結ちな

Last-modified: 2024-04-17 (水) 00:01:44

唇。
一番最初に愛を確かめ合う場所。
私がずっと望んでいたあなた。
思い憧れてきた姿の一端が,その先から垣間見える。
あなたの唇が私のそれに触れる。
その味は甘く,その感覚は優しく。

舌。
一心にお互いの愛を求め合う象徴。
蛇のように絡み合うそれは私を悦楽の渦に引きずり込む。
頭へと伝わる刺激は山椒のようにぴりぴりとしたもので。
それでいて止められない中毒性もあるもので。
もう私たちは、これ以上へと進むしかないのだろうか。

額。
一緒に過ごした始まりの夏,あなたが私に最初の愛を刻んでくれた場所。
私が何を隠そうと,ここから何もかもが伝わってしまいそう。
期待と不安を分かち合うようにあなたは口づけを落とす。
そして私の髪を掻き上げ,初めてを彩るようにもう一度。
私の身体は、その度に熱りを増していく。

耳。
言葉少ななあなたの,瑞々しい息遣いが間近で聞こえる。
何も考えず愛を与えようと努力してきた相手。
そんな愛しい人が舌を這わせて愛を返してくれるのを、そこに伝わる音で実感する。
あれだけ欲したあなたの思いは、とてもくすぐったい。
その甘い思いを、もっと欲しいと思うほどに。

首。
あなたが、私じゃなきゃダメだと言ってくれた。
周りを見渡して誰にでも思いやりを忘れないあなたが。
2人のとき、こうして私だけを見てくれる。
私の中に閉じ込められた独占欲が、その場所を撫でる舌で正当化されていく。
その悦びに私は、ついに声を漏らしてしまった。

「はっ、あっ、はっ」

「ちなつちゃん」

「結衣、せんぱぃ」

胸。
端整でしなやかなあなたの容姿と違って、私のそれは何の魅力もないと思っていた。
あなたは私の下着を取り払った姿を見てどきどきすると言ってくれた。
愛でられるより前に先端はもう、そんなあなたの好意を欲していた。
あなたの舌が私の左の丘で,指が右の丘の上で踊る。
私は情けない息を漏らす。
大好き。
こんなしどけない姿を愛おしいと思ってくれるあなたが好き。
あなたはどこまでも私を味わってくれるのかしら。
ああ,大好き。
だらしなく溢れる吐息を、熱っぽい声に変えてくれる。
触れてほしかったところへと、しっかり進んでくれるあなたが大好き。
ああ。
ああっ。
あああっ…。

「ちなつちゃん?」

「続けてくださ――あっ」

脚。
全てを脱がされてありのままになり,見せることに躊躇した私。
でもあなたは、大丈夫になるまで私の顔を見ていてくれると誓ってくれた。
そして私の腿を妖しい手つきで愛でていく。
誰の目にも止まらないであろうその場所には、あなたの触れた口も赤い跡を残した。
さっきと同じように、押し殺したような息が漏れる。
本当は、こんな淫らな表情だって見られたいものじゃないんだ。
だけど少なくとも今は、あなたの思うがままになっていくだけ。
あなたが見ないと口にしてくれたその場所から、恥ずかしさが鈍く光りながらとろりと溶け出てくる。
一番触れてほしかった私のそれはもう、準備ができてしまった。
それでもあなたは私の大丈夫という言葉を聞くまで、艶めかしくも優しい口づけと手つきを続けてくれた。

「せん、ぱい…」

「ちなつちゃん、大丈夫?」

「はい…。きて、もらえますか…」

「うん」

「あっ、で、でも…。その前に、私の手を…」

「分かった」

秘部に顔を近づけたあなたは、甘い香りがすると言い、ううっと小さく唸る。
やっぱり大丈夫じゃないかもと思う間もなく、舌が私の筋を上下に往復し始めた。
その舌から伝う唾液と私の中から溶け出る恥ずかしさが混ざり合う。
あっんん、んあっ、ひゃう、やっあ…
と曲がりなりにもずっと押し殺していた声はもう止まらない。
やがて膨らんでその溝から浮き出てきた突起も、愛するように先輩の指がさする。
そして、私の中にはあなたの舌が入ってくる。
うう…。
狂おしいほどに私を導くあなたの舌は、やっぱり蛇だ…。
ああ。
いい…。
もっと、欲しい。
もうすぐ、もうすぐ。
私自身が善がる声すら、私に届かなくなるまで。
私の身体が…あなたしか感じ取れなくなるまで…。
はあぁっ、ああっ…。
ひぅ、ふぅあ、あはあっ…。
んぅうう、はぁう、あ、あぁあ…!
お互いを求め合ったの私たちに、言葉はもういらなかった。

幾度となく押し寄せた悦びの波が引いていく頃。
私は、さめざめと泣いていた。
この感覚の裏にあるものが嬉しさなのか怖さなのか、思いを預かったことが少ない私には分からない。
あなたはそんな中で流れ出る涙を、最後まで私を味わい愛した舌で安心させるように拭い去ってくれた。