夢使い

Last-modified: 2008-09-23 (火) 10:35:56

夢使い/植芝理一

135 :夢使い :04/04/06 16:58 ID:???

夢と現実の狭間で、不思議な事件を解決するヒーロー・“夢使い”の活躍する話。
この描写が曲者で、人間が分解して変形したりする。(しかもメカに)
これは当然、空想の世界の産物なんだけど、ガラスが割れたり現実にも影響してるし、
明らかに肉体ごと“異界”に飛び込んでる描写もある。
作中の「空想の世界と現実の世界を結びつける」というのが当を得ているかな。


とりあえず夢使いの初期メンバーは――
三島塔子:日曜星(夢使いは九曜の9人)。17歳。
       服装にも興味がなく(いつもスカートの下にジャージ)、酒飲みな“世捨て人”
三島燐子:火曜星。9歳。塔子の妹。
       異様に知識豊富、精神年齢の高い“スーパー小学生”(自称)
橘一:金曜星。29歳。燐子を恋人扱いするロリコン。美形だけど思い切り変人。
    情報屋的役割らしい。
三島教授:三島姉妹の祖父。夢使いの総元締めらしい。
三島美砂子:三島姉妹の死んだ父の妹。29歳。サポート役。


物語ははなびら(漢字があるのだが・・・変換出来ず)坂女学院にて、
何か事件が起こっているらしいところから。
関係者らしい中等部2年・中島(けい)に郷土資料室への案内を頼んだ小学生、
彼女が夢使い・三島燐子だった。
郷土資料室では2年前・の同級生の死体が発見され、が発見している。




136 :夢使い :04/04/06 17:17 ID:???

郷土資料室の黒板に画鋲を打ってなされた呪符を解く燐子。
更に、が戸惑いながらも因縁ある和歌を思い出して唱えると、
異界への入り口が開かれる。
異界の奥で2人の見たものは、2年前に殺された女生徒・見上漾子(みかみ・ようこ)と
それを囲む2年前の漾子・の同級生、そして新しく連れ込まれた同級生・絵梨と
漾子の異様な愛撫だった。
空想の世界との狭間だけに姿が変形し、文字通り絵梨は漾子を“食べて”しまう。
そして漾子の入った“卵”を身ごもるのだった。


発見された燐子とは逃げるが、やはりかつての2人の同級生にして皆をここに
誘い込んでいる人物・馨(かおり)が追っ手として怪物(?)を放つ。
燐子は棒に懐中電灯をくくりつけたものを「レーザートマホーク」に変え、
追っ手を撃退。イメージすることで懐中電灯をつけた棒をレーザートマホークに
できるのが夢使いの力、と燐子は解説する。


更に語られる事実。
今回の絵梨で25人目となる、あそこに誘い込まれた達の元同級生は、
生徒は、腹の中に何もいないにも関わらず腹がふくれ、
妊娠したようになっている、“想像妊娠”の状態にあるということ。
その理由は、達だけが「漾子が男である」ことを知っていて、
みんな漾子に恋をしていたから、ということ。(世間的には女ということになっており、
2年前の事件でも死体しか発見されなかったのだった)



137 :夢使い :04/04/06 17:21 ID:???

翌日、は燐子から受け取った地図に従い、三島家を訪ねる。
この件を夢使いに依頼したのはだが、HPでの依頼で、そこを訪ねるのは初だ。
三島家は「童遊斎(わらべ・ゆうさい)おもちゃ店」を営んでいる。
そしてそこでは、飲んだくれて寝ていた
日曜星の夢使い・三島塔子、またの名を童遊斎と会うのだった。



146 :夢使い :04/04/07 15:19 ID:???

何だか>>135-137ではやけに堅苦しい文体で書いちゃったけどね、
私の癖だから。作品はシリアスでも割と軽い雰囲気のところが多くて、
橘なんか頭に金魚鉢乗せて登場したりという馬鹿もあり。


2年前、達のクラス、6年雪組の生徒の中で、漾子に愛され、
付き合うことのできた生徒、それがだった。しかし、自身は漾子に
告白されてキスしたことと、漾子の首を発見したこと以外はその当時の
ことを何も覚えていないのだった。(生首を見つけたショックのためか)


童遊斎おもちゃ店を訪ねたは、塔子に、漾子と初めてキスしたシーンの
箱庭を作るよう言われる。重要なシーンの箱庭を当事者に作らせ、
夢に真相を見る、これも夢使いのやり方。


翌日の昼休み、燐子はと再び会って話すが、が教科書を忘れていったので
届けようとしたところ、かつての雪組のクラスメート達を異界へと案内していた
富士野馨と再び顔を合わせ、結局一緒に教室に行くことに。


一方、のクラスには、かつての同級生の1人、逸美が漾子の力で
男の子の姿に変身し、を迎えに来ていた。
教室に来た燐子と馨は教室の扉が開かず困っている先生と遭遇。
ようやく扉が開いたと思うと、中から触手が現れ先生を襲った。
すぐさま足を変形させ触手を切り捨てる馨。
彼女は「25人の想像妊娠の生徒の1人が外に出てきた」と言う。


147 :夢使い :04/04/07 15:35 ID:???

逸美によってクラスの少女達は男の子に変えられ(あくまで一時的らしい)、
繭の中で「少女の自分自身と愛し合う」という状態にはめられていた。
もまた男の子に変えられ、逸美の身ごもっている漾子の愛撫されるのだった。
しかし、(文字通り、変形して)合体し、取り込まれる寸前に
「2年前とキスの感触が全く違う」ことから漾子がニセモノだと感じ、拒否する。


外では馨が再び閉まった扉を破り、踏み込もうとしていたが、燐子は制止、
夢使いの衣装(巫女風)に“転装”すると、自ら教室に入る。


強制的に取り込まれる寸前でを助け出し、燐子はとりあえず教室から出る。
更に扉を外から封印したが、相手は封印を破って出てこようとしていた。
そこで燐子が取り出したのがロボットのオモチャ。(多少名前やデザインは
変えてあるが、モデルはコンバトラーV)それを“箒神”という武器に入れると、
燐子の頭が2つに割れ、“超伝導フリスビー”が発動する。
燐子曰く、箒神は古代の呪術師が使っていた呪具。中に鏡や勾玉を納めて
使っていた。現代の呪術師・夢使いは代わりにオモチャを納めることにより、
アニメや特撮の劇中と同じ技を使うことができるのだ。
超伝導フリスビーで敵を撃退する燐子。その後に逸美の姿はなかった。
逸美の体は自宅に謹慎中、その精神が土偶に依り憑いて出てきたのだった。




148 :夢使い :04/04/07 15:37 ID:???

この作品の重要な持ち味でもある背景やオブジェの描き込みは
残念ながら文章では再現できないが、まあスレタイ通り
「ストーリー」を紹介することに。




335 :夢使い :04/04/13 10:05 ID:???

橘一が調べ上げた見上漾子の素性――見上漾子は養子で、
見上家に来る前の姓は芝田、保護者は戸籍上曽祖父となっている
考古学者の芝田顕作だった。
芝田顕作は戦前、旧帝大の考古学博士だったが、オカルト的な研究に
没頭するようになって学会から異端視されるようになり――そして、
百歳を越える今でも生きて、はなびら坂女学院の理事長をしていた。
ここ数十年、学園内の「玄(くろ)い塔」と言われる私邸に隠遁し、
公の場には姿を見せていないが、健在なのだ。


一方、相手側の状況も描かれる。
芝田博士は自分の息子である漾子を愛していた。彼はそれを
「黄泉の国の女と交わった報いであろうか」と言う。
そして、博士が保存していた漾子の肉体が姿を消した4ヶ月前から、
女生徒の想像妊娠事件も起こり始めたのだった。


そして、漾子が地底の異界で会っている「母」それは呪術の鎖で
縛り付けられた、とてつもなく巨大な女だった。
漾子は母を解放しようとして、そのために女生徒達に自分の幻影を
食べさせ、想像妊娠の状態にしていた。
そして母は、本物の漾子を食べるのは自分だ、と言う。


337 :夢使い :04/04/13 10:20 ID:???

芝田博士との面会に訪れた燐子・・橘の三人。
燐子曰く、依頼人がだと言ったら、向こうが会いたいと言ってきたのだと言う。
覆面をして車椅子に乗った芝田博士が現れると、
三人を連れて地下へのエレベーターに乗った。
降りた先にあったのは、異界への門。郷土資料室から入ったところと
同じところへと通じていると言う。
芝田博士は車椅子から立ち上がり、門を開いて三人を案内する。
そのしっかりした足取りは、百歳を越える老人のものとは思えなかった。


芝田博士は漾子は自分の曾孫ではなく息子だと明かし、過去を語る。
若い頃門を開き異界へとやって来た芝田博士は、女体の形をした黒い像を見つけた。
その像は若く美しかった頃の芝田博士の母にそっくりな女の姿を作り出し、
芝田博士はここに来るたびにその女と交わった。
そして、14年前に生まれたのが、漾子だった。
正しく、黄泉の女との間に生まれた子、漾子。芝田博士は彼を、
恋人だったによって連れ戻して欲しいと言う。


禍魂(まがたま――不定形の怪物として描かれている)が現れ、三人を襲う。
だが橘が“銀河警部”(モデルは宇宙刑事シリーズ)のオモチャをセット、
レーザーソードで撃退する。


338 :夢使い :04/04/13 10:39 ID:???

異界の奥――漾子は巨大な母と口付けし、恍惚に浸っていた。
巨大な母は、芝田博士の見つけた黒い像を漾子が作り変えたものだと言う。
芝田博士に言われ、漾子を取り戻すべくが近付くと、馨が止めに現れる。
「本当のことを知れば苦しむのはだ」と言い、腕づくでも阻もうとする
馨だが、芝田博士が呼び出した禍魂に飲み込まれてしまう。
さっきの禍魂も、夢使いを試そうと芝田博士が出したものだったのだ。


が漾子に触れると、漾子が変形し、は飲み込まれてしまう。
「は生け贄だ」と語り、禍魂で夢使いを阻む芝田博士。


戦いの中で語られる真実。芝田博士の考えでは、この場所は
「古事記」に記された異形の子・水蛭子(ヒルコ)が流し棄てられ、
漂着した場所だったのだ。そして芝田博士は、それを呼び出そうとしている。


その時、両腕を刃に変形させ禍魂を切り裂いて、馨が脱出する。
馨はそのまま芝田博士を貫くが、その程度で芝田博士は倒されず、姿を消す。
水蛭子が復活すればは戻れなくなる、だが逆に漾子とを切り離せば
水蛭子の召喚を止められると聞いた燐子は、箒神に付属する3つのツール、
グー・チョキ・パーの内・チョキ・四次元鋏を使用、を切り離して助ける。


すべてはを助けるため、30個の「赤い卵」が揃えば想像妊娠の生徒は
元に戻ると言い残し、馨も去っていった。


518 :夢使い :04/04/20 14:56 ID:???

あれから1週間、は学校を休んだままで、連絡もつかない。
燐子は再び馨に接触し、共に異界へ向かった。
そこにあったのはあの巨大な母と、連結した29個の赤い卵、その中央の
古代のコンピュータとも言うべき呪術装置と、そしてその中に
人形のように立っている漾子だった。


この学校の地下には水蛭子(ヒルコ)が埋まっていて、水蛭子の国がある。
そこでは人は死なず、永遠に幸福に生きていける。けれど漾子は
そんなものはない方がいいと言った。そしてこの装置は、水蛭子の国と
この世との通路を消滅させるためのもので、少女達の性的欲動の結晶、
赤い卵を30個セットすることで作動する。
漾子はやはり2年前に死んでおり、今ここにいる漾子は超常の力でできた抜け殻、
是なくを判断する心はない、という。
だが2年前、漾子は死ぬ前にこの装置の使い方を馨に教え、託した。


馨が選ばれた理由は(さすがに本人は部分的にしか語らないが)、
馨は義父に性的悪戯をされており、男を好きになれなかった。
だからクラスでただ1人、漾子にも恋をしていなかった、そのためだという。
そして、義父を消すこともできる「力」と引き換えに、任務を与えられたのだった。
そんな馨が好きなのは、だった。その欲動を30個目の卵としてセットし、
装置が作動し始める。




519 :夢使い :04/04/20 15:15 ID:???

燐子はが知りたがっていた質問をする「漾子を殺したのは誰か」
だがそれに対する馨の答えは「本人に言えるわけがない。それは自身だから」
そこへが現れる。だが今の彼女は、この前の合体の影響で、心をなくしていた。
再び漾子と1つになろうとする彼女を、馨は迎え撃つ。
馨のワイヤー付きミサイル(のようなもの)がを絡め取るが、そこへ
芝田博士が登場。理想の世界・水蛭子の国の顕現を望む博士に対し、
馨は「自分も漾子と同意見、あんなものはない方がいい」と言うのだった。
禍魂を呼び、力づくで香りを排除しようとする芝田博士。
燐子も“転装”して戦おうとするが、異界から叩き出されてしまう。
(ここで「変身途中に攻撃するなんて非常識」という台詞が)


だが、燐子の見た外の世界でも、異変が起こっていた。学校中が無数の光の
玉に包まれ、学校から空へと虹が伸び始めていたのだった。


の作った箱庭にいくつかの関係あるものを置いたものを前に、塔子は眠っていた。
この儀式によって“マンダラ”が出現し、全ての真実を示すのだ。
真実を見た塔子は燐子に夢使い専用携帯で連絡を入れると、
夢使いの力でジェット戦闘機に変形、現場へ向かった。




520 :夢使い :04/04/20 15:34 ID:???

学校の中で起きている異変。学校中の女生徒が倒れ、
その体から漾子が「生えて」いたのだった。


一方、異界での戦い。禍魂を斬り捨てていく馨に対し、芝田博士は
彼女の義父の姿の禍魂を繰り出す。その姿と無数の迫り来る手に
動揺する馨は押さえ込まれ、砲撃でバラバラにされてしまう。
(上半身だけになるが、その力のためもあってか生きてはいる)
とどめが刺されようとしたその時、禍魂を真っ二つにし、
塔子・燐子・橘の3人が登場する。
芝田博士が呼び出したゴーレムを箒神のツール、
グー・フライイグナックルで撃破する塔子。
ボロボロになった服と覆面を取り去った芝田博士は、少年の姿をしていた。


老いて、死の恐怖に震えていた芝田博士を漾子は受け入れ、その結果博士は
水蛭子の力で、若返ることができたのだった。
博士は漾子を愛していた。「本当はあんな小娘()に触れさせたくない」とまで
言うが、水蛭子の召喚には子宮が必要らしい。
博士は漾子と合体すると、そのままを取り込もうとする。
合体による力は夢使い達の真空波程度ならた易く弾き、そして再び
水蛭子が出現しようとする。


521 :夢使い :04/04/20 15:49 ID:???

四次元鋏での分離も今度は刃が立たず、鋏の刃が折れてしまう。
水蛭子の攻撃に蹴散らされる夢使い達。
その頃外の世界では、女生徒達の体から生えた漾子が羽を伸ばし、
羽化しようとしていた。漾子達が飛び立てば外の人達に着床していき、
日本中が水蛭子の力に覆い尽くされるだろう。そうなれば、もうどうしようもない。
これを何とかすべく、塔子達は合体技「ドリーム・サイクロン」の発動を
美砂子に要請する。
美砂子は夢使いの装束に転装、三島教授から鍵を受け取ると「夢殿」という
建物に入る。夢殿には「円目王(つぶらめのおう)」という神様(多分)の像が
あるが、ハイテクなシステムもつながっており、像もそんな古いものではなく、
機械のようでもある。
ドリーム・サイクロン発動の鍵とは、この円目王に処女が口付けすること。
そのために、美砂子は生涯処女の道を選んだのだった。


プログラムが送信されると、橘が引き金、燐子が撃鉄となって合体、
巨大な“人間射出銃”ドリーム・サイクロンが形成される。
そして、弾丸となった塔子が発射され、その蹴りが水蛭子を貫く――


522 :夢使い :04/04/20 16:04 ID:???

水蛭子は「現実から非現実へと分解され、夢に還っていく」(原文ママ)
あとに残ったのはいくつかのオブジェと、漾子・・芝田博士の3人だった。
その時、地中に潜んでいた巨大な母が出現、かつて言った通り漾子を
食べてしまう。それを終えると、母もゆっくりと消えていく。
水蛭子の国への通路は、今閉ざされようとしていた。
芝田博士の身体も足元から溶けていく。死に怯え、叫ぶ博士。


それを見た塔子は何を思ったか、四次元鋏で馨から、彼女に力を
与えていた土偶を切り離す。(馨も力を失う代わりに、元の姿に戻る)
その土偶を消え行く巨大な母に投げ入れると、中から漾子が現れる。
塔子が「芝田博士をあなたたちの世界に連れていきなさい」と言うと、
漾子は溶けていく博士を抱き上げる。すると博士は、漾子になった。
そして、2人で中へ消えていった。
富士野馨が2年前に見たというその向こう、水蛭子の国では、
皆が漾子だった。無数の漾子がいた。


水蛭子は進化の終着点、老いも死にもしない完全無欠の生命体。
完全だからこそ、その姿以外の存在ではあり得ない。
そして、水蛭子の国では全てが自分なのだから、皆理解しあえる。
「今この向こうに残れば、永遠の幸福の住人になれる」という塔子。
橘「滅相もない!」燐子「遠慮しとくわ!」塔子「同感です!」
そして、水蛭子の国への扉は永遠に閉ざされた。




523 :夢使い :04/04/20 16:19 ID:???

~~後日譚~~


は漾子と1つになっていた時、忘れていた2年前のことを見て、
思い出していた。
2年前にも水蛭子の国の扉が開きかけていた時、この世が水蛭子の国に
なることを拒む漾子は、に刃を渡し、自分の首をはねるよう言ったのだった。


は馨の気持ちも、ようやく知った。
けれど、その想いを受け入れることはできない。
そんなに対し、馨は両親の離婚(義父が2年前から行方不明、
ということになっている)による北海道への転校を告げる。
だがは「毎月手紙を書くよ」と告げる。休みには会いに行く、とも。
恋人にはなれないけれど、友達をやめるつもりもないから、で
とりあえずは一件落着?


一通り見届けた夢使いは、次の任務へと向かうのだった。


――これで第一章完。こんな話がいくつも続く予定だったらしいのだが、
打ち切りのためか、第二章をやった後、短い話があって終わっている。


242 :夢使い :04/04/27 14:49 ID:???
第2章いきます


阿部銀樹(ぎんじゅ)は許嫁の家庭的な美少女・瑠瑠(るる)と
同棲しているという皆のうらやむ設定の中学生。
しかし彼には秘密があった。
瑠瑠はガラクタで作られた人形なのだ。その本体は心臓にある
黒い石で、その中には小さな少女が入っている。
銀樹は毎朝瑠瑠の鼻から息を吹き込むことで、命を与えねばならない。
一日の活動を終えると瑠瑠はその熱を使い切って冷たくなり、
夜にはガラクタの身体に戻る。
瑠瑠を与えたのは銀樹の父で、その時こう言われている。
「息を吹き込むのは鼻から。口づけをしてはならない。
その他、激しい欲求をぶつけるのは禁忌(タブー)である」


一方、福岡から九州担当の夢使い・茶川三時花(さがわ・さとか)が上京、
童遊斎おもちゃ店を訪問する。
茶川三時花、土曜星、塔子を「塔子さま」と呼ぶ14歳。メガネっ娘。
何故か普段は人民帽を着用。
彼女は「中に人間の入った黒い石」を探していた。




244 :夢使い :04/04/27 15:03 ID:???

長崎に甕島(みかじま)という人口80人ほどの小さな島がある。
かつて隠れキリシタンがいたというこの島には、ある伝承がある。
何百年も昔、中に小さな人間の入った石が隕石として降ってきた、というものだ。
島民はその石を「黒い聖母」として祀った、という。
そして10日ほど前、その甕島の島民が全員行方不明になった。
(この件は報道関係には伏せられている)
島外に住む村長の知人の話によると、それより1ヶ月ほど前から
「“小さな人間が入った黒い石”をよこせ。さもなくば禍が起こる」という
電話がかかってきていたという。


この島民失踪事件を追うことになった三時花は、黒い石が鍵と考え、
それを追っていたのだった。更に調べたところによると、隠れキリシタンの
宗主だった一家は明治になった時に「黒い聖母」を持って島を出ており、
その子孫が東京の阿部という家だという。


一方その阿部家でのこと。いつになく無口だと思うと、いつもより早く冷え切り、
ガラクタに戻りかけている瑠瑠。原因は学級委員の銀樹が放課後、副委員の
中島さん(メガネ、巨乳)に告白されたのを見てしまったかららしい。
精神的な落ち込みなどがあると、瑠瑠は急激に熱を失っていくのだ。


245 :夢使い :04/04/27 15:17 ID:???

自分はガラクタ、人間の女の子を好きになったら、その子のところへ
行っていいという瑠瑠。それに対し銀樹は、ガラクタでもいい、
許嫁なんて関係ない、瑠瑠が好きだ、とはっきり言うのだった。
すると再び熱く火照り、人の姿になる瑠瑠、その日は深夜までガラクタに
戻ることはなかった。
この時胸を触ってしまった銀樹は、特に悪いことはなかったし、
キスしても大丈夫なのでは、と思うが、この時には実行できないまま。


その頃、黒い石を求める謎の少女が、阿部家に辿り着いていた。


(書き忘れていたが、阿部家に銀樹と瑠瑠以外の者が住んでいる気配はない。
ただ、暗い部屋の中に向かって銀樹が「ただいま父さん」と挨拶をしている)


翌日、吹奏楽部の練習で遅くなってから帰る銀樹を、1人の少女が呼び止める。
瑠瑠の正体を知る彼女もまた、ガラクタの身体に石の心臓を持っていた。
かなり強引に連れ込まれた廃工場には、まったく同じ外見の少女が
他にも3人、待機していた。その4人の少女達は更に別の、やはりガラクタの
身体に石の心臓を持つ模造人間を銀樹にあげようと言う。
姿も性格も好きなようにするので、代わりに瑠瑠をくれ、というのだ。
そんなことはできない、と逃げ帰る銀樹。




246 :夢使い :04/04/27 15:31 ID:???

少女達は皆スピカという名で、互いを青・黄・緑・紫と色で呼び合っている。
そして5人目、赤のスピカに阿部邸に先回りするよう伝えるのだった。


帰宅した銀樹に迫られる瑠瑠。しかし、その銀樹は赤のスピカの変身だった。
瑠瑠を一部ガラクタに戻し、胸の黒い石を確かめるスピカ。
そして、その石の中の人間が完全な形であることに感嘆するのだった。
彼女達の胸の石の中の人間は、不完全な形なのだ。
錬金術における究極の物質、第五実体、またの名を“賢者の石”
しかし今の地球上には完全なそれを作る技術はないと語るスピカ。
瑠瑠の胸の石は、失われた第五実体かも知れないのだ。


阿部家を訪問する燐子と三時花。(ここで、夢使いとしては自分の方が
先輩だ、という燐子を三時花が「燐子ちゃん先輩」と呼ぶコントが)
そこへ急いで帰ってきた銀樹は2人を追い抜き、2人の申し出を
「今度にしてくれ」と切り捨てると家に飛び込もうとする。
しかしその途端家の中からクリスタルの塊が出現、銀樹を包み込むと
また引っ込んでしまうのだった。
すかさず“転装”する夢使いの2人。
ドアをあけても中いっぱいにクリスタルがつまっているのを見ると、
燐子が四次元鋏を発動、切り開きにかかるのだった。


247 :夢使い :04/04/27 15:45 ID:???

家の中は辺り一面クリスタルの異層空間になっていた。
銀樹と瑠瑠はクリスタルに閉じ込められている。
瑠瑠を連れて行こうとするスピカ達と夢使いで、戦いが始まった。
相手を手ごわいと見たスピカ達は、1人を残し、
2人ずつで胸の石から発する光を合わせ合体、巨大なクリスタルの塊に
なると、回転し燐子達を押し潰しにかかるのだった。
燐子は超伝導フリスビーを発動、一方三時花は箒神にお菓子の本を
入れると、「チョコ・スティック・ミサイル」で迎え撃つ。
三時花はお菓子のイメージを操る夢使いだ。
撃破され、一端退却するスピカ。異層空間が消え、家の中に戻る。
そこで夢使いの2人も、瑠瑠の胸の石を見るのだった。


しかし外に出る、5人のスピカ全員が合体、巨大なクリスタル塊に変身していた。
「ドリル・オブ・ソフトクリーム」で撃ち落とす三時花。(下が川だったから
良かったものの、民家の上にでも落ちたら、というコントも入る)
しかし、川から上がってきたスピカ達はあまりこたえていない様子。
ドラゴンの頭の形になり、口から巨大な光弾を吐き出そうとするが、
その時スピカ達の“マスター”が登場。大っぴらな行為を許可なくするなと
止めに入る。


248 :夢使い :04/04/27 15:59 ID:???

マスターの奇妙な仮面と服の紋章から、燐子は相手の正体を見抜く。
相手は錬金術の始祖、ヘルメス・トリスメギストスを奉じる秘密結社、
「ヘルメス教団」のメンバーだった。
マスターは戦っている暇はない、と言うと2人をあっさりクリスタルに閉じ込め、
スピカ達を連れて家の中に入る。
だが、瑠瑠は助けを求めていた。銀樹が「父さん」と呼びかけていた暗い部屋に。
マスター達が探し出した時、瑠瑠と銀樹はクリスタルに包まれていた。
一方外では、クリスタルの空間構成は複雑で、燐子は切り裂くのに苦戦していた。
三時花も四次元鋏を発動、2人でやることに。


教団に来れば生き神のごとくうやまわれるだろう、と言い、瑠瑠を誘うマスター。
しかし銀樹と離れ離れにはならないと言う瑠瑠に対し、
マスターはある現実を見せ付ける。
青のスピカに口づけをするマスター。すると胸の石がスパークし、手が、足が
爆発して落ちていく。他の4人が悲鳴をあげて止めた時には、青は
両腕もない上半身の一部だけになっていた。
愛する人間と恋愛的行為をすれば黒い石がオーバーヒートし、燃え尽きてしまう。
それが模造人間。人間の少年と一緒にいても、幸せにはなれないのだ。




249 :夢使い :04/04/27 16:16 ID:???

しびれを切らしてクリスタルを力づくで破ろうとするマスターに対し、
瑠瑠は1つの決断をする。気を失っている銀樹を起こし、
キスを願ったのだった。目を覚ました途端異常な状況下での
申し出に驚く銀樹だが、瑠瑠の必死な態度に、それを受け入れるのだった。
マスターの止めるのも虚しく、唇を合わせる2人。
ここで夢使いの2人もようやく脱出、追いついてくる。


胸の石が火花を発し、2人を包んでいるクリスタリ自体がスパークすると、
瑠瑠は倒れ、ガラクタに戻った。石の中の少女が、うっすらと目を開ける。
銀樹が息を吹き込んでも、もう人にはならない。
銀樹が叫び、父に助けを求めると、空間が渦巻き、父の姿が現れた。
父は言う。「いずれ禁忌を破ることは分かっていた。だが一度だけならそれを
覆す方法がある。将来瑠瑠を自分の妻にすると誓いを立てればいい」と。
当然だ、ずっと瑠瑠が好きだった、という銀樹。石は誓いを聞き入れた、
と言う父。石の中の少女が、完全に目を開いた。
更に父は手から1つのクリスタルを出現させ、銀樹に渡す。
その中には銀樹とよく似た学ランの少年の姿、
今の銀樹と同じ14歳の時の父の記憶が入っていた。
更に父は告げる。「その石を持って甕島に行け。石の導いてくれる場所に、
瑠瑠を人間にする方法がある」と。




250 :夢使い :04/04/27 16:30 ID:???

「わたしも14歳の頃人形を甕島の“聖所”で人間に変えた。
その女を妻とし愛し合い生まれたのが銀樹、お前だ」そう父は言う。
阿部家の男は代々、自らの息を吹き込んだ人形を人間に変え妻としてきたのだ。


非生命から生命を作り出す力、それこそが賢者の石の力。
やはり求めていたものがあったとマスターは喜び、スピカ達と力を
合わせて襲い掛かるが、銀樹の父は再び渦巻いて消えていきながら、
最後にマスターに向けて巨大なビームを放つ。
クリスタルが砕け散り、そしてマスター達も父も消えてしまった。


再び瑠瑠の鼻に息を吹き込み、人間の姿にする銀樹。
燐子は狙われていることだし、うちに泊まらないか、と2人を誘うのだった。
ここで、壊れた青のスピカが置いて行かれていたことを三時花が発見、
これも連れて行くことになる。


童遊斎おもちゃ店に帰ったところで、
留守番の塔子曰く、もう夜なのに「まだ晩ご飯の準備ができていない」
誰が当番をやるか、となるが瑠瑠が引き受け、皆感動、とオチがつく。




419 :夢使い :04/05/02 20:08 ID:???

三島家の止まった夜、瑠瑠との思い出を夢に見る銀樹。
しかし目を覚ますと、夢使いの少女達が三人、布団に潜り込んでいる。
塔子曰く、夢に入り込んで情報を知る共感呪術だとか。
そして傍らで、瑠瑠はガラクタに戻っている。(なお、スピカもやはり定期的に
マスターから息を吹き込んでもらわねばならないが、毎日ではないらしい)


ふと、唐突に三時花が箒神を持ってくると、夢使いの力でソフトクリームを出し、
銀樹の鼻先につけてなめとる、という奇妙な行動をとる。すると、三時花の
流した涙から煙が立ち昇り、少年の姿になった。
三時花が「悟くん」と呼ぶその少年は、2年前に死んだ三時花の彼氏だという。
その言葉は三時花にしか聞こえないようだが、三時花は熱心に話している。
彼女はこうして、依頼を引き受けるかどうか伺うのだと塔子達は言う。
更に塔子の言うには、夢使いの能力は自分の命より大切なものを失うことで
与えられたもの。(三時花の場合は彼氏)「つまりわたしたちは、未来を
託したかったものをとっくの昔に失っているのです。だからこそあなたのような、
これから未来を切り開こうとしている人には手を貸してあげたいのです」


翌日、橘を加えた4人の夢使いに銀樹、瑠瑠、それにスピカを加えた一同は、
甕島へと向かう。橘の操縦するボートで甕島へ渡る一行。
なおその場面はないが、銀樹はやはり、出発前に瑠瑠に息を吹き込む場面の
箱庭を作らされている。




423 :夢使い :04/05/02 20:23 ID:???

島に上陸すると、先日銀樹が父から与えられたクリスタルが光り出し、
身長十数cmの小さな、14歳当時の銀樹の両親の姿が現れる。
両親の記憶に導かれて山の中へ歩いていく内、塔子が眠りについて倒れる。
夢で真実を知る“夢見”に入ったのだ。一端一向から離れ、塔子を担いで
山を下りる橘。


行き着いたところは泉だった。その泉を横切って飛び石が並んでおり、
真ん中には男女が手を取り合っている「双体像」がある。
両親の姿は飛び石を渡っていき、手招きする。銀樹と瑠瑠がついていくと、
双体像を指差す。像と同じように手を取り合ってみると、像の目が光り、
2人は水の中に沈んでしまう。
“転装”しようとする三時花を燐子が制止、少し様子を見ることに。


暗闇の中で、銀樹は右手に瑠瑠の手の感触を感じていた。だが一方で、
左手を握ってくる者がいる。闇の中に見えたそれは、母の姿だった。
母に抱きしめられる銀樹。


一方で瑠瑠は、銀樹がみるみる石になっていくのを見ていた。うろたえながら、
最後に石化が及んでいない指先を必死にくわえる。すると、その指先から
身体が元に戻っていくのだった。




426 :夢使い :04/05/02 20:44 ID:???

幼い日の姿に戻り、母に抱かれる銀樹は、右手が焼けるように熱いのを感じる。
その熱が全身に広がり、「熱い!!!」と叫ぶと、母の姿は砕け散った。


外では泉を渡った向こうの岩壁が開き、洞窟が出現する。入り口の
上には、「黒い聖母」の浮き彫りもある。
水の中から光の柱が出現すると、銀樹を瑠瑠も戻ってきた。
必死で銀樹の指を吸っていた瑠瑠はしばらくしてようやく戻ったことに
気付き、慌てて居住まいを正すのだった。
洞窟の中へ進む一同。だが、マスターと4人のスピカもやはり追って来ていた。


火曜星・燐子が札をたいまつに変え、洞窟を進む一同。
ふと、「何故敵だったわたしを連れていく」と聞く青のスピカに対し、銀樹は
自分が連れて行こうと主張したことを語る。聖所で瑠瑠を人間にできるなら、
スピカも救えるかも知れないから。更に「おまえだって喜んだり悲しんだり
するんだろう? 人間と同じじゃないか」と言い、模造人間の宿命を瑠瑠に
見せるためだけにスピカを壊したマスターを非難する銀樹。


洞窟の奥には、巨大な女の頭部の形をしたクリスタルがあった。
父が銀樹の、母が瑠瑠の肩に飛び乗り、そのクリスタルを指差す。
しかしその時、天井を突き破って巨大な円錐形のクリスタルが現れる。
スピカ達の合体したものだ。再び黒い石を渡せと迫るスピカ達、
“転装”して迎え撃つ燐子と三時花。




427 :夢使い :04/05/02 20:59 ID:???

激しい戦いから走って逃げ、女の頭のクリスタルに銀樹と瑠瑠が
辿り着くと、両親の記憶が手から光を放ち、そのクリスタルの
それぞれの目に当てる。すると、クリスタルの口が開きだした。
だがそこへスピカの1人が現れる。夢使い達と戦っているのは
囮だったのだ。(つまり、合体しているのは3人だった)
しかし、銀樹を始末しようとスピカの杖から放たれた光の矢は跳ね返される。
銀樹に背負われていた青のスピカが、やはり杖を出現させて口にくわえ、
術を使ったのだった。同様する相手を、青はクリスタルに
閉じ込めてしまう。


燐子は戦いを引き受け、三時花に2人の後を追わせる。
閉じ込められた敵のスピカを見て「青はもう味方だ」と描くにする三時花。
青は「この2人を進ませた方が我々にも有利だと思っただけだ」と答えるが・・・
口が開くと、中には炎が燃え盛っているように見える。動揺しつつも中に
入ろうとする銀樹を、瑠瑠は何故か引き止めるのだった。
しかしクリスタル像の目が開くと、銀樹と瑠瑠も、背負われているスピカも、
そして三時花も口の中に吸い込んでしまう。


三時花は私服姿に変わり、福岡の実家に辿り着いていた。
そして廊下の先に現れ、呼びかけてきたのは、まぎれもなく
死んだはずの「悟くん」だった。




174 :夢使い :04/05/06 02:19 ID:???

目の前の悟が確かに「さわれる」存在であることを確認、
感激して抱きつく三時花。その時、瞼の裏に映る光景があった。


2年前、悟は自分には特別な能力があって、それで秘密の仕事
「夢使い」をやっていることを教えてくれた。
「力」の実演として、三時花の周りに大量のお菓子を出現させて見せる悟。
なめてみると実際に味がする。驚き、言われるままもう1度なめてみると・・・
手を叩く音と共にお菓子は消え、なめたのは悟の唇だった。
そんな甘い付き合いの思い出。


しかし程なくして、悟の「夢使い」の仕事に三時花も巻き込まれてしまう。
危機の中、悟は三時花を逃がし、異形の炎の中へ消えていった・・・


ふさぎこむ三時花の前に「実相寺(じっそうじ)悟さんの仕事仲間」と名乗って
現れたのが、三島塔子だった。悟に託された遺品の人民帽を渡す塔子。
更に塔子は三時花にも「力」が潜在していることを見て取り、覚醒させる。
三時花は自ら望んで、悟から土曜星を受け継いだのだった。




175 :夢使い :04/05/06 02:20 ID:???

そこまで思い出した三時花は、自分が悟と抱き合ったままクリスタルに
包まれていることに気付く。「これはわたしが望んでるものじゃない」と
はっきり思うと、悟と周りのクリスタルは砕け散り、三時花は夢使いの
姿に戻った。だが、周辺はまだクリスタルのドームに囲まれている。
三時花が涙を拭くと、そこから例の悟の幻像が現れる。
幸せな日々は戻らなくても、2人は一緒だと確認する三時花。
悟の呼びかけに従い、ドリル・オブ・ソフトクリームで
周りのクリスタルを叩き割る。


三時花の眼前に広がった空間には、無数のクリスタルが浮いていた。
その1つ1つの中に1組ずつ男女が口づけをした状態で入っている。
その中の1つに、瑠瑠が1人で入って泣いており、三時花のいる足元には
銀樹が倒れている。銀樹を助け起こす三時花。
そこへ14歳当時の銀樹の両親の姿が再び現れ、等身大に拡大される。
彼らはクリスタルに包まれ眠っている青のスピカを見せると、三時花にも
同じように眠っていてもらうつもりだったが、目を覚ましてしまったのでは
仕方がない、と言い、スピカを解放する。




176 :夢使い :04/05/06 02:20 ID:???

銀樹の父は告げる。ここにあるクリスタルは、阿部家の先祖達を
閉じ込めたものだと。女達は全て、胸に穴が空いている。心臓――
黒い石を抜き取った穴が。そして、瑠瑠が来たのは銀樹の母が死んで
しばらくしてだったという事実。銀樹も、真相に気付く。
阿部家の妻は代々、1つの心臓から作られた、ただ1人の女だと。
瑠瑠も代々の記憶を取り戻しつつあるようだった。父は言う、鉱物は
有機体と異なる永遠の存在、「永遠の恋」を行うのだと。
母が瑠瑠をクリスタルから解放し、父が「“聖婚”をはじめよう」と言うと、
瑠瑠はウェディングドレス姿に変わる。


一方、ふもとで夢見を行う塔子。思い出すのは、彼女の愛した人、
(血の繋がらぬらしい)亡き父のこと――しかしやがて真相を見た塔子は、
橘と共にドリルタンクに変形、燐子達のところに向かう。


時間稼ぎだった3人のスピカの合体は逃走、青によって閉じ込められた
もう1人のところにマスターが現れる、解放する。


何故か銀樹の近付くのを拒む瑠瑠。しかし、クリスタルが瑠瑠を包み込むと
それは更に成長、銀樹をも取り込んでしまう。その中で銀樹が見たものは――
口すけをしている両親の姿。そして、母が「今日は生まれそう・・・」と
言うと、身体を作っているガラクタの一部が分離、集まって、
小さな人形になった。母が息を吹き込むと、それは人間の赤ん坊の姿になる。
母はその子に名を付けた。銀樹、と――



177 :夢使い :04/05/06 02:21 ID:???

そこで瑠瑠は激しく拒絶、クリスタルは砕け、銀樹は気を失って倒れる。
そこへ4人のスピカを連れたマスターが現れる。
彼ももしや、とは思っていたのだ。なぜキスしても瑠瑠は壊れなかったのか、
それは銀樹もまたガラクタでできた模造人間だったから・・・
(瑠瑠に息を吹き込む時、銀樹も黒い石から生気を吹き込まれていたのだ)
マスターは銀樹の身体を切り開いて確かめようと言い、杖を出す。
杖には斧の刃がつき、先端には剣を抱いて鎧を来た少女の人形がある。
それに対し再び姿が薄れ、渦巻きだす銀樹の父。箒神を出す三時花。
しかしマスターは「同じ手を二度も喰わぬ」と杖の刃で父の頭を
叩き割ってしまう。三時花も3人のスピカに取り押さえられる。
残る1人のスピカが瑠瑠を捕らえ、マスターが刃を銀樹に振り下ろそうと
した時、服の裾をくわえて止めたのは青のスピカだった。
青はマスターに挑むが、術を破られ吹き飛ばされてしまう。
「人形の分際で・・・」と言うマスターに青のスピカは答える。
「でもこの少年と少女の気持ちはわかります。人を好きになる気持ちが
わからないのなら、マスターこそ教団の任務を遂行するだけの人形です!!」
怒るマスターが青に止めを刺そうとした時、足元の地面を破り、
2体のドリルタンクが出現した。(橘は途中で燐子を乗せている)


178 :夢使い :04/05/06 02:22 ID:???

マスターと塔子の立ち合い。包み込もうとするクリスタルから逃れ、
フライング・ナックルでそれを砕く塔子。更にナックルを飛ばすが、
マスターはそれを切り捨てる。とりあえずは互角の戦いか。
マスターの刃を塔子が箒神の柄で受けての鍔迫り合い(?)の中、
2人は黒い石がこの星ではない、「星界の果て」から
やって来たものだと語り合う。


しかしそこで戦っている2人も含めた全員が別のものに注目する。
頭を割られた銀樹の父がなおも立ち上がり、銀樹を抱き上げて
瑠瑠に迫っているのだった。
割れた頭から亀裂が広がり、父の姿は破れて消えるが、中から大量の
クリスタルが出現、まず銀樹を、更に辺りのものを包み込んでいく。
退却するスピカ。瑠瑠は飲まれる覚悟を決めようとするが、塔子に
助け出される。青のスピカは燐子が拾い、とりあえずは全員退避。


塔子の腕の中で瑠瑠は「自分をクリスタルに捕まえさせてください」と言う。
銀樹と瑠瑠は2人で1つの模造人間。2人ではじめて完全。
つまり1つになった時――どちらかが自分の命を相手に与えた時、
人間になれるのだ。そして先祖達は、誰もそれを望まなかった。
不完全なままでも、永遠に恋を続けることを望んだ。
けれど、瑠瑠はそれを終わりにしようと決意していた。
自分の命を、銀樹にあげるつもりなのだ。
胸の石の中で、少女が再び目を開けた。



179 :夢使い :04/05/06 02:26 ID:???

一方、銀樹が気が付くと、そこは辺り一面に奇妙な建造物(?)の
残骸がそびえ立っている場所だった。そして、そこで銀樹の前に
現れた全裸の少女――それは、石の中の少女だった。


少女は何故か涙を流した。そして、その涙を銀樹の目に塗りつけた。
その時、蘇る記憶があった。
その晩は「今夜はずっと起きていたい」という瑠瑠の希望があって、
夜の内に息を吹きいれた。そしてはっきりとお互いの想いを確認したのだった。
その時は口づけはしなかったが、代わりに瑠瑠の目にキスをした。
すると瑠瑠の目から落ちた涙が結晶となり、みるみる成長して、
その破片は光の粒となって辺りを覆った。その1つ1つの中に見えたのは、
子供達の姿――
石の中の少女はしゃべらないが、考えは銀樹の頭の中へ伝わってきた。
あれは未来に生まれる銀樹と瑠瑠の子孫だったのだ。



209 :夢使い :04/05/06 13:27 ID:???

暴走を続けるクリスタルに、マスターも襲われる。4人のスピカが
守ろうと取り囲むが、まとめてクリスタルに取り込まれてしまう。
一方それから逃げながら、塔子は三時花達に語っていた。
箱庭の夢の中で、見たこともない遺跡のようなものを見たこと。
(それは、先ほど銀樹が石の中の少女と会った場所だ)
断言はできないが、こう考えられる。
その遺跡が地球のものでないと仮定すれば・・・黒い石は、異星で生まれ
滅んだ文明が宇宙へ流したタイムカプセルのようなものだと――
そして暴れているクリスタルはそれに付いて来た、亡霊のようなもの。
そこで塔子は、ドリーム・サイクロンの発動を美砂子に要請する。


210 :夢使い :04/05/06 13:27 ID:???

塔子は瑠瑠とクリスタルの中にいる銀樹の意識を接続するため、
三時花が弾丸役となる。そして塔子は瑠瑠の顔に札を張る。
瑠瑠が闇の中を落ちた先には銀樹がいたが、銀樹はガラクタに戻り
倒れてしまう。嘆きながらも、自らの心臓を抜き取り銀樹に与えようと
する瑠瑠だが――塔子が制止し、ある光景を見せる。
それは今より何年か幼い塔子と、その腕の中に倒れている塔子の父
――先代童遊斎だった。
塔子は言う。5年前、わたしの好きだった人はわたしをかばって死んだ。
幸せになれと言い残して。けれどわたしは幸せになれなかった。
けれどその人と生きていくことこそ、わたしの幸せだったから――
銀樹さんもきっとそう、だからあなたも、自分が犠牲になればなんて
思わないで――と。それを瑠瑠が受け入れると、塔子は闇の壁を砕く。
その向こうには、銀樹がいた。再開を喜ぶ2人。


塔子は箒神におもちゃの銃を入れ、左腕を銃のトリガーに変形させる。
曰く、この引き金はドリーム・サイクロンに伝達される。
先祖達と同じ、終わらない恋を続けることを選ぶなら、引き金を
引かなければいい。先祖達と違う道を選ぶなら、引き金を引けばいい。
どちらを選ぶのも自由、自分達で未来を選択してください――
そこで銀樹は、先ほど石の中の少女に言われたあることを瑠瑠に
耳打ちする。顔を赤らめ、驚くが、喜んで受け入れる瑠瑠。
再度父の呼びかけが聞こえる。終わらない恋を続けないのかと。
けれど銀樹は心の中ではっきりと答える。「おれは瑠瑠と一緒ならいつの日か
“死”が来てもかまわない。そして――おれは父さんや先祖たちが見たことが
ない道を見てみたいんだ」
銀樹と瑠瑠は2人で手を重ねて引き金を引く。ドリーム・サイクロン、発射。




211 :夢使い :04/05/06 13:28 ID:???

弾丸・三時花の蹴りがクリスタルを砕き、銀樹は解放される。
だが、残ったクリスタルの塊を見て、塔子は急いで四次元鋏で
解体を始める。スピカ達とマスターがまだ、中にいるのだ。
クリスタルの中でマスターは、夢を見ていた。まず、自分の姿を映す鏡。
そして、「ナタニエル」と彼の名を呼ぶ声。鏡に映った像が変化し、
スピカにそっくりの少女が現れる。
彼の幼馴染みだった少女、オリンピアの姿だった。
しかし現実の彼の肉体は急激に冷たくなり、心臓の鼓動も弱まっていた。
泣き乱れるスピカ達は、彼を助けるため1つの決意をする。


少年の日の姿に戻ったナタニエルは、鏡の向こうからオリンピアに手を
さしのべられ、引き込まれようとしていた。だがその時横から
手を伸ばしてきた者、それはもう1人のオリンピアだった。
横から現れたオリンピアがナタニエルの唇を奪う。その熱い感触で
思い出されたこと、それは彼が12歳で、オリンピアがまだ生きていた頃、
オリンピアと初めてキスをした時のこと――


212 :夢使い :04/05/06 13:29 ID:???

目を覚ました彼に口づけをしていたのはスピカだった。片腕が落ち、
火花を噴いている。マスターの目覚めを目に涙を浮かべて喜びながら、
スピカは粉々になった。彼の目の前でオリンピアを映し出した鏡が砕ける。
そして、彼らを包んでいるクリスタルも砕け散った。
マスターの周りには、4人のスピカの残骸が散らばっている。
スピカ達はクリスタルに取り込まれそうになったマスターに口づけをして
生気を吹き込み、命を救ったのだった。
人格が消滅する間際、赤が燐子に背負われた青に呼びかける。
私達4人の心をあなたの中に統合して、と。5人を並べて置くと、
4人の胸の石から出た光が青に集まり、青の壊れた身体が構成される。
嬉しそうにマスターに呼びかけるスピカ。マスターはスピカが、
死んだ幼馴染みを模して作られたことを語る。


だが、塔子が銀樹と瑠瑠の選択のことを告げ、島民を帰すよう言うと、
マスターは再び杖を出し、瑠瑠に刃を向ける。しかし、瑠瑠はガラクタの
身体に戻り、胸の石が語りだした。私は望みそのものになれる、と。
瑠瑠の身体がオリンピアの姿になる。続いて三時花に顔を向けると、
悟の姿になる。更に塔子の方を見ると、その父の姿に――
だが塔子は言う。「今ここにいる全員が望むものは死者ではありません。
これから生まれる新しい命です」人形は再び瑠瑠になる。
瑠瑠は言う。今、夢を見たと。何十年もたって、自分も銀樹も年老いて
ガラクタに戻り、死んでしまう夢。けれど子供達が生まれ、子孫が
受け継がれる夢を。それは先程銀樹が石の中の少女に言われ、瑠瑠に
耳打ちしたことでもある。永遠の生を捨て、死を受け入れれば、
人間の子供が生まれるのだ。再び瑠瑠の涙が結晶となり、未来の子供達の
姿が現れる。「自分達をつくってよ」と呼びかける子供達に歩を進められ、
銀樹と瑠瑠は口づけをする。すると瑠瑠の胸の石は砕け散り、
柔らかく温かい卵型のものになった。その中にあるのは、赤ん坊の形。




213 :夢使い :04/05/06 13:29 ID:???

「生命を自在に操る“黒い石”その結末がただの人間の子供とは。
どこの母親でもやっていることではないか」と言うマスターに、塔子は言う。
「そのありふれた事こそが、まさに生命の奇蹟じゃないかしら?」
マスターは「もう求めるものはない」と言って去り、海の中から島民を
閉じ込めたクリスタルを呼び出して、解放する。本来の目的だった
オリンピアの代わりも、スピカがいる。
「これからもわたしのそばにいてくれるか?」「イエス!! マスター!」


戦いが終わり、夜が明ける。


  ~~後日譚~~


禁忌がなくなり、キスでもなんでもしてよくなったが・・・
このまま安易にキスも、その先のこともしてしまうのを嫌がる銀樹。
あと何年かは禁忌が欲しい、という彼に対し、瑠瑠は自分の長い髪を
バッサリと切らせる。この髪が伸びるまで、キスその他のことをしては
ならない、それが2人の新しい禁忌だ。どこくらいの長さ、と問う
銀樹に瑠瑠は、決めてないけどとにかく、と。
「髪は伸び続けるから、必ず“未来”はやってくるよ!」


そんな2人を見届ける夢使い、塔子と三時花。依頼人達をうらやましくも
思う三時花。けれど、今は夢使いの仕事が恋人。
夢使い達は早くも、次の仕事に向かう。

  ――第2章 完――


281 :夢使い :04/05/07 17:59 ID:???

二ノ宮智(にのみや・さとし)は、奇妙な体験をしていた。
毎夜、自室で寝ていると、本体のない女の影だけが部屋の床に現れるのだ。
その影は吹くを脱ぐと、智の影に触れる。すると、途端に裸の女の本体が
はっきりと見える。女は「好き」と言って、智を抱きしめる。
それは心地よくて、どこか懐かしい感じだった。


しかしその感覚ははっきりしていて、夢とも思えない。そう言って、
智が相談をしに行ったのが、童遊斎おもちゃ店だった。
あなたに片想いしている女の子の気持ちが影になって通っているのでは、
と言う塔子に智は、あんな美人の知り合いはいないと言う。
とにかく塔子は、会った後影が去っていく時に、影を踏むことを勧める。
影を踏むのは呪術的に「捕まえる」ことだからと言うのだ。


早速それを実行してみる智。踏むと再びはっきりと女の本体が見える。
逃げようとする女の肩に手をかけると、そこからヒビが入って女の姿は
砕け、中から現れたのは・・・眼鏡にショートカットの少女。
隣に住む幼馴染み、晃(ひかる)だった。
晃の姿が消えた後、カーテンを開けて窓の向こうを見ると、向かいの
窓から晃もこちらを見ていた。しかし目が合うと、顔を赤らめカーテンを
閉めてしまう。


282 :夢使い :04/05/07 17:59 ID:???

翌日、智は晃を訪ねる。違う高校に進学してからは疎遠になっており、
こうして話すのも久し振りだ。自分が智の部屋にいるような気分に
なっていた、と認める晃。違う女の姿だったことについて問うと、
晃は「今わたしの姿で『好きだ』って言ったら、智はつきあってくれる?」
と返すのだった。戸惑う智。
だが、そうして話している間にも晃の影は智の影に口づけをしていた。
すると晃自身もそれに引っ張られるように立ち上がり、智に口づけ
してしまう。ベッドに伏し、「帰って」と言う晃。


それから3ヶ月ほど経って、智は再び童遊斎おもちゃ店を訪れる。
あれから、影の女は訪れないと言う。あれから晃は眼鏡をかけず、
コンタクトをするようになった。登下校の時間も重ならず、ほとんど顔を
あわせることもなかったが、久し振りに会うと、妙に早く髪が伸びていた。
顔立ちまで変わっているようだ。あの“影の女”そっくりに。
本人も「自分が自分でないようだ」と言う。
晃を元に戻したい、と言う智に、塔子は本当にそう思いますか、と問う。
あなたは“影の女”の方に恋していたのでは、と言うのだ。



283 :夢使い :04/05/07 18:00 ID:???

「智へ 今夜9時矢坂神社のお堂で待ってます。 晃」という手紙が届く。
呼び出しに応じた智を待っていたのは、黒いスリップ姿で
「わたしを抱きしめて」と招く晃だった。
智の影も勝手に動き出し、晃の影に口づけをしてしまう。
だが、今のあなたは本物の晃には恋していない、影の私に恋してる、
という相手に対し智が「小さい時からあいつを女として意識したことは
なかったから」と言うと、相手は否定するのだった。
「あなたは以前あの子に恋したことがあるわ! わたしはその時、
見てたわよ」と言って。そして、思い出せない智を「今はあの子に恋して
いないのなら、わたしがもらうわ」と言って、闇に飲み込もうとする。
しかしそこで夢使い・塔子が登場、札を投げつけて制止する。
影を異形に変化させ、塔子の影に喰らい付く“影の女”。塔子本体も
それで身動きがとれなくなるが、燐子が登場して札を発火、照らし出すと
影は消える。そこで塔子が札を投げつけると、女は爆発して消えた。


284 :夢使い :04/05/07 18:00 ID:???

後には古い雛人形が残っていた。その顔は、どこか“影の女”に似ている。
よく見るとここは古い人形を奉納するお堂だったらしく、たくさんの
人形が棚に並んでいた。目を覚ました晃は下の人格に戻っていた。
彼女は、これは自分が小さい頃家にあった雛人形だと言う。
塔子はその雛人形を箒神に入れ、記憶を呼び覚ます――


小学生の時、雛祭りで晃の家に招かれた智。ふすまの陰から顔だけを
のぞかせる晃だったが、母がふすまを開けると――振袖姿の晃がそこにいた。
智ようやく、その時晃に恋したことを思い出す。
雛人形は雛壇の上から、それを見ていた。そして疎遠になっていく智の
気持ちを試すため、“影の女”として智に近付いたのだった。
伸びた分の髪の毛が抜け落ち、元の姿に戻る晃。智が今わたしのこと
なんとも思ってないなら、もうあきらめるから、と言う彼女だが、
答えは必要なかった。影同士は、もう口づけをしていたのだから。

 ――終わり――