風と木の詩

Last-modified: 2008-11-14 (金) 16:32:22

風と木の詩/竹宮 恵子

737 :風と木の詩 1 :04/02/12 13:12 ID:???
しょっぱなから少年同士のベッドシーンから始まります。

ラコンブラード学院に転校してきた半ジプシーの少年セルジュ・バトゥール子爵。
亡き父の母校に転校してきた彼は、学院の有名人ジルベール・コクトーと同室になる。
彼は娼婦・小悪魔・問題児と呼ばれており、学院内に多くの愛人を抱えていた。

先入観がなく真っ直ぐな性格のセルジュはジルベールとうち解けようとするが、
エロスの体現の如きジルは連日のように学生と関係をもち、次々とトラブルを引き起こす。
彼に誘惑され、未知の領域に戸惑う健全なセルジュ。
激しく相手を求め抱かれることで孤独を埋め、体で相手を推し量るジルベールであったが実は
その心は一人の人間に縛られていた。その相手から連絡が来ない、と鬱状態になり不安定なジルベールを
セルジュは体を張って癒し、彼に日々不可解な感情を抱くようになる。

そんな時、学院に一人の男が尋ねてくる。
彼こそがジルベールの叔父であり待ち続けていた相手、オーギュスト・ボウであった。
ジルベールはオーギュストにのみ普段見せない笑顔を見せた。つまり本命である。
しかしひたすらオーギュストを求めるジルベールの前で、オーギュはわざとセルジュを構ったり
ジルを無視したりと感情を逆撫でする行動をとり続ける。ジルはセルジュを憎悪し、二人の戦いが始まった。 

→過去編へ。



738 :風と木の詩 2 過去編 :04/02/12 13:15 ID:???
貿易商・コクトー家の息子の稚児目的で養子として引き取られたオーギュスト・ボウ。
荒んだ大人になり久々にマルセイユの家に帰ってきた彼は、
全く野生のまま育ち人間らしい教育を受けていない5歳の子供と出会う。
自分が義兄の嫁と不倫した際生まれた子供、それがジルベールであった。

親の愛情を知らず無垢なまま育ったジルを、オーギュは自分の言いなりになる生き物として実験的に育てようとする。
極めて不道徳な環境の中、動物的な本能のまま美しさを極めて育つジルベール。
しかしある日、オーギュストの友人でソドミアンのボナールに目をつけられレイープされてしまう。
相手の力・支配を受け、無垢さを失ったことに憤るオーギュは、己のより強い支配でもってジルを捕らえた。
その後ジルはオーギュを求めてやまなくなるが、満足な愛を返されず欲求不満のループに陥る。

そんな中二人はパリに移り、ジルベールはパリの社交界で大いに花開かせるがそこでかのボナールと再会する。
オーギュの愛を得られず苦しむジルは家出しなんとボナールに身売り。
ボナールの家で暮らし始めたジルは思いがけない優しい時間を手に入れるが、
オーギュへの恋の激情からは逃れられず自殺未遂する。
憤ったボナールはジルを焦らすオーギュの冷酷さを責めたて、二人はヴァセンヌの森で決闘する。
ボナールの元で癒されたジルベールだったが、土壇場でオーギュを選び彼の元へ戻った。
ジルベールを世間から守り自分の支配下に置くために、
ラコンブラード学院へと強制的に入寮させられジルはオーギュの元を去った。



739 :風と木の詩 3 過去編 :04/02/12 13:16 ID:???
貴族の御曹司アスラン・バトゥール。
ピアノを極め、優れた人柄でラコンブラード学院で青春を謳歌していたアスランは、結核に倒れスイスへ療養に行く。
療養後学院に戻ってきた彼は愛するピアノを断念し、父の期待に沿うべく大学入試を受け合格。
病だが順風満帆な人生を送っていた。
しかしある日、オペラ座の会場で出会ったジプシーの高級娼婦・パイヴァと出会いその運命は大きく変わる。
侯爵をパトロンに持つパイヴァに恋すれば身の破滅であるが、アスランは貴族の称号も親友、
両親も全て捨てパイヴァとかけおちした。

スイスで幸せに暮らすアスランとパイヴァ、セルジュであったが、アスランの病は再発しその生活は終わりを告げた。
アスランは息を引き取り、パイヴァも同じ病に冒される。
バトゥール家の祖父はセルジュを家に引き取りたいと願い、セルジュはパイヴァと離れ子爵邸へと一人向かった。
そしてパイヴァもアスランの後を追う。
子爵邸に引き取られたセルジュは素直な性格で周りに幸せをもたらすが、
ジプシーとのかけおちで出来た子供に一部の目は冷たく、特に叔母に迫害を受ける。
張りつめた生活の中セルジュが見つけたのは、父が愛し自分に教えたピアノであった。

世間の好奇の目や迫害に負けず真っ直ぐに育つセルジュは、ある日叔母の娘で従姉妹のアンジェリンに会う。
天使のようで気性の激しいアンジェリンとセルジュは供に育つが、
アンジェリンはセルジュに恋をしセルジュはそれを拒んだ。
事故で自分をかばい顔に大火傷を負ったアンジェにセルジュは応えようとするが、
誇り高いアンジェはそんなセルジュを責め立てる。
邸にいられなくなったセルジュは家を出てラコンブラード学院へと向かった。
そしてジルベールと出会うのである。

→本編・最初に続く。



741 :風と木の詩 4  :04/02/12 16:52 ID:???
相変わらず同室だがうち解けないセルジュとジルベール。
セルジュの元にはジルの感情をわざと逆なでするように、オーギュからの手紙が届き続ける。
しかし実は、オーギュはセルジュに近づくふりをして彼を学院から追い出すことを企んでいた。

そんな企みが分かるはずもなく、ジルはオーギュのセルジュに近づくという振る舞いに苦しみ、
セルジュはそんなジルの激情に心惹かれ、彼に恋していることを自覚する。
またセルジュを憎み殺意まで抱いていたジルは、自分から目をそらさず真正面から向かうセルジュを
徐々に受け入れいつしかふれ合うようになっていく。

学院が休暇に入り二人きりになると、今まで以上に親睦を深めジルは魔性から少年らしく変わっていくように見えた。
しかしオーギュストに招かれ二人でマルセイユに向かうとジルは元に戻ってしまい、
セルジュは二人の間には入り込めず疎外感と嫉妬心を覚える。
オーギュはジルを惹きつける相手が初めて現れたことに危機感を覚え、セルジュに釘を刺すために呼んだのだ。
動じないセルジュにダメージを与えるため、オーギュはセルジュをレイープし相手を支配することの意味を示す。
しかしセルジュはそれを乗り越える。
オーギュがジルを裏切り自分を抱いたことをセルジュは明かし、
ジルは初めて自分の意志でオーギュの元を離れ学院へと戻る。



742 :風と木の詩 5 :04/02/12 16:55 ID:???
しかし相手を己の体で測るジルに肉体関係を恐れるセルジュはそれ以上近づけず、ジルの孤独感はやがて募っていく。
そしてオーギュとアンジェリンの婚約や、友人パスカルの妹でセルジュに恋する少女パットの出現で
不安定に陥ったジルはセルジュと大モメに揉める。
セルジュはとうとうジルベールを受け入れ(肉体関係を、ということですな)、
ジルは自分に真剣に応えるものを得て満たされた日々を送るが、生憎オーギュは黙っていなかった。

ジルをマルセイユに戻すべく脅迫しろと学院総監督に指示し、総監督は不良を使いジルを脅迫する。
セルジュを盾に脅されたジルは相手の言いなりになり、それを誤解したセルジュと派手に仲違いしたりと
相変わらず波乱だらけの二人の道である。
最終的にはオーギュが直接学院に乗り込んでくることになり、逃れられないことを悟ったジルは自殺を図る。
追いつめられた二人はとうとう学院をおんでてかけおちするが、その前途は多難であった。

パリに落ち着いた二人だが、地に足付けた生活を送ろうとするセルジュに比べ、
夢想に生きるジルベールは貧しい生活に違和感を覚え、二人は理想と現実とのギャップに追い込まれていく。
バイトして生活費を稼ぐセルジュは日々の生活に疲れ、
ジルはそんなセルジュとのスキンシップの希薄さに不満を抱く。
さらにジルはその美貌と雰囲気で、バイト先の街の有力者で売春組織の元締めの変態サドに目をつけられてしまう。

そんなお互いの不満をぶつけ合う二人の前に現れたのは、友人パスカルとその妹のパットであった。
パットに一時の安らぎを見いだすセルジュにジルは更に苛立ちを募らせ、二人の仲はますますこじれていく。
さらに変態を怒らせた二人には仕事がなくなってしまった。
窮地に追い込まれた二人を救ったのは、パリに未だ住んでいたボナールであった。
ボナールの元で再び優雅な暮らしを取り戻した二人だが、現実主義のセルジュにはその状態は耐え難く家を出ていく。
ジルベールは元に戻ると分かっていながらもセルジュの後を追い、ボナールはその破滅を予感した。
そして物語は悲劇へと突入する。



743 :風と木の詩 6 ラスト :04/02/12 16:59 ID:???
ジルはセルジュの元に戻り再び二人の生活が始まったが、変態親分に目をつけられたジルは阿片漬けにされてしまう。
生活に追われるセルジュはなかなかそれに気づかず、さらにパスカルのジルと別れるべきだという忠告に
色々と思い悩むうちに、ジルは売春組織に薬で心まで囚われてしまっていた。
パスカルとセルジュに薬をやっていることを気づかれたジルは、止められることを恐れ家を逃げ出す。

売春組織の下っ端男はジルを金持ちに売るため、ヴァセンヌの森へジルを連れて向かった。
待ち合わせの場所に着いたが、親分の追っ手に下っ端男は殺され、引き渡しの相手はジルを諦めて馬車を出す。
既に正気を失ったジルベールは、その相手にオーギュストをだぶらせ馬車の前へと躍り出る。そして・・・。アボン

ジルベールは死んでセルジュの元へと戻った。
セルジュはジルベールに何もしてやれなかったことを悔やみ、罪悪感と喪失感で抜け殻となってしまう。
パットやパスカルが懸命に支えるが、立ち直れず想いを馳せてばかり。
見かねたパットはバトゥール家に連絡をとり、セルジュは子爵として館へ連れ戻された。
懐かしい我が家へと戻ったセルジュは、父の記憶とジルベールの想いを胸に抱き、静かに己を取り戻す。

外に佇むセルジュの元に、ジルベールの魂が優しく舞い降りた。
<完>



744 :風木書いたヤシ :04/02/12 17:01 ID:???
ちなみに「風と木の詩」というのは 風=ジルベール、木=セルジュ を指してますな。
ポーが少年達の永遠の時を描いた作品だとしたら、風木は一瞬の青春の時を描いた作品ですな。
男の方はこういうの読むんですかね。