スキャニング

Last-modified: 2018-06-19 (火) 01:06:15

注釈(*1~)にマウスポインタを合わせると、注釈の内容が表示される。

第2 スキャナーで読み取る

第2-一 基礎知識

(参考:CyberLibrarian 図書館員のコンピュータ基礎講座 画像データ)

第2-二 解像度(相対解像度)、モアレ*1低減(モアレ除去フィルター)

 解像度(相対解像度)は、dpi*2の数値が高くなるほど高精細で、モアレの恐れが低減し、加工時の技の自由度が増していく。しかし、読み取り時間とファイルサイズも増加していくので、自分の受忍限度と相談して決定する。300dpi~600dpiが一般的。かなり大きな画像になるが、後で縮小する。

 モアレが発生しているかどうかをビューワーなどで確認するときは、必ず原寸(100%)表示で確認すること。
この段階でモアレが発生している場合は、解像度を上げる、モアレ低減(モアレ除去フィルター)を使用する、ぼかし加工(後述)を行うなどの対策を講じる。

 モアレ低減(モアレ除去フィルター)を使用して読み取ると、スクリーントーンの粒状感が薄れ、画像がややぼやけた感じになる。このような画質を好む人や加工時に高解像度を必要とする技を使わない人の場合は、解像度をあまり高くしても仕上がりは大差ないかもしれない。

第2-三 カラー、グレースケール

 通常、24bitカラー*3、8bitグレースケール*4で読み取る。

 黒単色印刷物でも紙に黄ばみやその他の色味がある場合は、カラーで読み取って、その後にグレースケール化(後述)した方が良いが、自分のスキャナーの読み取り速度及び受忍限度と相談して決定する。黒単色印刷物をカラーで読み取る場合で、後で「色の置き換え」(後述)を使わない場合は、スキャナーのドライバーのトーンカーブ設定で緑と青の出力を0にすると、出力データが赤256色以下になり、処理が軽くなる。黒単色印刷物をグレースケールで読み取る場合で、ドロップアウトカラーの設定ができる場合は、ドロップアウトカラーとして赤を指定すると、グレースケール化のレッドチャンネル抽出(後述)と同様の原理で黄ばんだ(赤みがかった)紙質が緩和される。ただし、ドロップアウトカラー設定によりスクリーントーンが縞状になってしまうような場合は、ドロップアウトカラーを使用しない。

 48bitカラー*5、16bitグレースケール*6については、後述。

 白黒2階調モード(キヤノン製スキャナーの[白黒]モード、エプソン製スキャナーの[モノクロ]モード)は使用しない。

第2-四 画像ファイル形式

 TIFF、PNG、BMP、PSDなどは、可逆圧縮(又は非圧縮)なので、劣化がない。

 スキャン時点でのファイルサイズは、1枚当たり数MB~数十MBと大きい。これを加工して縮小する方が、始めから小さいサイズで読み取るよりも良い画質になる。

  1. TIFF
    様々なカラー形式に対応している。
    LZW圧縮を用いれば、ファイルサイズもPNGぐらいに抑えられ、ファイルの読み書きがPNGよりも速い。(参考:LZW圧縮したTIFFファイルを読みこむSusieプラグイン(ifTIFF6.spi))
    対応しているソフトがPNGよりも少ない。
  2. PNG
    48bitカラー、16bitグレースケールにも対応している。
    BMPよりもファイルサイズが小さくなるが、ファイルの読み書きに時間がかかる。
  3. BMP
    ファイルサイズが大きい。
    規格上8bitグレースケールがないため、8bitグレースケールを8bitインデックスカラーで記録する。これをPhotoshopで開くと、Photoshopは忠実にインデックスカラーとして開くが、このままだと加工する上で不都合があるので、直ちにイメージ/モード/RGB(インデックスカラーから直接グレースケールへ変換しないこと。)を選択し、RGBモードへ変更すること。
  4. PSD
    Photoshop以外のソフトでは使用しづらい。
  5. JPEG
    一般に非可逆圧縮*7であり、劣化がある。白黒印刷物をカラーで読み取る場合、「高画質」設定のJPEGでも(グレースケール加工後、画質差がほとんど出ないため)よいと言われているが、スキャナーが可逆圧縮の画像ファイル形式に対応していないとかハードディスク容量に余裕がないなどの事情がなければ、他の劣化のない画像ファイル形式を使用する。

第2-五 画質調整機能

色調を調整しようとする場合は、何らかのカラーマネージメントを行う必要がある。

第2-五-(一) カラーマネージメント

(参考:カラーマネージメントシステム - Wikipedia)
(参考:DTP豆知識(199903)問1 カラーマネジメント)
(参考:1.3.7 カラーマネジメント)
カラーマネージメントを行う目的は、機器の、機種ごとの色調の違い、個体ごとの色調の違い、経年変化による色調の違いをできるだけ抑えること。

  1. スキャナーのキャリブレーション
    色が判明している物(カラーチャートや白帯)をスキャンし、そのスキャンデータと正しい色のデータとを比較して、そのスキャナーの出力データの精度を高めるのに役立てる。
    1. IT8キャリブレーション*8
      「IT8ターゲット」という、国際標準規格*9に準拠したカラーチャートを用いる。
      IT8ターゲットには、プリントされている各色の実測データがセットで付いている。
      (参考:技術解説書 富士フイルムカラーターゲット?)
      1. IT8ターゲットの購入
        プロファイル作成ソフトにIT8ターゲットが添付されていない場合、次のサイトから購入するのが一般的である。
        Wolf Faust
        http://www.targets.coloraid.de/
        Use with(用途)がreflective (flatbed) scanner[反射原稿用(フラットベッド)スキャナー]である、R1又はRFを購入する。R1はコダック製の紙にプリントされていて、RFは富士フイルム製の紙にプリントされている。経年変化の少ない紙、プリントの発色ムラの少ない紙が良いのだが、どちらの紙が良いのかは不明。
        価格はいずれも10ドル*10で、これに送料10ドル*11を足して、支払総額は20ドル(=二千円ぐらい)である。
        代金の支払いは、クレジットカードがあれば、PayPalを利用するのが最も簡単で手数料もかからない。
        代金を支払ってから10日間ぐらいで届く。
        (参考:IT8ターゲット購入のための問い合わせに使ったメール文及びその返事)
      2. IT8ターゲットの取扱に関する説明書
        Wolf Faust製IT8ターゲット付属CD内のReadme日本語訳
        http://jisui-technique.angelfire.com/Wolf_Faust_IT8/Readme_Japanese.txt
      3. IT8キャリブレーシンの手順
        ?IT8ターゲットを「色補正なし」(48bitカラー)の設定でスキャンする。設定方法は後述(2.色(カラー)の設定)。
        ?プロファイル作成ソフトが、そのスキャンデータとIT8ターゲットに付いてきた実測データとを比較し、そのスキャナーの色空間の特性を記述したICCカラープロファイルを作成する。
        ?作成したICCカラープロファイルを次のフォルダに置く。そうすると、スキャナドライバの入力プロファイル(ソースプロファイル)のプルダウンメニューやPhotoshopの「編集/プロファイルの指定」のプルダウンメニューにおいて、作成したICCカラープロファイルが選択できるようになる。
        ?-ア Windows 7、Windows Vista、Windows XPの場合
        C:\WINDOWS\system32\spool\drivers\color
        ?-イ Windows 2000の場合
        C:\WINNT\spool\drivers\color
        ?-ウ Windows NTの場合
        C:\WinNT\System32\Color
        ?-エ Windows 98、98SE、Windows MEの場合
        C:\Windows\System\Color
        ?-オ OSX 10.3 / 10.4の場合
        Library/Application Support/Adobe/Color/Profiles
        ?-カ OSX 10.5 (Leopard)の場合
        Library/ColorSync/Profiles
      4. プロファイルを作成できるソフト
        例えば次のようなものがある。IT8ターゲットの限られた色数からそのスキャナーが扱える全ての色についてどのような特性であるかを推測してプロファイルを作成するので、推測の仕方によりできあがるプロファイルの精度は異なるが、各ソフトのプロファイルの精度がそれぞれどの程度なのかは不明。
        ?-ア CoCa(Color Camera Calibratorの略)
        ホームページ日本語訳
        http://jisui-technique.angelfire.com/CoCa/coca.html
        SIPC(後述)の後継らしいソフト。
        使い方はSIPCとほぼ同じだが、設定項目が少し増えた。
        「4. Corrections」は、ターゲット画像が歪んでいる場合にチェックする。
        「5.Tweaks」のWhite Point設定は、1.0よりも上にすると明るくなり、1.0よりも下にすると暗くなる。White Point設定1.0で作成したプロファイルは、スキャンした原稿画像内の全てのピクセルのRGB値がIT8ターゲット画像のGS0のRGB値以下の場合にだけ正確に働く。IT8ターゲット画像のGS0のRGB値を上回るRGB値のピクセルがあると、それらは全て同一輝度(上限輝度)のピクセルとして、明暗差なしになってしまう。これにより、紙の凸凹した質感や薄いスクリーントーン描写などが消える場合がある。
        この現象を回避したい場合は、White Point設定を1.2~1.3としたプロファイルを作成し、用いる。
        1.2で問題はほぼ解消するが、原稿画像に極めて高いRGB値のピクセルがあった場合、それらは明暗差がなくなる。
        1.3にすると完全に解消するが、White Point設定が1.0から離れるほどプロファイルの精度が落ちるかもしれない。
        ?-イ SIPC(Scanner ICC Profile Creatorの略)
        CoCaの使用を推奨する。
        フリーウェアだが、IT8ターゲットの購入が必要である。
        日本語による紹介ページ
        http://jisui-technique.angelfire.com/SIPC/
        同梱のArgyll Color Managementのバージョンが古い。
        最新のArgyll Color Managementは、次のページからダウンロードできる。
        http://www.argyllcms.com/
        差し替えると、CoCaのWhite Point設定1.0と同様のプロファイルが作成できる。
        ?-ウ Argyll Color Management
        CoCaやSIPCの本体。
        CoCaやSIPCでは省略されているオプションを細かく設定できる。
        Argyll CMS - examples of use, monitor calibration, scanner profiles, printer profiles, argyllcms
        http://www.marcelpatek.com/argyll.php
        ?EZcolor(イージーカラー)
        エックスライト社製。
        エプソン製スキャナーGT-X970に添付されている。
        エックスライト社では、かなり以前に販売を終了している。その後、エプソン販売がGT-X970用のパーツとしてEZcolorインストール用CD及びIT8ターゲットのパッケージを8,463円(代引き送料込み)で販売していたが、現在はIT8ターゲットのみ販売している。
        反射原稿用IT8ターゲットは8,000円ぐらい。
        他社製IT8ターゲットが使用できるのかは不明。
        ソフトはエックスライト社のホームページからダウンロードできるが、インストール時にシリアルが必要である。
        ?VueScan
        ハムリック・ソフトウエア製。
        「プロ版」が79.95ドルで、IT8キャリブレーションに対応しているとのこと。
        ソフトとは別にIT8ターゲットの購入が必要である。
        (参考:ハムリック・ソフトウエア、スキャナ用ソフト「VueScan」が日本語に対応:ニュース - CNET Japan)
        (参考:カメラ@2ch掲示板VueScanについて語るスレ Part 2)
        ?i1XTreme
        エックスライト社製。
        スキャナーのキャリブレーション専用ではなく、ディスプレイやプリンターなどもキャリブレートできるオールインワンパッケージで、非常に高価である。
        ?SCARSE(Scanner CAlibration ReaSonably Easyの略)
        フリーウェアだが、IT8ターゲットの購入が必要である。
        ?IPhotoMinusICC
        フリーウェアだが、IT8ターゲットの購入が必要である。
        ?LPROF
        フリーウェアだが、IT8ターゲットの購入が必要である。
        ?Profile Prism
        ddisoftware製。
        79.00ドル(IT8ターゲットを含む。)
      5. IT8キャリブレーションを行う頻度
        スキャナーの状態に何か変化があったときに行う。頻繁に行う必要はない。(参考:EZcolor (イージーカラー)プロファイルを再作成する頻度)
      6. IT8ターゲットの寿命
        IT8ターゲットの色が経年変化して実測データとのズレが大きくなると、そのIT8ターゲットは寿命ということになる。保存状態にもよるが、Wolf Faustによると寿命の目安は2年程度とのこと。
        エックスライト社によると、1年程度とのこと。(参考:MonacoEZcolor User Guide(日本語)12ページ)
    2. 非常に簡易なキャリブレーション
      1. キヤノン製スキャナー
        スキャナドライバ「ScanGear」→[拡張モード]→[画像設定]右側の∨を押すか、スライダーを下までドラッグする。下の方にキャリブレーション[実行]ボタンがある。
        筺体内部に貼ってある白帯を基準として、正しい白色になるように自動的に調整する。
  2. 色(カラー)の設定
    1. 基礎知識
      (参考:Canon フォトレタッチ - リファレンス編)
    2. スキャナドライバの設定方法
      1. キヤノン製スキャナーの場合
        スキャナドライバ「ScanGear」→[拡張モード]→[詳細設定]→[色の設定]
      2. エプソン製スキャナーの場合
        スキャナドライバ「EPSON Scan」→[ホームモード]又は[プロフェッショナルモード]→[環境設定]→[カラー]
    3. スキャナドライバの設定項目
      1. 初期設定(キヤノン製スキャナーの「推奨」、エプソン製スキャナーの「ドライバによる色補正」)
        「原稿の色合いを、画面上であざやかに再現」(キヤノン製スキャナーマニュアル)するとのことだが、カラーマネージメントの詳細不明。IT8キャリブレーションを行った場合は、これを選択しないこと。
      2. ICCプロファイルを使ったカラーマネージメント
        キヤノン製スキャナーの場合、「カラーマッチング」を選択する。エプソン製スキャナーの場合、[ICM](Windows)/[ColorSync](Mac OS X)を選択する。なお、スキャナドライバでカラーマネージメントを行うよりも、スキャナドライバでは色補正なし(後述)としてPhotoshopによりカラーマネージメントを行う方が処理速度が速いとの情報あり。
        ?入力プロファイル(ソースプロファイル)
        IT8キャリブレーションを行って、それにより作成したプロファイルを選択することが望ましい。IT8キャリブレーションを行っていない場合は、メーカーがそのスキャナー機種の標準的状態に基づいて作成したプロファイルを選択する。
        ?出力プロファイル(ターゲットプロファイル)
        通常、sRGBかAdobeRGBのいずれかを選択する。Windowsの場合、以前はカラーマネージメントシステムに対応したビューワーがほとんどなかったためAdobeRGBはあまり使用されていなかったが、カラーマネージメントシステムに対応したデジタル画像編集ソフト(PhotoshopやGIMPなど)で補正を行い、カラーマネージメント代行Susie Plug-in(参考:スキマ産業 ≫ Susie Plug-in)に対応しているビューワー(マンガミーヤ、Leeyesなど)を常用している場合はAdobeRGBを使用して問題がない。今後、広色域ディスプレイを使用する可能性があると思うならば、sRGBよりもAdobeRGBにしておく方がよい。
        ?-ア sRGB
        多くのディスプレイの色域はsRGBの色域に近いため、カラーマネージメントシステムに対応していないデジタル画像編集ソフトやビューワーで画像を開いても、色がそれほどずれずに済む。しかし、印刷物が使用できる色域にはsRGBの色域を超えた部分があり、そのような色を用いている印刷物についてsRGBへ変換すると、sRGBの色域を超えた色についてはsRGB内のなるべく近い色へと画像データが劣化してしまう。
        ?-イ AdobeRGB
        sRGBよりも色域が広く、印刷物の色域をほぼ満たす。しかし、それを活かすためには、カラーマネージメントシステムに対応したOS、デジタル画像編集ソフト(PhotoshopやGIMPなど)、ビューワー、広色域ディスプレイが必要である。カラーマネージメントシステムに対応していないデジタル画像編集ソフトやビューワーで画像を開いて、sRGBに近い色域のディスプレイに表示すると、色がずれて、地味な映りになってしまう。カラーマネージメントシステムに対応したデジタル画像編集ソフトやビューワーで画像を開いて、sRGBに近い色域のディスプレイに表示した場合も、ディスプレイの色域を超えた色が表示できるわけではないため、レタッチを行う場合には脳内補正が必要となる。
      3. 色補正なし
        スキャナドライバが用いる色変換エンジン以外の色変換エンジン(ACE*12など)を使って、色変換を行いたい場合に選択する。48bitカラーで出力すること。そうしないと、スキャナドライバで色変換する場合と比べて不利になる。
    4. Photoshopの設定
      編集/カラー設定を選択し、作業用スペースのカラーのプルダウンメニューをクリックして開く。
      1. スキャナドライバの設定項目が初期設定の場合
        sRGBを選択する。
      2. スキャナドライバの設定項目がICCプロファイルを使ったカラーマネージメントの場合
        出力プロファイル(ターゲットプロファイル)と同じものを選択する。
      3. スキャナドライバの設定項目が色補正なしの場合
        カラー設定は、何を選択しておいても構わない。
        色補正なしの場合は、編集/プロファイルの指定でスキャナーのプロファイルを指定する。そして、編集/プロファイルの変換でsRGBかAdobeRGBのいずれかへ変換する。スキャナーのプロファイルとしてSIPCにより作成したプロファイルを指定した場合は、変換オプションのマッチング方式において、「知覚的」を選択した場合と「絶対的な色域を維持」を選択した場合とで、かなりの違いがある。
        変換せずに、そのまま作業するという選択肢もある。変換しない場合で、かつ、SIPCにより作成したプロファイルを指定した場合は、カラー設定の詳細オプションのマッチング方式で、「知覚的」を選択した場合と「絶対的な色域を維持」を選択した場合とで、かなりディスプレイの映りが変わることに留意する必要がある。
    5. レンダリング(色空間変換)
      1. 設定方法
        Photoshopの場合は、前述のとおり。
        WindowsVista及びWindows7の場合は、次のとおり
        ?コントロールパネルの「色の管理」を開く。
        ?詳細設定タブを選択する。
        ?「WCS色域マッピングへのICCレンダリング目的」の「既定のレンダリング目的」のプルダウンメニューをクリックして開き、好みのものを選択する。
      2. 選択の目安
        (参考:レンダリングインテント « 色の話 « プロフェッショナル情報 | 彩り工房)
        SIPCにより作成したプロファイルを使用する場合は、基本的に「絶対的な色域を維持」(絶対カラー メトリック)を選択する。ただし、特に広色域な原稿の場合は、好みにより「知覚的」又は「絶対的な色域を維持」のいずれかを選択する。
      3. 参考
        レンダリングは、プロファイルの中にあるタグを用いる。
        A2B0及びB2A0が「知覚的(Peceptual)」のためのタグ、A2B1及びB2A1が「相対的な色域を保持(Relative Colorimetric)」のためのタグ、A2B2及びB2A2が「彩度(Satulation)」のためのタグである。
        A2Bとは、AtoB(AからBへ)ということである。Aは入力側(変換元)プロファイルで、Bは出力側(変換先)プロファイルである。A2Bはそのプロファイルが入力側(変換元)プロファイルである場合に使用され、B2Aはそのプロファイルが出力側(変換先)プロファイルである場合に使用される。末尾の0、1及び2は、レンダリングインテント(色空間変換の方法)を表す。
        ICC Profile Inspectorを使って、AdobeRGB1998.iccやsRGB Color Space Profile.icmを開いてみると、これらのタグがない。そのため、Photoshopを使って、AdobeRGBからsRGBへ、あるいはsRGBからAdobeRGBへ変換する場合、マッチング方式が「知覚的」、「彩度」、「相対的な色域を保持」、「絶対的な色域を維持」のいずれであっても同一の結果となる。
        また、キヤノン製スキャナーやエプソン製スキャナーのメーカー純正プロファイルを開いてみると、A2B0、A2B1、A2B2があるものの、それらの内容は全て同一であり、かつ、入出力チャンネルが無補正である。そのため、マッチング方式が「知覚的」、「彩度」、「相対的な色域を保持」、「絶対的な色域を維持」のいずれであっても同一の結果となる。
        SIPCにより作成したプロファイルを開いてみると、A2B0及びB2A0はあるが、A2B1及びB2A1並びにA2B2及びB2A2はない。A2B0には「知覚的」として補正するための入出力チャンネル用補正カーブがある。WindowsやPhotoshopの設定が初期設定のままだと、「知覚的」として処理される。「彩度」又は「相対的な色域を保持」を選択した場合、それらのためのタグがないため、「知覚的」として処理される。「絶対的な色域を維持」を選択した場合、A2B0のうち「知覚的」として補正する過程は飛ばされる。

第2-五-(二) カラーマネージメント以外の画質調整機能

 スキャナーのドライバーによる画質調整は最小限にとどめ、スキャン後に画像情報をヒストグラム(後述)などで参照しながら加工する方がやりやすい。

  1. 最小限の調整項目
    1. モアレ低減(モアレ除去フィルター)(前述)
    2. ドロップアウトカラーやトーンカーブを活用した特定色スキャン(前述)
  2. 画質調整機能を使用する場合の留意点
    1. 1冊のうち同質の印刷によるページについては同じ設定で読み取る。
    2. くっきりした画質にする機能(キヤノン製スキャナーの[輪郭強調]、エプソン製スキャナーの[アンシャープマスクフィルタ])は使用しないこと。
  3. 自動画質調整機能(自動露出、自動色調整など)
    本来、露出や色が不適正な写真又は書類の簡易補正のための機能であり、絵の自動調整は考慮されていない。もし使用する場合は、任意の1ページで自動調整を行い、そのページと同質の印刷によるページは個別に自動調整を行うことなく読み取る。

第2-六 毛やその他のゴミ・汚れ

第2-六-(一) スキャナーの読み取り面や読み取るページのゴミ・汚れ

 スキャナーの読み取り面や読み取るページに頭髪などの毛その他のゴミ・汚れが付着していないか、注意する。
 次のようなメンテナンス用品を準備しておくと、便利である。

  1. 超極細繊維クリーニングクロス(トレシーなど)
    OAクロスとか眼鏡拭きとして売られている。
  2. イソプロピルアルコール(イソプロパノール)、無水エタノール
    以前は、富士通製スキャナー用クリーナF1の中身として、濃度ほぼ100%のイソプロピルアルコールが採用されていた。なお、現在のクリーナF1の中身はアニオン性界面活性剤0.5wt%。
    エプソン製スキャナーのマニュアルによると、シンナー、ベンジン、アルコールなどの揮発性薬品はケースなどの表面を傷めることがあるとのことなので、そういうところに付かないように注意する。
    薬局などで入手できるが、店頭にはまずないので、注文して取り寄せるか、インターネット通販を利用する。自動車用品店などで入手できる水抜き剤にも濃度99%の物があり、安いが、防錆剤などが添加されている。添加物がスキャナーに悪影響を与えるのかどうかは不明。
    イソプロピルアルコールでなく、無水エタノールを使うこともできる。酒税相当分が価格に上乗せされているため、イソプロピルアルコールよりも高価である。薬局などで入手できる。スキャナーの読み取りガラス面に無水エタノールを使うと、読み取る原稿の滑りが良くなるとの報告あり。イソプロビルアルコールだと滑らないとのこと。
  3. 落書き消し、テープはがし剤
    刷毛タイプの物だと、汚れている部分のみに塗布できるので、使いやすい。100円ショップやホームセンターなどで入手できる。
  4. 撥水ガラスコート(スーパーレインXガラコなど)
    接着剤などの付着を抑え、埃も付きにくくなる。特にADF(原稿自動送り装置)付きスキャナーの読み取り面に使用すると効果が大きい。自動車用品店などで入手できる。
    1. ガラコの留意点(ガラス以外の素材〔プラスチック等〕には使用不可)
      (参考:SOFT99 - よくある質問(Q&A)<ウィンドウ編>)
      Q. ガラコをヘルメットのシールドに使用できますか?
      A. ガラコは自動車のガラス用撥水剤ですので、ガラス以外の素材(プラスチック等)にはご使用いただけません。

  5. ほこりを払うのに用いる。
    空気清浄機、ブロワーと併用すると良い。
    (参考:価格.com - 『スキャン時の埃について』 EPSON GT-X970 のクチコミ掲示板)

第2-六-(二) スキャナー内部の汚れ

ガラスの内側が汚れている場合は、メーカーに清掃を依頼するか、又は自己責任で解体し、清掃する。

  1. 縦縞状のむら
    スキャナーの筐体内側の、読み取り光が最初に照射される部分にキャリブレーション用の白い厚めのテープが貼ってあり、このテープからの反射光で水平方向の輝度バランスやホワイトバランスを整えるようになっている。
    このテープが汚れてると、縦縞状のむらが発生する。
  2. 筋ノイズ
    (参考:イメージスキャナのスジはセンサ画素の欠陥か?: イメージスキャナ開発室)
    1. CCDセンサーを使用しているフラットベッドスキャナーにおける縦筋ノイズ
      ミラーが汚れている。
      (参考:イメージスキャナのタテスジ修理: アイメジャーからのお知らせ)
    2. 横筋ノイズ
      キャリッジが駆動時にガタついている。
  3. 解体方法(メーカー非公認。自己責任で。)
    1. キヤノン製CanoScan 8800F
      穴の下のねじ2個及び前のバンパーを外したところのねじ2個(合計4個のねじ)を取れば、簡単に外れるとのこと。
      それとは別に、蓋の付け根を引っ張って外して、そこにあったネジを外して、本体の隙間に爪を入れて引っ張ったら、なんとか開いたとの情報もある。
    2. キヤノン製CanoScan 5400F
      (参考:5400Fの解体)
    3. コダック製イノベーション スキャナー i40
      1. 四方についているシリコン(ウレタン?)を丁寧にこそぎ落とす。
        カッターナイフやデザインナイフで取れる。
      2. i40を正面から見ると、右側に何やら ∈ このような物がある。これを上方にクイッと引く。
        カッターナイフや伸ばしたクリップなどでできる。
      3. ガラスを ∈ 方向(右)に横スライドすると、スススイッと入っていく。
        左側に指の入るスペースができたら、そこから上方に持ち上げる。

第2-七 フラットベッドスキャナー(flat bed scanner)用TIPS

第2-七-(一) 裏写り対策

 両面印刷物の場合、読み取るページの裏面に半透明の黒いアクリル板を当てることで、(画像全体がむらなく黒く裏写りするため、)裏写りの影響を低減できる。スキャナーのふた(紙に当たる面が白いふた)は、上げておくか、取り外す。

 アクリル板でなくても、スキャナーの読み取り光を反射しない、黒~透明かつ無彩色*13の物ならばよいので、黒い紙や下敷きやゴムマットなども使える。ただし、不透明黒だと、原稿のずれ具合は確認できない。

(参考:CanoScan8800Fの改造(ふたをアクリル板に付け替え))

第2-七-(二) 読み取り不能領域対策

 スキャナーの読み取り面の端の数mmは読み取られないので、読み取る紙を読み取り面の端にピッタリと付けないこと。読み取り面の端にガイドとして金属製定規やアクリル角棒などを両面テープなどで貼り付けると、読み取る紙を読み取り面の端から離しながら、読み取る紙の傾きを抑えることができる。

第2-七-(三) ぼやけ対策

 読み取る紙は、スキャナーの読み取り面に密着させること。特にセンサーがCISの場合は、しっかり密着させないと、ぼやける。

 ただし、表紙カバーなどPP(ポリプロピレン)コーティング加工がされている紙については、強く押さえ付けると画像にむら、シミ、斑点が出る恐れがあるので、強く押さえ過ぎないこと。

第2-八 富士通(PFU)製ADF(原稿自動送り装置)付きスキャナーScanSnap用TIPS

第2-八-(一) 重送対策

 1枚ずつ手差しで差し込む。1枚読み取っている最中に次のをセットしておくだけ。
 このようにすると、ダブルフィード(重送)や斜めスキャンなど、スキャン時のトラブルはまず起こらなくなる。また、原稿の読み取り位置が一定になり、後で行う切り抜き処理が簡単にできる。
(参考:ScanSnap fi-5110EOX3のご質問 回答(その他) : 富士通 7. フィーダーミス(マルチフィード)を回避するには?)

第2-八-(二) 裏写り対策

 読み取り面の選択を「片面読み取り」にし、オプションで「原稿を上向きにセット」することで、両面や下面スキャン時に比べれば大分マシになる。
 クオリティも気になるならいっそ全ページ上面読み取りでもいいかもしれない。消耗品のランニングコストが二倍になるが。

第2-八-(三) 原稿傷対策

 PPコートされた原稿において、ときおり本体を清掃しても消えない緑・赤・青筋が発生することがある。原因の一つとして原稿送りローラーが原稿につけた傷が原因の場合がある。この場合、原稿の挿入方向を入れ替えても、傷が入った位置に筋が出続けるため、確認は容易である。
 発生してしまったらスキャン方向を変える(縦→横、横→縦など)などする。原稿そのものの修復は困難であるが、しばらく原稿を放置しておくと湿気により傷のエッジが舐めるためか、消えることがあるようだ。

第2-九 蛍光色や金色・銀色が使用されている印刷物

蛍光色や金色・銀色については、スキャナーでは肉眼で見えるように読み取ることができない。
(参考:緑陽社 社長室 通になれる通信講座 第4回「カラーで出にくい色」)
(参考:精美堂ホームページ: ドキュメントイメージスキャナQ&A 第3回 ラインマーカーが引かれた文字部分をきれいにスキャンしたいのですが)
少しでも改善するためには次のような方法がある。よい解決法は確立していないので、各自で工夫して、よい方法が見つかったら発表してほしい。

  1. デジタルカメラでフラッシュを使わずに撮影し、スキャナーで読み取った画像と合成する。
  2. 2回読み取って、合成する。
    1. まず普通に読み取る。金色・銀色部分は黒色に近くなる。
    2. 次に、金色・銀色部分に色範囲を絞って読み取る。金色・銀色部分以外は真っ白になる。
    3. ?.の画像の黒(金色・銀色部分)を色の置き換えで白に置換する。
    4. ?.の画像を?.の画像にレイヤーで乗算又は比較(暗)で重ね合わせる。
  3. トレーシングペーパーや微妙に白みがかったクリアホルダーごしに読み取り、金色・銀色をスキャナーのセンサー方向へ反射させる。画像は、白くぼやけた感じになる。
  4. スキャン画像の、変色した蛍光色や金色・銀色部分を自動選択ツールや範囲選択/色域指定などで選択し、それらしく見えるように補正する。
    乗算、焼き込み、ポスタリゼーション、テクスチャなど。

第2-十 解体せずに読み取る場合

  1. フラットベッドスキャナーを使用して、本を見開きにして読み取る場合
    本を180度広げて押し付けるので、本の背が痛む。
    見開き中央の影については、読み取るページの見開き中央部裏面にストローを差し込むことで、最小限に抑えることができる。
    (参考:エニスル 影ぼうし スキャニングサンプル画像)
    エプソン製GT-S620/GT-F720は、見開き中央の影の影が濃く幅広く出る。
  2. ブックスキャナー(OpticBook)などを使用して、本を1ページずつ読み取る場合
    本を広げる角度が90度ぐらいで済むので、本の背の損傷が抑えられる。
    OpticBookには、本ののどから8mmぐらい読み取り不能領域がある。
    この読み取り不能領域については、1/2インチ厚の無色透明アクリル板を読み取りガラス面に置き、本が内側にシフトするようにすると、かなり暗くなるが、読み取れるようになる。
  3. その他のスキャナーを使用する場合
    市販の機材は、かなり高額である。

第2-十一 Adobe Photoshop CS4以降のTWAIN対応状況

(参考:TWAIN プラグインの使用について(Photoshop CS4/CS5))

  1. 64ビット版Photoshop
    TWAINプラグインが提供されていないため、TWAIN互換スキャナーからPhotoshopに直接画像を読み込むことができない。
  2. 32ビット版Photoshop
    1. CS4
      CS4のインストールと同時にTWAINプラグインがインストールされ、TWAIN互換スキャナーからPhotoshopに直接画像を読み込むことができる。
    2. CS5
      TWAIN互換スキャナーからPhotoshopに直接画像を読み込むためには、TWAINプラグインをAdobe社Webサイトからダウンロードしてインストールする必要がある。
      Counter: ?, today: ?, yesterday: ?

*1 モアレとは、干渉縞のこと。主にスクリーントーン部分に発生する、網目状の陰影パターン
*2 dpiは、dot per inchの略。1インチ(=2.54cm)当たりのドット数のこと
*3 24bitカラー=8bit(2の8乗で256階調)×3原色(RGB)。RGBのRはRedで赤、GはGreenで緑、BはBlueで青。赤緑青は光の三原色
*4 8bitグレースケール=2の8乗=白黒256階調
*5 48bitカラー=16bit(2の16乗で65536階調)×3原色
*6 16bitグレースケール=2の16乗=白黒65536階調
*7 非可逆圧縮は、不可逆圧縮とも言い、圧縮前のデータと圧縮・展開を経たデータとが完全には一致せず、近似値になってしまうデータ圧縮方法のこと
*8 スキャナーの場合、正しくは、キャリブレーションではなくデバイスプロファイリング(キャラクターライゼーション)である。
*9 IS0 12641
*10 購入数量が1-4 Targetsの場合
*11 Shipping Costs(送料)のWorldwide / Outside EU(EU外の世界中どこでも)
*12 ACEはAdobe Color Engineの略で、アドビシステムズ社製ソフトに搭載されているカラーマネージメントシステム
*13 無彩色とは、色の3原色の明度の要素の情報だけを持つ色のことで、白や灰色など色を持たないもののこと