はじめに
百合です。トレセン学園卒業後の設定です。
本編
同室のイクノディクタスがいない日。
なぜかメジロマックイーンの部屋にゴールドシップが居座っていた。
「それじゃシャワー浴びようぜ」
「いや、なんでいるんですの!?」
当然の疑問を彼女へぶつける。
“ ゴールドシップ ”
追い込みの脚質で様々なレースで活躍するウマ娘。
平均よりも恵まれている体格に豪快な性格。
そして今は私,メジロマックイーンの愛しの存在。
彼女を一言で表すのであれば…さしずめ宇宙人だろう。
「んだよ釣れねーな…なんでってそりゃアタシのレーダーに面白そうな反応があったからだ!」
「なんですの。そのレーダーとやらは…。」
「そりゃゴルゴル星謹製のレーダーに決まってんだろ」
半ば呆れたようにマックイーンが聞くと,彼女は自信満々に言う。
本当にそんなレーダーがあるかのようだ。
しかしゴールドシップは先ほどなにを言ったのだろうか。
「それはおいておいて,シャワーを浴びるのでしたら先に行きますか?」
「誰が一人で行けって?」
そう彼女はマックイーンを覗き込むように聞き返す。
整った顔立ちが近くに来て、一気にマックイーンの心拍数が上がる。
普段どこかしこに行っている割にはいい匂いがフワッと漂う。
それらに不覚にもドキリとした
普段とのギャップ。そんな所にも惚れた自分が恥ずかしい。
それを律すように、コホンと咳払いをしてマックイーンは言う。
「先ほどシャワーを浴びると貴方が申していたではないですか。」
そう言うとゴールドシップは不服そうに言い返す。
「ちげーよ。これからアタシと一緒に入るって言ってんだよ。」
「なぜですの!?」
いつも突飛なことを言う彼女であっても、これは本当に脈絡がない。
…いや。いつもの彼女と言われたらそれで片付くのだが。
「逆に聞くけどなんか理由がねぇといけないのか?」
「それはその通りですが…」
誰かと身体を洗うことを嫌う理由なんてない。
しかしだ。
同性であったとしても恥ずかしいことは恥ずかしい。
確かに彼女とはキスをしたが、それでも裸は恥ずかしい。
抗議の声を上げよう。
そう思ったが、ゴールドシップからの追撃で撃墜された。
「好きな人と一緒に風呂入りてーんだよ。バーカ…」
時より私だけに見せる甘えん坊な彼女の姿を見て、マックイーンはなにか嬉しいような言葉に出来ない感情を抱いた。
ゴールドシップはこの上なく動揺していた。
愛しの存在が生まれたままの姿で、目の前に座っている。
今回の、題してマックイーンの部屋にお邪魔してイチャイチャしよう作戦。
流石にイクノディクタスに迷惑を掛ける訳にはいかないので、いない日を狙ったオペレーション。
ゴールドシップ自身は彼女と一緒の空気を吸えるだけで満足してしまうのに、この上ダメ元で言った第二段階、一緒にお風呂入ろうよ作戦。
こんなにサクサクことが進むとは思わなかった。
「んじゃ…背中流すぜ…。」
ええ、と彼女の了承を聞いてゴールドシップは泡を立ててマックイーンの背中を流す。
「マックちゃんとこうしていると、なんだかおじいちゃんと一緒にお風呂に入ったことを思い出すな。」
「それ,,,。どう意味で言っていますの?」
「うんにゃ、深い意味はないぞ。」
ジト目で言っているであろうマックイーンを想像しながら言い訳をする。
しかしゴールドシップが先ほど言ったことはあながち間違っていない。
マックイーンといると、アタシはこうだという確信に満ちた安らぎのようなものを感じる。
「そういや力加減はこんなもんでいいか?」
「ええ。でももう少し力が強くてもいいですのよ。」
そうは言われたものの、ゴールドシップはあまりその気にはなれない。
彼女の白い玉肌を傷つけたくない。
いや、自分自身の痕は残したいが、それとこれとは全く違う話だ。
「じゃあ流すぞ」
そうして一通り洗い終わったのでシャワーで泡を流していく。
ざあと、彼女を覆っていた泡が水に流されて排水溝に吸い込まれていく。
肩のアスリート然とした出で立ち。
そこから程よく脂肪がついたお腹周り。
いや、これは食べすぎじゃねーか?
そこから丸みを帯びた臀部。
ここで襲ってしまいたい衝動を抑えながらシャンプーへと移る。
「目に染みたら教えてくれよな」
「分かりましたわ」
今度はシャンプーの液を手のひらに吐くと、流れるようにマックイーンの葦毛を洗っていく。
わしゃわしゃと、今日一日で付いた汚れを落としつつ、時々わしわしと頭皮をマッサージしながら。
毛先まで芸術品のような彼女の髪の毛を洗っていく。
彼女に尽くしている。
それがゴールドシップにとっての喜びだった。
「じゃあ流すぞ?なんかあったら言うんだぞ?」
「分かり…ぶべべべ…」
「わり。もう流してる」
なにか言いたげだったのものの、結局何も言えないまま流し終わる。
「んもう!少し時間をおいて下さいまし!」
「わりー。そこまで頭回んなかったわ。」
今回は全面的にアタシが悪い。
そう思い素直に謝る。
「んじゃマックイーンは湯舟に先に入ってくれ。」
「なにを言ってますの?今度は私が貴方を洗いますわ。」
そうキリリとした目で言われた。
結局マックイーンが押し通してゴールドシップの背中を流す。
「マックイーンが洗うの気持ちいな…」
「そうですか?」
「うん。すごい心地いいや。」
「それは…ありがとうございます?」
「誇っていいぜ?隠れた才能だな。」
「なんですのそれ…」
平均よりは小さい体で背中を一生懸命流してくれるのはなんだか微笑ましい感情が先行してしまう。
それよりも…。
「なあ…さっきからオメーの囁きがくすぐったい。」
「なんか声が漏れてますか?」
「いや。自覚がないならいいや。」
「?」
彼女は彼女なりに頑張っているのだろう。
しかしさっきから、んしょ…んしょ…と吐息交じりの声が耳に直に触れてくすぐったい。
込み上げてくる謎の感情を抑え込みつつ、じっと我慢する。
「じゃあ流しますわね。」
そう言うと彼女はシャワーで泡を落とす。
そして流れるように頭を洗おうとする。
「ちょちょちょちょい。頭はアタシがっすから…。」
「いいえ。これはメジロの誇りにかけて貴方を全身全霊で綺麗にして差し上げますわ。」
彼女の目が、レース前のようにギラギラと輝いているのをゴールドシップは気づき、そして抵抗するのをやめた。
「じゃあ洗いますわね。」
彼女の小さい手で、なんとか洗おうと必死に頑張っているのを感じられる手使いだ。
ふと、集中しているからかマックイーンの手がゴールドシップの耳に触れた。
「ひゃぁ!」
「あ!すみません…」
そう直ぐに謝罪するが、ゴールドシップは頬を赤らめながら抗議の声を上げる。
「い、いきなりはズルいぞ…」
そうゴールドシップが言う姿に嗜虐心が湧いてくるが、マックイーンは謝り続ける。
色々災難があったが,今は狭いユニットバスの中に二人揃って談笑している。
「んもうマックイーンちゃんはエッチだなぁー」
「それはもう忘れてください!」
恥ずかしがりながらマックイーンはゴールドシップをポカポカと叩くが、ゴールドシップは彼女でパシャパシャと水を掛ける。
「きゃっ…!やりましたわね…」
「ふふーふ…。やれるものならやり返してみな!」
彼女の挑発に乗ったマックイーンがパシャパシャと応戦する。
それを笑いながら、たまに目に水がクリティカルヒットして絶叫しながら遊ぶ。
そしてふとゴールドシップが口を開いた。
「んでどーだったよ。アタシのテクは。」
「なんだか汚れも疲れも落ちた気がしますわ。」
「そりゃゴルシちゃんもやりがいがあるってもんだ。」
「特に貴方の大きな手で頭を洗われているのはなんだか落ち着きました。」
柔らかな表情を浮かべながら言うので、それは本当なのだろう。
「アタシもマックちゃんが必死に洗ってるのが伝わって可愛かったぜ。」
「それはどういう意味ですの?」
「言葉通りだぞ。ありがとな、マックイーン」
「んもう…。私も貴方の大きい背中も綺麗な髪も…貴方が貴方でよかったと思いますわ」
「それはどういう意味なんだ?」
「ふふっ。それは貴方のレーダーで解析してくださいまし。」
いたずらに成功した子供のように笑うマックイーンに少し困ったようにゴールドシップが言う。
「アタシのレーダーは美味い焼きそばしか探知しねーんだよ。」
んで、結局どういう意味だ?とゴールドシップは続けて聞く。
そうすると、マックイーンは得意げに言った。
「貴方の全てを愛しているってことですわ。ゴールドシップさん。」
おわおわり