大空の覇者

クラーラ

――え、えっと、帝国天馬騎士の
クラーラです！　し、失礼いたしましゅ！

す、すみません、噛んでしまいました。
あぅ～……やはり、王子様の前では
緊張してしまいますぅ……。

……えっと、王国へと接近している
飛行型魔物の群れの対策に、
帝国の飛空船を使用したいとのご依頼ですが……

……こちらについて、
帝国から正式に許可がおりましたので、
その事をお伝えに参りました。

『全く、やすやすと貸せる代物ではないのだがな。だが
王国に倒れられても困る、今回は貸しにしておいてやろう』
と、レオナ様からの言伝です。

既に飛空船の配備は進めており、
いつでも出撃は可能との事ですが。
……え、準備が出来てるならすぐにですか？

わ、わかりました、ではそのように
お伝えしてまいります。それでは失礼し……って、
す、すみません、大事な事をお話忘れてました！

えっと、王子様、よく聞いてくださいね。
今回の戦いは敵を倒すことだけを目的とした
『大討伐ミッション』との事です。

大討伐ミッションは通常のミッションとは
いくつか異なる点がありまして。
……えーっと……確かメモがここに……。

……あ、ありました！　えっとですね、
大討伐ミッションは『敵を撃破すること』
のみが一番の目的となります。

ですので、自軍の被害を抑えるより
いかに多くの敵を倒すかが重要です。

また、ライフが０になってもクリアとなり、
それまでに倒した敵の数がカウントされ
戦果として記録されます。

傷つくことを恐れず、一体でも多くの魔物を
倒すことに専念してください。

今回は飛空船上での戦いとなりますので、
部隊が上手く展開できません。

そのため出撃コストが時間経過で回復しないので、
『援軍要請』のスキルを持つ者や、騎兵の方々を
出撃メンバーに入れることをお忘れなく。

敵を倒してもＥＸＰやゴールド、
ドロップ品を手に入れることはできませんので
この点もご注意ください。

……との事です！　良かったぁ、
噛まずに言え…………ってあぁっ、
もう一枚メモがありましたっ！！

魔物の中には、普段はあまり見かけない
一つ目の魔物の群れも確認されています。
魔物の変則的な動きに惑わされないようご注意を。

矢を通さない硬質化したガーゴイルや、
先に伝えた一つ目の魔物の青い個体等
新種の魔物も見つかっているようです。

魔物達を指揮しているのは、雷を操る
巨躯の魔物とのこと……報告は以上となります。
……ふぅ、今度こそ噛まずに全部言えました！！

王子様、どうかくれぐれも
気を付けてくださいね……それでは、
『大討伐ミッション』の発令をお願いしましゅ！

王子、お待ち下さい！
たった今、偵察を行っていた兵より新たな伝令が。

飛行型魔物の群れのさらに後方に
とても強大な魔物の姿を確認したとのことです。

もしも王国に向かっている魔物の群れが、
この強大な魔物の配下にあるとすれば、
群れ全体が予想以上に手強い可能性があります。

偵察兵からのメモによると――
強大な魔物が率いる群れを討伐することは、通常の1.3倍の
数の魔物を討伐したのと同じ事になるようです。

さらに、強大な魔物も含めすべての魔物を
完全に討伐できれば、通常の1.5倍もの数の魔物を
討伐したことと同じである……とも。

それほどに強大な魔物との戦いが、
激戦となることは必至です。
どうか慎重な采配をお願いいたします！

兵士

――敵群確認！　もう間もなく、
戦闘可能領域に突入します！！

ケイティ

報告ご苦労、
各員配置につけ！

兵士

はっ！

バシラ

……それにしても凄い敵の数ですねぇ～。
あんな数で急に攻め入られたら、
危ない所でした。

ケイティ

こちらから先に打って出る事が出来たのは
幸いです。飛空船を貸して頂いた帝国の方々に、
感謝せねばなりません。

ボリス

そう思うんならしっかりと
成果を上げて報告してやんな。

ケイティ

そうですね。
ボリスさんも、飛空船の操縦に
ついて来て頂いたこと感謝しています。

モーティマ

け、けど大丈夫かよ。
この船が破壊されちまったら、
俺達地上まで真っ逆さまだぜ！？

ボリス

はん、そんな心配必要ねぇよ。
俺様の整備したこの船に、
俺様の操縦技術が加われば、鬼に金棒よ！
　
船の心配をする前に、振り落とされねーよう
しっかり気を付けとくこったな！
それじゃ行くぜぇ……戦闘開始だ！！