも……あかねちゃんに筒抜けだったりして……///)

ともこ「……あら、もうこんな時間! あまり遅くなると、あかねちゃんが心配しちゃうわ」

あかり「あ、本当ですね。じゃあ、そろそろお暇しますねっ」

あかり「あの、ともこさん」

ともこ「なぁに? あかりちゃん」

あかり「あかり、お姉ちゃんもちなつちゃんも大好きですけど、今日お話して、ともこさんの事も大好きになりました」ニコッ

ともこ「あ……」

ともこ「ま、まぁ……私なんてそんな、人に好かれるような人間じゃ……」

あかり「そうですか? あかりは、とっても素敵な人だなって思いましたよ」ニコニコ

ともこ「も、もう、あかりちゃんたら……///」

あかり「それじゃ、今日はお邪魔しました。あかりの方でも、ちなつちゃんを探してみます」

ともこ「……ありがとう、あかりちゃん」ギュッ

あかり「わ、わわっ///」

ともこ「また遊びに来てね、あかりちゃん」

あかり「はいっ、それでは、失礼します!」

アッカリアッカリ..

ともこ(あかねちゃんが、あかりちゃんを好きになるの。分かる気がするなぁ……)

あかり「ただいま」

あかね「おかえり,あかり」

あかり「今日はいっぱい歩いて,お腹ぺこぺこだよぉ……」ギュッ

あかね「あらあらあら,あかりったら、今日は甘えん坊さんなの? 出来るまでもう少し時間がかかるから、先にお風呂入ってらっしゃい」

あかり「はーい!」

あかり「……お姉ちゃんの服から,微かだけどちなつちゃんの匂いがした」

あかり「こんな事,信じたくはないけど……」

あかり「ちなつちゃんを探しながら,何か,確信の持てるものを見つけなきゃ」

あかり「私がお姉ちゃんなら……」

あかり「自分の部屋の中、かな」

あかり「……入っちゃダメって言われてるけど、少しくらいなら、分からないよね」

あかり「っ……!?」

あかり「な、なに……これぇ……」

あかり「あかりの……なくなったカニさんパンツ……」

あかり「こっちには……あかりの顔が描かれた枕に……えっ!? あかりの体操着!?」

あかり「え、えっ!? なくなったわけでもないのに……」

あかり「……」クンクン

あかり「あ、あかりの、汗の匂い……///」

あかり「……」

あかり「……なんか、薄っぺらい本がいっぱい」

あかり「これは……京子ちゃんが作ってる同人誌みたいなものかな?」

《妹に溺愛を求めるのは間違っているだろうか》

あかり「いもっ……」ビクッ

あかり「……この枕」

あかり「沢山、キスマークが付いてる」

あかり「……そっか」

あかり「お姉ちゃんが洗濯したがるのは……」

あかり「そういう、事だったんだね……」

???『……りー! ご……たわよー!』

あかり「……」

あかね『あかりー?』

あかり「よく見ると、この部屋に居る沢山のあかりは」

あかね『疲れたって言ってたし、部屋で寝てるのかしら……』

あかり「笑顔のあかりばっかりだなぁ……」

あかり(……)

あかり(覚悟を、決めなきゃ)

トン、トン、とゆっくり上がってきたお姉ちゃんの足音は。

2階に到達する前に急に早くなり。

あかりの今居る部屋の前で止まりました。

「あか……っ……」

「お姉ちゃん、勝手に入って、ごめんなさい!」

お姉ちゃんは、笑顔は崩さず。

青ざめたまま、言葉を失っていました。

あかり「お姉ちゃんは、笑顔のあかりが、大好きなんだよね……?」

あかね「っ……」

あかり「あかりのお友達に酷い事したら」

あかり「あかり、笑えなくなっちゃうよ」

あかり「お姉ちゃんの事、好きでいられなくなっちゃうよ……」

あかね「あか……り……」

あかり「ちなつちゃんは……何処に、居るの……?」

あかね「……」

あかり「……」

あかね「あかりに嫌われたら……私はもう、生きて、いけない……」

あかり「……じゃあ、どうすればいいか」

あかり「お姉ちゃんなら……分かってくれるよね……?」

あかね「……」

あかり「……」

あかね「……ええ……」

お姉ちゃんは観念したように、

クローゼットの前でリモコンのようなものを取り出しました。

1つボタンを押す毎に、クローゼットの中から

硬い樹を力任せに圧し折るような、耳障りな音が聴こえました。

3回程、それが繰り返された後。

お姉ちゃんはクローゼットを開き、口を開きました。

「ちなつちゃんは、この中に居るわ」

あかりは、ちなつちゃんの名前を叫びながら、眩しい光を放つクローゼットの中へ、飛び込みました。

ふわふわ。

私の髪を優しく撫でる感触。

ちなつ「ん……」

あかり「ちなつちゃん……!」

ちなつ「あかり……ちゃん……?」

あかり「無事でよかったぁ……大丈夫?」

ちなつ「あかりちゃん,どこ……? 真っ白で、何も、見えない……」

あかりちゃんの声のする方へ、そろそろと手を伸ばす。

きゅっ。

ちなつ「この感触……あかりちゃんの、手だ……」

あかり「ずっとこんな眩しい所に居たから、まだ、視力が戻ってないんだね。しばらくすれば,ちゃんと見えるようになるからね」

そう言うとあかりちゃんは私の目を手で多い、再び私の頭を撫でてくれました。

ちなつ「ん……えへへ、気持ちぃ……」

あかり「一人で、寂しかったよね」

ちなつ「……あ……ぅあっ……」グスッ

あかり「……よし、よし」

ちなつ「こわ、かったよぉ……」ボロッ..

あかり「……ごめんね」

ちなつ「どう、して……ぁかり、ちゃんが……っく……謝るの……?」ヒック.. ヒック..

あかり「……悪い子は、ちゃんと叱っておいたから」

あかり「だから、もう、大丈夫だよ」

ちなつ「うぅっ……ひっく……」

あかり「とにかく今は、ちなつちゃんが無事だったのが、嬉しいな」

少しずつ戻ってきた私の視界にぼんやり浮かんできたあかりちゃんは、

まだはっきりと見えていないのに、いつもと変わらない笑顔だと分かりました。

あかり「そろそろ、視力が戻ってくると思うんだけど……どうかな?」

ちなつ「ん……ぼんやり見えるけど、まだ、ピントが合わない……」

あかり「……」

ちなつ「……あかりちゃん?」

あかり「ちなつちゃん、何にでも効くマッサージがあるんだけど」

あかり「……試して、みる?」

ちなつ「うっ……///」

あかり「あ……あの、こないだみたいのじゃ、ないから……」

ちなつ「ほんと……?」

あかり「あ……でも、えっとぉ……んん……」

ちなつ「…………分かった」

あかり「……」

ちなつ「私……あかりちゃんを、信じる」

あかり「ちなつちゃん……ありがとう」

ちなつ「だって……あかりちゃん、だもん」

ちなつ「あかりちゃんが、私に酷い事なんてしないって、知ってるもん」ニコッ

あかり「ちなつちゃん……」

あかり「そのまま、目を、閉じて」

ちなつ「……うん」

あかり「んっ……///」チュッ

ちなつ「ん……!///」

私達2人以外には、何もない。

今ここにあるのは、

私と、あかりちゃんの鼓動と、吐息。

そして、互いの身体が、優しく擦れ合う音だけでした。

私の恐ろしい記憶と涙は、あかりちゃんの唇に吸い込まれるように、

少しずつ、溶けていきました。

あかねはその後。

「お姉ちゃんは,あかりへの愛が沢山溢れすぎちゃったんだね」

「それをあかりに向けるだけならいいけど、他の人、特にあかりのお友達に酷い事しちゃ、めっ! だよ!」

という,叱っているようで,叱れていないあかりの言葉を受け。

あかりの前であっても堂々と,妹大好きオーラ全開になってしまったという。

京子「そっかぁ,とうとうあかりのねーちゃん、あかりに部屋の中を見られたのかぁ」

あかり「え? 京子ちゃん,知ってたの!?」

京子「え? あーうん。あかりの入学式の日にさ、あかりを待ってる間に、あかりん家を探検してる時にね」

結衣「おまっ……あの部屋、入るなって書いてあっただろ」

京子「だってー、ダメって言われたら見たくなるのが人間だろ?」

京子「しかしまったく、西垣ちゃんは毎回変なもん作るなぁ」

西垣「いやはや、部屋に荷物が溢れ始めたから、それを逃がす空間が欲しい、という事だったんだがなぁ」

結衣「とにかく,ちなつちゃんが無事で良かったよ」

???「あーかーりーちゃああああああん!!!」

そんな声が近づいてきたかと思ったら、

ピンク色の影が、部室の襖を跳ね除け、あかりに勢い良く特攻し。

あかり「ち,ちなっぐへぇっ!!?」

どすっ。

サンドバッグを叩いたような音がし,あかりを巻き込んで、部室の壁に衝突した。

ちなつ「いやぁ~ん♪ チーナ、あかりちゃんに壁ドンしちゃったぁ~♪」クネクネ

あかり「ち,ちなつちゃん」

ちなつ「も~こんな皆が見てる前で恥・ず・か・しい~♪」

あかり「ちなつちゃんってばぁー! そろそろ降りて頂きたいのデスガ……」

ちなつ「だーめ。あんな方法で私の唇を奪ったんだもん。責任取って貰わないとね♪」

あかり「で、でも学校で堂々とするのはちょっとぉ!」

結衣「はは……やれやれ」

おしまい