砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

Last-modified: 2010-04-11 (日) 17:49:28

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない/原作:桜庭 一樹 作画:杉基 イクラ

789 :マロン名無しさん:2010/03/20(土) 00:23:36 ID:???
未解決リストに「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」があったんでやってみる。

この作品は、同名小説のコミカライズで単行本が上下巻で出てます。
掲載誌はドラゴンエイジ。



790 :砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない:2010/03/20(土) 00:25:07 ID:???
山田なぎさは、父親を亡くし、引きこもりの兄と母親の3人暮らしである。
彼女はこんな家の状況だから、中学を卒業したら自衛隊に入ろうと考えている。

9月2日、なぎさのクラスに海野藻屑と名乗る転校生がやって来た。
自分は「人魚」であると電波な事を言う彼女は、往年のアイドル・海野雅愛の娘だそうである。
自己紹介を終え、自分の席に向かう藻屑だが、クラスの男子に足を引っ掛けられ転ばされてしまう。
その時、なぎさはスカートから覗いた藻屑の腿にあざがあるのを目撃する。
藻屑は足のあざを目撃したなぎさをにらみ付け、「死んじゃえ」と一言言った。

その日の放課後、校門を出ようとするなぎさの背後から
空のペットボトルが飛んできて、彼女の頭に直撃した。犯人は藻屑であった。
そして、足を引きずり、「いてぇ…」と言いながらなぎさの元に向かって行った。
2人の噛み合わないやり取りの後、藻屑はなぎさに「友達になって」と言った。
最初は反発したなぎさであったが、その後何だかんだと言って藻屑と行動するようになった。


791 :砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない:2010/03/20(土) 00:27:44 ID:???
そんなある日、夕飯の買出しにスーパーに行ったなぎさだが、
スーパーに入ると店内でカートを蹴っ飛ばしているDQNがいた。海野雅愛である。
店を出ようとする雅愛の後ろには藻屑がいた。
雅愛は駐車場に停めてあった自分の車に乗り込んだが、
藻屑に向かって「お前は歩け」と言い残し車を発進させてしまったのであった。
車が行ってしまった後、藻屑は地面に座り込んで泣き出してしまった。

その様子を見ていたなぎさは、仕方なく藻屑を慰めることとした。
泣き止んだ藻屑になぎさは、何を買いに来たのかを尋ねた。
雅愛がバラバラ死体を作るための鉈を買いに来のだ藻屑はと答えた。

不意に藻屑は「ぼくおとうさんのことすごく好きなんだ」と言った。
さらに藻屑は言う。「好きって絶望だよね」と。

そして、藻屑は鉈を買ってなぎさと別れた。



795 :砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない:2010/03/20(土) 17:06:11 ID:???
とある日曜日、同じクラスの男子・花名島(藻屑の事が気になってる)、なぎさ、藻屑で映画を見に行く事となった。
目的地に到着し、一行はバスから降りた。その時、藻屑が運転手に何かを見せる。
それを見て運転手は、「おまえら!友達だろう 手伝ってやれ!!」と怒鳴った。
2人は運転手がなぜ怒鳴ったかを全く理解できなかった。

映画が始まると、藻屑は爆睡してしまった。スクリーンでは、女性がエレベーターの中に閉じ込められ困惑している。
藻屑は眼を覚まし、今の状況をなぎさに尋ねた。なぎさは今の状況を説明した。
それを聞いて、藻屑は「自分は人魚だから泡になって消える事が出来る」と主張し出した。
藻屑の嘘にイラついたなぎさは、やってみせなよ、と言うと藻屑は「いいよ ついてきて」と言った。
藻屑は、なぎさと花名島を自宅に連れて行った。
そして2人の前で「それじゃあ消えるね」と言い残し、家の中に入っていった。

藻屑が本当に消えたのかを確認するために、2人も家の中に入った。
家中どこを探しても藻屑の姿は見当たらない。仕方が無いので、なぎさと花名島は自分の家に帰る事とした。



796 :砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない:2010/03/20(土) 17:09:18 ID:???
自宅への帰り道、なぎさはバス停にいる藻屑の姿を発見した。
なぎさは、どうやって消えたのか尋ねたが、藻屑は相変わらず「泡になって」と言う。
藻屑の嘘にいい加減頭に来たなぎさは、さらに先日の鉈の件について問い詰める。
藻屑は、雅愛が飼い犬のポチを殺してしまい、買ってきた鉈でバラバラにして近くの山に捨てのだと言うのであった。

なぎさは、本当にポチの墓があるのかを確認するために、藻屑を連れ近くの山へ向かう事とした。
嫌がる藻屑であったが、道中でようやく観念した模様であった。
なぎさはそんな藻屑に、なぎさの兄(名前は友彦)がなぎさに以前出したクイズを藻屑にも出題した。

「ある男が死んだ つまらない事故でね」
「男には妻子がいた」
「葬式には男の同僚が参列していて妻と同僚はいい雰囲気になった ひかれあうってやつだ」
「ところがその夜、男の忘れ形見である子供が殺された」
「犯人は何と妻だった 自分の子供を突然殺したんだ さてなぜでしょう?」

このクイズは、一説によると異常犯罪者の青少年の精神鑑定に使われる質問で、
普通の人間はこのクイズを回答する事が出来ないと友彦は言っていた。
藻屑は分からないと言う。それを聞いてなぎさは藻屑は思ったより普通の子なんだ、と安心していた。

しばらく山道を歩いて藻屑はポチの墓を指差した。その先にはバラバラになった犬の死体があり、
その上に「さよならポチ」と書かれた紙が置いてあった。それを見たなぎさは嘔吐してしまった。



798 :砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない:2010/03/21(日) 12:45:26 ID:???
9月も終わろうとしていたある日、朝、なぎさが登校すると、
彼女が飼育係を務めていたウサギ小屋の前に花名島がいた。
なぎさが小屋を覗くと、ウサギが全て殺されていた。
そして、いくら探しても一匹の首が無いと花名島は言う。
2人は校長室に呼ばれ、事情を聞かれた。花名島は「頭が無くて…」とうわ言のように言うばかりであった。

教室ではこの事件について騒ぎになっていた。
校長室から戻ってきた花名島は、窓際で佇んでいる藻屑にお前がやったんだろ、と言った。
しかし、そんな事は意にも介さず、藻屑は花名島を挑発する。
藻屑の挑発に切れた花名島は藻屑に殴りかかる。
藻屑は無抵抗のまま諦めたような眼つきで殴られ続けていた。
なぎさが止めに入り、花名島は担任に連れて行かれた。結局、花名島は一週間の停学となった。

なぎさは早退する事となり、保健室のベッドで寝ている藻屑のためにかばんを持っていこうとした。
その時、藻屑のかばんの中から異臭がした。かばんを開けると、その中にはウサギの首が入っていた。

その日の夜、なぎさの自宅に藻屑から会おうよ、と電話が掛かってきた。
待ち合わせ場所の海岸に到着すると、藻屑が既にいた。
そして突然、なぎさの目の前でテトラポッドから海に飛び込んだが、浮き上がってこない。
驚いたなぎさは、あわてて海に飛び込んだが、藻屑は何事も無かったかのように水面から顔を出した。

2人はしばらく海で遊んだ。
そして、一通り遊んだ後、藻屑はなぎさに濡れた体を拭くためにタオルを貸してあげた。
ふと藻屑を見ると、彼女の体には無数のあざがあった。
なぎさの視線に気付いた藻屑は、このあざは怪我ではなく、
海の汚染によるものだと言った。なぎさは「そうなんだ…」とだけ言った。

藻屑と別れた後、なぎさはタオルを返し忘れたのに気付いたので、タオルを返すため藻屑の家にむかった。
門前に立ち、チャイムを鳴らそうとしたその時、家の中から藻屑の「ごめんなさい」という声が聞こえてきた。
雅愛に殴られているのである。

帰宅したなぎさは母親から、藻屑は障害者手帳を持っており、足に障害を抱えていること、
鼓膜が破れて左耳が聞こえないという事実を聞かされる。
なぎさは、自分は藻屑の事を何も知らなかったのだ、と愕然とした。



799 :砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない:2010/03/21(日) 12:46:13 ID:???
ウサギが殺された事件以来、初めて藻屑が登校してきた。
クラスのある女子が藻屑の左耳が聞こえないことを良い事に藻屑に嫌味を言った。
嫌味に対し、なぎさは「左側で言いたいこというのって楽しいの?」と言った。
そのため、なぎさはクラスの女子からは総スカンを食らってしまった。
だが、授業が終わると、なぎさは藻屑に一緒に帰ろう、と言ってのけた。

家に帰ろうとするなぎさだが、担任から呼び出されたため、藻屑を教室に待たせて職員室に向かった。
そこで、担任から進路についての話を受けた。担任は高校に行くべきだ、と言った。
しかし、何も判ってないと感じたなぎさは職員室から飛び出していった。

教室に戻り、藻屑と落ち合ったなぎさであるが、そこで藻屑は「嵐が来るよ」と言った。
いつもの藻屑の電波な言動かと思い、なぎさはさほど気にも留めず、帰宅しようとした。
その時、2人の前に停学中の花名島が現れた。花名島は忘れ物を取りに来たとの事。
花名島は藻屑に謝罪するが、藻屑は許さない、と言い掃除用具箱にあったモップの柄で花名島の背中を打ち据える。
気が済むまで打ち据えた後、藻屑は泣き出した。そして、花名島は教室を出て行った。

なぎさはハンカチで藻屑の涙を拭いた。そして、藻屑は言う。
「…こんな人生ほんとじゃないんだ」
「きっと全部誰かの嘘なんだ」
「だから平気 きっと全部悪い嘘だから…」
なぎさは藻屑を抱きしめる。また、藻屑は言う。
「いつか別の場所にいくよ ここじゃないところ」
「ぐぅぐぅいつまでも惰眠を貪れるような場所がいいな…」
「そう…深い海の底 波に揺られて微睡むだけで 十年に一度卵を産むだけで後は何もしなくて…」
「汚染された海でいつまでも微睡んで… それだけで…それだけでいい…」
藻屑の言葉を聞き、なぎさは「逃げようか」と言った。

2人は学校を出て、まずなぎさの家に向かった。
なぎさは藻屑を玄関先で待たせて逃げるための荷物をまとめた。
次に、藻屑の家に行った。藻屑はここで待ってて、となぎさを門前で待たせた。
振り向きざま手を振った藻屑は穏やかな笑みを浮かべていた。
なぎさは、初めて藻屑の本当の笑顔を見たような気がした。



800 :砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない:2010/03/21(日) 12:46:57 ID:???
なぎさは門の前で待ったが、30分経っても1時間経っても藻屑は現れなかった。
不安に思ったなぎさの前に雅愛が現れた。雅愛は泣きながらトランクを引き、
自分の車に乗り込んでどこかへ行ってしまった。
なぎさは意を決して家に入り、藻屑を探した。しかし、戻ってきた雅愛に咎められ、追い出されてしまう。
玄関を出る時、なぎさは以前ポチの件で藻屑に出したクイズを雅愛にも出題した。雅愛は答えた。

「"Because I miss you"」
「"逢いたくて"じゃないかな」

クイズの答えは「逢いたくて」
お葬式があればまたその男に逢えると考えた妻は、
もう一度お葬式をするために自分の子供を殺したというのがその理由。
なぎさは藻屑が殺された事を悟った。

なぎさは家に帰り、母親とちょうど家庭訪問に来ていた担任に
藻屑が殺された事を伝えたが、信じてくれなかった。
その日の深夜、なぎさは今までの顛末を友彦に話した。
涙ながらに話すなぎさを見て、友彦が意を決した。一緒に藻屑を捜しに行こうと。

そして早朝、2人は山に到着した。朝霧の向こうに何かの影があった。
友彦は、なぎさにその場で待つように言い、一人でその影の元に行った。

そして戻ってきた友彦は、なぎさに藻屑の遺体があることを伝え、
「さよならもくず」と書かれた紙切れを見せた。
友彦は見ないようにとなぎさを止めたが、それを振り切って藻屑の遺体の元へ向かった。
そこには、雅愛によってバラバラにされた藻屑の遺体があった。
藻屑は以前にも見た諦めたような眼つきで空を見つめていた。



801 :砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない:2010/03/21(日) 12:48:25 ID:???
雅愛は逮捕され、また元の平穏な日々が戻ってきた。
友彦は引きこもりから更生し、自衛隊に入った。
機関銃の解体と組み立てがものすごく早く、そして優雅なことから
「機関銃の貴公子」と呼ばれているらしい。

もう誰も砂糖菓子の弾丸を撃たない

背後からミネラルウオーターを投げつけてきたり、痣を汚染だと言い張ったりしない
どこまでも一緒に逃げようなんて言ってくれない

あの夏の終わり
いっしょに世界と戦い死んでいった兵士たちがいた

その証をそっと胸に刻んであたしは大人になっていく
あたしの魂は決して忘れない

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない