Roman

Last-modified: 2010-12-25 (土) 22:38:35

Roman/原曲:Sound Horizon 漫画:桂 遊生丸

293 :Roman:2010/11/30(火) 16:23:57 ID:???
はじめに
これはもともと強いストーリー性を持っている楽曲をコミカライズした作品です
この漫画で描かれているのはあくまで作者の曲に対する独自解釈であって
これが公式の打ち出した正しい解釈というわけではないとのこと

一話一話が独立した短編になっているのでエピソードごとにまとめます
抽象的な話もあったりするので分かりづらかったりしたらすいません

雑誌掲載時とは順番が違うらしいですが
ここでは単行本の掲載順で書いていきます



294 :Roman:2010/11/30(火) 16:25:08 ID:???
<朝と夜の物語>
戦禍を逃れ、村から離れようとする二人の女性。
森の中、女性の一人オリヴィアが陣痛を起こしうずくまる。

―これは 生まれて来る朝と死んで行く夜の物語…

どこかのテラス、生も死も持たぬ存在を自称する青年イヴェールは
双子の人形、死(紫)の姫君ヴィオレットと生(青)の姫君オルタンスに
「この世界に僕が生まれてくるに至る物語(ロマン)はあるのか見てきておくれ」
と告げ、了承した双子は旅立つ。

オルタンスが向かった先には、無事に戦禍から逃れることはできたものの
流産してしまい嘆くオリヴィアの姿があった。
オリヴィアの叔母は、棺の中の子に死者への手向けに送る双子の人形
ヴィオレット(菫色の花)とオルスタンシア(紫陽花色の花)を添える。
オリヴィアは生んであげることができなかった自分の子供、イヴェールに対して
謝罪し、泣き崩れる。

―これは 生まれてくる前に死んでゆく 冬(イヴェール)の物語(ロマン)…



295 :Roman:2010/11/30(火) 16:26:50 ID:???
<歓びと哀しみの葡萄酒>
貴族の令嬢、ロレーヌ・ド・サン・ローランには死んだ祖母と母の遺した葡萄畑と
自分の誕生日に植えられた一本の葡萄の木があった。
ロレーヌは、その葡萄畑を守る役目として雇われた使用人のネイジュと
身分を越えて惹かれあっていった。

優しい父と愛するネイジュと共に長らく幸せな時を過ごしていたロレーヌだが
父が再婚してから状況は一変する。
浪費癖のひどい継母と人が変わったように彼女に貢ぎ続ける父によって
家計は傾いていき、没落を避けようとした父に望まぬ縁談を組まされてしまう。

ロレーヌはネイジュと共に駆け落ちするが、途中、父の雇った仮面の男に
ネイジュは殺され、ロレーヌもつれ戻されてしまう。
その後は無気力状態となり父に言われるがままに縁談相手の屋敷へ
連れられていったロレーヌだったが縁談の最中、外に仇の男の姿を見つけ
屋敷を飛び出して男の背中をナイフで刺し、半狂乱で逃亡する。

彼女の予想に反して追っ手も警察も来ず、そのまま葡萄畑へ辿り着く。
ロレーヌはネイジュと共に過ごした葡萄畑で葡萄酒を作ることにする。
彼女がその生涯をかけて作り続けた葡萄酒『ロレーヌ』は多くの食卓に並び
多くの人々に愛され続けた。
葡萄畑と共にあり続けた長い生涯を終えたロレーヌは
誕生日に植えられた一本の葡萄の木の下で静かに眠りについた。



296 :Roman:2010/11/30(火) 16:28:03 ID:???
<星屑の革紐>
少女エトワール。星の名を冠した彼女は自分の名のそれを見たことがなかった。
彼女は生まれつき視力が弱く、その目に星の光は届かなかった。
その上、いずれそのわずかな視力さえも完全に失われると宣告されていた。
彼女は母の存在というのも分からなかった。
幼い頃に母を亡くし、右腕のない父と二人暮らしだった。

ある日、父が一匹の犬をもらってくる。
プルー(雨)と名づけられたその犬は、エトワールの助けになってくれるとのこと。
最初の頃はうまく接することができず、プルーと一緒にいても孤独だった。
そんなエトワールだったが、プルーとは次第に心を通わせていき
一人と一匹はまるで姉妹のように仲良くなっていった。

5年後、プルーとの散歩中にエトワールは完全に視力を失う。
それでもエトワールには自分を支えてくれるプルーがいたからどこへでも行けた。
けれどもプルーには寿命が迫っていた。
ある夜、瀕死のプルーに寄り添って寝たエトワールは知らない女性の姿を『見る』。
実はプルーはエトワールの母の生まれ変わり(あるいは憑依)だった。
母に抱きしめられたところで目を覚ますエトワール。
その隣には息を引き取ったプルーの姿があった。
今までのことを感謝し、涙を流すエトワールだったがプルーの腹の中に子犬がいる
ことに気づく。
無事子犬を取り出すことに成功したエトワールは
その黒銀の毛並みを持つ子犬を抱きしめ、涙を流しながらも微笑んだ。



297 :Roman:2010/11/30(火) 16:33:29 ID:???
<天使の彫像>
彫刻家オーギュスト・ローランは人を寄せ付けない性格をしていた。
そんな彼も内縁の妻、ナタリーだけには心を開いていた。

ある日、ナタリーは身ごもるが、医者に出産に伴う死の危険を告げられる。
ナタリーの身を案じて子を堕ろすように説得するオーギュストだが
ナタリーは生むことを譲らない。
結局オーギュストが折れて出産することになるのだが
出産に耐え切れずナタリーは命を落としてしまう。
雪によってすぐにナタリーの元へ向かうことができなかったオーギュスト。
やっとの思いで妻の下へ辿り着くことができた彼の目に映ったのは
物言わぬ亡骸となったナタリーだった。

腹の子が死んでいれば妻は生きていたのではないか。
そんな考えに憑かれたオーギュストは子供の首を絞めるが泣き声で我に返り
自分が恐ろしいことをしようとしていたことに気づく。
いつまた殺意が湧くとも分からない自分を恐れたオーギュストは
息子を死んだことにして孤児院へ出す。

しかし、一度は憎んだはずの子供への思いは徐々に募っていく。
二度と会わないと決めながらも孤児院の近くへ向かってしまう。
壁越しに聞こえる笑い声、子供の笑顔への渇望は湧き出してくる。

オーギュストは二度と見ることはできないわが子の笑顔を彫刻に託した。
彼は持病により残り少なくなった命を懸けて天使の彫像を創りあげた。
「やっと笑ってくれたね…」思い残すことをなくしたオーギュストはそう言って息を引き取る。
「もういいよ パパ」彼が倒れた後にはそんな声が響いた。

オーギュストの創りだした天使の像は、戦乱の最中に消え、平和と共にその姿を現したという。
神秘に包まれた像は人々にいつまでも愛され続けた。



298 :Roman:2010/11/30(火) 16:37:48 ID:???
<見えざる腕>
隻腕の男、レイヨン・ローランは日々悪夢にさいなまれていた。
かつて戦場で一騎打ちとなった男、フランボウ・ローラン。
その圧倒的な実力で幾数もの人間を屠った実力を前にレイヨンは
命こそ助かりはしたものの、右腕を失った。
それ以来、あるはずのない腕の痛みに苦しみ、腕を切り落とされる悪夢を見続けるレイヨン。
彼はその苦しみを安酒を浴び、恋人のワロニに暴力を振るうという形でぶつけてきた。
それでもワロニはレイヨンを愛していたのだが、お腹の子供の父親になることは
できないと言って出ていってしまう。

自暴自棄になっているレイヨンの元に異国の酒場にフランボウがいるとの情報が入ってくる。
勇んで復讐へと向かうレイヨン。
しかし、酒場でフランボウの姿をみた彼は愕然とする。
隻眼にして隻腕、アル中にしてヤク中。
実はフランボウは、レイヨンに一騎打ちで勝った後、目を射抜かれ右腕を
切り落とされていた。
圧倒的実力で多くの人間を屠ってきた彼だったが、英雄と謳われたアルヴァレスは
それ以上の実力者だった。
フランボウもまた、レイヨンと同じく転落人生を送ってきたのだった。



299 :Roman:2010/11/30(火) 16:39:51 ID:???
傍らにいる女性に暴力を振るうフランボウに自分とワロニの姿を重ねて
レイヨンは激しく動揺する。
そうしているうちに、一人の青年が酒場に入ってくる。
黒き剣を持った彼の名はローランサン。
ローランサンはフランボウをあっさりと殺し、笑いながら走り去っていった。

復讐の舞台を降ろされてしまったレイヨンはとりあえず酒を飲むことに。
有り金をはたいた彼の前に出されたのは葡萄酒『ロレーヌ』。
今までの安酒とは全く違う、その歓びも哀しみもすべて包み込むような味に
彼は人生を振り返させられる。
あの日、戦場でレイヨンは野垂れ死にをしかけていた。
けれど、命の危険を顧みず助けてくれた人間がいた。
レイヨンは失ったものではなく、残された左腕と人生で何ができるかを考える。
「人生は儘ならぬ…されど… 此の痛みこそ私が生きた証なのだ……」
痛みを受け入れたレイヨンは、星明りを頼りに再び歩き始めた。

(その後、無事更生したレイヨンはワロニとよりを戻し、物語は星屑の革紐へと続く)



300 :マロン名無しさん:2010/11/30(火) 16:42:21 ID:???
とりあえずここまでで前半終了
後半は1エピソード内の情報量が多いので少し時間がかかるかも
302 :Roman:2010/12/02(木) 15:56:41 ID:???
<緋色の風車>
フランボウを殺し酒場から走り去るローランサン。その後を一人の少年がつけてくる。

少年時代、ローランサンは孤児院の仲間たちと事あるごとに衝突していた。
ローランサンは夜な夜な自分の首を絞める発作に襲われているせいで
周囲の人間に殺されそうになったと思い込み
また周囲の少年たちは彼の背中に悪魔の印のあざがあると恐れていた。

ある日、喧嘩の仲裁をしようとした少女シエルに全員まとめて汚物をかけられる。
水浴びの時にローランサンの背中を見た少年たちは何もないことに安心し、態度を和らげる。
実はローランサンの背中のあざは感情が高ぶった時だけに現れるものだった。
少年たちが去った後、いきなり声をかけてきたシエルに驚いたため背中にあざが浮き出てしまう。
しかし、シエルはそのあざを翼のようできれいだと言った。
自分のことを肯定してくれる人間ができたことを機に
ローランサンは少しずつ周囲との距離を縮めていけそうになった。

ある夜、孤児院のある村が襲撃される。ローランサンはとっさにシエルの手を引いて森へと逃げ込む。
隠れて追っ手をやり過ごしていた二人だが、襲撃者の一人であるフランボウに見つかってしまう。
迫りくる手に恐怖するローランサン。
しかし、彼の目に映っていたのは目の前の男フランボウではなく、覚えているはずのない
父オーギュストの手だった。
ローランサンは首に触れられた途端はじけ飛ぶように逃げ出す。
その背後にはシエルの「待って…!」という言葉が響いた。



303 :Roman:2010/12/02(木) 15:58:49 ID:???
復讐を決意したローランサンはその手で多くの人間を葬ってきた。
そして、最後にもっとも憎んでいたシエルの仇であるフランボウへの復讐を果たす。
酒場から走り去り、かつて孤児院のあった村へと向かう。
風車のある丘へたどり着いたローランサンはそこでなぜか野ざらしになっている天使の彫像を見つける。
なぜこんなところに彫像があるのかと疑問に思い見ていたローランサンだが
その笑みにふとシエルの面影を重ねて名前をつぶやく。
そこへ突然現れた少年に、ローランサンは剣でわき腹を貫かれる。
少年は、フランボウの息子タッシュだった。

父の仇を貫いたタッシュだったが、ローランサンの口にした名前に動揺する。
シエルとは彼が幼いころに死んだ母の名前だった。
タッシュの身に着けている首飾りがシエルのしていたものと同じだと気付いた
ローランサンの脳裏にひとつの記憶がよみがえる。
逃げ出したローランサンの背中にシエルがかけた言葉は「逃げて!!」だった。
彼はずっとシエルは逃げ出す自分に助けを求めだと思っていたが
その記憶は、彼女を置いて逃げてしまったことに対する罪の意識が作り出したものだった。

問い詰めるタッシュにローランサンはあえて別人だと答える。
それでも食い下がるタッシュだったが、そろそろ命の限界だったローランサンは
自分のように何もかも失いたくなければ剣など捨てて平凡に生きろと言って行かせる。
「ごめんね…次は逃げずに、君の傍で共に散ろう…」
そう誓ってローランサンは息を引き取った。



332 :Roman:2010/12/22(水) 16:49:32 ID:???
<呪われし宝石>
※このエピソードには「朝と夜の物語」にも登場したイヴェールと
この話から登場するイヴェールによく似た青年、イヴェール=ローランが登場しますが
「イヴェール」「イヴェール=ローラン」といった区別の仕方をします
ちなみにイヴェール=ローランの方が柔和な顔立ちをしている

とあるレストランで一人の歌手が歌い始める。
彼女の胸元にあるのは大きな赤色金剛石『殺戮の女王(レーヌ・ミシェル)』。
その宝石は所有者を変え渡り歩き、幾多もの人間に災いをもたらした。
(ロレーヌの継母もまたその所有者の一人)
退屈そうにしている一人の客の前に男が現れ、二人はミシェルの話題に興じる。
歌手がつけているのはニセモノだろうと言う客に男は「本物なら店の中が血の海なんて
エンリョしたいね」と言って笑い、その宝石の知られざる誕生秘話について語り始める。

青年イヴェール=ローランは、妹ノエルと二人で手作りの人形を売って生計を立てていた。
ある日、イヴェール=ローランは妹の結婚資金を稼ぐために一念発起、遠くの鉱山へ向かう。
何かに引き寄せられるように寝食も忘れて掘り続ける彼が見つけたものは
まばゆく輝く巨大な赤色金剛石の原石だった。
ようやくこれで妹を送り出せると喜んだのも束の間。欲に目の眩んだ炭鉱経営者に殺害されてしまう。
その後も彼の掘り当てた宝石ミシェルは『彼女』を巡って殺しあう多くの者たちの
血を吸い上げるかのように美しく磨かれていき、最終的には博物館の中で眠りについた。
多くの男を狂わせてきた魔性の女王ミシェル。
しかしその始まりの男であるイヴェール=ローランは『彼女』を胸に抱き血を与えながらも
最期まで目の前の宝石ではなく家族のことを見ていた。



333 :Roman:2010/12/22(水) 16:56:06 ID:???
2年後、連絡のつかない兄の帰りを待ち続けるノエルは、鉱山について調べた婚約者から
兄が事件に巻き込まれて命を落としたという可能性を知らされる。
しかし、その事実を信じたくなかったノエルは婚約者を拒絶してしまう。
その後、ノエルの元に兄からの近況を知らせる手紙が定期的に届くようになる。
手紙の内容を語るノエルの姿があまりにも自然だったため、その手紙の筆跡が妙に柔らかいことも
週末にノエルが自分宛の手紙を出しにいっていることにも気付いた人間はいなかった。
やがてノエルは兄の全てを家中のあらゆる紙に書き綴るようになる。
彼女は兄を死から切り離す幻想を、誰からも何も奪われない物語を一冊の本として作り上げた。

作中劇・幻想物語(げんそうロマン)
博物館の見回りをするレイヨン。右腕には腕時計がはまっている。
彼が通り過ぎたところを見計らって、イヴェールとローランサンは展示されている
レーヌ・ミシェルを盗み出す。
逃げる二人に向かって吠える犬に文句を言いつつ、エトワールは本を読みふける。
楽屋を抜け道にする二人に文句を言うフランボウを笑顔であしらい、夜の街を駆け抜ける。
夜の一時を共に過ごすロレーヌとネイジュ、夫婦そろって眠るオーギュストとナタリー
そこには何も失わない幸せな人々の姿があった。

作中劇・幻想物語(アナザーロマン)
アジトへ辿り着いたイヴェールとローランサン。
仲間たちとの祝杯を上げた後、二人は金の入った今後について語り合う。
イヴェールには帰りを待っている妹ノエルがいた。ローランサンには気になる少女シエルがいた。
その後、盗んだ宝石を見ていたイヴェールは背後に気配を感じて振り返る。
そこにいたのは人の姿をしたミシェル。
『彼女』イヴェールに呼びかける。「Hiver Laurant(イヴェール=ローラン)…?」
錯乱したイヴェールは近くにいた仲間の一人に斬りかかる。
そして、殺戮の女王が再び世に解き放たれる。(終)



334 :Roman:2010/12/22(水) 16:57:28 ID:???
幻想が生と死のどちらに傾くかは物語の思うが儘。そう言って男は話を終える。
話し相手となった客に男は別れを告げる。壇上で歌い終わった女性が微笑む。
彼女の姿は物語の中でイヴェールが見たミシェルそのもの。
男が去った後レストランの中に残されていたのは
一礼をするミシェルと大量の死体となった客たちだった。

多くの人生を生と死の狭間で見つめるイヴェール。
いつからか『イヴェール(冬)』とは生まれてくる前に死んでいった赤子の名前となった。
帰らぬ兄を待ち続ける妹のように、悲痛な母の声が二度と会えない子の名を呼び続ける。



335 :Roman:2010/12/22(水) 16:58:56 ID:???
<美しきもの>
少女モニカには病弱な弟ロランがいた。
家から出られないロランのために、モニカは毎日花を届けていた。
春のある日、街に来ていた旅人がモニカに歌を教えてくれる。
うろ覚えで歌を聞かせたらロランはその歌を気に入る。
以来モニカは毎日ロランの前でその歌をうたうようになった。

冬のある日、ロランの容態が急激に悪化する。
過労で倒れた母に代わってロランの看病をしていたモニカに
彼はかすれて消え入りそうな声で自分の創った歌を聞かせる。
窓の外を見ると虹が出ていた。
「綺麗だね」そう言ってロランは笑いながら息を引き取った。

やがて、モニカは旅に出る。
昔歌を教えてくれた旅人のように弦楽器ひとつを手に各地を回り
弟の生きた証である『ロランの歌』を子供たちに教え続けた



336 :Roman:2010/12/22(水) 17:00:35 ID:???
<黄昏の賢者>
悩みを抱えて公園を歩き続ける女性クロエの前に、紳士風の格好をした男が現れる。
自分が悩んでいることを見抜かれたクロエは、賢者(サヴァン)を名乗るその男に語り始める。
親のいない子供たちを育てて売り払う家で暮らしていたクロエだったが
木から転落して顔面に大怪我を負い、憤慨した義母に捨てられてしまう。
以来彼女は路上暮らしを続けてきた。
その日は自分の生い立ちだけを語って別れる。

翌日、公園を訪れると賢者がまた来ていたので話の続きをする。
何年か路上暮らしをしていたクロエは、同じ家で育った女性と再会し
彼女の口利きで同じ場所に住み込みで雇ってもらえることになる。
ある日、体調を崩して寝込んでいる女性の元へ薬を運んだクロエは彼女が妊娠していることを知る。
女性は、もし子供が生まれてきてしまえば自分も子も不幸になってしまう。
だから生まれてこないでほしいと言い続けた。しかし彼女は死に、子は生き残る。
雇い主にどこかへ遣られる赤子に自分の生い立ちを重ねたクロエは
自分の生は母に望まれなかったのかと思ってしまう。
親の愛の不安を語るクロエだが賢者は明確な返答をせず、その日は素数についての話をして別れる。
賢者はクロエが妊娠をしており、女の悩みがそこにあるということを察する。

今度は賢者と楽しい話をしようと思いつつ掃除をしていたクロエは
ベッドの下に女性が飲まずに捨てたと思しき薬を見つける。
なぜこんなにたくさん飲み残したのか。そう思っているとつわりが起きる。
その様子を見た雇い主は薬を出そうとするが、クロエが持っている薬に気付き言う。
「何だ もう持ってるじゃないか」
女性の体調不良の原因は妊娠で、クロエが運んでいた薬は避妊薬だった。
そして女性は口では「生まれてこないで」と言いながらも、薬を飲むことを拒んでいた。
全てを悟ったクロエは、雇い主の下を飛び出し恋人の元へと向かう。
しかし、彼は大きな街で稼ぐためにやめてしまったと告げられる。



337 :Roman:2010/12/22(水) 17:07:30 ID:???
行く当てもなくなって公園のベンチで一人涙を流すクロエは、やがて泣き疲れて眠ってしまう。
目を覚ますと傍らには賢者がいた。
事情を察した彼はクロエに自分自身で判断するように告げる。
結局賢者は最後までクロエの悩みに対して明確な答えを出すことはなかった。
けれども賢者に話を聞いてもらうことで気持ちに整理のついたクロエは決意を固める。
賢者に礼を言って別れた後、雇い主の下を飛び出してしまった
彼女を探していた恋人が現れる。
彼の胸元には首飾り。クロエの恋人は成長したタッシュだった。
無事に合流できた二人は馬車で街へと向かう。

新たに悩める女性を見つけた賢者は声をかけようとするが
その背後に彼のことを探していた警部が現れ、呼び止められる。
しかし賢者は彼にハトをたからせてその隙に逃亡する。
後日、クロエは賢者ことクリストフがレストラン大量変死事件の関係者として
指名手配されていることを知る。



338 :Roman:2010/12/22(水) 17:11:15 ID:???
<11文字の伝言>
新たな子供を身ごもったオリヴィアはイヴェールのことを忘れてしまってもよいのか思い悩む。
葡萄畑を見ながらロレーヌの母は幼いロレーヌに
いつか愛する人と出会ったら迷わず愛し抜くよう言い聞かせる。
一度は去った自分のもとへ来てくれたレイヨンにワロニは喜びの涙を浮かべる。
赤子に歌を聞かせるシエル。彼女が歌うのは孤児院で働く女性が
ある旅人から教えてもらったという『ロランの歌』だった。
村の襲撃後、シエルはフランボウにここで死ぬか玩具として生きるかを迫られ
迷うことなく生きる道を選択する。
迷いのなさに呆れるフランボウだが、シエルは何が何でも生き抜いて
自分を連れて逃げたローランサンの選択が正しかったことを証明しようと
生きていれば必ず再会できると信じようとしていた。
子供を堕ろさせようとするオーギュストを見て、不幸になるところを
見ていられないと言う知人にナタリーは笑顔で自分の不幸を否定する。
亡き母のドレスを持って泣くノエルに、イヴェール=ローランはずっと傍にいると誓う。
旅立ちの日のモニカ。彼女の行く先には雲間からの美しい光が差し込んでいた。
場面はめぐり再びオリヴィア。彼女は生まれてくる子に名前をつけ、息を引き取る。

二人の子供と共に風車の丘を訪れるタッシュ。
そこに突き刺さるローランサンの黒き剣にシエルの飾りをかける。
こうして二人は再会を果たした。
巡りゆく生と死を双子の人形は見つめ続ける。
タッシュの妻であるクロエは子供を産んだ時に息を引き取った。

「残される幻想に比べれば、人の生命は刹那。それでもなお焔を灯すことを選ぶなら
繋ぎ合わせ光の束となって、奇跡を描く物語の一部となるのなら…
少女が描いた悲しい幻想物語は静かな眠りにつくだろう。
それが『生まれてくる前に死んでゆく僕(イヴェール)の物語』…」
そう言ってイヴェールは姿を消す。

とある店に訪れた客は、生まれてくる子供のためにヴィオレットとオルタンシアの人形を買っていった。



339 :Roman:2010/12/22(水) 17:16:05 ID:???
これにてRomanは終了
最後の方がうまく説明できなかったのでそのままセリフを引用しました
自分でも書いていて混乱しそうになってきたので
もし意味不明な部分があったら補足するので指摘してもらえるとありがたい


340 :マロン名無しさん:2010/12/22(水) 20:24:25 ID:???
Romanで質問なんだけど
ローランサンの痣って結局なんなの?
タイトルにある11文字の伝言は誰が誰にどんな伝言を送ったの?
あと質問というか思ったことなんだけど
紫→死で青→生なのに紫になるアジサイが生の象徴ってどーなのよ



342 :マロン名無しさん:2010/12/23(木) 07:20:39 ID:???
>>340
横からだけど

ローランサンの痣 → 自分は首を絞められた時の父親の手の痕かと思ってたけど違うかも。
           漫画独自の演出の筈なので、
           多分ローランサンが孤立→シエルに肯定されるってエピソードのための表現かと。
           あと「天使の彫像」とのつながりを表現するためもあるのかな

11文字の伝言 → 作中で名前が出てくる女性たちから愛する者へのメッセージ
         「しあわせにおなりなさい」
         彼女たちの名前の一番上を繋げると出てくる
         

アジサイについては、色が変化する花だから 青→紫 で
「生者はいつか死者に」という比喩がこめられてると思ってた
逆はどうなんだと言われると厳しいがw



343 :Roman:2010/12/23(木) 15:32:31 ID:???
>>342が答えてくれたので補足する形で


あくまで読者の考察だけど<緋色の風車>が先行収録されていたシングルが
翼(決意の象徴)を持つ少年をテーマに描かれていたからそこを意識したのかもと言われてる

伝言の女性
シエル→アンヌ(ロレーヌの母)→ワロニ→セリーヌ(孤児院で働く女性)
→ニニエット(孤児院で働くロランの歌を知る女性)→オリヴィア→ナタリー
→リア(オリヴィアの面倒を見てくれてる女性)→ナターシャ(オリヴィアと戦禍から逃げた女性)
→サクレ(ローラン兄妹の母)→イザベル(モニカとロランの母)
すっかり失念してたごめんなさい

紫陽花
オルタンスが生と嘘をついてる説とか
イヴェールが生と死の狭間にいることを疑う考察とかがあったりする
Romanは原曲からしていまだに意見や考察が割れまくってるから一概に言い切るのは難しいかも