星の砂漠 タルシャス・ナイト

Last-modified: 2010-06-19 (土) 12:44:47

星の砂漠 タルシャス・ナイト/船戸 明里

732 :星の砂漠 タルシャス・ナイト 1/5:2007/12/17(月) 22:10:26 ID:???
高校の入学式をさぼって海に来ていた無口で無表情な少女・木崎愛美(通称マナ)は、
穏やかなメガネの青年・沢渡仁と出会う。マナと沢渡は何故か気が合った。
そんなマナを迎えに来た双子の弟・健司。
健司はマナと違って直情的な性格で、無防備な姉のことが心配で仕方ない。


マナと健司の姉弟は母親と3人で暮らしており、
母は健司には気を遣うが、マナのことは持て余しており、母娘の仲はぎくしゃくしていた。


ある日の下校中、硝子細工の店の前を通りかかったマナは、
その店でバイトしている沢渡と再会する。
店には、硝子細工職人であるマナの父親の作品も置いてあった。
(父は母と喧嘩別れして別居中らしい)
父の作品をうっとり眺めるマナを見て、沢渡はマナのために作品の一つを取り置きしておく。


家に帰ったマナは、機嫌の悪かった母に集めていた硝子を砕かれてしまった。
ただ1つだけ割れなかったのは、マナと健司が幼い頃、
海で溺れた時に拾ったガラス玉だった。


ある日、マナと健司はそろって学校で具合が悪くなる。
早退したマナは、謎の黒ずくめの男に追いかけられ、無意識に沢渡の元へ行く。
沢渡に送られ家に帰ったものの、マナの部屋には既に黒い男がおり、
不思議な力でマナに襲いかかる。


自宅が発火し、健司はマナを助けに家の中に飛び込むが、そこにいたのは金髪の少年だった。
少年は健司に問う。「黄色い宝石、知らないかなァ」
心当たりのない健司だったが、少年は確かにここにあるはずだと言う。
「隠さずに出してよ、タルシャスを!」
健司は少年に見えない力で攻撃され、血まみれになって倒れてしまう。


マナは沢渡によって救い出されていたが、健司は意識不明で病院に運び込まれる。
重体の健司を見ても何の感情もないように見えたマナだったが、
実は健司を失うことにひどく怯えていた。 「健司に何かあったら、半分になっちゃう」



733 :星の砂漠 タルシャス・ナイト 2/5:2007/12/17(月) 22:11:23 ID:???
しかし翌日、健司は何事もなかったかのように全快した。
健司は、マナと一緒にいた沢渡が何か事情を知っていることに感づき、問い詰める。
沢渡は話し出した。マナと健司が海で拾ったガラス玉こそが、タルシャスだと。


タルシャスとは、遠い星の原語で「風と神の石」と書く。
何十年かに一度、ひとつの命に恋をする鉱石だそうだ。
沢渡の亡くなった父は異星人で、その星ではタルシャスの恋人はターリヤと呼ばれ、
神のような存在になれると言う。
そのため、敵対する植民星の刺客に盗まれてしまった。
沢渡の父はタルシャスを取り戻すことに成功したが、地球に堕ちてしまい、
以来、タルシャスは行方不明のままだった。
マナと健司を襲った連中はその関係に違いない。
しかし話を聞いた健司は「硝子玉はくれてやるから俺達を巻き込むな」とマナを連れ帰った。


ひとまず日常に戻ったマナと健司。
しかし家がなくなりアパート暮らしになったことで、マナは一層家の中での窮屈さを感じる。
学校では、「佐藤さん」と言う女子生徒がマナと友達になろうと親しげに話しかけてきたが、
どうしてもすぐにはなじめなかった。
マナは再び沢渡の元へ赴くが、沢渡はマナにタルシャスを置いて立ち去ろうとしていた。
マナは沢渡を追いかけて助けを求めた。 「置いていかないで。空っぽにしないで」


マナはその後も、父親の代わりを求めるかのように沢渡の元に入り浸る。
当初は沢渡を毛嫌いしていた健司も加わるようになり、3人で過ごすことが多くなる。



734 :星の砂漠 タルシャス・ナイト 3/5:2007/12/17(月) 22:12:16 ID:???
その一方でマナは、諦めずマナに話しかけてくる「佐藤さん」と次第に仲良くなっていった。
しかしマナが、「佐藤さん」の家に行く途中、再び黒い男に襲われそうになる。
逃げる途中、以前からマナに目をつけていた学校の不良たちにまで絡まれてしまったマナだが、
不良たちがマナに暴力を振るうのを見た「佐藤さん」は、不良たちを攻撃し、その正体を現した。
「佐藤さん」の姿は金髪の少年――健司を襲った少年と同じ姿になった。


その場に沢渡と健司も駆けつけ、金髪の少年は自らを「植民星のジュオウ」と名乗る。
ジュオウは沢渡のことをタルシャスを手に入れるための「母星からの刺客」だと告発する。
否定しない沢渡。絶望したマナは、そのままジュオウに
「タルシャスの代わりにこの子をもらう」と連れ去られてしまう。
健司は沢渡に詰め寄るも、沢渡に気絶させられてしまう。


9年前に沢渡は、父の母星の者たちに拉致されていた。
母星では沢渡の父は「タルシャスを持って逃げた」裏切り者とされており、
沢渡は父の罪を贖うため、脳に「釘(チップ)」を埋め込まれ、
母星の意のままに働かされていたのだった。
沢渡は重傷が一日で治った健司をターリヤであると判断し、母星に連れて行った。
(沢渡自身もターリヤの子孫であるため、そこそこの力が使える)


ジュオウに連れ去られたマナは、植民星で彼と語らう。
ジュオウはターリヤを殺すために造られた存在だった。
何百年も一人でターリヤのことを待ち望んでいたジュオウは、
「戦争などどうなってもいい、生まれて初めて自分と対等の相手と出会えた」
とマナをターリヤだと認め、「ボクとずっと一緒にいよう」とマナに告げる。
一度はジュオウを受け入れようとしたマナだったが、沢渡を信じ切れなかった自分を責め
「わたしはターリヤじゃない」とジュオウの言うことを否定する。
ターリヤはマナだと確信するジュオウは「ターリヤは死なないんだ」と
マナを建物の上から突き落とした。



735 :星の砂漠 タルシャス・ナイト 4/5:2007/12/17(月) 22:15:00 ID:???
母星を裏切った沢渡と、彼の助けを得て脱出した健司はマナを助けに行くが
既にマナの体は動かなくなっていた。
それを見た健司はジュオウに激しい怒りをぶつけ、ターリヤとしての力を発現させ、戦闘する。


その頃、マナと健司の母親は子供達「ふたり」が帰ってこないことを心配し、
健司から密かに連絡を受けていた父も、様子を見に来ていた。
すると、死んだと思われていたマナが目覚める。
マナは幼い頃、健司と二人で海に溺れた時に心から心配してくれた母の姿を思い出していた。
「わたしに何かあっても悲しまないと思っていたの」


尚も戦い続ける健司とジュオウ、沢渡も健司に手を貸そうとする。
しかし、ジュオウへの攻撃を止めさせようとするマナも、ターリヤとしての力を現す。
「タルシャスはひとつの命に恋をする」 マナと健司は二人で一つのターリヤであったのだ。
目覚めたマナはジュオウに「一緒には行けない。だからここに来て」と告げる。


すると、ジュオウの前に長い間眠らされていた彼の弟・ジュイが現れる。
ジュオウの「後任」であるジュイは、容赦なくマナ、健司、沢渡、
そしてジュオウにも襲いかかった。
ジュオウはジュイとほぼ相撃ちになる形で倒れる。


戦争は終わった。
既に戦争を望んでいたのは一部の者だけで、母星と殖民星には和平協定が結ばれた。
ジュオウ・ジュイも消滅し、タルシャスをも失って、神のいらない体制を作ることができたのだった。
沢渡の「釘」も抜かれることになる。
ジュオウは寿命により体も脳も砂の中へと消えていった。
マナは自分と同じ孤独な存在であったジュオウの消滅を嘆き、タルシャスを壊した。



737 :星の砂漠 タルシャス・ナイト 5/5:2007/12/17(月) 22:18:29 ID:???
――夏休み。マナと健司は沢渡の田舎の鎌倉へと二人で旅行に出かける。
あれ以来、母の元にはよく父が通っており、
マナと母親の仲も少しずつ良くなっていっているようだ。
また、マナはクラスメートの顔と名前を覚えるよう努力(?)していた。


鎌倉へ着いたマナと健司。沢渡はそこで一人の幼い少年と一緒にいた。
「宇宙船に残っていた記憶と遺伝子のデータから復元したら、
 地球人の男の子になっちゃってね」
その幼い少年の姿を見たマナは、満面の笑みで彼に駆け寄るのだった。
「ジュオウ!」



END