とりかえ風花伝 完結篇

Last-modified: 2011-07-16 (土) 21:50:19

とりかえ風花伝 完結篇/柳原 望

590 :とりかえ風花伝 完結篇:2011/06/22(水) 03:17:09.29 ID:???
雑誌で打ち切りになってぶつ切りエンドになった後に、
作者が同人誌で続きを書いていた物が出版社からも発行されるようになったもの。

打ち切られるまでのキャラやストーリーの概要(詳細はまとめにありました)

主要キャラ
・風花
 戦国時代、現在でいう愛媛にある国「乾山」のお姫様。
 父が死に、後継ぎである弟もまだ幼いため、戦闘力もない普通の女の子だが当主のような立場にある。

・白鬼丸
 アルピノの青年で、真っ白な髪と真っ赤な瞳をしている。そのため捨て子として育つ。
 戦闘力はかなりのもので、色々あって風花に仕えるようになる。風花とは恋仲。

・織田信貞
 史実の人物で、尾田信長の祖父。風花の親戚にもあたる。風花に求婚している。

ストーリー
ひょんな事から出会った風花と白鬼丸は、キスをする事で互いの体を「とりかえ」する事が出来る事に気づいた。
剣術に秀でた白鬼丸は、「とりかえ」を利用して風花の立場になっては戦場で活躍し、
風花を「鬼姫」として周囲に尊敬させ、女当主は頼りにならんとの批判を退けて、乾山の統治に協力するようになった。
だがなんだかんだで女当主うぜーと邪険に扱う者もおり、風花を暗殺する計画が始動。
白鬼丸は、風花の体に入った状態で反射的に敵に対抗し、暗殺者である近隣国の重要人物を殺してしまう。
暗殺されかけていたという証拠もないため、風花はわけもなく重要人物を殺した咎人として扱われ、
乾山は、信貞の国をも含めた周辺国と戦う事になってしまう。
(ここで打ち切り、以下が完全版に収録された同人版)



591 :とりかえ風花伝 完結篇:2011/06/22(水) 03:20:05.88 ID:???
乾山は小国であるため、周辺諸国がほぼ全て敵状態となった現在、勝てる見込みはなかった。
なんとか戦力を増やそうと考えた白鬼丸らは、剛の者の集団をスカウト。
その一団は女性頭領が治めており、強いと評判の白鬼丸の子種をくれるならと条件を出してきた。
戦のために渋々と、いつか孕ませてあげる事を白鬼丸は約束し、一団が仲間となった。

白鬼丸はかつて野武士集団に属していた事があるため、その時の仲間も乾山に与してくれていた。
仲間の一人である虎という男は、口紅を引いたりと奇妙な格好を日頃からしている。
風花の弟は臆病で、はじめは奇妙な外見の白鬼丸や虎に怯えていたが、いつしか虎と仲良くなった。
虎はとある事情から性器がなく、本当は男でも女でもないような存在だった。
そのため、自分は人間ではないとして、鬼のように戦場で戦えていたという。
虎は、口紅を引いて人間を超越し鬼のようになれば怖い事もないし人を守れる、
と風花の弟に言い残し戦いへ向かい、そのまま死んでいった。

仲間たちが増えたため乾山はなんとか死守できてはいたが、それも長くはなさそうで、次々と兵が死んでいった。
攻める側も消耗はしているので、戦いっぱなしではなく小休止もはさまれる。
信貞は乾山を攻める側ではあったが、ためらいもあった。
幼少期の信貞は乾山に預けられた時期があり、
その頃に風花の母に恋をしていた(信貞は年齢的には風花の親世代ぐらい)。
風花母は信貞に同じ思いを返してはくれなかったが、
信貞の考えた「風花」という名前を娘に名付けたりと、絆ができていた。
信貞は風花に求婚しつつも、その思いは親子愛に近いものだった。



592 :とりかえ風花伝 完結篇:2011/06/22(水) 03:21:42.91 ID:???
また、信貞は白鬼丸の名付け親でもあった。
家の事情で乾山に預けられたりと孤独の色濃い幼少期を送った信貞は、
捨て子の浮浪児であった白鬼丸に自分と近しいものを感じ、彼に剣術など様々な教育を施した。
外見を恥じる白鬼丸に、むしろ髪を伸ばしてその姿を誇示して相手を畏怖させろと教え、外見そのままの名を名乗らせた。

乾山を攻める者たちは
「あの強い白鬼丸って奴殺してさらし首にして、風花を無理矢理嫁にとって乾山の領民を抑えよう」
という方向でまとまっていたが、風花とも白鬼丸ともつながりを持つ信貞は苦悩した。
そんな事をすれば、白鬼丸と恋仲の風花の心も死んでしまうだろうし、
かといって他の道は、白鬼丸と風花双方の完全な死しかなかった。

(同人になってからは、若い世代を主人公に据えてスポットをあてなければならないという制約がなくなったせいか、
 一番の主人公がまるで信貞のようになり、風花と白鬼丸はちょっと目立たなくなる)

白鬼丸と風花の「とりかえ」を知った信貞は、自分の周囲の者たちにキスしてまわるという奇行に走るようになった。
それは、自分にも「とりかえ」が行えるのではないかと手当たり次第に試してみた結果だった。
戦の旗色が悪いため、なにか有利な情報を得ようと信貞の領地に侵入した白鬼丸は、信貞にとっつかまってしまう。
信貞がアッーな事に、白鬼丸にキスをしたところ、なんと二人の体は入れ替わってしまった。
「とりかえ」はきっと心が近しい者同士が行えるのだろうと信貞は推測し、
自分の体に宿ったままで情報を探るなり好きにしていいと白鬼丸を置いていき、白鬼丸の体で乾山へと行った。


593 :とりかえ風花伝 完結篇:2011/06/22(水) 03:26:09.85 ID:???
白鬼丸の体に宿った信貞は、例の女頭領を抱いたり、風花に正体を見抜かれたり、
風花とはキスをしても体を入れ変えられない事に悲しんだりした末に、
自分の領に帰り、白鬼丸とまたキスをして体を元に戻した。
白鬼丸は、幼い頃から憧れていた「黒髪黒目で絹の着物を着た真っ当な男」の立場にひと時とはいえなれたが、
そばに風花がいてくれないと意味がないのだと改めて思ったのだった。
白鬼丸と信貞は、今度戦場で会った時こそがどちらかが死ぬ時だと悟った。

やがて戦が再開した。乾山は圧倒的に不利だった。
白鬼丸は戦いの中で、信貞に誘い込まれるようにして入った人気のない場所で一騎討ちすることとなった。
剣の師である信貞の腕には敵わず、白鬼丸は敗れて死んでいった。
だが、白鬼丸には何故か意識があり、そして目の前には白鬼丸自身の死体があった。
信貞は白鬼丸の急所を狙った後に、白鬼丸が死ぬ間際にキスをして「とりかえ」を行ったのだった。
風花の心も体も死なせないために、信貞はは自身の心と、白鬼丸の体を殺す道を選んだのだった。

その事を悟った白鬼丸は、自分の死体の首を切り落とし、その首級を勝利の証に戦を終わらせた。
自分の首を落とす時に白鬼丸は、野武士であった頃に虎と交わした、
「自分たちはきっとろくな死に方ができない」という言葉を思いだし、本当にそうだなと思った。



594 :とりかえ風花伝 完結篇:2011/06/22(水) 03:51:00.15 ID:???
そうして、白鬼丸の外見や身分差から、
本来は結ばれるはずのなかった風花と白鬼丸は不思議な形で夫婦となった。
全てを知らされた風花は、二人のためにと死んでいった信貞の事を悲しんだ。
二人は近しい者たちにも「とりかえ」の事を明かす事なく、表向き風花は無理矢理結婚させられた
戦の犠牲者として哀れまれ、風花の縁者たちから白鬼丸は憎まれた。
白い髪に赤い瞳の姿でもいつからか乾山の人々には受け入れられたのに、
夢だった黒い髪黒い瞳の真っ当な人間になってから、
今までになく憎まれるようになったという皮肉な現状を思いながらも、
白鬼丸には風花の存在が救いとした。

白鬼丸や虎の首は長い間晒し首にされていたが、ほとぼりが冷めた後に乾山の人々は、
乾山のために戦ってくれた者たちとして、彼らに豪勢な墓をつくって奉ろうとしはじめた。
そんな事をすれば周辺国から顰蹙を買ってしまうと危惧した白鬼丸は、目ざわりだと言って墓を潰させた。
自分の死を悲しむあまりに危険な事をしないでくれという思いから、白鬼丸は、全て忘れろと冷たく言った。
それに対して風花の弟は、虎の真似をして口紅を引くと、虎たちが死んでも墓が壊されても、
絶対に忘れたりはしないと果敢に言い返した。
白鬼丸は、出会ったころの風花弟の弱々しさと比べて、彼が強くなった事を心の中で喜んだ。

それからしばらくして、風花は白鬼丸の子供を生んだ。
白鬼丸と風花が初めて結ばれたのは、白鬼丸が信貞の体に宿ってからなので、
子供にはもちろん本来の白鬼丸の面影はなかったが、白鬼丸も風花も子を愛した。
一方、負け戦の後に散り散りになった仲間たちのうち、例の女頭領も子供を生んでいた。
信貞が白鬼丸の体に宿った時に抱いてつくった子供だった。
数奇な経緯で生まれた二人の子供の誕生と共に幕は閉じる。