ヤマトタケルの冒険

Last-modified: 2010-10-16 (土) 22:17:29

ヤマトタケルの冒険/ゆうき まさみ

164 :ヤマトタケルの冒険・1:2010/09/28(火) 00:38:14 ID:???
【とてもインモラルな漫画です。親の目の届かない所で読みましょう】
昔々、4世紀末の頃、倭(ヤマト)の国の大王には双子の王子があった。
兄はオオウスノミコト弟はヲウスノミコト--
ヲウスノミコトは後に、ヤマトタケルノミコトと呼ばれた一代の問題児だった。

大王へ寵姫として献上されるエヒメ・オトヒメ姉妹を、迎えに行った兄のオオウスが奪った。
弟のヲウスはその事実を父(大王)に密告し、オオウスは父に殴られた腹いせにヲウスに仕返しをする。
そんなヲウスの手当てをする妹マユラ。
二人は同腹兄妹でありながら肉体関係があった。
翌日、兄オオウスが朝餉の席に来ないのを気にした大王は、ヲウスを使者に出す。
オオウスはエヒメ・オトヒメ両者の相手で忙しく、ヲウスが反論すると立場をわきまえろと釘をさす。
それでも言う事を聞かないヲウスに、オオウスは「お前、マユラとデキてるだろう」と言い出した。
当時、異母兄妹間の関係は認められていたが、同腹兄妹間はタブーとされていたため、
大王に知れたら二人ともただではすまない。
脅迫されたヲウスはオオウスを殺害し、父には兄が謀反を企てていたため斬ったと報告する。
兄殺し--ヤマトタケルの数奇な運命が幕を開けた。

ヲウスの行状を知ったヤサカノイリヒメ(妃)は、我が子ワカタラシヒコも同じ
目に遭うのではないかと気に病み、大王にヲウスを遠ざけるよう提案する。
大王はヲウスをクマソ征伐の司令官に任命するが、率いていく軍隊はなく、
従者と端女の二人と犬一匹しか付けて貰えない。
事実上、死刑宣告とも流刑とも取れる処遇であった。
野宿の山中にて、クマソ征伐に赴くか、このまま逃げるか、はっきりしないヲウス。
話し合いが平行線をたどる中、一行は大蛇の化物に襲われる。
その頃、大王の妹で斎宮(神に奉仕する未婚の内親王)のヤマトヒメがヤマトにやって来る。
「邪気が国中に充ちている」とヤマトヒメは大王に告げ、邪気に気付かなかったマユラが処女を失った事を見抜く。
マユラにとってここは危険すぎると考えたヤマトヒメは、彼女を伊勢へ連れて行く決心をするのだった。
一方、一晩中大蛇と格闘したヲウス一行は、クマソ征伐へ赴く事を決める。


165 :ヤマトタケルの冒険・2:2010/09/28(火) 00:43:08 ID:???
オオウスの古墳の下では、魑魅魍魎が跋扈している。
ヲウス憎しの怨霊と化したオオウスが黄泉の大王を名乗り、暗黒と憎悪を
引き連れ地上に君臨すべく機会を伺っていた。
その頃、九州・筑紫地方へ降り立ったヲウス一行は、クマソタケルの館を見つけていた。
どうやってクマソタケルに近づくか思案している中、武人に襲われそうになっている女を助ける。
気絶した武人はクマソの親衛隊で、もうすぐ館の新築祝いのお祭りがあるため他所者を調べていたらしい。
聞き込みで女ならクマソタケルに近付けると知ったヲウスは女装し、
端女のキジメが受付を誘惑して潜入に成功。
クマソタケルの前でヲウスが踊る最中に従者と端女が火事を起こし、その
騒動に紛れ見事暗殺を成し遂げた。
その際、たった一人で乗り込んだ度胸をたたえ、クマソタケルはヲウスに
「以後、ヤマトタケルと名乗るがいい」と言い残す。
無事生還を果たし、ヤマトの人々からの歓迎を受けるヲウス一行。
しかし実際には、ヲウスは歓迎されぬ英雄であった。
その処遇を考えあぐねた大王は、祝賀会を開く間も与えず、ヲウスにたった一人での東方征伐を命じる。
あまりな扱いを見かねた祖母は、ヲウスに伊勢へ挨拶に寄るよう薦めるのであった。

伊勢へ到着したヲウスは、叔母である斎宮ヤマトヒメに自分の現状を嘆く。
ヲウスは政治的な事を考える能力がなく、なぜこのような目に合うのか理解していない。
ヤマトヒメはヲウスに「あなたがいなくなれば、ワカタラシヒコが次の大王になれるからです」と教える。
禊から帰ったマユラとようやく再会するヲウス。
久々の逢瀬を遂げた二人は、祖母が二人の関係に気付いていた事に思い至る。
その頃、従者サルヒコ、端女キジメ、犬のタケミカヅチは、ヲウスの後を追っていた。



166 :ヤマトタケルの冒険・3:2010/09/28(火) 00:45:44 ID:???
ヲウスが従者や端女と合流し東方に向かった後、マユラは懐妊した事に気付く。
一方一行は、旅の途中で怪しげな宗教を説く女・オトタチバナに出会う。
斎宮から拝領した剣・アメノムラクモの手入れをするヲウスに、人を殺しては
いけないと説くオトタチバナ。
それに対し、ヲウスは「殺らなきゃ、殺られちゃうでしょ」と寂しい目で言い放つのだった。
アメノムラクモが伊勢に無く、結界が弱まった事を知った怨霊・オオウスも動き出そうとしていた。
相模の国造と対峙したヲウスはヤマトへ従うよう説得を試みるが、逆に火攻めにあってしまう。
煙に巻かれたヲウスはアメノムラクモで草を薙ぎ払い(後年この剣は草薙剣と呼ばれる)
脱出、迎え火を焚き、燻り出された首領を討ち取る。
かたや伊勢では深夜、ヲウスに化けたオオウスが夢うつつのマユラを誘いだす。
オオウスの目的はマユラを孕ませ、黄泉の大王の血を引いた子にヤマトを支配させる事だった。
しかし、もうすでにマユラが懐妊している事を知り、オオウスは呪いの言葉を
吐きながら朽ち果て、実体を捨てる。
その頃ヲウスはノイローゼになっていた。
クマソ征伐の時と違い、誰をどう討伐すればいいのかも明言されず、
アメノムラクモで大量に殺した男たちの血が洗っても取れない。
見かねたオトタチバナは自らの身体でヲウスを慰め、殺せば格好がつく人とその場所を教える。
元気付いた一行は相模から船に乗って海へ出るが、荒れた海を沈めるため、
オトタチバナは海の藻屑と消えたのだった。
ヲウスは帰京を決意する。
「ぼくは、ぼくを命がけで待ちつづけている人の許に還るんだ」

7ヶ月後、伊勢で子を産んだマユラの元に、従者サルヒコが飛び込んでくる。
「来てくれ!ミコト様が力尽きたぃ!」

ヲウスの死と相前後して、ヤマトの国内ではオオウスが猛威をふるい
(この辺の記述は曖昧だが、オオウス=怨霊=疫病と考えられる)、
大王の重臣たちがバタバタと倒れた後、翌年大王が倒れ、ワカタラシヒコが大王の座を継いだ。
が、ワカタラシヒコも短命に終わり、後継にはヲウスの子供の一人であるタラシナカツヒコが指名された。
この大王に至っては、その一生を対クマソ戦の中で後継者もないまま終わってしまい、血筋はついに絶えた。
誠に悲劇の一家と言う他ない…--【完】