書き起こし/落語☆

Last-modified: 2016-01-10 (日) 03:37:44

霊夢「ふんふんふんふんふーん、ふふ、よし」
萃香「れいむぅ~、こっち終わったよ~」
霊夢「ご苦労様」
萃香「いやぁ~、今日も暑いな」
霊夢「ふー、ん。掃除はもういいかな~。麦茶でもしよっか」
萃香「は~い。あれ?」
魔理沙「おーっす…」
霊夢「魔理沙、珍しいわね。歩いて来るなんて」
魔理沙「よう霊夢、あ…笑わせるのに手っ取り早い方法を知らないか?」
萃香「いきなりだな」
魔理沙「なんかない?」
霊夢「笑わせる?笑わせるって誰を?病気で希望を失った子供?」
魔理沙「まずはそいつを紹介してくれ」
萃香「わかった!宴会芸だ!」
魔理沙「盛りだくさんだぜ」
霊夢「じゃあ、発作が起きたら人を笑わせないと呼吸困難になる病気にかかってる人」
魔理沙「お、それニアピン!」
萃香「マジでか!」
魔理沙「あぁ、あー…実はパチュリーにやられちゃってさ」
霊夢「なぁに開始のネタ仕込み?パチュリーってあんたから受け取るネタなんて持ってたっけ?」
魔理沙「実は結構もってる」
霊夢「マジでか」
魔理沙「そうじゃなくってさ、あいつ私にまじないかけやがって。だれでもいいから大勢を笑わせないと解けないんだと」
萃香「変わった芸持ってんだなあいつ」
魔理沙「笑い事じゃないぜ」
霊夢「わかった。それで歩いてきたんでしょ」
魔理沙「はぁ、魔法を封じられちまった。ちくしょー、魔理沙さんともあろうものが油断したぜ」
萃香「そりゃ、自業自得ってやつだな」
魔理沙「それもうこーりんにいわれた」
霊夢「私の勘ではみんな同じ事言うわね」
萃香「違いねえ。いい機会だからしばらく反省してなよ」
魔理沙「なんだよお前ら冷たいなあ。友達だろ。私の一大事なんだぜ。空も飛べなきゃ、弾幕も張れないんだぜ」
萃香「だいたい魔理沙はねえ。嘘つきすぎなんだよ」
魔理沙「ちぇ、偉そうに。ここぞとばかりに鬼の首を取ったような顔しやがって」
萃香「魔理沙なんかやらないよ」
霊夢「大勢をかぁ…う~ん、そうねえ…」
萃香「あ、霊夢甘やかすなってばぁ」
霊夢「いいから任せなさいって。いいもの持ってくるから上がって待ってて」
魔理沙「さすが霊夢。どっかのバカ鬼と違って話がわかるぜ」
萃香「おーい、霊夢こんなこと言ってるぞ」
霊夢「あんまり調子に乗ってると袖にするわよ」
魔理沙「私は謙虚だぜ」
萃香「口ばっか…よっと」
魔理沙「はぁ…日は熱いし飛べないし、滅入るぜ全く…」
萃香「魔理沙のマジ凹みってのも珍しいね。スイスイ~と、ほれ麦茶だよ」
魔理沙「便利なやつ。あれ、お前はいいのか?」
萃香「うん、私はこいつだ」
魔理沙「ちぇ、いい御身分だな」
萃香「いひひひ」
霊夢「はい、おまたせ」
魔理沙「まってたぜ」
萃香「ご苦労さん、いいの?簡単に手助けしちゃって」
霊夢「いいのいいの。魔理沙はいこれ」
魔理沙「なんだよこの本?」
霊夢「霖之助さんからもらったのよ」
魔理沙「借・り・たの間違えだろ?」
萃香「パ・ク・っ・ただろ?」
霊夢「失礼ね。もらったって言ってるじゃない」
魔理沙「えーっと、なになに、昭和の厳選落語?」
萃香「落語?」
霊夢「そうよ。不特定多数を笑わすんだったら落語。外では常識なんだから」
萃香「そっかな?」
魔理沙「で、これを受け取った私は何をすればいいんだ?」
霊夢「決まってるじゃない練習して披露するのよ」
魔理沙「え!?もっと手っ取り早い方法ないの?」
萃香「ここは神社だよ。本当に用があるならマヨヒガいってきな」
魔理沙「あいつが私の頼みなんか聞くタマかよ」
霊夢「きっとパチュリーなりに考えがあってやったことよ。ちった努力して何とかしてみれば?」
魔理沙「う~ん…」
霊夢「ちなみに私のお気に入りのお話は…これね」
魔理沙「なになに?八五郎…出世?」
萃香「人情話だねえ…意外だな…」
霊夢「どういう意味よ?」
萃香「あははは」
魔理沙「よしわかったぜ!練習して披露すればいいんだな」
萃香「あれ、どうした?」
魔理沙「こっちから霊夢に頼んどいてごちゃごちゃ言うのも景気悪いの上塗りみたいだろ」
霊夢「うん、そっちのほうが魔理沙らしいよ、頑張んなさい」
魔理沙「これ以上手段探すのも面倒くさいしな」
萃香「そんなこったろうと思ったよ」
魔理沙「決めた!今から三日後。場所は博麗神社、その日のこの時間に霧雨魔理沙さんの口座デビューをご披露してやるぜ」
霊夢「え?神社って、ちょっと勝手に」
萃香「3日で間に合うのか?」
魔理沙「私を誰だと思ってる!じゃ、萃香は人を集めとけよ。じゃーなー」
霊夢「あっ、ちょっと魔理沙ー」
萃香「ふっ、いい目しやがって。あの野郎…」
霊夢「あの野郎じゃないわよ。宴会になったら誰が掃除すると思ってるの?」
萃香「いいじゃん、そのくらい言い出しっぺ」
霊夢「これでつまんないお話なんかに承知しないんだからね」
一同「東方落語魔理沙出世」
魔理沙「だぜ!」
魔理沙「なんだ?しょっぱい人数だなあ」
萃香「なんつう言い草だよ。おい」
魔理沙「私のデビューだぜ。派手に行きたいじゃないか」
萃香「しょうのないやつだなあ」
霊夢「はぁ…こういうのが目的じゃなかったんだけどなあ」
咲夜「わかりますわ。嫌がらせですね」
霊夢「それも違う。いつも人を困らせるようなことばっかりしてちょっとは人を笑わせるようなことをした方がいいわよ」
咲夜「まあ、ふふふ」
レミリア「ぱちぇー、落語って何?」
咲夜「知らないでいらしてたのですか?」
レミリア「うん、私は神社に遊びに来ただけだもの」
パチュリー「外のメジャーなコミックショーのことよ」
レミリア「ふーん、クラウンみたいなものかしら」
パチュリー「ちょっと違うかな。落語は立ち芝居を交えずに語りだけで進行するのが特徴ね」
レミリア「ふーん」
幽々子「きたわよー」
霊夢「あれ?あんたらまで珍しいわね」
幽々子「んふふ、お祭りやるんでしょ?」
妖夢「お祭りじゃないです、幽々子さま。魔理沙の落語ですよ」
幽々子「似たようなものじゃない。神社なんて宴会も久しぶりねえ」
妖夢「宴会でもないですってば。それに神社で宴会はこの間やったばかりじゃないですよ」
霊夢「まっ、どうせ終わったら宴会ね。あんた今日は片付け手伝いなさいよ。一番飲み食いするくせにいつも朝になったらいないんだから」
幽々子「あらやだ、亡霊は陽の下では消えるものよ」
霊夢「今もめっちゃ陽の下だっつーの。いいから掃除でもなんでも手伝いなさい。わかったわね?」
幽々子「霊夢がこわいわー。ん、もー、わかってるわよ、ねー妖夢?」
妖夢「はぁ…わかりました。わかりましたよ。私が幽々子さまの分は働きますから」
幽々子「もー妖夢ったらいい子なんだから」
妖夢「あぁ、ちょっや、やめてください幽々子さま」
幽々子「よいではないか、よいではないか」
妖夢「にょー」
霊夢「なにやってんだか…」
チルノ「すげー何だこのでっかいツボ」
大妖精「チルノちゃん神社はダメだよ。勝手に入ったら霊夢に怒られちゃうよ」
チルノ「だってつまんないんだもん、あたいあきた」
リグル「それはツボじゃなくて瓶っていうんだよ」
大妖精「リグルちゃんもとめてよ」
チルノ「おーみろ大ちゃん魚が入ってるよ」
大妖精「わーすごいねー。いっぱいいるね」
リグル「へー、鮎かな?イワナかな?」
大妖精「かわいいね」
チルノ「いいこと考えちゃった。こいつら凍らせちゃおうよ」
リグル「霊夢びっくりするね」
大妖精「ダメだよ。お仕置きされちゃうよ」
チルノ「大丈夫大丈夫、ばれないようにやるわよ」
大妖精「ダメだよ。バレちゃうよ」
魔理沙「よーしお前らそこまでだ!」
大妖精「ビクッ」
リグル「やばっ」
チルノ「ん?」
魔理沙「今から私がありがたーいお話を聞かせてやるからな。心して笑うように」
幽々子「お経でも聞けるのかしら?」
妖夢「成仏しちゃいませんかね?」
霊夢「落語にありがたいも何もないでしょ。いいからはやく始めなさいよ」
リグル「そーだそーだ」
萃香「ぶーぶー」
魔理沙「せっかちな奴らだな。さてお前ら落語は知ってるな?」
咲夜「なんとなく」
妖夢「なんとなく」
レミリア「外のコミックショー」
パチュリー「そう」
チルノ「カエルとは違う何か」
大妖精「チルノちゃん…」
魔理沙「レミリアが大体合ってる。」
一同「おー」
魔理沙「落語っていうのは早い話が江戸時代に流行った園芸だ」
レミリア「江戸時代ってなに?」
パチュリー「大体昔のこと」
レミリア「ふーん」
魔理沙「まあ今でも外ではそうらしいけど、幻想郷じゃあんまり縁のないものが幅を利かせてたんだ。つまり身分の上下ってやつだな」
霊夢「そうかな?」
萃香「どうだろう?」
妖夢「私は幽々子さまが偉いからって使えてるわけじゃないですよ」
幽々子「あら妖夢ったら」
咲夜「私も自分の意志で仕えさせて頂いてますわ」
レミリア「合格よ咲夜」
チルノ「大ちゃんはあたいの子分な」
大妖精「チルノちゃん…」
魔理沙「その身分を分けるのに士農工商ってのがあった。簡単に言うとお侍さんが一番偉いぜってことだな。
    天下の往来の八分を侍が大手を振って歩いて、残りの二分を他の連中が避けて歩いてたってんだから
    どんなもんだったかは察しの通り、その侍の中でも一番偉いのがお殿様。先祖は地煙を上げて
    戦場で名を挙げて、何万石も禄を頂いたっていわゆる英雄さまってやつだ。ところがそんな英雄さまも
    代々と名が残るってえと生まれついてのお殿様ってのが出てくる。生まれたときから何にもしなくても
    周りの奴らは勝手に傅く、な~んでもやってくれるってんで、何でも自分の思い通りになるって
    んで大変な思い違いをしたもんが多かったっての、まあ仕方がねえっといえば仕方がねえわな」
パチュリー「魔理沙ことみたいね」
魔理沙「おい!そこのもやしうるせえぞ!」
レミリア「もやし…」
魔理沙「そのお殿様、たまに表に出るってえと、表が珍しくて仕方がない。なにせ普段は殆どお屋敷に閉じこもってるんだからなー。
    図書館に閉じこもってる誰かさんみたいだぜー」
魔理沙「表に出るっつても、歩いていくわけじゃないぜ。そこはお殿様のこと、お籠に乗って表をご通行ってわけだ。
    まっ、表が珍しいもんだから、キョロキョロ辺りを見回す、そんなときどうだい。殿様好みのきれいなご婦人なんてのが
    ふっと立ってたりなんかすると、まぁ私らなんかは、おー、きれいな姉ちゃんだぜ、かなんか思って終わりなんだけど」
霊夢「きれいな姉ちゃんって…」
咲夜「イケメンじゃ伝わりにくいんじゃないかしら」
萃香「幻想郷だしなー」
幽々子「幻想郷じゃ仕方がないわね~」
妖夢「いろいろ間違ってる気がしますけど…」
魔理沙「そこは殿様、これ余はあの女を好むぞ。なんてんで、お付けのものに言いつける。するってえと言いつけられたもんが
    そこの家まで伝えに行って、目をかけられたその娘はめでたく側妾って形でお屋敷にご奉公にあずかることになる。
    月満ちて生まれたのが玉のような男の子ってことにでもなったらもう大変だ。方号ってもんを頂いて
    奥方様と同じ飯を食えるようになるって大変な出世なんだ。女氏なくして玉の輿に乗るなんつったりして
    まあ、むっちゃくちゃな時代だったわけだ」
魔理沙「おっすこーりんなんか用か?」
霖之助「やっときたね…読んだらすぐに来なくちゃダメじゃないか。どうせ僕が呼んでると知っていながら隠れまわってたんだろ?」
魔理沙「い、いやいや、別に隠れてたわけじゃないぜ。その辺の妖精と弾幕ごっこしてたんだ」
魔理沙「あっはははー、チルノごときが魔理沙さんに勝とうなんざ100年早いんだよー」
チルノ「むー、ドチクショー」
大妖精「チルノちゃんまた負けちゃったね」
チルノ「負けてない!今のはちょっと油断しただけだよ!」
リグル「負けは負けじゃないかな」
チルノ「ちょっとリグル何冷静になってんのよ!あんたどっちの味方?」
魔理沙「もう一回やるか?私は全然構わないぜ」
チルノ「いい気になりやりながって、当たり前でしょ!あたいのマジを見せてやるわよ」
魔理沙「いいぜ。かかってきな!」
チルノ「いくよ!アイシクルフォール。イージーだ!」
魔理沙「ほんとに学習の能力ないなー。って?あぁ?」
妖夢「魔理沙?魔理沙はいませんか?」
魔理沙「なんだあれ?妖夢か?」
大妖精「珍しいね。あの子がこのへんに来るなんて」
リグル「魔理沙のことを探してるよ」
チルノ「こーら!人のスペカ中に普通に会話すんなー!」
魔理沙「よし、私はその辺に隠れてるからお前らあの幽霊あしらってくれ」
リグル「えぇ、なんで?」
魔理沙「なんかめんどい予感がするから」
チルノ「ああ、こら勝負の途中で逃げるなー」
魔理沙「ああ、あいつが帰ったら相手してやるからうまくやってくれ」
チルノ「ほんとね?」
魔理沙「ほんとほんと、じゃあ頼むぜー」
大妖精「隠れちゃった…」
妖夢「あのー、魔理沙見かけませんでした?」
大妖精「こんにちはー」
妖夢「あ、はい。こんにちは」
チルノ「幽霊が妖精になんか用?」
リグル「私妖怪なんだけど」
妖夢「えっと、香霖堂さんから入用の代金に使いを頼まれまして魔理沙を探して呼んできてくれって」
大妖精「香霖堂ってあの道具屋さんだよね?」
リグル「魔理沙に用だって?またなんかパクったんだよ」
チルノ「すげえな魔理沙こういう勘は神子越えてるんじゃない?」
大妖精「とにかく上手く誤魔化さなきゃ」
チルノ「おう!なんで誤魔化さなきゃいけないんだっけ?」
リグル「いいから!」
妖夢「あのーどなたかご存じないですか?」
リグル「え?あぁ、えーと、魔理沙だよね?あー、チルノ」
チルノ「大ちゃんパス」
大妖精「んー、魔理沙なら神社とかじゃないかな」
チルノ「そうそう、ナイス神社」
大妖精「チルノちゃん!」
妖夢「ナイス?神社なら真っ先に行ったわ。それに霊夢を…」
リグル「だよねー」
大妖精「チルノちゃん!」
リグル「あー、え、ここんとこみないよね」
妖夢「そうですか…困ったなあ、魔理沙を見つけないと品物受け取れないのに」
大妖精「大変だね。んー、でもこのへんにはいないよ」
チルノ「そうそういないよ。あの茂みの中にもいないのよ」
妖夢「茂みの中?」
大妖精「チルノちゃん…」
リグル「ばーか…」
霖之助「隠れてるじゃないか…」
魔理沙「隠れてないぜ。突然茂みで昼寝したくなったんだ」
霖之助「今日呼んだというのは他でもない」
魔理沙「代金のことだろ?やれやれ、香霖堂いつからレンタル屋になっちまったんだよ」
霖之助「なんだよ、レンタル屋って?」
魔理沙「借りたものの代金を取るところ」
霖之助「君のはね。窃盗と言うんだ」
魔理沙「借りただけだぜ」
霖之助「全く…今日呼んだのは代金のことじゃない。君の妹、屋敷にご奉公にあがっている霊夢がいるだろ?」
魔理沙「霊夢は妹じゃないぜ。巫女で神社で昼寝だぜ」
霖之助「今この話では君の妹だよね」
魔理沙「何わけわかんないこと言ってるんだ?」
霖之助「この話は君が話してる落語の内容であってだね」
魔理沙「変なこーりん」
霖之助「だから、君は魔理沙だけど魔理沙じゃなくて八五郎で、霊夢は」
魔理沙「八五郎の妹のお鶴だろ。で、霊夢がどうしたんだ?」
霖之助「今日呼んだのは他でもない。お屋敷でご奉公にあがっている霊夢が」
魔理沙「霊夢は私の妹で殿様お嫁さんだぜ」
霖之助「そう…その霊夢が大変だよ」
魔理沙「なんか持ってずらかったとか?」
霖之助「君じゃないんだ。そんなこと…しかねないねえ…しかねないがそうじゃない!そうじゃないしこのままのノリだと
    話が進まないし面倒くさいんだよ」
魔理沙「お前のしゃべり方のほうが面倒くさいぜ?」
霖之助「霊夢がお世取りを産んだんだ」
魔理沙「へー」
霖之助「薄いなあリアクション」
魔理沙「霊夢が夜雀産んだんだろ?あいつならそれくらいやりかねないぜ」
霖之助「夜の鳥じゃないお世取り。男のお子さんを産んだといったんだよ。これは大変な出世だ。方号というものを頂いて
    これからは霊夢の方様と呼ばれるように」
魔理沙「はははははー」
霖之助「ここ笑うところじゃないだろ!」
魔理沙「え?なんか語呂が悪いなーって、霊夢のカタサマだってさ」
霖之助「で、お殿様も大変にお喜びでね。君のこともちゃんと覚えてくださってるんだそうだ。確か霊夢には兄がいたな?
    よしその兄に会ってやろうと言うんだよ」
魔理沙「私は霊夢の兄だぜ」
霖之助「そう。っていうかそういうのもういいから」
魔理沙「じゃあ、俺は霊夢の兄だぜ」
霖之助「俺魔理沙は別の意味で面倒くさいから」
魔理沙「え!?」
霖之助「そこでそんなに驚かないでくれ」
魔理沙「いや、殿様が私に会いたいってんだろ?だから…えー!?」
霖之助「ごめんまって…ちょっとまって、疲れる…ほんと疲れる…」
魔理沙「そっかー。疲れるんじゃしょうがない。あっ、私は帰るぜ」
霖之助「進まない…話がちっとも進まない!」
しばらくお待ちください
霖之助「そ、だからこれから支度をしてお屋敷に行ってたまえ」
魔理沙「う~ん、私が殿様に会うのか。殿様って誰?」
霖之助「それは行く行くわかる」
魔理沙「う~ん…悪いけどさ断ってくんない?嫌いなんだよあーいうかたっ苦しいところ。なんかこうぺこぺこお辞儀するんだろ?
    嫌なんだあーいうの。口だってまともに聞けないんだからさ。そうだ!こーりん代わりに行ってきてくれよ
    嫌だぜいまさら…殿様と付き合うなんて」
霖之助「何か勘違いしてるだろ。お殿様がいまさら君と付き合いたいなんて言うわけないだろ」
魔理沙「いや、わからないぜ?幻想郷ってのはそういうところだ」
霖之助「君の間違った幻想郷観はどうでもいいんだ。殿様が会ってくださるってんだから行けばいいんだよ。行けば損なことはないよ」
魔理沙「なんだよ損はないって?なんかくれんの?」
霖之助「お目録をくださる」
魔理沙「なにそのおもくもくって?」
霖之助「おもくもくじゃない。お目録。ご金子、つまりお金を頂戴する」
魔理沙「金くれんの!おぉ、くそー、早くそう言ってくれればいいのに」
霖之助「そうだな…何しろ君はお世取りを産んだ霊夢の兄だから、どう安くみても100両はくれるだろう」
魔理沙「えぇ、100両!?ほ、ほんとそれ、ほんとにくれんの!た、ただで!?くれなかったらこーりん立て替える?」
霖之助「君じゃないんだ。こんなことで嘘はつかないよ」
魔理沙「ありがてえ、運が向いてきたぜ。こりゃ大変だ。100両もらったらね。方方にある借金なんか、パーッてね、
    みんなにそっくり払っちゃってね。あ、そうだ!こーりんから借りたもののお金そっくり全部払っちゃうぜ」
霖之助「そうかい。そうしてもらいたいもんだね」
魔理沙「そうするよ。なんだよ、いつも勝手に借りてるから霖之助さん霖之助さんってぺこぺこしてんだから、お金払やこちはきゃくじゃねえか
    なんだこーりん!ってなもんだ」
霖之助「君から霖之助さんなんて呼ばれたことはなんてない」
魔理沙「物忘れの激しいやつだな」
霖之助「それだけじゃないぞ、もしお殿様が君のことを気に入ってくださったらな。君をお侍にしてくださるかもしれない
    まあ、いろんなことがあるからこれから支度をしてお屋敷に行ってきたまえ」
魔理沙「よし、お屋敷だな!んじゃ、行ってくるぜー」
霖之助「こらこらこらこら、待て待て待て!そのまんまで飛んでくやつがあるか。ああいうところに行くにはね。
    紋付きに袴羽織というものをつけていかなきゃいけない。君は遊んでばかりいるからそういったものは持ってないだろ?」
魔理沙「紋付き袴?うーん…粗末なのでよかったら一応あることはあるぜ」
霖之助「粗末なものっていいんだよ。ああいうのは形のもんなんだから。持ってるのかい?それは大したもんだ
    遊んでばかりいてもそういうところに気が回るというのは大したもんだ。よし、じゃあいいから早く家帰って
    着替えてきたまえ」
魔理沙「家にはない」
霖之助「じゃあどこにあるんだい?」
魔理沙「こーりんが座ってる後ろのタンスだぜ。たしか上から三番目だったかな。その引き出しんなか入ってるぜ」
霖之助「なに!?これは僕のだよ」
魔理沙「そうだよ。それを借りるんだぜ」
霖之助「威張ってるやつがあるか。それに上から三番目の引き出しってよく知ってるね」
魔理沙「留守んときに開けてみたんだ」
霖之助「いい加減にしないとバチが当たるよ」
魔理沙「飽くなき探究心だぜ」
霖之助「まあいい…じゃあ着付けをしてあげるから背中を向けたまえ」
魔理沙「は?」
霖之助「着付けをするから服を脱ぎなさいといったんだ」
魔理沙「え?嫌だぜ。一人でできるぜ」
霖之助「紋付き袴の着付けなんて一人じゃできないだろ?いいからほら」
魔理沙「え、だってそんなの、は、恥ずかしいだろ…」
霖之助「なにをいまさら」
霖之助「君が子供の頃は僕が…」
魔理沙「あー、お前何言い出すんだ!」
霖之助「あ、こら!おとなしくしないか!」
魔理沙「いやだー!」
妖夢「こんにちはーって何騒いでるんですか?」
魔理沙「あ、いいところに来た妖夢、この馬鹿を斬れ」
妖夢「斬りませんよ。人を辻斬みたいに言わないでください」
魔理沙「にたようなもんだろうがー」
霖之助「これは白玉楼の、ちょうどいいところに」
魔理沙「私は帰るー」
霖之助「わかったわかった、わかったからちょっと落ち着きなさい」
魔理沙「うー」
妖夢「品物を受け取りに来たんですけど」
霖之助「ああ、使いをどうもありがとう助かったよ。足元にある箱にあるのが品物だ」
妖夢「あ、はい。へー、これがじゃがポックルですか袋詰ですね」
霖之助「外では珍しくない包装様式だよ。」
妖夢「品物確かに。それではこれで私は」
霖之助「ああ、妖夢くんついでに頼まれて欲しいんだちょっとまってくれないか」
妖夢「えー、私はこれを早く幽々子さまに召し上がって頂きたいんですけど」
霖之助「君紋付きか袴の着付けはできるかい?」
妖夢「ああ、ひと通りの着付けなら師匠から」
霖之助「さすがだね。その紋付きの着付けなんだが魔理沙に頼めないかい?」
妖夢「そのくらいならすぐですけど」
霖之助「外の珍品、カニポーションをつけよう」
妖夢「なんですそれ?」
霖之助「海に住むタラバというカニの足をむき身にしたものだよ。たまたま紫が置いていってね
    幻想郷ではウチ以外でh絶対お目にかかれない」
妖夢「これが海の幸ですか…」
霖之助「生物だからね。早めにいただかないと傷んでしまうから扱いに困っていたんだ」
妖夢「海の幸…」
幽々子「これが海の幸なのねー」
妖夢「遅れて申し訳ありません幽々子さま。これをぜひ召し上がっていただこうと思いまして」
幽々子「私のためにわざわざ、いいのようれしいわありがとう妖夢」
妖夢「いえ、私ただ幽々子さまに喜んでいただければと」
幽々子「やだー妖夢ったらほんとかわいいんだから、頭ナデナデしちゃうー」
妖夢「おやめください幽々子さま私子供じゃないんだから」
幽々子「いい子いい子ー」
妖夢「えへへへへ」
霖之助「どうだろう?」
妖夢「うーん…そういうことなら、わかりましたはい」
霖之助「ありがとう助かるよ。というわけで魔理沙、妖夢くんに着付けてもらうなら構わないだろ?」
魔理沙「うん」
妖夢「香霖堂さん魔理沙の着付けをやるつもりだったんですか?」
霖之助「おかしいかい?」
妖夢「セクハラですよそれ」
少女着替え中
妖夢「もういいですよ」
霖之助「どれ。おー、よく似合ってるねえ。男前が上がったよ」
魔理沙「ははははー、そうだろうとも私は何を着ても似合っちゃうんだぜ」
妖夢「男前って言われてますけど?」
魔理沙「はっはははー」
妖夢「じゃあ、私はこれで失礼しますよ」
霖之助「すまなかったね急いでるところを」
妖夢「まったくですよ、幽々子さますぐ戻りますからね」
霖之助「よしじゃあ、魔理沙お屋敷の場所はわかっているね?」
魔理沙「ん?そんなの知らないぜ」
霖之助「さっきはどこに飛んでいこうとしてたんだ?」
魔理沙「そんなの知らないぜ」
霖之助「まあいい。霧の湖は知ってるね?」
魔理沙「さっきまでそこで遊んでた」
霖之助「そこの近くに大きなお屋敷があってだね」
魔理沙「なんだお殿様ってレミリアか」
霖之助「なんというか最低だな君は」
魔理沙「お屋敷って紅魔館だろ?紅魔館なら知ってるぜよく本を借りに行くから」
霖之助「狩りにの間違いじゃないのかい?」
魔理沙「あははははーあはははは」
霖之助「僕は皮肉を言ったんだよ…」
霖之助「あちらに行ったらご門番様がいらっしゃる」
魔理沙「謎の中国人だぜ」
霖之助「そのご門番さまにどこに通る?と聞かれたら御広敷というところに通ります答えるんだ」
魔理沙「おひろしき?」
霖之助「そう。で、どなたにお目にかかると言われたら十六夜咲夜という方にお目通り願いますと言うんだ」
魔理沙「謎のメイドだぜ」
霖之助「大体合ってる。それから最後に君のその口の聞き方だな。雑な言葉を使うからね。」
魔理沙「私は普通だぜ」
霖之助「女の子は普通だぜなんて言わないよ、いいかい、向こうについたらものの頭におの字をつけて下に奉る
    何々でござり奉りましょうとこういうふうに言うんだ」
魔理沙「なーんだよ面倒くさいなあ。美鈴とかレミリア相手だろ?いいじゃないか、別に口の聞き方なんて」
霖之助「メタなことを言うようだがこの話では君は平民、レミリアはお殿様なんだ!くれぐれも身分の差に気をつけたしゃべり方をしたまえ
    わかったね?」
魔理沙「なんだかなあ。うーん、やっぱこーりん変わりに行ってきてくれよ」
霖之助「100両…」
魔理沙「うお、そうだった!肝心なことはしっかり覚えてるとはさすがにこーりんは格が違った。じゃいってくるぜー」
霖之助「行かせてよかったんだろうか…」
魔理沙「へへ、ありがたいねえおい。あの霊夢がねえ、お霊夢の方様とは気が付かなかったよなー
    向こうに行くってえと100両もらえんだ。こったえらんないぜこりゃ。お、とかなんとか言ってるうちに
    紅魔館だ。よっと、門番おーっす」
紅美鈴「これこれこれこれこれ」
魔理沙「どれどれどれどれどれ?」
紅美鈴「これ」
魔理沙「おう、おじゃまするぜー」
紅美鈴「これ、おじゃまするぜーじゃない!はやく通んなさい」
魔理沙「うん。だから通って中へ入るんだぜ」
紅美鈴「中へじゃなくて前を通ってあっちへいけって言ってるのよ」
魔理沙「あ?あっちへいったら通り過ぎちゃうじゃないか。今日はちゃんとお呼ばれの用があってきたんだよ」
紅美鈴「あんたの言うこと信じる妖怪なんて幻想郷にはいないっつーの。ほれほれいいから帰んなさい。
    またパチュリー様に怒られちゃうでしょ」
魔理沙「なんだよ。今日は嫌に仕事熱心だな」
紅美鈴「普段は熱心じゃないみたいに言うな」
魔理沙「お前の相手してる暇はないんだよ。今日は霊夢の兄貴なんだ」
紅美鈴「はあ?何分けのわからんことを。霊夢の…なんだって、あんた女の子でしょうに」
魔理沙「そうじゃなくて霊夢はレミリアのお嫁さんで私は霊夢の兄貴なんだぜ」
紅美鈴「はあ?ついに頭おかしくなったのあんた?え、なに?霊夢が兄貴でガチムチ、蝶形?」
魔理沙「レミリアはお殿様なんだろ」
紅美鈴「ん?あぁ、はいはいはいはい。んん、いかにも私はお屋敷のご門番にござる」
魔理沙「そんなわけで霊夢の兄貴の魔理沙だぜ」
紅美鈴「左様か、してどこに通ろうというのだ?」
魔理沙「変なしゃべり方」
紅美鈴「そんなことはない。お屋敷のご門番であるからこんなものである」
魔理沙「似合わないなあ。日本語まで微妙に変だぜ」
紅美鈴「ちょっとやらせてってば。してどこに通ろうというのだ?」
魔理沙「御風呂敷」
紅美鈴「御風呂敷とやつがあるか!それを言うなら御広敷だ。どなたにお目にかかる?」
魔理沙「ん?咲夜だぜ」
紅美鈴「あ、こらー。咲夜さんを呼び捨てにすんな」
魔理沙「んー?咲夜は咲夜だぜ」
紅美鈴「咲夜さんはうちのメイド長よ。呼び捨てにしていいのはお嬢様方とパチュリー様だけです」
魔理沙「おまえしゃべり方はどうしたー?」
紅美鈴「あぁ、んん。咲夜さんに用であるか?では案内をするからこちらへ参れ。良いか?
    ここを真っ直ぐ行くは右の方におばばがあるは、その先に柳の木があるは、すぐ先に井戸があるは」
魔理沙「そっからなんかでるは」
紅美鈴「何も出はせんもう!早く参れ!」
魔理沙「へへへ、相変わらずからかい甲斐のあるやつだな。うちのメイド長よ。だってさ。えーっと、
    ここを真っ直ぐ行くは右の方におばばがあるは、ん?なんだよ、ばばあもじじいもスキマ妖怪も
    何もいやしないじゃねえか。えー、柳の木があって、井戸があって、ああここだ。こんちはー、おう!
    え?魔理沙さんだぜー。なんだよ、人を呼びつけといて留守かよ。冗談じゃないぜ。おい!帰っちゃうぜ。」
魔理沙「もーわざわざ来てやった結果がこれ?ったく帰ったらすぐ迎えが来るんだろ。面倒でしょうがねえなあ
    んん、よう、いねえのか?おう、奉るよー!」
パチュリー「なによ?」
魔理沙「いるじゃないか。パチュリーおっす」
パチュリー「さっきからうるさいんだけど」
魔理沙「おう、奉るぜ」
パチュリー「奉る?なにを奉るのよ?」
魔理沙「なんにも奉らん欲張るな!」
パチュリー「騒ぐんなら帰って」
魔理沙「あ、今日は本借りに来たわけじゃないんだ」
パチュリー「そう…珍しいわね。用がないなら帰って」
魔理沙「咲夜呼んで?」
パチュリー「咲夜?咲夜に用なの?」
魔理沙「うん、そう」
パチュリー「ほんとに珍しいわね。魔理沙が咲夜に用なんて」
魔理沙「あれだよあれ、霊夢の兄貴で殿様に会いに来たってやつ」
パチュリー「そう…じゃあ勝手に行きなさい」
魔理沙「なんだよ。呼んできてくれたっていいだろ?」
パチュリー「ん、なんで私がそんなことしなきゃいけないの?」
魔理沙「どこのいるかわかんないだよ。第一、紅魔館の中なんて図書館までしか知らないし」
パチュリー「それは魔理沙の都合でしょ?私とどう関係があるの?」
魔理沙「冷たいなあ。友達だろ?」
パチュリー「友達?」
魔理沙「無償で手伝ってくれるっていうのが友情の醍醐味ってやつだぜ」
パチュリー「そういうものなの?」
魔理沙「うん、たぶん」
パチュリー「そう、それじゃあ仕方ないわね。私と同道なさい」
魔理沙「堂々?私はいつも堂々としてるぜ」
パチュリー「そうじゃなくて…」
魔理沙「私はパチュリーが大好きだぜ」
パチュリー「は?あ、あなた何言って…」
魔理沙「本貸してくれるからな。ほら、堂々としてるだろ?」
パチュリー「あ、あれは魔理沙が勝手に持って行くんじゃない」
魔理沙「飽きたら返すって言ってるじゃないか」
パチュリー「そうじゃなくて約束守りなさいって言ってるのよ。いつも本取りに来るだけじゃない
      私とお話してくれるって…」
魔理沙「あーわかったわかった。わかったから咲夜」
パチュリー「だから咲夜って。えぇ」
魔理沙「堂々してるから咲夜呼んで咲夜?」
パチュリー「あぁ、そうじゃなくて一緒に行くことを同道というのよ」
魔理沙「え?じゃあ最初からそう言えよな。難しい言葉ひけらかして悪い癖だぜ」
パチュリー「あ、ごめんなさい…」
魔理沙「気にしてないぜ」
パチュリー「え?あ、あれ?」
魔理沙「いいから行くぞ。ついてきてくれんだろ?」
パチュリー「うん」
魔理沙「うーん、このへん来るのは初めてだぜ。いまさらだけどあれだな紅魔館の中身って結構綺麗なんだな」
パチュリー「咲夜が頑張ったおかげね」
魔理沙「あ、壁に穴が開いてる」
パチュリー「魔理沙が頑張ったせいね」
魔理沙「照れるぜ」
パチュリー「褒めてない。結局私に案内までさせて」
魔理沙「感謝してるぜ」
パチュリー「嬉しくない。いい?ここで控えているのよ」
魔理沙「なんだ、ヒキガエルって?」
パチュリー「もうヒキガエルでいいわ。ここでヒキガエルしてれば咲夜が来るから」
魔理沙「おう、サンキューなパチュリー」
パチュリー「嬉しくない」
魔理沙「次はお茶とお菓子もってくるぜ」
パチュリー「待ってる」
魔理沙「行っちゃった。さてとここでヒキガエルしてれば咲夜が現れるんだよな。」
魔理沙「現れない…ううぅ、暇だぜ」
魔理沙「暇だからスペカの実験でもしてようかなー」
咲夜「はー、全く相変わらずねあなたは」
魔理沙「咲夜おっす」
咲夜「咲夜おっすじゃありませんわ」
魔理沙「じゃあ、めっす?」
咲夜「霊夢の兄上、霧雨魔理沙殿とは貴殿であるか?」
魔理沙「おう完全スルー…そうそう霊夢の兄貴の」
咲夜「私は当家の重役十六夜咲夜と申します」
魔理沙「謎のメイド人間だぜ」
咲夜「最前から殿様もお待ちかねですわ。さっ、私に続いて同道くださいませ」
魔理沙「スルースキル高いなおい…同道ってのは一緒に行くことを言うんだろ?」
咲夜「ええ、そうよ」
魔理沙「何でも心得ちゃってるんだこっちは、同道でも何でもしちゃうぜ。しかしあれだな。
    紅魔館ってスゲー広いんだな」
咲夜「当然ですわ。なにをいまさら」
魔理沙「いやーほら、図書館くらいしか行ったことないから」
咲夜「お嬢様方の御寝所にまで突撃した人間の言うことじゃないわね」
魔理沙「そんな昔のことは忘れたぜ」
咲夜「あのときの大穴まだ直ってないのよ」
魔理沙「うん、さっき見た」
咲夜「御棺だって、まあいいですわ。あなた方が襲ってきたあの日から屋敷の皆さまは変わられた。
   パチュリー様もフランドールお嬢様もそしてレミリアお嬢様もあなた達が開けたのはきっと壁の大穴だけじゃない。
   皆さま方の心に風穴を開けてくれた。私はそう考えているわ」
魔理沙「私はお前らをやつけに来ただけだぜ」
咲夜「そうね…いやですわ。従者の分際で差し出がましかったかしら」
魔理沙「まったくだぜ」
咲夜「ふふ、さっお嬢さま…じゃなかった殿が参られますわ。ここで傅きなさい」
魔理沙「かしずきなさいってなに?」
咲夜「頭を下げて控えなさい」
魔理沙「ええ!やだよそんなの、悪いこともしてないのに」
咲夜「いつもしてるじゃない」
魔理沙「いつもしてないぜ」
咲夜「いいから従いなさいな。霊夢に会いたいんでしょ?」
魔理沙「うーん、かしずきなさいしないと霊夢に会えないの?」
咲夜「そうよ。平伏じゃなくて立膝でいいから」
魔理沙「うーん…わかったよ。こう?」
咲夜「そうそう、よく似合っててよ」
魔理沙「全然嬉しくないぜ」
レミリア「咲夜案内ご苦労。このものが霊夢の兄、霧雨魔理沙ね?さあ、霧雨魔理沙、面を上げなさい。
     面を上げなさい。さーくやーなんでこいつ言うこと聞かないのー?」
咲夜「ははー、魔理沙、何してるのよ?殿はおもてを上げなさいと仰せよ。」
魔理沙「え?」
咲夜「面を上げなさい」
魔理沙「上がんなよそんなのー」
咲夜「なぜ上がらないの?」
魔理沙「なぜ上がらんって分かりそうなもんじゃねーかよ。こんなに土台がしっかりしてんだぜ。
    これを上げるとなったら大変だよ。職人の数から道具箱の数から」
咲夜「何を分けのわからないことを言ってるのよ」
レミリア「さーくやー、どーなってんのー?」
咲夜「はい、ただいま。お嬢様がややおかしくなり始めてるじゃない。いいから頭を上げなさい」
魔理沙「上げろ?さっき下げろって言ったじゃないか?」
咲夜「いいから!」
魔理沙「ああ、わかったよ。上げりゃいいんだろ上げりゃ。ああ、なんだよこれ。
    向こうがピカピカ光っちゃて眩しくって目が開かないぜ。こりゃまたえらい成金趣味だな。
    だから来るやだって言ったったんだよ」
レミリア「霧雨魔理沙、その方を呼んだのは余の儀にあらず。その方の妹霊夢が安産をいたし、世取じゃによって世は満足に思うぞ。
     その方はどうじゃ?即答いたせ。どうじゃ?どーじゃ?さーくやー!こいつぜんぜんいうこときかないよー」
咲夜「なにしてるの!即答を打ちなさい!」
魔理沙「え?」
咲夜「構わないから」
魔理沙「いいの?じゃあ…本当にいいの?」
レミリア「さーくやぁー」
咲夜「お、お嬢様…早く打ちなさい!」
魔理沙「じゃ、じゃあ、そぉーい!」
咲夜「ぬわああああ」
魔理沙「うし、会心!」
咲夜「あ、あなたいい度胸してるわね?」
魔理沙「あれ?やっぱ違った?」
咲夜「どう勘違いしたら私をぶん殴るという考えに至るのかしら?」
魔理沙「え?面をそばもってきて側頭を打て側頭を打てって言うからさ。だから打ったんじゃないか」
咲夜「次この手のボケをかましたら殺すわよ?返事をしろって言ってるの」
魔理沙「ああ、なんだよ。返事しろってんなら最初からそう言えよな。わけわからんない言葉使いやがって」
魔理沙「いいよ。返事しろって言うんだろ。返事くらいでできらーな」
咲夜「殿が相手なのよ?口の聞き方には気をつけなさい」
魔理沙「大丈夫だよ。ちゃんとおそわってきたんだ。」
魔理沙「んん、お殿様にご、ござり奉りましょうか?私はお霧雨お魔理沙さまと申し奉りる。
    さっきこーりんさまがお用務様でお魔理沙さまをお呼び奉ったんでいって…見奉ったところが
    霊夢がお世取りを産み、産み奉ったのでいって見奉ると申し奉る。行けば損はないぜと言って奉ったんで…
    奉る!」
レミリア「咲夜」
咲夜「はい」
レミリア「私、この子の言ってること全然わかんない」
咲夜「申し訳ございません」
レミリア「うん、構わないわ。私の前だから慣れない言葉を無理に使おうとしているんでしょ?
     朋友に物申すようで良いとそう伝えなさい」
咲夜「かしこまりました。何わけのわかんないこと言ってるのよ。殿はあなたの言ってること全然お分かりでなくてよ」
魔理沙「そりゃそうだろうねえ。私も何言ってるかわかんないんだから」
咲夜「自分で分からなことをいう人がいますか、感謝なさい。朋友に物申すようで良いと仰せよ」
魔理沙「なんだほーゆーって?新作と何か関係が?」
咲夜「それはUFO。お友達と口を利くようでいいと仰ってるのよ」
魔理沙「お、いつも通りってこと?」
咲夜「あなたと殿は初対面」
魔理沙「あ、そうだった。そっかー、殿様も苦労人だねーおい。なんだ、それならそうと最初から言ってくれりゃいいのに
    友達でいいんだな。」
魔理沙「うん、んじゃまあ。あのさぁ」
咲夜「あのさぁという人がいますか」
レミリア「構わなくてよ。さあ、どうしたのかしら?」
魔理沙「おう、なんだか知んねえんですけどね。今朝方、半人前の半霊野郎がこーりんが呼んでるからさっさといけって言ってんですわ。
    また品代の催促かよと思ったけど、一応行ってやったら妹の霊夢がお世取りを産んだって言ってんですよ」
魔理沙「こっちはそそっかしいや、ミスティアを産んじまったかと思ってちゃいましてね。いやー、さすが霊夢だわーとか
    思ってたら、あれですってね、男の子のことをお世取りっつうんですってね」
魔理沙「男の子がミスティアつうんだったら、女の子をリグルだとかなんとか言っちゃったり
    なんかしちゃったりしそうなもんだよ。な?」
咲夜「な?という人がいますか!」
レミリア「構わなくてよ。魔理沙、あなたささは食べるかしら?」
魔理沙「ささ?私は白黒だけどパンダじゃないですからねえ。笹っぱは食ったことないんすよ」
咲夜「酒を飲むかとお尋ねなのよ」
魔理沙「酒!?冗談言っちゃいけねえ酒だったらねえ浴びる方っすよ」
レミリア「そう、皆の者、膳部の支度をなさい」
魔理沙「あれ?どうしたの?なんかしくじった?様子が変わっちゃった」
咲夜「あなたにごちそうしてくださるのよ。皆その準備にあたってるの」
魔理沙「え?ごちそうしてくれんの?お殿様が?」
咲夜「ええ」
魔理沙「悪いよ。土産もなしに、手ぶらできちゃったのにさ」
咲夜「こういうときはご好意に甘えないほうがかえって失礼というものです」
魔理沙「いいの?ほんとに?すいませんねどうも。いやー、こんなことちっとも考えてなかったんすよ
    知ってたら香霖堂でかっぱらって一本や二本ぶら下げてくるのに」
咲夜「余計なこと言わないのよ」
魔理沙「いやー、綺麗ですねこのお女中さんは。あ、そこんとこ置いといてください
    お、なんだよこっちからも!え、じゃあそこんとこに、あらららららら、あーすごいね。
    ずらっと並んじゃったよ料理が」
レミリア「お気に召したかしら?」
魔理沙「こりゃまた見たこともねえようなもんっすよ。わー」
レミリア「ふふふふ」
魔理沙「じゃあ、これからはなんっすね。みんなで盛って料理を肴にわーっと一杯やろうと?こういうわけだ」
咲夜「違うわよ」
魔理沙「え?そうじゃねえの?なんで?これみんな私の分?一人前これが!?お、おい、冗談じゃ…
    おーいそこの姉さん、ちょっと下げてくれよこれ。いやそうじゃねえってこっちは本物の酒飲みだぜ。
    塩舐めたって五合(ごんごう)くらいキューっと言っちゃうんだから」
魔理沙「肴を荒らさねえってのが自慢なんだから。あ、また持ってきた。いいよもってこなくって、これも下げちゃってくれよー
    殿様も食べてくださいよ。んな見栄張ことねえんだから」
咲夜「余計なこと言わないのよ」
レミリア「構わなくてよ。これ魔理沙たーんと食べなさい」
魔理沙と咲夜「ははー 」        


少女暴飲中


魔理沙「へへへへ、あーびっくりしたー。すっかりごちそうになっちゃいやして、どうもありがとうござんす
    いやー、お殿様なんて随分とうめえ酒呑んでんだねえ。ちょいとね、普段私らが呑むような酒とは違うよ。
    なんてのー、こうお殿様の酒ってのはね、口元に近づけるってえと、勝手にだよ!
    酒が口の中にピューッと入ってきちゃうんだよ。私らが呑むような酒はだめだよ。もうやっすい酒だからねえ
    酒のほうが呑まれたがれねえんだよ、口元へ持ってくるとさ、嫌な匂いがつーんと鼻に来るからよ
    だからよ、何だこの野郎!ってえんでキューっと無理矢理開けるだろ。そうするってえともう、
    後で酒が怒ってるんだよ。頭にピーって来るんだよ。そこへ行くってえと、殿様の呑んでる酒ってえのは違うよなあ」
レミリア「どう口にあったかしら?」
魔理沙「いやあすっかりごちそうになりやした。ありがとうございやした」
咲夜「お粗末さま」
魔理沙「おう、そうだそうだ。霊夢なんすけどね。いい子でしょ?あんないい子はいねえすっよ。
    私の言うことにもねえ、魅魔さまの言うことにもねえ。魅魔さまってのは私の師匠なんすけどね
    これっばかしも逆らったことねえんすよ。まあひとついいやつなんでここはひとつよろしくお願いします」
魔理沙「咲夜さんにもねえ、いろいろと迷惑かけると思うけどどうぞよろしくお願いします。」
魔理沙「あ、そうだそうだ。おまえにはいろいろ面倒かけちゃったからね。こりゃ気が付かなかった。悪かったよ」
魔理沙「一杯やろうぜ?」
咲夜「私は結構ですわ」
魔理沙「いいじゃん。んな遠慮しなくたって」
咲夜「魔理沙、あなた少し不調法ですわよ」
魔理沙「あぁ?おまえあれだぶちょうほうって顔じゃないぜ。アリスんちのグランギニョル人形みたいな顔してんだ」     
魔理沙「ええ?呑まねえの?なんでえ、だらしがねえなあ。じゃあいいよ、お前さんがそばにいるとうるせえんだ
    無礼ですわよ無礼ですわよって、酒がまずくなっちゃうからね。どこにでも下がってねえ、
    休息でも十足でも好きなことしてくれよ」
咲夜「魔理沙、無礼ですわよ」
魔理沙「なに?」
咲夜「無礼ですわ」
魔理沙「また始まった。何が無礼なんだよ。無礼なことはねえだろ?第一、私と殿様との仲だぜ
    本当だったら殿様が私を兄さん兄さんって言わなきゃいけねえんだから」
咲夜「魔理沙!」
魔理沙「いや、べつにほんとにそうしてくれって言ってんじゃねえんだよ。それがねえ、モノの筋ってもんなの。ふへへへへ」
咲夜「あなた、いい加減に…」
魔理沙「殿様、私はねえ。口が悪いんだ。口が悪いけどね腹ん中なんにもねえんだ。まっ、どうぞひとつ堪忍してやってくれ」
レミリア「気にしてないわ」
咲夜「殿」
レミリア「無礼講よ無礼講」
咲夜「殿が仰るのでしたら」
魔理沙「あーあ、すっかりごちそうになっちゃったから決まりが悪くっていけねえ」
魔理沙「あれ?なんだよおい。さっきからそこにいて誰かと思ったらおまえ霊夢か!
    なんだよおまえ。ニコニコニコニコしやがって、あんちゃんわかんなかったよ
    ね?霊夢、あんちゃんだよ?にゃろ、笑ってやがらあ。」
魔理沙「おーい、霊夢、あんちゃんだよ?」
咲夜「無礼者!奥方様になんて口を」
魔理沙「何が無礼だこの野郎!冗談言うな、兄が妹のことを霊夢って言って何が悪いんでえ。
    私とお前ら比べたら確かにお前らのほうがずっと偉いかも知れねえがなあ。
    私と霊夢の間には身分なんてねえんだ。そっち引っ込んでろ畜生!」
咲夜「調子に乗りすぎたわね」
レミリア「咲夜」
咲夜「お嬢様」
魔理沙「おい霊夢、私はお前のあんちゃんだよな?そうだよな?」
霊夢「もう…魔理沙ったら。元気だったお兄ちゃん」
魔理沙「ほらみろ。あんちゃんだってそう言ってんじゃねえかよ。そうじゃねえって言われたらどうしようかと思っちゃった」
咲夜「魔理沙、くれぐれも」
魔理沙「ああ、大丈夫だよ。変なこと言わねえから心配すんな」
魔理沙「よう、霊夢。なんだよおまえ、綺麗になったなあおい。見違えちゃったなあ。あんちゃんわかんなかったぜ」
霊夢「変かな?」
魔理沙「それが変だっつうんだったらお前。へー、きれいな着物着てんなあ。神社にいる頃は貧乏だったけど
    お前なんぞ元がいいからな。磨きゃすぐに綺麗になんだよ。」
魔理沙「そうだ。肝心なこと言うの忘れてたよ。へへへ」
霊夢「何?」
魔理沙「お前男の子産んだんだってな。おめでとうよかったな」
霊夢「うん、ありがとう」
魔理沙「だけどいいかお前なあ。ちゃんと殿様に尽くすんだぞ。そうやって綺麗な着物着せてもらってるのも殿様のおかげだぞ。
    てめえが偉いなんて思っちゃいけねえぞ。な?」
霊夢「うん」
魔理沙「あはは、何もあんちゃん小言言いに来たんじゃねえんだよ。お前が男の子産んだってえからさ。祝言いに来たんだよ。
    良かったよな」
霊夢「うん」
魔理沙「もうね、大変だよもう。みんな大騒ぎだよお前知らねえだろ。魅魔さまなんざ…あ、そうだそうだ、
    魅魔さまがお前のこと心配してたよ。おしめ洗う人いんのかしら?って」
魔理沙「魅魔さまこっちよこそうか?」
霊夢「いいのよ、そういうのは」
魔理沙「なんで?」
霊夢「御屋敷の方がやってくれるから」
魔理沙「みなさんがやってくれんの?あ、そうだ。どうもすいません。どうもありがとうござんす」
咲夜「それが給仕の勤めですから」
魔理沙「すいませんね、どうも。おい霊夢いいか?憎まれちゃいけねえぞ。誰かになんかやってもらったら
    ありがとうございますってんでちゃんとお礼言わなくちゃダメだぞ。な?」
霊夢「はい」
魔理沙「はいだってさ…」
霊夢「そんなこと魔理沙に言われなくたってわかってるわよ」
魔理沙「あははは、そうだよな。私よりお前のほうがよーくわかんってんだ。な…」
霊夢「魔理沙?」
魔理沙「へへへ、いや魅魔さまがさ、私が出るときなんだかメソついてやがんだ。どうした魅魔さま?っつったらさ。
    身分の違うってのは情けないねえもんだね。あの子の赤ちゃんの顔のひとつ見ることできないんだから
    とかなんとかいってやがんだよ。何いってやがんでえ、この目出度えときにメソつきやがって!」
魔理沙「いいよ。私がお前の分まで見てきてやるぜってんでよ。ウチ飛び出してきちゃった」
霊夢「魔理沙…」
魔理沙「だから、お前赤ちゃんの顔、後で私に見せてくれよ。な?」
霊夢「うん」
魔理沙「魅魔さまがお前が赤ん坊産んだって聞いたときの面お前に見せてやりたかったよ。
    もう大騒ぎだよ。霊夢が赤ちゃん産んだんですって表ピューッて駆け出しちゃってな。
    里まで出て走り回ってんだよ。霊夢が赤ちゃん産んだんですよ。男の子なんですよ。お世取りなんですよ
    ってな」
魔理沙「かわいそうになっちゃってさ。だからよ、私なんかはどうでもいいんだよ。
    心配してるみんなに赤ん坊の顔見せてやってくれよ」
魔理沙「抱かせろなんて言わねえ。だけどよ、物陰でいいんだ。な?お前がよ、赤ん坊をあやしてるその姿見せてやんなよ
    どんなに喜ぶかわかんねえぞ」
魔理沙「だからよ、ちょっと殿様に頼んでくれよ。な?」
霊夢「誰にもの言ってるのよ!そのくらいしてやるに決まってるでしょ!」
魔理沙「よし!それでいいんだそれでいいんだよ。もう、それ言っただけで来た甲斐あるってもんだぜ。うん、ほんとだ」
魔理沙「あとは100両もらうのを待つばかりだ」
レミリア「霊夢」
霊夢「はい」
レミリア「いい兄を持ったわね」
霊夢「はい」
魔理沙「殿様すんません。すっかり酒が陰気になっちゃったね。そうだ!なんか陽気にパーっとね。歌かなんか歌いましょうか」
レミリア「いいわね。珍歌はあるかしら?」
魔理沙「ああ、珍歌だかなんだかわかりませんが都々逸なんてのあるっすよ?ご存知ありませんか?」
レミリア「どどいつ?」
魔理沙「あー、そうっすか。んーじゃあまあ一発、んん」
魔理沙「喧嘩したとき この子をごらん 仲の良いとき できた子だ」
魔理沙「なんてね。どうです殿様?」
霊夢「い、いやだ。ちょっと魔理沙」
レミリア「うん、面白いわ」
魔理沙「面白い?あんま面白いってもんでもないけどなあ。都々逸聞いて普通だったら、よーよーとかなんとか
    言うもんっすけどねえ。ま、いいや。他にもたくさんありますよ。オツな都々逸なんてのがあるのよ」
魔理沙「おろすわさびと 恋路の意見 聞けば聞くほど 涙出る」
魔理沙「なんてね!えへへ、どうです殿様?」
レミリア「おー、よくわかんない」
魔理沙「なんだかなあ…殿様、あれだよ。もうちょっと粋ってのを勉強をしなきゃさあ。
    こういうのを知ってるってえとねえ。人間がオツになるってもんですよ」
咲夜「殿は妖怪ですわ」
魔理沙「んな、細かいこと気にしちゃって。まだまだありますよ」
魔理沙「あの人の どこがいいかと 尋ねる一人」
魔理沙「なんてね、へへへ」
魔理沙「どこが悪いと問い返す。ってね」
魔理沙「よっしゃ!景気ついてきたぜ。これからどっか行こうか?殿公」
咲夜「殿公というやつがありますか!」
魔理沙「これから魔理沙は出世をいたします。魔理沙出世というおめでたい一席でございました」
魔理沙「あれ?面白くなかった?」
チルノ「ひっくひっく、うぅ」
大妖精「チルノちゃん?どうしたの」
チルノ「レティ…レティに会いたいよー。うぇーん」
大妖精「チルノちゃん泣かないで。大丈夫だから。冬になったらまた会えるから」
リグル「湖に行こう!みんなに会いたくなっちゃったよ」
魔理沙「おいおまえら…」
幽々子「なんだか妖忌を思い出しちゃうわね」
妖夢「おじいちゃん…」
幽々子「そうだ。いまから妖忌のお墓参りに行きましょうか」
妖夢「そうですね…って師匠は死んでませんよ!」
幽々子「いやいや、妖夢。半分死んでるんだからお墓参りは正しいことなのよ」
妖夢「そうなんですか?」
幽々子「そうよ。妖夢のお墓だってちゃんとあるんだから」
妖夢「えー!?私は半分生きてますよ」
レミリア「咲夜帰るよ」
咲夜「え?はい、よろしいのですか?」
レミリア「咲夜」
咲夜「はい」
レミリア「フランとお茶するのも久しかったわね」
咲夜「まあ、そうですわね」
魔理沙「あ、こら。お前らまでどこ行くんだよ」
萃香「おやおや」
魔理沙「あれ?なんかしくじったかな?」
霊夢「そうでもないんじゃない?」
魔理沙「だってみんな帰っちゃったぜ」
霊夢「だってさ」
パチュリー「私、どうするって何が?」
霊夢「あんたが今回の黒幕でしょうに。まっ、好きになさいな。
   ここでうだうだやってるんだったらあんたらも帰んなさい!もう神社に用はないんでしょ」
萃香「ええ!?宴会はー?」
霊夢「誰もいないんじゃしょうがないじゃない。今日はなしよ」
萃香「えー…じゃあいいよ。霊夢と二人でも」
霊夢「それじゃあ、晩酌ね」
魔理沙「おい霊夢!」
霊夢「まあたまにはこんな日があってもいいんじゃない?」
魔理沙「ちぇ、もういいよ」
霊夢「魔理沙、まんざらでもなかったよ」
魔理沙「気休めはいらないよ」
パチュリー「さて行くか」
パチュリー「なによ?」
魔理沙「お前一人で残る気か?帰るんだろ」
パチュリー「うん」
魔理沙「もーちっとウケると思っただけどなあ」
パチュリー「よくわかんなかった」
魔理沙「そっか…私もまだまだ修行がたりないぜ」
パチュリー「あなた初めてでしょ」
魔理沙「やるからには勝たないと意味ないだろ?」
パチュリー「お話に勝ち負けなんてあるの?」
魔理沙「ウケたら勝ち、滑ったら負けそういうもんだぜ」
パチュリー「そうなの?」
魔理沙「うんたぶん!やっぱ勝負は常に勝たないとなあ」
パチュリー「霊夢にはいつも負けてるじゃない」
魔理沙「はは、あいつ手加減ってものを知らないからなあ」
パチュリー「そうね」
魔理沙「あんにゃろ、いつもまでも負けっぱなしと思うなよ。いつかギャフンと言わせてやるからなー」
パチュリー「そう…」
魔理沙「大体、汚いぜ。スペカルール自体あいつが作ったんだぜ。自分の土俵なら勝って当たり前っつーの。
    じゃあ相手の土俵で喧嘩売るなっつーの。なんつったりして」
パチュリー「そう…」
魔理沙「おい、どうしたパチュリー?なんか暗いぞ?」
パチュリー「私はいつもこうよ」
魔理沙「なんだよどうしたんだよ?パチュリー?」
パチュリー「魔理沙は霊夢のこと話してるといっつも楽しそう」
魔理沙「そっか?まああいつとはいい加減付き合い長いしな」
パチュリー「私とは知り合ったばっかり」
魔理沙「それがどうかしたのか?」
パチュリー「おまじないのこと何も聞かないのね」
魔理沙「滑ったんだからそのままなんだろ?いいよ。明日何とかするから」
パチュリー「明日もダメかもしれないわよ?」
魔理沙「じゃあその明日」
パチュリー「そのダメかも」
魔理沙「じゃあそのまたまた明日。じゃあそれでもダメだったらそのまたまたまた明日だ!
    言ったろ?私はな、いつまでも負けっぱなしなんかにはならないようにできてんだ
    欲しいものは必ず掴む。やりたいことは片っ端からやり倒してやるぜ」
パチュリー「おばあちゃんになっちゃうわよね」
魔理沙「ばあちゃんになるまで魔法使えないのかー。そりゃあちょっときついなー。そうだ。
    そうなったらお前が面倒見てくれよ」
パチュリー「なにそれ?」
魔理沙「私がばあちゃんになってもお前は今のまんまだろ?だから頼むぜ、な?」
魔理沙「冗談だよ冗談。そんな怖い顔すんなって。どっかんどっかん笑い取りゃいいんだろ?
    そんなのばあちゃんになる前にゃなんとかなるって」
パチュリー「怖い顔?」
魔理沙「冗談言ったのにそんな顔されたんじゃ幸先悪いぜ。うん…笑わすってのは苦手かも。怒らすのは得意だけど」
パチュリー「そんな顔…してた?」
魔理沙「アリスんちのグランギニョルだぜ。老後のことはアリスにでも頼むか」
パチュリー「あの子はダメよ。お人形相手ばかりで人間の世話なんて出来るわけないもの」
魔理沙「じゃあカッパ」
パチュリー「あ、水中生活は老体にはキツイわよ」
魔理沙「じゃあやっぱお前に頼むぜ」
パチュリー「ねえ、魔理沙?あなた魔法使いになる気はないの?」
魔理沙「ん?私は普通に魔法使いだぜ」
パチュリー「真面目に聞いて私なら魔法使いになるための術を教えられるわ。あなたが望むなら…」
魔理沙「人間って不便だよな。お前らと比べたら弱いしあっという間に死ぬし、泣いたり喚いたりしながら生きなきゃいけない
    でもさ、私はそういう不便なとこも含めて今の私でいるのが好きなんだ」
パチュリー「魔理沙…」
魔理沙「私は死ぬまで普通の魔法使いだぜ」
パチュリー「そう…」
魔理沙「そんなわけで今回は遠慮しとくぜ。ありがとな」
パチュリー「ううん、ごめんなさい」
魔理沙「気にしてないぜ。いいから行くぞ。ついてきてくれるんだろ?」
パチュリー「ふふふ」
魔理沙「やっと笑ったな」
パチュリー「だってお話と同じ事言うんだもん」
魔理沙「なるほど。天丼ってやつだな」
パチュリー「それはちょっと違うかな。」
パチュリー「そうだ。魔理沙。あなたたぶんもう飛べるわ」
魔理沙「え?そうなの?」
パチュリー「たぶんね。私のおまじないは何も人を笑わせないでも解けるから」
魔理沙「なんだよ騙しやがったのか」
パチュリー「言ったでしょ?おまじないを解きたかったらみんなの心を動かすようなことをしなさいって」
魔理沙「心を動かすようなことって…んん、なに?」
パチュリー「だから例えば…もういいわ」
魔理沙「いいならいいぜ」
パチュリー「今日のお話ちゃんとみんなの心を動かしてた」
魔理沙「ふーん。よくわかんないけどもう飛べるんだな。じゃあ、さっそく」
パチュリー「あっ、まちなさい!たぶんって言ったでしょ!階段降りてからにして!」
魔理沙「大丈夫だよ。お前が一緒なんだからさ」
パチュリー「え?」
魔理沙「一緒に行くんだろ?後ろ乗れよ」
パチュリー「う、うん」
魔理沙「よーし、霧雨魔理沙十八番の魔法発動だー!」