夢喰見聞

Last-modified: 2010-06-19 (土) 13:01:59

夢喰見聞/真柴 真

148 :夢喰見聞:2008/04/22(火) 02:41:52 ID:???
未解決消化


銀星館には貘が住む。今宵も悪夢を抱えた者達がその扉を開く。


蛭孤:貘。先代である梓をその悪夢に取り込み貘となる。蛭孤は貘の名で本名は黒須千寿。
朝比奈霧霞:梓の妹。兄を待ち銀星館を営む。
三角一二三:金持ちの道楽息子。霧霞に一目惚れし銀星館に下宿する。
戒吏:妄鏡堂の主人。妄想に生きる奇人。
シマ:戒吏の使用人。
朝比奈梓:先代の蛭孤。千寿の悪夢に食われた。
月白:貘。悪夢を供給させるため人を飼う。


蛭孤は客の夢を覗き、望むままに書き換える。
客は人だけでなく動物や物や死者等様々。
悪夢は終わるがそれは必ずしも幸福な結果とは限らない。
妄鏡堂は妄想に駆られた人を呼びそれを具現化する。
だが、それもまた望む結末に至るかは解らない。


梓は妾腹の子に生まれた自分の存在を憂いていた。母の死は自分が招いたのだと。
貘の蛭孤は滅する事を望み、梓に貘という存在を委譲する。
人であった梓は貘の蛭孤となった。


千寿は嗜虐心を満たす為だけに黒須に引き取られた。
千歳は痛みから逃げる為に妄想に逃げ込む、繰り返される虐待は妄想を悪夢に変える。
―貘ですら覗いただけで気が触れる程の悪夢。


初代の記憶の中で千寿の悪夢を見た梓は己の滅する所として千寿を探す。
梓は関東大震災の焼け跡で千寿を見つけ妄鏡堂でその悪夢を具現化し取り込まれた。
梓の取り込まれた悪夢は蛭孤の鞄に収められていたが、
悪夢に魅入られた梓は霧霞の事を覚えて居なかった。
蛭孤の記憶の欠落に気付いた月白は千寿について調べ始める。



149 :夢喰見聞:2008/04/22(火) 02:51:01 ID:???
月白は虐待されていた千寿の世話をしていた神志名という少女を見つけ出す。
一二三と蛭孤は彼女の夢に潜るが蛭孤は彼女の事も自分の姉の事も覚えていない。
神志名は千寿が死に身代わりにされことを恐れ、彼の治療をしていた。
彼女もまた黒須家の人間同様に壊されていく千寿に陶酔していた。
そして姉に依存する千寿に嫉妬を抱き、千寿を引き取りにきた姉を解体してしまう。
記憶の欠落はそれだけではなかった。生まれも、以前の所在も。
梓と会った時にも神志名は居たはずなのに。


一二三は月白が鞄から解き放った悪夢を奪うが月白は霧霞を刺す。
霧霞を救う為蛭孤は貘―不死の存在を霧霞に継承させようとした。
しかし、貘はそれに共鳴する者にしか継承出来ない。蛭孤の力は梓に継承される。
神志名は梓から逃げ梓は月白を喰う事を宣言し去る。


霧霞は月白から梓の所在を聞かされていた。
一二三は魘される霧霞に梓を連れ戻すと約束した。
蛭孤でなくなった千寿は立ち去ろうとするが一二三が彼を引き止めた。
梓は千寿の悪夢で東京を覆い尽くす。


東京は夢に囚われる。幸せだった夢は千寿の其れのように歪み始める。
一二三は夢に狂い霧霞を傷つけようとしてしまう。
痛みに眠れない霧霞は影響を受けていなかった。
千寿は悪夢を取り払うべく梓を探す。一二三は拘束されたまま千寿を送り出し…呪った。


月白は戒吏を欺こうとして虚空に囚われる。
月白が開かせようとした扉は既に戒吏には開けず、その鍵は月白だと戒吏は言った。
千寿は霧霞を支え梓を見つけ出す。
霧霞の声は梓には届かず、彼女は蛭孤と一二三の気遣いを無碍にした事を悔いた。
梓は神志名を認識して居なかった。蛭孤は活路を見出す。



150 :夢喰見聞:2008/04/22(火) 02:55:26 ID:???
月白は己を滅する事で部屋自体も滅し虚空から抜け出す。
シマは妄鏡堂には妄想しない存在は異物でしか無いという。
部屋は意識を持ち、妄想を思考して具現化する。
起こされた扉まま異物を放置された扉は己が扉である事を忘れ…
戒吏にすら開けられないというそれは既に扉という形態を持たず―己を人と妄想した。
眠った記憶を持たない―シマこそがその扉。扉を失った部屋は虚空へと姿をかえていた。
月白により眠らされたシマは扉へと戻され―同調した月白は鍵へと姿を変える。
千寿の指示で妄鏡堂に駆けつけた霧霞は扉を開け放つ。中を覗き見た神志名は発狂した。
千寿の記憶に欠けている神志名や姉の存在―それが示すもの。
妄鏡堂は梓の居る空間と繋がる―神志名は全てを思い出した。


あの日、余震に巻き込まれ千寿は死んでいた。
神志名は―千寿の代わりにされることを恐れ―梓は―己の滅する場所を求め―
生み出されたのは千寿が生きているという妄想。神志名は其れから解き放たれる。
蛭孤としての千寿は梓の妄想の産物だった。
梓に真実を突きつければ悪夢は終わる―そして千寿も。


千寿は言う、妄想によって生み出された彼は梓自身で補完されていた。
だから、千寿の霧霞に抱いた思いは兄としての思慕―梓の思い。
扉に手をかける千寿を制し、霧霞は扉を開け放つ。
椅子に凭れる千寿の躯、千寿の悪夢の結晶は最初から存在していなかった。


死体を消そうとした月白の思惑は阻止された。
戒吏はシマを取り戻す為月白を鍵穴から外す。月白は鍵であり続ける事を望んでいたが。
梓は己を、蛭孤―千寿の過ごした時間を、人であった時の記憶を取り戻す。
霧霞は漸く兄を取り戻した。


正気を取り戻した一二三は2人に詫びるため銀星館を訪ねる。
千寿は梓に生み出され得たもの―霧霞や一二三と過ごした時間に思いを馳せ…
千寿を助け起こした一二三の腕の中には日溜まりだけが残っていた。
銀星館に巣くう闇はもう無い。


梓と千寿に関係無い序盤はばっさり切ったので本編を読む事を進めます。